シーズン20作目となる「相棒」が、2021年10月13日(水)にスタートした。
水谷豊演じる杉下右京と、反町隆史演じる冠城亘によるタッグは今作で7シーズン目に突入。
前作「相棒 season19」で全4話に連なって描かれた壮大な事件の闇がついに明かされ、冠城逮捕という衝撃の幕開けに。
cinemas PLUSでは毎話公式ライターが感想を記しているが、本記事ではそれらの記事を集約。1記事で全話の感想を読むことができる。
もくじ
第1話レビュー
「相棒」シーズン20がスタート。しかし、初回からなんとも穏やかではない。シーズン19の最後に「必ず悪事を暴いてみせる」と右京が宣戦布告した因縁の相手・官房長官の鶴田が敵として立ちふさがる。
前シーズン、IT長者・加西周明殺害を主導しながらも、愛人関係にあった柾庸子が「私の一存でやった」と自白したために罪を免れた鶴田。「こてまり」にやってきた彼は、庸子が拘置所で自殺したことを右京たちに告げる。
庸子の自殺を知って様々な反応を見せる警視庁の面々。「罪を償わずして死ぬなんてのはいかん」としつつも、先を思うとつらかったのでは…と理解を示したのは「ヒマかっ?」でおなじみ組対五課の角田課長。ふざけることも多いが実はこのように優しい角田。「相棒」キャストの中では特にまっとうな人柄だといつも思う。一方「口封じだな」と物騒に言い放ったのはサイバーセキュリティ対策本部の青木。相変わらずの生意気さで、こちらも初回からある意味平常運転だ。
そして、庸子の突然の死に納得いかない人物が1人いた。元弁護士・中郷都々子だ。彼女は加西の持ち物である鍵を弁護士事務所から盗み出し、「調べてほしい」と右京と冠城に託す。
しかし、この鍵のせいで思わぬ災難到来。冠城に鍵の窃盗容疑がかかり、監察官の大河内と伊丹、芹沢、出雲ら捜査一課の3人、そして青木が揃って罪を咎めにやってくる。犯人は都々子のはずなのになぜか冠城が鍵を盗んでいる映像が出てきて、しかもフェイク判定は出なかったらしい。
冠城が動けなくなる中、単独で都々子と会う右京。「つかまえる…よね?」「抱かれれば見逃すとか?」とフラッパーな態度をとる都々子に、「君はどこかのネジが1本緩んでいるような気がします」と冷静に諭すのがなんとも右京らしい。そして、右京は都々子から加西が鍵を「切り札」だと口にしていたことを聞きだす。
一方、冠城は伊丹ら捜査一課による取り調べを受けていた。
黙秘を貫く冠城だったが、そこへ右京が現れて「ただちに罪を認めてとっとと拘置所へ行きなさい!そして、君は君のすべきことをなさい!」と怒鳴りつける。それを受けて罪を認める冠城。明らかに連携プレーなのが見てとれた。拘置所へ行って何か掴んで来い…という右京のメッセージ。それを冠城もすぐ理解した様子。長年コンビを組んでいる二人がツーカーになっているのを感じさせる場面だった。これぞ“相棒”だ。
その後、警察庁長官官房付の甲斐峯秋と警視庁総務部広報課長の社美彌子も右京の元へやってくる。どうやら甲斐の部下(=冠城)が犯罪者というスキャンダル記事が出てしまうらしい。事態はどんどん悪化していくが、もちろん右京は捜査をやめる気はなし。そして、不起訴で戻ってきた冠城は、庸子があわただしく拘置所内の病院に運ばれていたらしい…という情報を掴んでくる。死んだときの状況を見る限り蘇生の見込みはないのに、なぜ急いで運び込まねばいけなかったのか…と疑問に思う右京たち。
そして、右京と冠城は改めて都々子の元を訊ねる。しかし、彼らが見つけたのは自室で亡くなっている彼女の姿だった。
庸子の自殺、冠城の窃盗容疑、そして、都々子の死。次々と不可解なことが起こったが、女性たちの死はやはり“口封じ”なのだろうか? そして、要所要所で現れる不思議な笑顔を浮かべた女性。彼女は一体何者なのか? 謎が多いまま第1話は幕を閉じた。
強力な敵を相手にするハードなストーリーの中、レギュラーや準レギュラーが多数登場。新たなシーズンの幕開けらしい見応え十分の初回だった。また久々に登場した元官房長官・朱雀が「亀山」「小野田」の名を口にしたのが非常に心に残った。初代相棒・亀山薫と特命係の後ろ盾だった小野田公顕。活躍していたのは何年も前のことだが、彼らの名前はいまでも決して色あせることなく「相棒」ファンの心に残っている。だからこそ、劇中で名前を聞けたのがとても嬉しかった。
国家権力を持ち残忍なことも平気でやってのける鶴田の悪事を暴くため、果たして右京と冠城はどう戦うのだろうか? 早くも続きが気になるところである。
※この記事は「相棒 season20」の各話を1つにまとめたものです。
–{第2話レビュー}–
第2話レビュー
自室で亡くなっていた中郷都々子は自殺だとみなされてしまう。さらに、冠城の早すぎる不起訴は甲斐峯秋の圧力によるものだという記事が出てくる。度重なる問題から、冠城は内村刑事部長に「場合によっては免職」とまで言われて、右京たちはどんどん追い込まれていく。
とはいえ、もはや勝負から降りる気などない特命係。右京と冠城は柾庸子と都々子の相次ぐ死の背後に鶴田がいるに違いない…と考える。そんな中、都々子の遺体から筋弛緩作用のある毒が検出。他殺の可能性が強くなった。
都々子の直感にかけてみようと思う…と言い出す右京。実は彼は都々子が盗んだ例の鍵を鑑識の棚から拝借して、自分たちの手元に戻していた。褒められたことではないが、これぞ杉下右京。事件解決のためなら時にルール違反すれすれのこともやってのける。彼は昔からそうだ。
青木も巻き込んで捜査に乗り出す右京たち。文句たらたらの青木だったが、すでにどこの鍵かをしっかりと調べ上げていた。なんだかんだで優秀な人材ではある。鍵は加西が所持していた幽霊ビルのもの。右京たちはビルを探索してモニターが並ぶ怪しい部屋を見つけだす。さらに、一人の男に出くわして冠城が彼を捕獲した。
そうした中、またも女性の遺体が発見される。先週不思議な微笑みを浮かべていたあの女性だ。そして、遺体の身元確認に呼ばれたのは鶴田と通じている内閣情報官・栗橋。遺体が所持していた携帯電話に彼の電話番号だけが登録されていたのだ。そして、冠城がビルで捕まえた男・鷲見の携帯にも栗橋からの着信が響いた。
亡くなった女性の所持品を調べた右京は、都々子の部屋の鍵があったことから彼女こそ都々子殺害の犯人だとにらむ。さらに、この女性が加西殺しの犯人らしきこともわかった。そして、鷲見は柾庸子の遺体が保管されていた病院で法務省の職員を騙った人物。鶴田の指示及び栗橋の差し金でこの二人が動いていた…ということらしい。しかし、当の栗橋は「指示などなくても必要なことはやる」と鶴田の関与を否定。また、鷲見は鶴田の圧力で釈放されてしまった。
鶴田という男はどこまで狡猾なのだろうか。右京たちが追い詰めるたびにするりとその罠から自分だけ抜けていくようで、いったいどう切り崩せばいいのか…と見ているこちらも頭を抱えたくなった。とはいえ、特命係の二人は決してあきらめていないし、気づけば捜査一課の3人もやる気になっている。伊丹たちとお茶しながら頭を悩ませる右京と冠城を見て、「力を合わせて頑張って…」と思わず応援したくなった。日ごろ何かと対立しがちだが、特命係も伊丹たちもみな悪質な犯罪者を許さない刑事たち。手を組んだら大きな力になるに違いないのだから、ぜひとも一緒に立ち向かっていってほしい。
そして、ラストにもう一人強力な味方がやってきた。青木だ。実は彼は加西のビルのあの部屋にあったパソコンを遠隔操作できるよう仕掛けていた。えらそうで生意気で何かにつけて自分の手柄を誇示したがり、性格に相当な難ありの彼だが、仕事にぬかりがないのはさすがである(それがまた鼻につくといえばつくのだけれど…)。
VRゴーグルをつけて加西のパソコンの仮想現実世界へ足を踏み入れる右京たち。果たして、今度こそ切り札を見つけることができるのか?
