2021年10月15日より放送がスタートした、田中圭主演ドラマ「らせんの迷宮 〜DNA科学捜査〜」。
本作がゴールデン帯初主演となる田中圭。「DNAは嘘をつかない」が口癖の天才遺伝子科学者・神保仁を演じる。初共演となる安田顕は、事件解決のため神保とバディを組む熱血刑事・安堂源次役。難事件に挑むミステリードラマとしてはもちろんのこと、その陰で蠢く人間模様を楽しむヒューマンドラマとしても楽しめる。
cinemas PLUSでは毎話公式ライターが感想を記しているが、本記事ではそれらの記事を集約。1記事で全話の感想を読むことができる。
もくじ
第1話ストーリー&レビュー
第1話のストーリー
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都内で、遺体に「X」の痕跡を遺す殺人事件が発生する。事件を担当するはずだった刑事・安堂源次(安田顕)は捜査から外された。かつて自身の妻が被害者となった連続殺人と同じ犯人の可能性が高いからだ。
そこで捜査本部には内密に、天才科学者と云われる神保仁(田中圭)に捜査の協力を要請する。事件の解決に全く興味を示さない神保。何よりその奇想天外な行動と言動に源次は振り回される。
しかし徐々に息の合い始める二人。そして二人の孤独なDNA捜査は、捜査本部も気づかなかった「ある痕跡」を見出す。そんな中、「殺人鬼X」による更なる殺人が起きてしまう…。
第1話レビュー
クセモノ刑事から天才遺伝子科学者までーー田中圭は、演じる幅が広い。
田中圭が今回演じるのは「DNAは嘘をつかない」が口癖で、32億個の遺伝子配列を記憶しているという天才遺伝子科学者・神保仁役だ。相棒となるのは安田顕演じる熱血刑事・安堂源次。
第1話の事件は、安堂の妻も犠牲となった「殺人鬼X」による連続殺人事件。安堂は別の事件を捜査する中で、神保と出会う。その優秀さを警視庁科学捜査研究所所員の乱原から聞き、事件解決の協力を仰ぐ。
研究に夢中で、非科学的なことは信じない神保と、昭和の刑事気質で勘と人情を大事にする安堂。当然最初は反発し合うが、次第に信頼感を築いていく。
さて、神保は天才科学者らしく、変人だ。趣味は個人的なデータベースを作成すること、DNA研究が最優先事項で、常軌を逸した行動を取り、周りを驚かせる。安堂と一緒にいるときもことあるごとに「DNAが……」と言って苛立たせていた。甘いものが好きなのは脳が求めているからだろうか。
変人は変人であるけれど、それをキュートに演じるのが田中圭である。専門用語を連発し、冷静に事件を分析していく。淡々としているのに冷たい印象にはならず、常に「丸さ」がある。人当たりもよく、安堂の娘ともあっという間に仲良くなってしまう。
いかに「天才です」な顔をしていると、犯人も警戒するだろうしなあ、などと考えると、実は神保、刑事の相棒としては適任なのでは?
一方、いかにも「刑事」なのが安堂だ。「刑事の勘」を信じ、犯人に自供させるために、田舎から犯人の両親を呼び寄せる。「故郷のおふくろさんも泣いてるぜ」なんてシーンを令和に実現させてしまう。使っている携帯電話もガラケー、パソコンも使えない。そんな安堂だが、神保の話を聞いているうちに、次第にDNAの優秀さに納得せざるを得なくなっていく。
すでにDNA鑑定は刑事ドラマなどでは定番。それをどのように活かしていくのかと思っていたが、DNAで本人の性格がわかる、神保が制作したDNAマップで犯人の行動範囲を特定するなどといった手法を手に入れている。
とりあえず1話を観ていると、DNAは嘘をつかないし、犯人特定に有効な手段であることは再認識させられた。今後そのDNAがどのように物語に活かされていくのか。第2話以降も注目したい。
※この記事は「らせんの迷宮 〜DNA科学捜査〜」の各話を1つにまとめたものです。
–{第2話ストーリー&レビュー}–
第2話ストーリー&レビュー
第2話のストーリー
安堂源次(安田顕)は娘の瑞希(古川凛)に「DNA婚活パーティ」を勧められ、嫌々ながらも乱原流奈(倉科カナ)と参加することに。会場にはなぜか神保仁(田中圭)の姿が。恋愛遺伝子の研究のために特別に見学させてもらっているという。
パーティではDNA分析がきっかけで結婚した相性98%の遠山友蔵(笹野高史)・鮎子(中越典子)夫妻がゲストとして登場。仲の良さを見せつけるが、数時間後、鮎子は何者かに殺害されてしまう――。
第2話のレビュー
DNAの相性で結婚相手が見つかるのは運命なのか、味気ないものなのか。
今回の舞台はDNA婚活パーティー。安堂(安田顕)は娘の瑞希に勧められ、乱原(倉科カナ)と共に参加することに(ショートヘアになった乱原さんもかわいい!)。そしてそこには、恋愛遺伝子の研究のため見学しに来た神保がいた。
DNA婚活なんて……と言いながらも、DNA分析相性98%の遠山夫妻に感銘を受けてしまうあたり、安堂らしい。しかし、神保は「匂いがどうだったか」「尿とか汗とか?」などと場に似つかわしくない単語を繰り出し、夫妻の顔をしかめさせてしまう。
田中圭が言うとあまりカドが立たないが、現実の婚活パーティーでそんなことを言ったら絶対にアウトだからな!
