2011年2月から1年間放送された、スーパー戦隊シリーズ第35作記念作品『海賊戦隊ゴーカイジャー』。
ヒーローなのに海賊、しかも宇宙人で構成される戦隊という斬新な設定に加え、過去のスーパー戦隊に変身して戦うという話題性で注目を集めた。海賊としてのアイデンティティを失うことなく、彼らがなぜこの星を守るべく戦うことになるのか、ゴーカイジャーの視点による客観的な地球の姿を、魅力的なストーリーで描いている。
そんな『海賊戦隊ゴーカイジャー』の10年ぶりとなる新作『テン・ゴーカイジャー』が、11月12日(金)より新宿バルト9ほかで上映される。他シリーズへのゲスト出演などを経て、再び集結したゴーカイジャーへの思いや自身の成長、さらに現在放送中の『機界戦隊ゼンカイジャー』に登場するツーカイザーについて、キャプテンマーベラス/ゴーカイレッド役の小澤亮太に語ってもらった。
——10年ぶりの新作ということで、ゴーカイジャーのメンバーと再会してみていかがでした?
小澤亮太(以下、小澤):個々で会うことはあっても、6人揃って顔を合わせたのは『動物戦隊ジュウオウジャー』のゲスト出演以来、5年ぶりですね。僕はマーベラスとして出演した作品もありましたが、みんなが揃って「ゴーカイジャー」の新作を撮るというのは新鮮でした。衣装合わせで「わ〜!久しぶり!」と思ったけど、「あっという間に、久しぶり感なくなったな」って思うくらい、すぐなじみましたね。当時からみんなマイペースな感じで各々自由に過ごしていましたが、今回もすぐ、あの頃の空気感に戻りました。
もちろん、みんなでまた作品を作るのは楽しみだったけれど、いざ会ったら、それぞれの雰囲気とか6人でいるときの空気感は変わっていなくて、感慨深さみたいなのは正直あまりなかったですね(笑)。でも、みんなを見て「あぁ、10年経ったんだな」とは思いました。
——それは例えば、どんなところで?
小澤:まぁ…見た目(笑)?
——いやいや!
小澤:自分のことはそれなりに、10年経ったらこのくらい歳とるわな〜って思うけど、みんな僕より歳下だから、余計に大人になったと感じるというか。でも、中身はいい意味でそんなに変わってなくてよかったです。
撮影中も当時のゴーカイジャーの楽屋にいるような気分でしたけど、実際に作品を見たら、ちょっと素が出てるというか、なんだか逆に楽屋にいるゴーカイジャーみたいな感じもありました(笑)。役と自分の境界線が曖昧になるくらいフィットしているって、僕だけじゃなくみんなも思っているんじゃないかな。
——デビュー作に近いような状況で、1年という長期の作品ですしね。
小澤:時は止まっていないけど、あの1年で形作られたみんなのフィーリングは、なかなか忘れないものなんだなって思いました。
——みんながバラバラになっているところから始まる、ある意味ゴーカイジャーらしいストーリーでしたが、脚本を読んでみていかがでしたか?
小澤:昔とつながりのあるストーリーがよかったというか、意味のあることだなって思いました。昔からのファンが喜んでくれるだろうなというのはもちろん、今回初めて「ゴーカイジャー」を観る人にも楽しんでもらえる話になっていると思います。
僕自身、50話近くある本編のシナリオを事細かには覚えていなかったので、新鮮な気持ちにもなれたし、「あぁ、ジョーとはこんな感じだったな」とか、「アイムとはこんな感じだったな」というのが蘇ってきて。自分たちもすごく楽しんで撮影できたし、その気持ちがすごくみんなに伝わるんじゃないかなっていう脚本でしたね。
——ファンが「これこれ!」と思うようなものを、ちゃんと散りばめてくれていますよね。
小澤:さすが当時「ゴーカイジャー」のメイン脚本家の荒川(稔久)さんと、パイロット監督の中澤(祥次郎)さんだなって。「ゴーカイジャー」の生みの親・育ての親みたいな存在ですからね。
——特報が出たときに、眼帯姿もすごく話題になっていました。
小澤:眼帯をするって聞いたときは、「まじで?顔半分映らないの!?」って思いました(笑)。ラストで眼帯の秘密が明かされますけど、「おぉ、そういうことするんだ(笑)」って、びっくりしましたね。
片目が見えないと遠近感がなくなるので、アクションはめっちゃ苦労したんですよ!途中でアクション用の眼帯を渡されて、「あるんかい!」ってなりましたけど(笑)。壁を蹴って決めるキックとか、かっこいいアクションもあるんですが、最初はうまくいかなくて…。最終的にはやれたので、やりたいことができてよかったです。
眼帯は「ゴーカイジャー」のチーフプロデューサーだった宇都宮(孝明)さんが、昔からやりたかったことらしくて。TVシリーズ中にできなかったことが今回実現できて、そういう思いを背負えたこともよかったです。
——スーツアクターさんもオリジナルメンバーですよね。
小澤:引退された方も含め、みなさんが揃ってくださって感動しましたね。(ゴーカイレッドのスーツアクターの)福沢博文さんは相変わらずかっこよかったです!俺の変身後をこんなにかっこよくしてくれてうれしいなぁって、その感覚も久しぶりでした。福沢さんがアクション監督になる前の、最後のレッドがマーベラスだったんですもんね(しみじみ)。
——福沢さんとはどんなお話をされたんですか?