※この記事は「相棒 season20」の各話を1つにまとめたものです。
–{第3話レビュー}–
第3話レビュー
「よく来たな、加西周明の館へ」
加西が残した仮想世界へやってきた右京、冠城、青木の3人。そこはまるでRPGのような世界観。西洋風の館に忍者姿で乗り込む右京たちがなんともミスマッチだ。「まぬけすぎないか?」と突っ込んだ冠城の気持ちがよくわかる。
そんな冠城に対し、相変わらず偉そうな青木は「俺は忍法だって使えるぞ」と右京に姿を変えてみせる。まるで悪ノリしている子どものようだが、この世界で音声などまでも変えられるように彼が仕込んだらしい。憎たらしいがやはり優秀だ。
一方、栗橋の取り調べを続ける伊丹たち。しかし、栗橋は黙秘を貫く。そして彼の後任として内閣情報官に任命されたのは、なんと社美彌子だった。特命係の動きを鶴田サイドに流しつつも特命係に有益な情報をもたらす彼女。もしや二重スパイ?と疑う右京たち。しかし、当の美彌子はやんわりと受け流すのみ。昔から何を考えているかどうにもわかりにくい彼女。今回もその真意が最後まで謎だったように思う。
その後再び仮想世界に侵入する右京たち。同じく仮想世界を訪れた鶴田たちと直接対決する。
仮想世界で鶴田たちの前に現れたのは死んだはずの柾庸子と加西、そして、右京と冠城。実は柾庸子は死んではいなかった。仮死状態になって自殺と見せかけて、新しい戸籍を受けとって別人になろうとしていたのだった。もちろん鶴田の差し金。以前、日本にはない証人保護プログラムを起動させてある人物を別人に生まれ変わらせた小野田公顕。小野田を手本にしているという鶴田は、同じ手を使って加西殺しの罪を被った庸子に新しい人生を与えようとしたのだった。
さらに、その場で一同が耳にしたのは鶴田と加西の会話。国民のスマホやメールを盗み見する国民監視の陣頭指揮を鶴田がとっている…という恐ろしい内容である。次々に悪事をばらされて逆上する鶴田。目の前にいる加西は警察関係者だろうと見抜くが、実は加西に扮していたのは右京だった。右京のふりをしていたのは青木。しかし、庸子だけは庸子のままだ。そして、「警視庁へ出頭願えますか」という右京の申し出を鶴田は拒否。仮想現実を消滅させてしまう。
そのまま立ち去ろうとする鶴田たちだったが、伊丹たちが立ちふさがる。柾庸子を逃がした件を咎められてもとりあわない鶴田。しかし、出雲が庸子本人が証言したと言い放つ。仮想世界で「誰だ」と問われて「あたしはあたしです」と言った庸子。パリにいる彼女の部屋にはVRゴーグルがあり、本当に本人だったらしい。
そして、改めて例の幽霊ビルを調べる右京たち。仮想現実の館の見取り図を見て、バーチャルの館はこれほどの広さがあったのか…?と、右京は不思議に思う。
その後、右京と冠城は鶴田の元へ赴く。そこで、中郷都々子と女性の殺し屋の死に関する真実を右京が明らかにした。殺し屋を殺害したのは柾庸子だった。
都々子と姉妹のような関係で彼女の部屋の合鍵を持っていた庸子。都々子の家から殺し屋が出てくるのを目撃し、中に入って都々子の遺体を発見。自身が通報するわけにいかず、遺体が痛むのを防ぐために冷房をつけ、早く発見されるよう鍵をかけないで部屋を出た。そして、殺し屋を自らの手で葬りさったのだった。
ここまで来てなお「みんな勝手に俺の気持ちを推しはかってやったことだ」と罪を認めない鶴田。ついに右京たちは最後のカードを切った。冠城がスマホで音声を再生。それは、仮想現実で流れた国民監視に関する鶴田と加西の会話だった。仮想空間は壊されたが、幽霊ビルにあった見取り図(2次元コード)を読み取った先に音声データが保存されていた。これこそが加西の切り札だった。
データが残っていたことを知ってついに顔色が変わった鶴田。そんな彼に右京は最後に言い放った。
「手本にしているつもりかもしれませんが、あなたは小野田公顕の足元にも及びませんよ。思い上がるのもほどほどに。あなたが小野田公顕を語るなど、虫唾が走る」
結局、鶴田は観念したらしく出頭。狡猾な官房長官と特命係の戦いにようやく決着がついた。
前シーズンから続いたこの事件。鶴田が出頭した…と聞いたとき、見ているこちらも張り詰めた緊張がやっと切れるような思いだった。鶴田の悪事を暴くと宣言していた右京と相棒の冠城。なんだかんだで役に立った青木。特命係と共闘した捜査一課。みなの思いがやっと報われた。
そして、この壮大な事件が解決したとき、何よりも心に残ったのは、今は亡き小野田官房長の存在の大きさ。特命係を作ったともいえる小野田は、特命係を時に利用し時に対立しながらも、後ろ盾となり続けた男。鶴田が彼のスケールに及びもしないことは長くシリーズを見ているファンも納得するところだろう。右京が鶴田にたたきつけたセリフに筆者もうなずくばかりだった。
そして、今回のラストに思いがけぬサプライズが訪れた。並んで歩く右京と冠城、甲斐は一人の男(岸部一徳)とすれ違い、その人物に思わず右京は「官房長」と声を上げる。これにはさすがにファンが沸き、SNSでも多くの喜びの声が上がった。また、あれは岸部氏が同局の「ドクターX」で演じている神原晶では?という意見も多数見られた。
あの男は小野田だったのか、それでも別の誰かなのか。それはわからずじまいで、右京も「僕の見間違いでしょうから」としていた。答えは見た人がおのおので決めればよいことなのだろう。
いずれにしても、この杉下右京のもう1人の“相棒”は、右京、そして、作品を愛する人々の心の中で生き続けているに違いないのだから。
※この記事は「相棒 season20」の各話を1つにまとめたものです。
–{第4話レビュー}–
第4話レビュー
原田龍二演じる陣川公平が久々に登場。
特命係の初代“第三の男”であり、かつては捜査一課で経理を担当、現在は捜査二課の刑事となっているこの男には、次のような特徴がある。
・思い込みが激しく暴走しがち。
・とにかく惚れっぽい。
・酒癖が悪い。
以上のことから、陣川が登場する回はいつも若干コミカルな空気が漂う。彼が事件に首をつっこんで謎に絡む女性に恋する、しかし結局失恋して酔っぱらう…というのが、陣川回の定番だ。
しかし、今回はそのお決まりパターンとはちょっと違う物語だった。
友人で人気ゲームクリエイターの鴫野大輔の結婚式でスピーチすることになり、スピーチライター・宮森由佳に相談する陣川。スピーチのために自身の思いを教えて欲しい…という彼女の言葉に、「そんな、照れちゃうな…」と何か勘違いする陣川。こういうところは相変わらずだ。
そんな中、鴫野が殺人容疑をかけられたというショックなニュースが飛び込んでくる。殺されたのは鴫野の下で働いていた元ゲーム会社の社員・相島。死ぬ前に脅迫文のようなメールを鴫野のスマホに送っていた。しかし、鴫野は犯行を否定。スマホを紛失したので相島の連絡も見ていないという。
高校時代からの友人である鴫野を信じて、「ちゃちゃっと俺が犯人をつかまえてやっから、任せとけって」という陣川。これまで彼が迅速に犯人逮捕したことなどあったろうか…?(万一あったら本当に申し訳ないが)と筆者は思わず記憶をめぐらせてしまったが、とはいえ、このお人よしぶりが陣川のいいところ。結局、右京、冠城と3人で捜査開始。ゲーム会社の社長の江口によれば、殺された相島は鴫野の作ったゲームのファンで、鴫野に憧れていたという。しかし、このゲームシリーズの新作は発売延期を繰り返していた。
捜査一課の出雲から殺人現場にワイヤレスイヤホンが片方置いてあったのを聞き出す右京たち。伊丹たちほどに特命係に敵意のない出雲は「事件の解明が一番ですから」と協力的。陣川にも「興味わいちゃって、特命係第三の男に」と笑顔を向ける。これを受けて「それって…」とまたも浮き立つ陣川。こんなときでもつい女性を意識してしまうのがなんとも彼らしい。(そして、「そういう意味じゃないと思いますよ」と右京にしっかり釘をさされた)。さらに、相島の自宅を捜査した結果、彼が宮森に再就職のための相談をしていたのがわかった。