たぶん、神保はまだ恋愛をわかっていない。「恋愛遺伝子で最適の結婚相手が見つかる」と証明されたら、言い寄ってくる女性の遺伝子を元にすべての結論を出してしまいそうである。
そんな中で、妻の遠山鮎子(中越典子)が何者かに殺されてしまい……。
DNA婚活パーティーから始まり、遺産相続を巡る骨肉の争い、家政婦からの恨み、そして後妻業。全部盛りと言っても過言ではないほどに濃ゆい第2話。
相変わらず、安堂は勘で動こうとする。関係者それぞれの証言によってコロコロと動きすぎではないだろうか。その傍らで、神保はせっせとDNAによる問題解決を進めていく。
やはり現場のどこかしらにはDNAが残っていて、現場のDNAを犯人が持ち帰っている可能性もある。DNAがあれば、警察は無敵なのでは? と思ってしまうが、全国民のDNAデータがあるわけではないので、そうもいかない。
となると、やはり犯人の当たりをつけるためには、捜査を積みかさねていかないといけないわけで……安堂だけではダメだし、神保だけでも足りない。うまい具合にバランスが取れている。
神保が捜査に協力的なのは、さまざまなDNA研究に現場が役立ちそうと判断したからのように思う。
今回も、DNA婚活パーティーに刺激されて、ラストには安堂や乱原たちのDNA相性診断結果を出していた。DNAの研究には、マメな情報整理と、思いついたら即実行の行動力が必要なのかもしれない。
そして、DNAの相性診断では神保と安堂は98%のマッチ率……。
神保が甘いものを食べている目の前で安堂がカレーを食べているところからも、ふたりの性格が正反対なのは火を見るよりも明らかなのだが。
相棒としての相性の良さをさらりと第2話で出してくるあたり、ニクイ。この結果を見たとき、安堂よりも神保がどのような感想を抱いたのか気になるところだ。
※この記事は「らせんの迷宮 〜DNA科学捜査〜」の各話を1つにまとめたものです。
–{第3話ストーリー&レビュー}–
第3話ストーリー&レビュー
第3話のストーリー
安堂源次(安田顕)は公園で「人が死んでいた」という目撃情報から、警察官・松木宏(須賀健太)と現場へ向かうがそこに死体はなく、酔っぱらいの見間違いと判断。翌日、血の海と化したアパートの一室が発見される。しかし死体も、運び出した痕跡もない…。
死体が消える難事件に困った源次は神保仁(田中圭)に助けを求める。被害者は赤島典子(徳永えり)。髪の毛と血液のDNAが一致した。しかし神保は出血量が多過ぎる点に目を付け…。
第3話のレビュー
安堂さんが神保さんの扱いを心得てきた感がほっこりする。
血の海と化したアパートの一室。しかし、死体はなく、死体が運び出された形跡もない。被害者は赤島典子と推定されるが……。
困った安堂は神保に協力を依頼。読まなければいけない論文があるからと一度は断るが、安堂に煽られて結局は現場に向かう。DNA研究にできないことがあると言われるのは嫌な神保、本当にDNAにまっしぐらすぎる。
捜査線上に上がってきたのは警察官の松木。実は安堂、「公園で人が死んでいる」と目撃情報を受けた際、松木と一緒に現場に行っていたのだ。次第に、松木が犯人ではないか、という証拠が積み重なっていく。それも、赤島だけではなく、公園で目撃された事件についても松木に容疑がかかる。
しかし、神保はアパートにあった血の量が多すぎると疑問を抱く。確かめたいことがあるとカフェ「ゲ吞ム」を飛び出した神保。走り方かわいいのに意外と足が速いのはなんなんだ……。
DNAでモンタージュ写真を作成するとか、本当に究極の個人情報すぎる。何も悪いことができない。おまけに、血液の劣化具合も分析できるとか。これらが今回の事件を解決する鍵になる。
神保が疑問を抱くきっかけになったのは血の量。被害者の体重に対して、血液の量が多すぎる。冒頭で、「人間をぞうきんみたいにして血液を絞れるのか」という神保のトンデモ発言があった。これが伏線のひとつになっている。実は赤島が殺されたと偽装するため、時間をかけて採血をし、それで部屋を汚したのだ。