小澤:「大丈夫だよ!」って、すごく言ってもらいました(笑)。撮影初日からクライマックスのシーンを撮ることになっていたので、心配もあったんですが、みんなが支えてくれて。特に福沢さんとは「こんな感じでしたっけ?」とかポーズについて相談させてもらったりして、不安をところを最初から助けてくださいました。
–{小澤亮太が“マーベラスを演じる上で強く持っていた部分”とは?}–
——TVシリーズが終わった後もマーベラスを何度か演じていらっしゃいますが、小澤さんの中のマーベラス像的なものは都度アップデートされているんですか?
小澤:直近で演じたマーベラスは、レッドを中心に集結したメンバーで坂本浩一監督が撮った『スーパー戦隊最強バトル!!』だったんですが、中澤監督の演出プランはまた全然違う感じで。つながっているような感じもありつつ、中澤監督のマーベラス像があって、どっちがいい悪いではなく、監督によって変わってくるものなんだなと思いましたね。
演じるのは自分なので、僕の中でマーベラス像として持っている強い部分もあるんですけど、中澤さんとやるとまたちょっとだけ違う面が引き出される…みたいなことはありました。間の長さとか、正直、すごく演じづらいと思うところもあったりしましたが、やっぱり中澤監督は自分の中でちゃんと画を持っていらっしゃるので、映像を見たら、すごく納得するというか、さすがだなと思いました。
——マーベラスを演じる上で強く持っていた部分というのは、例えばどんなところでしょう?
小澤:TVシリーズのときから、どうしてキャプテンと呼ばれるのかと考えていましたし、キャプテンと呼ばれるのに相応しい、貫禄のある姿を見せなくてはいけないと思っていました。余計なことはせずに、どしっと座る、どしっと会話をする。その周りでみんながわちゃわちゃしてくれて成立する、という役なので。動かずにしゃべったり、目だけで何かを表現したり、という芝居は今でも難しいなとは思いますね。それこそ、間が怖いタイプなので、脳内でどうしようって考えたりして…。
でも今回、年齢を重ねることで良さがより引き出される役なんだなと、改めて知ることができましたね。劇中でTVシリーズの映像も少し出てきたじゃないですか。当時はさわやかさもあったけど、僕は若いときより今の方が好きなんです。こっちの方が説得力があっていいなって。
——では、10年間振り返ってみて、ご自身が俳優として成長したと思うところを教えてください。
小澤:自分では一番わからないところですよね…。周りからはコミュニケーション能力が高くなったって言われました。そんなつもり全然なかったのに、昔は“近寄るなオーラ”が出てたってすごく言われるんです。今回の撮影中も「こんなにしゃべったの初めてだよ」って当時のスタッフさんに言われて、そうでしたっけ?って(笑)。入学式とかで友達ができないタイプなんですよ。3日後くらいに仲良くなるタイプ。
——話してみたら、いい奴だった的な感じですかね?
小澤:ざっくりいうと。そういうコミュ力的な部分は、大人になって磨かれたという
か、なんか、歳とってかまってちゃんになったのかなって(笑)。
——当時は、放っておかれても別に気にならなかったけど、今は変わってきた?
小澤:はい。あと、自分のことで手いっぱいだったんでしょうね。周りに目を配る余裕がなかったのかな、って。
——昔と比べて気持ちの余裕ができたのが、ひとつの成長かもしれませんね。
小澤:そうですね。やっぱり、いろいろと考えられるようになったことが多くて。この10年、いろんな役をやって、いろんな芝居をしてきたから、周りとコミュニケーションをとる余裕も生まれてきているのかなと思います。
——そんな成長した小澤さんから、当時のゴーカイジャーメンバーに対して何かメッセージをいただきたいです。
小澤:人生っていろいろあるじゃないですか。でも、みんないい意味ですごく変わらず、素敵だなって思いましたね。「大人になっても、みんな素敵ですよ」って言いたいですかね。
——あの頃は10年後集まって…なんて、想像もしていないですよね。それこそ「10 YEARS AFTER」シリーズもなかった頃ですし。
小澤:まったく思ってなかったですね。6人揃ってやれるかっていうのもあるじゃないですか。だから、まず、みんなでやれたのがすごくうれしかったですね。何かが欠けていたらこっちとしても複雑だし。そこは本当に、スタッフさんも含めみんなのおかげですよね。昔現場にいた方も多くて、すごく場に入りやすかったですし、ここがホームだなって思いましたね。
——では、せっかくなので10年後のビジョンについても教えてください。
小澤:渋い大人、余裕のある大人になりたいですね。
——自分の中では、余裕というのはまだ課題ですか?
小澤:まだ、いろいろとチャレンジですね。あと、アクションが好きなので、できる限り動いていきたいなとは思っています。今回もいっぱい動かしてくれってお願いしていたんです。「眼帯め〜!」とは思いましたけど(笑)、いろんなアクションができて、やっぱり楽しかったです。アクションを本職にしたいっていうことではないけど、動くことは昔から好きだったので常に動いていたいなって。10年後も動ける人でいるのが理想ですね。
——最後に、『機界戦隊ゼンカイジャー』に登場する、ゴーカイジャーに似たビジュアルのツーカイザーについてはどう思っていますか?
小澤:最初に見たときに「このキャラはなんだ?うちのクルー増えた?」って思ったんですけど、海賊版だと聞いて。いいんじゃないですか。「ありがとう、パクってくれて!」と思いましたね(笑)。
——そこは、「ありがとう」だったんですね(笑)。
小澤:違う形ではあるけど、蘇らせてくれてうれしかったです。ちょうど、友達の子供が「ゼンカイジャー」を観ている世代なので、「これ、お前?」って結構連絡が来ましたよ(笑)。10年前の作品のことを今、そうやっていじってもらえるのもうれしいですよね。今回の作品のタイミングもちょうどよかったですし。いつか、映画なんかでご一緒できたら楽しそうだなと思います。
(撮影:冨永智子、取材・文:大谷和美)