その後、イヤホンに付着した指紋が鴫野のものと一致。鴫野の容疑がますます強まるが、それでも彼を信じ続ける陣川。友人の潔白を証明しようとゲーム会社で手がかりを探し始めた。この陣川に協力する冠城。一方右京は単独で鴫野の結婚相手・亜里沙と宮森を訪ねて新たな情報をつかむ。実は独立を考えていたという鴫野。相島は宮森の元を訪れた際にそれを知り、新作ゲームの発売延期は鴫野のこだわりではなく情熱を失っていたからなのだ…と憤りを覚えたらしい。
そして、陣川と冠城は鴫野のスマホをトイレで見つけた…という清掃員の女性に会う。このスマホの行方からついに事件の謎が紐解かれた。
江口とともに別荘にやってきた鴫野。しかし、突如江口が鴫野の首を絞めだし、間一髪陣川たちが止めに入った。実は江口こそが相島を殺した犯人。鴫野のスマホを清掃員から預かった彼は脅迫メールを読んで相島に会いにいき、揉み合いになった挙句に殺してしまったのだった。
現場に鴫野のイヤホンが落ちていたのを知り、目撃されたのでは…と疑って口封じを企んだ江口。しかし、鴫野は「何も見ていない」と否定。実はこの事件にはもう一人攪乱者がいた。鴫野のイヤホンを現場に置いたのは、宮森だった。
鴫野のためにスピーチを考え、話し方や表情、服装などまで教えてきた宮森。それだけに、鴫野が亜里沙と出会って彼女の意見を聞くようになり独立まで考えたのが許せなかったという。脅迫メールを送るよう相島を焚きつけ、殺害現場にイヤホンを置いた。そして、イヤホンのことを知らせるメールを江口に送り、鴫野を殺すよう仕向けたのだった。
結局、まったくの無実だった鴫野。ただ、最後に彼が隠していた一つのことを右京が明らかにした。実はゲーム作りに限界を感じていた鴫野。しかし、クリエイターのプライドで「作れない」ということはできず、だからこそ、独立という言葉を使ってまで苦境から逃れたかったのだ。
「天才とかカリスマとか言われているのにもうアイデアが出なくなったなんて、ダセエだろ、そんなの」と本心を明かす鴫野。そんな友人に陣川は「バカだな、お前は。なんか壁にぶつかったときには逃げる逃げないだけじゃない。選択肢はもっと他にたくさんある。勝手に悲観的になってあきらめるなよ」と、精一杯のエールを贈るのだった。
最初から最後まで鴫野を信じて疑わなかった陣川。過去には何かと暴走して事態をややこしくすることもあったが、今回は彼が友人への信頼を貫いたおかげで事件を解決できたと思う。おっちょこちょいで惚れっぽいけど、本質はまじめで正義感が強く優しき男。そんな彼のよさを再確認することができた。
いつもとはまたひと味違う陣川の熱き友情の事件簿を楽しめたこの4話。またいつか彼が登場する回に期待したい。
※この記事は「相棒 season20」の各話を1つにまとめたものです。
–{第5話レビュー}–
第5話レビュー
2か月前に失踪した元刑事・水木の娘とアパートで死亡した警備員の男。二人の繋がりを教えてくれたのは、事件の全てを見ていた一匹の亀だった。
首を吊って亡くなっていた紅林という男。一見自殺のようだが、後頭部に傷があり部屋には指紋をふき取った痕跡。中から施錠され密室殺人が疑われる状況。そして、飼っていたらしい亀がいた。
なぜかこの亀にかなり興味を示す右京。「亀は日光浴が必要」と自ら水槽を運んだり紅林のスマホに残る亀の動画を「とても面白いです」と見入ったりする。好奇心の強い彼だが、これほど動物や生物が好きだったろうか?と、若干疑問を感じた。
再びアパートを訪れた右京たちは、一人の刑事と会う。彼は水木の元部下。ネットで紅林の部屋に女性が監禁されている…という趣旨の書き込みがあり、娘の沙也加ではないかと疑った水木は独断で家宅捜査を行ったという。
そんな中、紅林と同じ警備会社に勤める女性がアパートを訪れていたのが判明。かつて紅林と恋愛関係にあった彼女は合鍵を返しに行ったが、不在だったので窓の桟に置いていった。つまり家に入る方法があり、密室殺人ではなかったということだ。
紅林の隣に住むのは、引きこもりをしている卓司とその母親。事件現場に最も近い部屋で日中過ごす卓司から話を聞こうと考える右京たち。しかし、母親の富士子は「あたしが言ったくらいで出てくるような子なら、どんなに楽か」ととりあわない。長年引きこもる息子のために80歳過ぎだというのに工場で働く彼女。「拳銃でもなんでも突きつけてあの子を逮捕すりゃいいだろ。その方がせいせいするよ」という言葉から悲痛さが伝わってくる。右京たちはアパートのドアをノックして卓司にじかに呼びかけもしたが、彼が出てくることはなかった。
その後、改めて紅林の部屋を調べる右京たち。またも亀を気にする右京だったが、亀の歩く床を見てあることに気づく。床に木目の敷物が敷かれていたのだ。敷物をはがすと床下収納があり血痕が見つかった。
血痕は沙也加のもの。やはり彼女は紅林に監禁されていたのだ。そして、事件の夜に女性を背負った不審な人影がいた。捜査一課の伊丹らは、紅林を殺して娘を運んだのでは…と水木に疑いをかける。しかし、解剖の結果、そもそも他殺ではないと判明。さらに、水木にはアリバイもあった。
沙也加を連れ去ったのは誰なのか? 「こてまり」で頭をめぐらす右京と冠城。そこへ青木から電話。いつもの調子で嫌味を並べつつも重要な情報を送ってきた。その後、「俺もそっちへ行くから、ビールくらい飲ませろ」とねだった青木。しかし、冠城に「今そっち行くから」と言われてしまう。ちょっとだけ彼が気の毒に思えた。たぶん、右京たちと飲んで褒めてもらいたかったんじゃないだろうか。
そして、右京たちは富士子と水木の前で事件の真実を明らかにした。
青木が調べたところ、ネットの書き込みの主は卓司。彼は沙也加の監禁に気づいていたのだ。ただ、沙也加を部屋から救い出したのは卓司ではなく富士子だった。
家から出ない息子を案じてきた富士子。彼女にとって娘を思う水木の親心は他人事ではなかった。例の合鍵を使って部屋に入った富士子は、沙也加を救い出す際に紅林を殴打。その後、監禁が露見するのを恐れて紅林は自殺した。そして、現場の凶器や指紋を始末したのが水木。救出した娘の変わり果てた姿を見た彼は、監禁事件をなかったことにできれば…と考えたのだった。
「巻き込んでしまって申し訳ない」と謝る水木。彼に富士子は次のように語った。
「親ならみんなあんたと同じように思ってる。子どもが不幸なのはみんな自分が至らなかったからじゃないかって」
「周りに何と言われようが、子どものためになることなら何だってやってやりたい。どんな苦労だって甘んじて受けてやりたい。そう思うのは当たり前のことじゃないか。あたしはもう一度頼まれたってまた同じことをするよ」
この場面、ベテラン女優・草村礼子の演技が秀逸で、富士子の思いが痛いほど心に響いた。確かに彼らのしたことは罪と呼ばれるもの。でも、その奥には尊い愛情があった。
結局、捜査一課に連行される水木と富士子。しかし、彼らが車に乗ろうとしたときにアパートの扉が開いた。卓司が部屋から出てきたのだ。彼もやっと母の思いを受けとめたのだろう。
今回妙に亀に執心だった右京。ただ、その理由は途中でわかった。茉梨から「以前亀を飼ってらしたことが?」と聞かれた右京は、「はい。それはそれは手の焼ける亀でしてね」と答えていた。
右京のそばにいた“手の焼ける亀”とは、おそらくあの初代相棒。亀を見守りながら、きっと彼のことを思い出していたのだろう。
※この記事は「相棒 season20」の各話を1つにまとめたものです。
–{第6話レビュー}–
第6話レビュー
「ペンは剣よりも強し」という言葉がある。人が書く言葉は時に雄弁な影響力となり、時に誰かを刺す鋭敏な刃物になるときもあるだろう。
今回の「相棒」は、「ペンで人を殺せるか」を試みた作家の物語だった。
殺害された小説家の福山(菅原大吉)。彼は22年前に娘を殺され、当時10代だった犯人=少年Aは少年院に送られるが後に更生していた。