殺されたと偽装しなければならなかったのは、赤島が夫のDVから逃れるためだった。
夫は医師。DVでできた傷は夫の病院で治療するので、DVの証明となる診断書は書いてもらえない。DVの被害届を出しても、夫の父親によってつぶされてしまう。逃げ場がなくなった赤島にはこうするしかなかった。
一方、松木は過去にストーカー被害を訴えてきた女性を助けられず、ずっと悔やんで生きてきていた。互いの心と体を救うために、2人は協力し合っていたのだ。
赤島の夫が諸悪の根源でしかないのだが、どうにも救われない人がたくさんいるであろうことが察せられて辛い。松木は警察官としては方法を間違えたかもしれない。けれど、ひとりの人間を救いたい、守りたいという気持ちは報われてほしいと思ってしまう。
松木演じる須賀健太さんの犯行告白のシーンは、無念さがにじみながらもどこか救済された安堵も感じられて個人的にはとても好きだ。
そして今回も事件解決に貢献した神保。おいしいスイーツをたくさん食べてほしい。神保がおいしそうに食べるものだから、ドラマのあとにデザートを食べたくなるのが難である。
※この記事は「らせんの迷宮 〜DNA科学捜査〜」の各話を1つにまとめたものです。
–{第4話ストーリー&レビュー}–
第4話ストーリー&レビュー
第4話のストーリー
神保仁(田中圭)は病院で患者・白石美雪(稲垣来泉)と出会う。有名ピアニストの父・涼平(松尾諭)と美人の母・由紀子(紺野まひる)の一人娘で幸せそうに見えたが、「天才の遺伝子」という言葉で落ち込んでしまい……。
一方、安堂源次(安田顕)は、花屋の店主・斎藤正弘(東根作寿英)の刺殺事件現場で「娘を誘拐した。1億円を出せ」と書かれた脅迫状を発見。誘拐されたのは美雪で、神保と源次が誘拐犯を追うと、衝撃事実が……!?
第4話のレビュー
新聞の文字を切り抜き、脅迫状を作っている男の手元。「おいおいそれじゃあ遺伝子情報残りまくりだよ!!」とツッコミを入れてしまう程度には、神保先生に影響を受けている。
殺人事件と、天才ピアニスト・白石涼平(松尾諭)の娘・美雪(稲垣来泉)の誘拐事件が絶妙に絡み合う今回。殺人事件現場で脅迫状の文面が見つかり、誘拐事件も同時発生していることが発覚する。殺された男・斎藤(東根作寿英)は誘拐犯で、斎藤と白石夫妻は大学のサークルの同期という関係性。しかも、涼平の妻・由紀子(紺野まひる)を巡って三角関係にあって……。
とにかく殺された(誘拐犯でもある)斎藤がクズofクズである。同窓会で再会した由紀子に薬を飲ませ、ホテルに連れ込む。その後、由紀子は妊娠。生まれてきた娘・美雪が涼平の子であってほしいと願うが、美雪の病気が発覚し、血液型が判明したことで斎藤の子だったことがわかる。
それを知った斎藤は「美雪に会わせろ」というだけではなく、誘拐の提案をし……胸糞が悪くなるクズ男である。
由紀子は今の家庭が壊れることを恐れ、斎藤の提案を受け入れる。しかし、由紀子と斎藤が会っていることを涼平が知ってしまい……。
由紀子も涼平も美雪のことが大切なはずなのに、斎藤に引っ掻き回されたせいで、見失ってしまっていた印象。妻が浮気をしているかもしれないという疑惑から、美雪と血がつながっていないこと、そして、その美雪が監禁されていたこと。衝撃的な情報が多すぎて、涼平に同情してしまう。
由紀子にも何か他に方法があったのではないか、と思う。しかし、自分がその立場に立ってみたらーーと考えると、あまりにおぞましい犯罪で何も考えられなくなる。とにかく斎藤が信じられないほどの悪。
「らせんの迷宮」に出てくる悪役は振り切った悪が多くて、ナチュラルに腹が立ってしまう。そして被害者になっていることが多い。なんでこんなヤツのために苦しんでいた人が罪を犯さなければならんのだ! と歯痒く思ってしまう。
そんな中でも、和むパートは神保と美雪との交流だ。神保先生、意外と子どもとの対話が上手……。子どもにも分かるように遺伝子の説明をしてあげたり、ちゃんと目線を合わせて話してあげるところが、なんとも和む……。