福山の作品には「関ヶ原の合戦の西軍の武将」など、特定の括りを使って登場人物に名前をつける“マイルール”があり、それはファンたちの間でも知られていた。ただ、連載中の小説には、「川上」という同じ名字の人物が二人。さすがに不自然だ。さらに、同作品で謎の犯人「アンノウン」に最初に殺される少女が福山の娘と同じ「しおり」という名前。もしやこの小説は22年前の事実を元に書かれたのでは?と、右京(水谷豊)と冠城(反町隆史)は睨んでいく。
少年Aの行方を求めて少年院を訪れる右京たち。法務教官の三上(大川ヒロキ)は社会復帰した者の居場所は教えられないと口を閉ざす。しかし、右京は得意の「最後に一つだけ」で、過去に福山が情報を求めて少年院に来たことを聞きだした。
その後、特命係は少年A=村上健一(斉藤悠)の住所を突き止める。村上が住む住宅街を訪れて右京と冠城が目にしたのは、「川上」の表札の2軒の家。調べていくと、近隣の表札名はみな福山の小説の登場人物。例のマイルールはここにあったのだ。そして、右京は村上の自宅前で村上本人と対面。福山の小説の名を聞いた彼はその場を逃げ出してしまう。
伊丹(川原和久)らの取り調べを受ける村上。そこで、福山が小説を連載している雑誌を定期的に村上の元に届けていた事実が判明。小説を読んだ村上は、登場人物がすべて近所の表札だと気づいて怯えていた。小説のマイルールを知る読者は、いずれ村上の家にたどりつく。その頃合いを狙って福山が小説に出てくる「しおり」は殺された娘の名だと言及すれば、その意図もまた確実に読者たちに伝わるからだ。これこそが福山の仕掛けた復讐劇だった。
ペンを武器に憎い相手を追い詰めた福山。正直筆者は彼の行いに戸惑いを覚えた。娘を奪われた悲しみが決して拭えないのはわかるし、村上が取り返しのつかない罪を犯したのも事実。しかし、だからといってこのような形で無念を晴らしていいものなのか?と、そこは疑問に思えてならなかった。
小説に名前が出るのを恐れて福山を殺害したのでは…と伊丹に迫られ、犯行を認める村上。ただ、彼の様子は少しおかしい。現場から消えた最終回の原稿についても「どこかに捨てました」とあやふやな発言をする。このあたりで、筆者は村上が犯人とはどうにも思えなくなってきた。もはや正常な判断ができず、やってもいないことを自分の罪にしてしまっているような感じがあった。
右京も村上の言葉にひっかかったらしく、彼の妻・由梨(佐久間麻由)を訪ねる。彼女は一か月程前、夫婦で経営するレストランに福山が来店したのを明かす。村上を前に怒りをあらわにしていく福山に必死で頭を下げた由梨。その夜夫が「死ぬしかない」と口にしたので、以来目を離さず、事件当日も彼は家にいたと証言した。
そして、右京は気がついた。村上以外にも福山の小説に怯える人物がいたことに。それは法務教官の三上。福山が少年院に来た際、実は情にほだされて村上の情報を教えた彼こそが福山を殺した犯人だった。
小説を読んで自分が個人情報を漏らしたのがばれるのを恐れて福山に談判しにいった三上。しかし、「あんたが心配しているのは彼(村上)のことじゃなくて、自分のことかな」と言う福山につかみかかり殺害してしまったのだった。
福山が書き上げた最終回の原稿を奪った三上。しかし、中身を読んで燃やすことなどできなかったという。書かれていた内容、それは「アンノウン」が罪を認めて火に飛び込み、主人公の刑事もまた罪と一緒に燃えつきていく…という結末だった。
「ペンで人を殺せると思う」と語っていた福山。しかし、結局村上の名前を明かすことはなかった。彼を思いとどまらせたのは、おそらく夫を懸命に庇った由梨の姿。右京も言っていたが、殺したいほど憎む相手にも守ろうとする家族がいると彼は知った。だからこそ、ペンを剣として振りかざすのをやめ、代わりに憎しみをペンで昇華させていったのだろう。
※この記事は「相棒 season20」の各話を1つにまとめたものです。
–{第7話レビュー}–
第7話レビュー
川で行方不明になり、その後重体で発見された少年・悠太(晴瑠)。7話は、この事故に絡む「川男」なる妖怪の謎を右京が突きとめていく物語だった。
かつて幽霊にただならぬ熱意を見せたこともあり、実は超常現象に目がない右京。弟は川男に引っ張られたのだと主張する悠太の姉・百花(米村莉子)の話を聞いて、「(川男は)河童に近い種の未確認生物かも…」と食いついていく。そんな右京を百花は「おじさん、妖怪ハンター?」と不思議がっていた。
その後も、あれこれ本を調べて川男の研究に余念がない右京。妖怪に否定的な冠城と青木(浅利陽介)にも熱心に語り続ける。普段は冷静沈着でどちらかというとリアリストな彼のこのギャップがなんともおかしかった。
一方今回の事件の顛末はなんともやるせない。4か月前に川の近くの工場で働く青年・荻野が水死した事件と悠太の事故に、荻野が死ななければ悠太も助かっていたはず……という悲しい連鎖が存在していた。
百花と川を訪れた際、変わった足跡を見つける右京たち。釣り用の靴の足跡だと冠城が指摘する。渓流釣りをやるという彼の知識が役に立った。川男は釣り人では?という可能性が高まる。さらに、近くで水質検査用ボトルのキャップも見つかり、ここから謎が紐解かれ始める。
釣り用の靴を履きボトルで採水していた川男。それは荻野の上司の高部(佐藤貴史)だった。黒い作業服姿の彼を見た悠太が川男だと思って追いかけたのだった。
高部が水を調べていた理由は土壌汚染。当時工場で貯水タンクの破損し、川を汚染させた恐れがあった。にもかかわらず社長の笹沼(三波豊和)は調査を放棄。ただ一人汚染を心配した荻野が川を調べているうちに死亡。高部は部下の調べたデータを無駄にすまいと調査を始めたのだった。
高部の自白を受けて、右京たちは荻野の事件の真相も突きとめる。実は事故死ではなかったのだ。事件当日、調査をやめさせようとして荻野を溺死させたのは笹沼だった。
そもそも汚染が起きたとき工場で調査していれば荻野は死なず、高部が川男になって悠太に追われることもなかった。それだけに、当時笹岡に同調した高部の罪も重たく、右京は「あなたは、二度見て見ぬふりをしたのですね」と彼を糾弾。直接手を下してはいないものの止める機会があったのに何もしなかった。それは罪がないとはいえない……そう語る右京の言葉の奥には静かで深い怒りがあった。
そして、この事件のせいで特に苦しんだのは、実は百花。悠太が溺れた日、彼女は弟の面倒を見るのが嫌で嘘をついて家族と川に行くのを拒んでいた。あのとき一緒に行っていれば…と後悔し、事故のせいでネットや近隣の住民たちから責められている母を守りたいとも思っていた百花。だからこそ弟の事故を川男のせいにしたかったのだろう。
嘘をついていたことを泣きながら母親にあやまる百花。この小さな身体にどれだけの苦しみを抱えていたのだろうか……と不憫でならなかった。彼女のためにも悠太の回復を祈るばかりだ。
今回、釣りの知識を披露してかなりの活躍を見せた冠城。この第7話の放映日、演じる反町隆史がseason20の最終回で「相棒」を卒業することが明らかになった。
初代・亀山薫から数えて通算4代目の杉下右京の相棒となり、7シーズンと歴代最多の出演を果たした冠城。いなくなるのは寂しいが、彼がどのような形で特命係を離れていくのか、その活躍と結末を今後の数か月しっかり見届けていきたい。
※この記事は「相棒 season20」の各話を1つにまとめたものです。
–{第8話レビュー}–
第8話レビュー
名優・下條アトムをゲストに迎えた8話。
かつて学生運動をしていた岡田という男性の白骨死体が見つかり、その後大手物流会社の社長・梶原(ベンガル)が殺される事件が起こる。
白骨死体の謎を追う右京(水谷豊)と冠城(反町隆史)は、岡田と親交があった藤島(下條アトム)をたずねる。
人形劇団をやっている藤島。彼が操る人形はまるで意志を持っているかのような見事な動きだ。感心した右京は自分にもやらせてくれと頼む。このあたりが非常に彼らしい。人並外れた好奇心と探求心こそ杉下右京の原動力だ。
そして、梶原の殺人事件を捜査している伊丹(川原和久)たちも藤島の元へやってくる。梶原の携帯に藤島とやりとりした形跡があったのだ。藤島は事件当日メールで梶原に呼び出されたのを認めて連行されてしまう。実は藤島と梶原は学生時代に人形劇団を立ち上げた仲間。やはり人形劇団仲間でシングルマザーの美鈴(白川和子)によれば、二人は長年の親友であり殺すはずがないという。
岡田と梶原、二人の死には何か接点があるのだろうか? 梶原は、岡田の白骨遺体が見つかった時期から何かに怯えだしていたという。右京は梶原が「あいつの亡霊に見えるんだ」と語ったことがひっかかる。「亡霊に見える」とは、何か別のものが亡霊に見えるという意味だ。また、日ごろ携帯でメールするのを嫌っていたという梶原が藤島にメール送信したのも不自然さが残る。
藤島たちの友人だった別の男性から、グレて二度も逮捕された美鈴の息子を藤島と梶原が見捨てなかった……と聞きだす右京たち。この話で2つの事件がようやくつながっていった。
梶原を殺したのは美鈴の息子・健太(石母田史朗)だった。
実は健太の父親は岡田。48年前、岡田は美鈴に乱暴し、それに怒った梶原が頭を殴って殺害。遺体を土深く埋めたのだった。
出所後いい働き口の見つからない健太を、梶原は運転手として雇っていた。しかし、岡田の白骨が見つかったことで健太が岡田の亡霊に見えるようになり、耐えきれず事件の夜に彼を解雇してしまう。
納得できない健太は怯えて逃げ出す梶原を追いかけるが、梶原から首を絞められて思わず石で殴打して殺害。健太が梶原の携帯から送信したメールで現場に呼び出され藤島は、犯人は健太だと直感しつつ美鈴のために口を閉ざしていたのだっだ。
乱暴されても子どもに罪はないからと健太を産み育てた美鈴。健太の父親代わりとなってきた藤島と梶原。彼らは健太を守ろうとしたのに守りきれなかった。「どこまで苦しめれば気がすむのよ……」と泣き崩れる美鈴がただただやるせない。
過去の悲劇が時を超えてさらなる不幸を生んだ今回の事件。
藤島のあやつる人形が静かに手を動かしながら悲しみの余韻を誘った。
※この記事は「相棒 season20」の各話を1つにまとめたものです。
–{第9話レビュー}–
第9話レビュー
この世に生まれ変わりなどというものは、存在するのだろうか。
20年前にスーパーの駐車場で刺殺された関田という男。犯人は見つからず、関田の妻・園子(中込佐知子)は情報収集するためのチラシをまき続けていた。そんな彼女の前に関田の生まれ変わりだという吉岡翼(今井悠貴)が現れる。
刺された箇所や凶器の形状など、犯人と被害者しか知り得ない事実を記憶している翼。しかも、彼が生まれたのは関田が死んだ当日。確かに不思議すぎる一致だ。
そして、翼の父・博幸(画大)が20年前の事件当日、殺人現場のスーパーを訪れていたのが判明。気になった右京(水谷豊)と冠城(反町隆史)は吉岡家を訪れて話を聞く。しかし、現場で「タイヨウ」と呼ぶ父の声を聞いたという翼に対して博幸はそれを否定した。
翼によれば、これまで吉岡家は転居を繰り返し親戚づきあいもないという。両親は自分に何かを隠している…と苦悩する翼。その後、彼は何者かに刺されてしまう。ただ、犯人は園子だとすぐに判明。夫の記憶を持つ翼に自分のことは覚えていないかと問いただし、殺されたときの記憶しかない彼に怒りを覚えて彼を刺してしまったのだった
園子のために伊丹(川原和久)たちの前で口を閉ざした翼。記憶があるというだけで何も悪いことはしていないし、他人を庇う優しさも持ち合わせた彼がなぜこのような目にあうのか。つくづく気の毒になった。ただ、刺されたときのことしか覚えていない彼の記憶は、生まれ変わりだとするとだいぶ不自然だ。
右京が超常現象を好むこともあり、たまに心霊的な要素も混ざる「相棒」。だが、今回の生まれ変わりの謎解きは非常にシンプル。翼が事件について記憶していたのは、単純に現場を目撃していたからだった。
実は翼の本名は太陽。彼は母・直美(ともさと衣)と彼女の一人目の夫の子供だが、この元夫からDVを受けていた直美は、息子を元夫の戸籍に入れまいと妊娠を隠して離婚。博幸と再婚して太陽を無戸籍で育てた。その後、第二子の翼が死亡した際に死亡届を出さずに埋め、太陽を翼として育ててきたのだった。
太陽のためにしたことだと語る吉岡夫妻だったが、右京は「死体遺棄はれっきとした犯罪」「翼くんの死亡届を出さず、その戸籍に太陽くんを入れていることも法に触れる」と非難。「太陽くんにも翼くんにも親としての責任を果たすべき」と言っていた冠城もいつになく怒りを覚えているように見えた。
そして、関田の遺体を目撃していた博幸の証言により、刺殺事件の犯人も明らかに。殺したのは、スーパーの店長・八神淳一(岸博之)の息子で当時中学生だった八神友彦(栗原卓也)。事件当日、駐車場で太陽と仲よくなってナイフを見せていたが、それを咎めた関田が警察に通報しようとしたので思わず刺してしまったのだった。
息子の罪を隠すべく凶器のナイフを持ち去った淳一。「親なら誰だって助けたいと思う」という彼に右京の怒りの言葉が突きささった。
「それが親の愛情だと思ったら大間違いですよ。あなたは友彦くんから罪を償う機会を奪ったのですから」
博幸と淳一。いずれも息子を守ろうとした父親たちだが、別の選択はできなかったのだろうか。何とも歯痒く悔しいものが残る事件。最後に翼が「太陽」として生きるのを受け入れたことだけが救いだった。
今回、「生まれ変わり」を否定はしなかったものの、あまり惑わされずに謎を解いた右京。冠城から「右京さんの前世はシャーロック・ホームズだったりして」と言われたときも、「シャーロック・ホームズは架空の人物ですから」と至極冷静に返していた。
でも、もしも右京がシャーロック・ホームズやエルキュール・ポワロの生まれ変わりであったとしたら、それもまた素敵なのではないかと思う。
※この記事は「相棒 season20」の各話を1つにまとめたものです。
–{第10話レビュー}–
第10話レビュー
杉下右京(水谷豊)は紅茶をこよなく愛する男。10話は紅茶好きな彼の姿をめいっぱい楽しめる回だった。
角田課長(山西惇)の依頼で張り込みをすることになった右京と冠城(反町隆史)。ターゲットの詐欺グループは50人近くメンバーがいるものの、リーダーの顔を誰も見たことがないという。
詐欺グループがお金を隠したと思われる倉庫の前にやってきた右京たち。向かいの喫茶店に入った右京は店に並ぶ上質な紅茶に目を輝かせる。聞けば、主人の真鍋(酒井敏也)は紅茶が大好きだという。右京はお店にやってきた常連の大杉瑞枝(麻丘めぐみ)をいそいそと接客。冠城ともども張り込みとともに店の手伝いをすることになった。
高価な茶葉を仕入れてきたり、自身がブレンドした紅茶を試飲してくれと真鍋に渡したりと、今回の右京は本当に楽しそうだ。瑞枝ともイギリス談義などに花を咲かせる。夫は長野の別荘にいると話す瑞枝。「夫は寂しがりやだから、近々私もあっちに行こうと思ってる」と語ったのがちょっと意味深に感じられる。
そんな中、詐欺グループのメンバーらしき男女がお店に現れる。彼らのDNA採取する右京たち。しかし、店を出た二人を尾行しようとした冠城は「コーヒーに髪の毛が入っていた」と別の客に捕まってしまう。真剣に張り込みをしている右京と冠城がそんな落ち度あることをするだろうか? ここもなんとも引っかかった。
DNA採取した結果、店に来た男女はそれぞれ鷲尾琢磨と赤堀絵里という人物だと特定。しかし、その後鷲尾はビルの非常階段から転落死。そして、現場周辺の防犯カメラ映像を追った冠城は、二人を尾行する瑞枝の姿を発見した。
橋から飛び降りようとする瑞枝を間一髪で止める右京と冠城。「近々あっちに行く」はやはりそういう意味だった。実は瑞枝の夫は老後の資金を鷲尾にだまし取られ、それを苦に自殺していたのだ。生きる望みを失っていた瑞枝は、鷲尾が例の倉庫に入るのを目撃。以来、喫茶店から倉庫を見張りつつ復讐のチャンスを狙い、あの日店に来た二人の後をつけ、非常階段に座る鷲尾の背中を押したという。