積極的に捜査に協力する神保。安堂から「先生も人間だな」と言われ、神保は「美雪との話が途中だったから」と答えていた。神保の真面目すぎるところ、誠実なところが出ていてとても良かった。
そして今回はスイーツタイムが短いな、と思ったら、神保特製の甘いドリンクが出てきていた。抜かりない。良い。
※この記事は「らせんの迷宮 〜DNA科学捜査〜」の各話を1つにまとめたものです。
–{第5話ストーリー&レビュー}–
第5話ストーリー&レビュー
第5話のストーリー
雑木林で死後3年が経過した白骨遺体が発見される。中から極小のチューブが見つかり、そこに3滴の血痕がついた布片が! 安堂源次(安田顕)は白骨に遺された奇妙なダイイングメッセージの謎を解明して欲しいと、神保仁(田中圭)に協力を依頼。
源次は、犯人にバレないように飲み込んだ“白骨の遺言”ではないかと考えていた。白骨遺体は失踪した澤井百合子(若月佑美)と判明し、捜査線上に天才女性科学者(矢田亜希子)が上がる。
第5話のレビュー
人間は自分のために他人の命を奪える生き物なのだなあ、などと考えてしまった。
今回の安堂刑事と神保さんが解き明かすのは、白骨遺体の中に隠されたダイイングメッセージ。3滴の血痕がついた布片が小さなチューブに入って、白骨遺体に残っていたのだ。ギリギリの命の中で伝えようとしたメッセージ……。被害者のそんな必死の訴えを安堂がないがしろにするはずがないし、忙しいと言いつつも神保も興味を惹かれて協力をする。
捜査線上に上がってきたのは大手製薬会社に勤める天才科学者の下村まどか(矢田亜希子)。ノーベル賞候補とも言われているまどかは警視庁科学捜査研究所・乱原(倉科カナ)の憧れの人でもあった。
白骨遺体として見つかったのは、まどかの右腕として支える研究員の澤井百合子だった。早々にまどかを疑う神保。女性ながら、第一線で活躍するまどかに憧れている乱原は、珍しく神保に猛反発をする。だからと言って、それで神保が引き下がるはずもない。口調が尖ることもないが、穏やかに有無を言わせない神保の圧よ……。
しかし、国からも期待されているまどか。なんと厚労省から神保を捜査から外すように圧力がかかってしまう。
圧力がかかるのはまどかに「何か」あるということだ。
当然、安堂は突っぱねようとするが、そのせいで神保の今後の研究に影響が出るのはやぶさかではない。手を引くように説得を試みる。神保を誘い出す口実がパフェっていうのがかわいい。が、厚労省の圧力がかかったとて、神保は気にした様子もない。研究はどこででもできる、と言って神保は引き下がらなかった。
事件を解決したい、という気持ちももちろんあったのだろうが、それ以上に、副作用として発がんリスクがある薬を世に出すことが研究者として見過ごせなかったのかもしれない。可能性が低いからといって、薬を承認させようとしているまどかのことも。
女性というだけで研究者として見くびられることに憤りを感じ、自分の実力を世にしらしめるいい機会だった。が、危険性があるものを世に出すだけでなく、そのために大切な命を奪った。許されることではない。
まどかがやったことは許されることではない。そこまで追い詰められてしまう現状の問題もある。毎回、差し込まれる殺人が起こった原因となる社会的問題が重い。でも、本来、殺人が起こるのは何かがいびつになった結果なのであるから当然のことなのかもしれない。神保が行っているDNAの研究だって、殺人犯を捕まえるためだけのものであるはずがないのだから。
※この記事は「らせんの迷宮 〜DNA科学捜査〜」の各話を1つにまとめたものです。
–{第6話ストーリー&レビュー}–
第6話ストーリー&レビュー
第6話のストーリー
神保仁(田中圭)は恩師・静原博史(山田明郷)の誘いで安堂源次(安田顕)と研究所を訪れる。そこには大学の同窓生の科学者、槇村明良(高橋光臣)、山富高明(小松利昌)、田丸哲也(柏原収史)、緋山香菜子(橋本マナミ)の姿も……。突然、彼らはフグ毒を打たれ密室に監禁されてしまう。
静原の狙いは、8年前の娘・沙也香(朝倉あき)殺害事件の犯人を見つけることにあった。裏切り者は誰!? 生死を掛けた天才達のDNA捜査が始まる!