犯行を認めて取り調べを受ける瑞枝。しかし、右京は釈然としない。鷲尾の遺体は転落したわりには出血量が少ないのだ。しかも解剖で体内から毒物が検出される。おそらくこれを飲ませたのは絵里。しかし、程なくして彼女もまた遺体となって見つかる。
右京と冠城はこれまでの経緯を振り返る。張り込みを始めたら鷲尾と絵里がお店に来た。しかし、冠城が後を追おうとしたら邪魔をされ、一方瑞枝は鷲尾を突き落とすことができた。そして、瑞枝が真犯人ではない可能性が出てきたタイミングで絵里が死亡。「何もかも都合よすぎますね」と気づいた特命係はようやく真実に辿り着いた。
喫茶店を訪れて真鍋と対峙する右京たち。彼こそが詐欺グループのリーダーであり事件の黒幕。鷲尾たちをお店に向かわせ、鷲尾に毒を飲ませるよう絵里に命じ、そして絵里を殺した真犯人だった。
実は右京は最初から真鍋に違和感を覚えていた。紅茶について的外れなことを言い、右京が仕入れた希少価値の高い茶葉に何の反応も示さなかったからだ(瑞枝はすぐに気がついた)。紅茶好きでもなんでもなく、お金の保管場所である倉庫を喫茶店から監視していた真鍋。被害者の家族である瑞枝がお店の常連となり、さらに右京たちが張り込みに来たことから一連の犯行を企てた。彼は絵里に毒を飲ませる際に右京がブレンドした紅茶を使っており、それが動かぬ証拠となった。
紅茶を好む右京の趣向が物語に彩りを添えた今回。非常に「相棒」らしい回だったと思う。事件解決後、カフェで瑞枝に紅茶をご馳走して「僕とお茶飲み友だちに」と誘うラストも、そこはかとなくエレガントな余韻が残った。
瑞枝が「パーフェクト!」と褒めていた右京の紅茶。もしも本当に彼が入れてくれる喫茶店があったら、ぜひ行ってみたい。
※この記事は「相棒 season20」の各話を1つにまとめたものです。
–{第11話レビュー}–
第11話レビュー
「相棒」11話は元旦恒例のスペシャル放送だ。
今回は、「刑事コロンボ」でおなじみ、犯人が誰なのかが視聴者にあらかじめ明かされるスタイルで物語が進む。争っていた男性が頭を打って倒れてしまったのをきっかけに、殺人、誘拐に手を染めていく政治家秘書・結城(弓削智久)を、右京(水谷豊)と冠城(反町隆史)が結城の上司である与党政調会長・袴田(片岡孝太郎)ともども追い詰めていくストーリーとなった。
事件に絡むのは、結城と争い脳震盪のショックで記憶をなくした男性“湊健雄”(イッセー尾形)、現場の公園でスマホを落としてしまった少年・早瀬新(西山蓮都)と、その友人で公園にいた袴田と結城をスマホで撮影した峰岸聡(川口和空)、スマホを持ち去った結城のことを突きとめてほしいと新から頼まれたシステム・エンジニアの遠藤(尾上寛之)そして、教会に運ばれた湊の面倒を見る冠城の姉・由梨(飯島直子)らだ。
湊は一体誰なのか? 彼は身に着けていたものを持ち去られ、実は違う名前なのに湊が自分の名だと思いこまされていたと後から判明したが、その正体は最高裁判所判事の若槻正隆。事件当日、袴田は自分たちに有利な判決を得るために若槻を懐柔しようと結城に呼びに行かせた。しかし、若槻が拒んだために争いとなったのだ。
若槻は死んだと思い込んでいた結城。そんな彼に遠藤が「死体を始末したのは自分」と嘘をついて脅迫を仕掛けてくる。聡が撮影した動画を新から預かっていた遠藤は、動画から抜き取った結城と袴田の音声をネタに金銭を要求。結城は受け渡しの現場で彼を殺害してしまうのだった。
その後、若槻が生きているのを知った結城は、若槻と新を誘拐。これに特命係と警視庁の面々が立ち向かう。結城の手元にある新のスマホを利用して追跡を試み、「暴走した秘書を説得してほしい」と袴田を呼び出す。最後は右京が事件に関与していなければできない発言を袴田から引き出して、見事解決に導いた。
今回は元旦SPらしく、警視庁のメンバーがほぼ揃って活躍。犯人逮捕に協力した伊丹(川原和久)たち捜査一課と青木(浅利陽介)らサイバーセキュリティ対策本部。鑑識課の益子(田中隆三)が現場でプロの技術を見せ、角田課長(山中惇)も若槻の身元がわかる貴重な情報を右京に伝えた。彼らが力を合わせる姿はいつ見ても本当に胸熱だ。右京のムチャな提案に「正義のために思う存分にやれ」と言い放った内村刑事部長の男気にもしびれた。
また、ゲストでは若槻を演じたイッセー尾形の演技が見事。判事らしい威厳と偉そうな態度を保ちつつも仕草や言葉に人間味があり、時折見せる軽妙さにクスッとせずにいられなかった。さすがは日本の一人芝居の第一人者にして稀代の怪優だ。
なお、この元旦SPでは「今後の展開に絡む布石では?」と思われる点がいくつかあった。
「決着をつける」と睨みあう右京と袴田
今回、まんまと右京に鼻を明かされた袴田。「お前とはいずれ決着をつけなければいけないようだ」という彼に「望むところです」と右京は返し、二人は睨みあう。
明らかにまだ戦う気満々だった二人。今後袴田は右京に報復を仕掛けてくるのではないだろうか。官房長官の鶴田に続いて再び大物政治家を敵に回した右京。またあのときのような国家権力を持つ相手との厳しい戦いが繰り広げられるのかもしれない。
冠城卒業のキーマンとなるのは少年時代の友人か?
右京と一緒に由梨が暮らす実家を訪ねた冠城。その晩泊った彼は自室で一枚の葉書を見つけて子ども時代を思い出す。少年の亘には仲よくしていた友人「かずや」がいた。しかし、彼は亘を避けるようになり、そのまま引っ越してしまった。手紙をもらえるよう自分の名前と住所を書いた葉書を彼に渡したかったけれど渡せなかったことを、冠城は右京に明かす。
今シーズンの最終話で番組卒業が決まっている冠城役の反町隆史。もしかすると、この少年時代の友人が冠城が特命係を去る物語に絡むのではないだろうか。
思い返せば、初代相棒・亀山薫(寺脇康文)は友人の遺志を継いで外国へ旅立ち、三代目相棒・甲斐亨(成宮寛貴)は親友のために自ら犯罪者となり懲戒退職。特命係をやめていった他の刑事たちの軌跡から考えても、冠城の友人がキーマンとなる可能性は十分考えられる。
「下についた者がことごとく警視庁を去る」ため、「人材の墓場」といわれていた右京。二代目相棒・神戸尊(及川光博)だけは警察庁に異動してかろうじて警察を辞めなかったが、冠城の場合は、何がきっかけでどのように右京に別れを告げるのか。袴田及び冠城の友人についてはあくまで筆者の考察に過ぎないが、ひとまず心に留めつつ今後の展開を見守っていきたい。
※この記事は「相棒 season20」の各話を1つにまとめたものです。
–{第12話レビュー}–
第12話レビュー
いまだかつて「相棒」でこんなざわつきを覚えた回があったろうか。(長寿シリーズなので、筆者が見逃してるだけでもしもあったら申し訳ないが……)
今回は、元刑事の安岡(小宮孝泰)が殺された事件である。警察を定年退職して警備員として働いていた彼。仲間たちとともに徳川の埋蔵金を探していて、お宝発掘動画をサイトに投稿していた。
問題のざわつきは、「ここ掘れワンワン」と名乗る安岡とその仲間たちの動画を見たときに起こった。ここで、筆者は思わず目をこらしてしまった。「鈴木もぐら?」と。
昨年「キングオブコント」で優勝し、今最も旬な芸人の一人である空気階段の鈴木もぐら。動画に映る「ここ掘れワンワン」2号の男性が、彼にどうにもそっくりなのだ。案の定、Twitterでも「鈴木もぐらが相棒に出てる?」「2号の人、もぐらさんかと思った」といった驚きの声が続出していた。
安岡が埋蔵金を探していたなら、それ絡みで殺人が起きてもおかしくはないと考えた右京。単身で赤城山を訪れ、安岡の仲間、新井(山本龍二)と竹内(ぎたろー)に会う。改めて見ても、竹内はふくよかな体型といい口髭といい鈴木もぐらにやはりそっくり。話し方も若干似たものを感じさせ、もしやもぐらに寄せてるのでは?とも感じた。