第6話のレビュー
今までよりも圧倒的に緊迫した展開だった。
恩師・静原の誘いで大学の同窓会に訪れた神保。そこに安堂を伴うって……仲良しだな! 神保ってあまり人に心を開くタイプには見えないけれど、ここまでで心を開いていく過程が描かれているのでほっこりする。
……が今回はちょっと様子が違う。同窓生の科学者たちが集って思い出話をするのかと思いきや、静原のたくらみでフグ毒を打たれて監禁されてしまう。穏やかじゃない。
静原の目的は、8年前、娘・沙也香を殺した犯人を見つけ出すこと。犯人として疑われているのは神保の同窓生たち。その中で、かつての神保のパートナーである槇村だけは静原の協力者として犯人を捜す立場へと回っている。神保はこれまでの事件解決の貢献があるから槇村に協力するように言われる。
毒を打って監禁。解毒剤が欲しければ協力しろ、ということである。もちろん、神保からするとこんなことは承服できるはずがない。とは言え、協力しなければ犯人はいつまで経ってもわからない。結果、同窓生、そして巻き込まれる形となった安堂の命も危険にさらすことになる。それも神保にとっては納得ができるはずがない。えっ、めちゃくちゃ卑怯である……。
一方、安堂もおとなしくはしていない。同窓生たちから事件の経緯などを聞き、解決の糸口を探ろうとする。
それぞれが抱えていた問題などが露呈する。
科学者としての限界、嫉妬……何も分からない立場からすると、科学者って努力と勉強をひたすら重ねていくことで開けるものがあるのかと思っていた。が、ここにもセンスというものが必要らしい。
また科学者にもタイプがあるようで、槇村はひらめきタイプ。神保はコツコツと実験とデータを積み重ねていくタイプ……など。
同窓生からしたら、活躍している神保は科学者としてものすごくセンスがある部類に入るのかもしれない。
想像力も必要そうだし……。
前回もそうだけれど、知らない世界の競争や、そこでどんな屈託を抱えることになるのか。
興味深いけれど、そこにはさまざまな業界に通じる人間臭さがある。
そして、今回の事件も神保が予測とデータを積み重ねていくことで真犯人を導き出す。犯人は、槇村。一番犯人っぽくない立ち位置で確かに怪しかったけれども……。
怒りを爆発させた静原は、槇村を刺す。逃げる槇村を追いかけ、研究室に鍵をかけ、爆破をする。過激だ……。
全話通して、神保が一番感情をむき出しにしていた回だった。最終回では「天才科学者、闇に落ちる!?」という煽りが。一体どのようなラストを迎えるのか……(不謹慎かもしれないが闇に落ちた田中圭さん見たすぎる)。
※この記事は「らせんの迷宮 〜DNA科学捜査〜」の各話を1つにまとめたものです。
–{第7話ストーリー&レビュー}–
第7話ストーリー&レビュー
第7話のストーリー
静原博史(山田明郷)は槇村明良(高橋光臣)を殺そうと研究室を爆破。発見された焼死体のDNA鑑定と防犯カメラの映像から、遺体は槇村で静原が逃亡したと判明。静原の逃亡先を探して神保仁(田中圭)と安堂源次(安田顕)はある場所を訪ねる。
そこへ静原から神保に「世界終焉の研究」の協力要請が入り、神保は源次と袂を分かち単独行動に出る!源次は乱原から死体からもう一つ、2つのDNAが検出されたと衝撃の報告を受け……!?