とはいえ、そんなこちらのざわつきは関係なく、物語は進んでいく。今回の特命係は2カ所に分かれての捜査。右京は赤城山で「ここ掘れワンワン」の発掘を手伝うことにして、竹内が若旦那として働く旅館に宿泊。聞けば、この旅館には安岡がよく食事に来ていたという。
一方冠城は東京で情報収集。「ここ掘れワンワン」が発掘している場所は、既に大手不動産会社会長の東堂(目黒祐樹))という男のプロジェクトにより発掘済みであったことがわかる。
なぜ安岡は東堂が発掘していた場所でお宝探しを始めたのか?その真の理由と思われることも明らかになっていく。実は、3年前この東堂の長男の嫁である沙耶香(朝見心)が突如行方不明となり、当時、刑事であった安岡は沙耶香の夫から捜索依頼を受けていた。その後、東堂が「沙耶香は男と駆け落ちした」と捜査の打ち切りを申し出てきたが、腑に落ちなかった安岡は独自に失踪について調べていたらしい。
東堂の発掘プロジェクトは沙耶香が行方をくらませた直後に打ち切られていた。また、沙耶香が昔付き合っていた熊沢という元ホストも彼女と時を同じくして姿を消していたことが後からわかる。
沙耶香と熊沢は二人の関係を知った沙耶香の夫に殺され、夫が父の東堂と協力して遺体を発掘現場に隠したのでは?と推理する右京と冠城。東堂の会社で警備員をしていたときに発掘プロジェクトの情報を知った安岡。沙耶香の失踪に関係があると睨んで埋蔵金探しと称した捜査を始め、動画投稿で犯人を動かそうとしたと思われる。
そんな中、警視庁ではちょっとした騒ぎが持ち上がる。右京が映る「ここ掘れワンワン」の発掘動画が投稿されたのだ。つなぎの作業着姿で「3号(代理)」と名乗り、いつもと違うテンションで叫ぶ彼に、伊丹(川原和久)たちは唖然。もぐら似の彼といい、今回は視聴者もドラマの中の人間たちもざわつかせる回ということか。
その後、安岡が発掘場所の特定に使った古地図を携えた冠城が赤城山に到着。彼とともに再び現場を訪れた右京はお地蔵様を見て何かに気づく。その場で緊急にライブ配信を開始し、「地蔵が動かされていたのが判明した。埋蔵金が眠る本当の洞窟を発見しました。明日改めて発掘ライブをお伝えします」と語ってみせた。
夜になり、スコップをもって現場に向かう人影。しかし、特命係が待ち伏せしていた。「こんな時間に発掘ですか?」と右京が声をかけたその人物は、竹田の旅館で「あきこ」と名乗っていた従業員の女性=沙耶香だった。
3年前、熊沢に暴行されそうになり、思わず彼を殺してしまった沙耶香。それを知った義父の東堂は、沙耶香に熊沢の遺体を洞窟に埋めさせて証拠隠滅。遺体が掘り返されないよう埋蔵金の手がかりである地蔵の位置を変え、沙耶香に現場を見張らせていたのだった。安岡を殺したのも東堂。旅館で沙耶香を見つけて全てを悟った彼から警察に事実を話すよう迫られたため、殴って殺害してしまったのだった。
「全ては家族のため」にしたことだと弁明する東堂に、「あなたのような身勝手な人間に家族を語る資格などありませんよ!」と右京は怒りをあらわにする。確かに、自身や家の面子のために沙耶香や安岡を犠牲にした彼。その行いは悪質で許しがたいといっていい。
この12話は、鈴木もぐらにそっくりな埋蔵金ハンターがとにかく気になって仕方なかった。あれはたまたまの偶然なのか。それとも、制作側の茶目っ気か何かだったのだろうか。
※この記事は「相棒 season20」の各話を1つにまとめたものです。
–{第13話レビュー}–
第13話レビュー
13年前に突如行方不明となった当時10歳の少女・多岐川未来。
自宅で刺されて死亡していた引きこもりの青年・西條。
「相棒」第13話は、この二つの事件の繋がりを解く物語だ。
かつて未来の失踪事件の捜査をしていた元似顔絵捜査官の黒瀬(勝部演之)。未来の父・直樹(筒井巧)に頼まれて弔いの冥婚絵を描いた彼は、自分が描いた絵にそっくりな女性(山本舞香)が多岐川家にいるのを見たという。右京(水谷豊)と冠城(反町隆史)が実際に多岐川家で話を聞いたところ、その女性は未来の従妹の遥香だとわかった。
一方、殺されていた西條の自宅でもなぜか未来の冥婚絵を印刷したものが見つかった。さらに西條と未来はかつて同じピアノ教室に通っていたことがわかる。
未来を連れ去ったのは西條で、彼を殺して逃亡した未来を両親が従妹と偽っているのでは?と仮説を立てる右京と冠城。そんな中、未来の美しい冥婚絵を見て顔色を変えたのは青木(浅利陽介)。冠城からタイプなのかと言われて強く否定したものの、実際一目惚れしたかのような挙動不審ぶりだ。
その後、冠城が西條の自宅で女児のものと思われる手袋を発見。それは、未来の母・愛子(宮田早苗)が娘のために編んだものだった。西條が未来の失踪に何か関係あるのは明らか。ただ、当時、犯人らしき男を見た愛子の証言を元に黒瀬が描いた容疑者の似顔絵は、西條とは似ても似つかない。
本当にこの男を見たのか?と右京から問い詰められた愛子は、困惑して苦しみだす。実は彼女は末期の癌に犯されていたのだ。そんな愛子を見た遥香は思わず「お母さん!」と叫ぶ。
愛子が救急車で運ばれた後、黒瀬の元を訪れた遥香。激しく怒る彼女を特命係が止めに入る。だが、右京は「似顔絵を捏造したあなたを見過ごすわけにはいかない」と、遥香に代わって黒瀬を糾弾した。
当時、愛子が犯人の顔を覚えていなかったために似顔絵をおこせなかった黒瀬。彼は少女拉致事件を起こした別の男の顔を描いて容疑者に仕立てあげてしまったのだ。さすがに警察としてあるまじきこと。右京の「心から恥じるべきです」の言葉、まさにその通りだ。
黒瀬の元には「自分が未来を殺して、遺体は山の中に埋めた」という電話がかかってきていた。おそらく電話の主は西條。この内容を知った右京は、当時高校生の西條一人で遺体を埋めるのは難しいだろう……と、共犯者=西條殺しの犯人をついに思い当たる。
西條を殺害したのは、彼と未来が通っていたピアノ教室の講師・松尾紗月(街田しおん)だった。
13年前、不適切な関係を持っていた西條と松尾。未来は二人の現場を目撃して逃げ出し、西條と争う内に階段から落ちて死亡。松尾と西條は未来の遺体を山に埋めたが、最近になって冥婚絵を見た西條が自首しようとしたため、松尾は彼を殺害してしまったのだった
最後に残ったのは、遥香は結局誰なのか?という謎。実は彼女の正体は、梶本彩奈という水商売の女性。彼女に娘の面影を覚えた直樹に頼まれて、余命わずかの愛子のために娘のふりをしていたのだった。(なお、青木の動揺は、以前彩奈にガールズバーでぼったくられたからだった)
だますことに胸が痛まなかったのかと問う冠城に対し、「お母さんが気づいてないと思う?」と彩奈は返す。愛子は彩名が未来でないことに気づきつつ、夫の優しさを汲んで気づかないふりをしていたのだ。
「不器用だけどお互いのことを想い合ってて、私もこんな家で生まれてたらなあって」と多岐川夫妻について語った彩奈。嘘のお芝居だけれど、そのおかげで多岐川家にはしばしの優しい時間が流れた。夫妻だけでなく彩奈もまた何か救われたところがあったのだろう。
今回、遥香=彩奈を演じたのは山本舞香。囚われていた少女と水商売の女性という二つの顔がいずれも非常にはまっていたと思う。また、彼女の美しい冥婚姿が物語に華を添えていた。
なお、この13話では、黒瀬から謎をもちこまれた伊丹(川原和久)が、なんやかんやで特命係と一緒に動いていた姿も印象的だった。すべてが終わった後、「こてまり」で黒瀬が過ちと向き合い始めたのを伝え、右京たちの分の支払いも済ませて出て行った彼。あれは伊丹なりのお礼だったのだろう。普段何かと特命係と対立している彼だが、実は非常に筋が通った男でもあるのだ。
※この記事は「相棒 season20」の各話を1つにまとめたものです。
–{第14話レビュー}–
第14話レビュー
天才フラワーアーティスト・氷室聖矢(渡部豪太)の婚約者・内田絵里奈(小池唯)が殺されてしまう。