第7話のレビュー
神保先生は、やっぱり筋が通った人だった。
娘の沙也香を殺した槇村に憎しみをぶつけ、殺害した静原。そのまま現場からは逃亡……したかのように思われた。が、実は殺されたのは槇村ではなく、静原だったことが、DNAによって明らかになる。
白血病を患っていた静原にドナーだった槇村の骨髄を移植。ドナーの槇村のDNAを静原も保有することになったために、本当の被害者が分からなくなっていたのだ。
静原から神保へ「巻き込んですまない」とメールが。しかし、神保の力を貸してほしい、とも。そんなメールに、神保は「もうお芝居はやめにしませんか」と返信をする。
最大の謎は、槇村がなぜ沙也香を殺したのか。そして、槇村が成し遂げようとしていることは何か。
槇村は死んだ沙也香をクローンとしてよみがえらせようとしていた。すでにクローン胚はできているが、研究室に残したまま。それを神保に取りに行かせるのが目的だった。おまけに安堂の娘、瑞希を人質にして。
神保が闇落ちして槇村に協力したように見えたが、実は瑞希を助けるためだったのだ。
神保は「人間のクローンを生み出すのは禁忌」ときっぱりと言い切っていた。研究のために周りが見えなくなることはあるけれど、神保の中には越えてはならない線がきちんとあるのだ。そして、それを越える行為は研究者としての誇りを捨てるにも等しいことではないのか。
そもそも、槇村の行為は同情の余地がない。神保が槇村を助ける理由がないのだ。
沙也香の研究者としての飛躍を喜ばず、神保と愛し合っているのだと勘違いしてもみ合った結果、死なせてしまう。そして「愛しているから」を言い訳に、彼女のクローンを生み出し、2人で暮らしていきたい、とはなんと身勝手なことか。
「科学はどんなに発達しても、命の数は変わらない。だから尊いんです」と静かに、でも熱を込めて神保は言った。槇村の行為は命への冒涜でしかない。
神保にとって沙也香は大事な研究者としての同志だったというだけではなく、幼い頃の自分の心を救ってくれた人だったことが明らかになった。その人を殺され、亡くなったあとも命を弄ぶような行動をとられた。
もっと、神保は怒ってもいいのかもしれない。しかし、きっと冷静さを欠くことは非効率的であり、怒りは何も解決しない。……と、どこかで研究者としての自分が抑え込んでいたのかもしれない。
槇村は、何度も神保のことを「パートナー」と言っていた。そんな中で見せた安堂との連携。どこか孤独だった神保は味方を手に入れた。安堂は頭で行動するというよりは、義理と人情で動く、ある種非効率的な人間だ。だが、そんな人こそ、神保にとっては一番必要な存在だったのかもしれない。
ふたりのバディ感がとてもよかったので続編を希望したいところだ。
とは言え、ラストの神保先生が笑顔はプライスレス。いつまでも2人がどこかで良いバディであり続けることを願ってやまない。
※この記事は「らせんの迷宮 〜DNA科学捜査〜」の各話を1つにまとめたものです。
(文:シネマズ編集部)
–{「らせんの迷宮 〜DNA科学捜査〜」作品情報}–
「らせんの迷宮 〜DNA科学捜査〜」作品情報
田中圭ゴールデン帯初主演!安田顕との初共演が実現。
天才科学者&熱血刑事で、難事件に挑む!
出演:
田中圭、安田顕
倉科カナ、中田圭祐、渡辺いっけい、松坂慶子
原作:
作:夏緑 画:菊田洋之
『らせんの迷宮―遺伝子捜査―』(小学館)
脚本:
黒岩勉
酒井雅秋
福田哲平
主題歌:
TOMORROW X TOGETHER「Ito」(Republic Records)
BTS「Stay Gold」(Def Jam Recordings)
プロデュース:
濱谷晃一(テレビ東京)
山鹿達也(テレビ東京)
北川俊樹(テレビ東京)
尾上貴洋(AX-ON)
柴田裕基(AX-ON)
製作:
テレビ東京 AX-ON