以前にもパートナーが謎の疾走を遂げ、婚約者を失うのは二度目だという氷室。ひどくショックを受けているのが伺えたが、そうかと思えば突然「カサブランカ」と花の名前を口にして仕事にかかってしまう。情緒不安定というか、まるで花を飾る仕事にとりつかれているかのようだ。
その後、氷室は生け花「有明流」の家元・尾崎(栗田芳宏)の自宅に押し入り、「絵里奈を返せ……」と泣き崩れる。尾崎は氷室の話を言いがかりだと否定。だが、実はこの尾崎、以前氷室の個展を酷評したことがあった。論理的考察を旨とする尾崎が氷室を過度に厳しく批判していたことが右京(水谷豊)はひっかかる。
逮捕された氷室は冠城(反町隆史)や伊丹(川原和久)らの前で「悪魔の仕業なんだ…」とつぶやく。悪魔とは一体何なのか。
一方氷室の婚約者たちにも不自然な点が見つかった。
氷室と最初の婚約者・栗原玲子(新実芹菜)の写真を見た右京は、玲子が背中で「フィンガークロス」を作っているのに気づく。これは心にもないことを言ったとき罰が当たるのを防ぐおまじない。玲子が氷室の前で嘘をついていたかもしれない……ということだ。
さらに青木(浅利陽介)が入手した絵里奈の通帳明細には不審な入金記録。玲子と絵里奈はお金で雇われて氷室に近づいたのでは?と右京たちは疑う。その後、氷室が海外で行われる企画展のメンバーから不自然にはずされていた過去も判明。どうやら尾崎の圧力らしい。やはり尾崎が氷室のいう「悪魔」なのだろうか。
ただ、この事件に関連して気になる人物がもう一人いた。生花の卸売業者・一之瀬(冨田佳輔)だ。
氷室と付き合いが長く花の管理も任されているという彼は、氷室と自分は「共犯者」だと語った。花を用いた芸術は植物の命を奪う罪な行為であり、「より美しく咲かせるために痛めつけることすらある」と微笑む一之瀬。ミステリアスで儚げな雰囲気が漂い、彼は氷室をどう思っているのか?となんとも疑問をそそる。
その後、尾崎について衝撃の事実が明らかになる。実は彼は創作のインスピレーションのためにヌードモデルを雇っており、ときに年端もいかないモデルを使っていたらしい。そのことを冠城に問い詰められた尾崎は、秘密を知る者から氷室の活躍の場を奪うよう脅されたのを明かす。
そして、伊丹たちの捜索で行方不明だった玲子=深川日菜子が見つかる。氷室と結婚を約束して姿を消すよう依頼されたという彼女に、右京は「依頼人はこの人では?」と有明流の会員名簿を見せる。
名簿にのっていた人物とは一之瀬。彼こそが尾崎や日菜子、絵里奈をあやつり、絵里奈を殺した張本人だった。
かつて有明流のホープだった一之瀬。氷室に仕事を奪われたため、そばで働きながら潰す機会を狙っていた。尾崎や日菜子の力を借りても氷室の創作意欲を奪えず、絵里奈を差し向けたが、そこで誤算が起きた。絵里奈は氷室を本気で愛してしまったのだ。彼女が「彼と結婚する」と口にしたため、一之瀬は絵里奈の首を花のツルで絞めて殺害したのだった。
右京が一之瀬の犯行に気づいたきっかけは、彼の服に付いていたユリの花粉。ユリは氷室にとって愛と悲しみの象徴の花。愛する人を失った氷室がカサブランカなどを欲すると見越して、一之瀬はあの日ユリを仕入れていたのだ。
“悪魔”の正体は一之瀬だった。しかし、右京は不思議に思う。氷室を潰したかった彼が、氷室の創作のためのユリを仕入れていたのは矛盾していないか……?と。
一之瀬は毒を飲んでおり、連行された後に死亡。氷室宛に絵里奈と恋愛関係があったかのような手紙を残していた。それを読んだ氷室は「悪魔と刺し違えるような作品を作ってやる」と創作に没頭していく。
一之瀬は氷室を憎んでいたのか。それとも、彼の才能を開花させるためにあえて“悪魔”となって痛めつけたのか。花をめぐる男たちの愛憎劇。その末になんとも重たい余韻だけが心に残る回だった。
※この記事は「相棒 season20」の各話を1つにまとめたものです。
–{第15話レビュー}–
第15話レビュー
冒頭、繁華街で見つかったのは覚せい剤の売人・目黒の遺体。さらに都内のマンションで男性の転落死体が発見された。ただし、今回は厳密にいうとこれら殺人の謎解きストーリーではない。先に言ってしまうが、転落死については自殺らしいと途中で判明した。
この第15話のメインは、元詐欺師の平井貞夫(風間杜夫)と他の者たちによる“騙し合い”だ。
かつて“青空らくだの会”なるうさんくさい団体を装い、右京(水谷豊)や冠城(反町隆史)と化かし合いを演じた平井。当時ひったくり犯を見過ごせず撃退したせいで正体を突きとめられてしまった。このことからわかるように、詐欺師のくせに人のよいところがある彼。ベテラン俳優・風間杜夫の人間味あふれる演技で、なんとも憎めないキャラクターに仕上がっている。
罪を償った平井は転落死体が見つかったマンションの管理人になっていた。ちなみに、マンションの住人が撮影した現場の動画を見て平井がいるのに気づいたのは青木(浅利陽介)。粘着気質の彼は、前回の事件のときに平井にお金を巻き上げられそうになったのを根に持ち続けていたらしい。
このマンションに平井の昔なじみの詐欺師・工藤(玉置孝匡)が麻薬の運び屋の男とやってくる。彼らは空き室を利用して麻薬が届くよう手配していたのだ。しかし、肝心の麻薬が消えてしまう。
麻薬探しを手伝う羽目になる平井。すると、今度は特命係が転落事故を調べに訪れる。しつこくいろいろ食い下がる右京たちに手を焼く平井。そこへ例の空き部屋の隣人である桜田成一(樋浦勉)・美月(関谷奈津美)の親子が現れる。年老いた父と暮らす優しそうな娘・美月に平井はときめいているようだ。
ところが、この桜田親子が麻薬の消失に関わっている可能性が出てきてしまう。麻薬を隠したぬいぐるみに付いていたペンダントを成一が持っているのを、工藤たちが目撃したのだ。
水漏れがあったので確認させてくれと嘘をついて桜田家の部屋に入る平井と工藤。しかし、麻薬は見つからない。業を煮やした工藤は「定時が過ぎたら防犯カメラのスイッチを切れ」と平井に命じる。
美月を守りたい思いから電源を切るか否か迷い、駆け落ちしようか?とまで考えだす平井。そこへ特命係がやってきた。
その後、平井は工藤に電話をかける。刑事が近くではってるから今夜は来ないほうがいい。麻薬はお金でとりかえそう……と提案。明日、公園で美月が麻薬の入った袋を落とすからお金の袋とすり替えるようにと指示した。
翌朝、公園を訪れて、平井に言われた通りに美月の落とした袋をすり替えた工藤。しかし、彼の前に清掃活動員姿の右京と冠城が立ちふさがった。
ナイフを持って美月たちを襲おうとした運び屋の男も平井と伊丹(川原和久)たちの活躍で無事捕獲。目黒殺人の容疑者でもある彼は工藤ともども連行されていった。
右京たちと協力して大嘘をつき、見事工藤たちを出し抜いた平井。美月が襲われそうになった際身を挺して守ろうとした姿は見ていて胸が熱くなった。やはり、この男は真から悪い人間では決してない。
だが、平井が心を寄せた美月の意外な正体を右京が明らかにする。実は彼女もまた詐欺師だった。美月の本名は梅田真知。なりすまし詐欺の常習犯で、三か月前に警官を装って闇カジノの売上金を巻き上げ、捜査を逃れるために成一の娘になりすましてともに暮らし始めた。例の麻薬を横取りしたのも彼女。成一の車椅子に隠しているのを右京はしっかり見抜いていた。
正体がばれて観念する真知。しかし、そこにはさらにもう一人嘘をつき通していた人間がいた。右京たちに「娘は渡さん」と怒った成一だ。彼は真知が娘でないと知りつつ気づかぬふりをして一緒に過ごしてきていた。本当の娘と何年も音信不通だという成一にとって真知は「よく世話してくれて楽しかったんだよ。それで十分」という存在だったのだ。
詐欺師たちが騙し騙されの戦いを繰り広げた今回。一番の嘘つきは、右京ですら見抜けぬ演技をしていた一般人の成一だった。ただ、右京もまた嘘については相当長けていると再認識させられた。不動産屋を訪れた際、冠城を自分の甥と偽ってにこやかにでたらめを並べたてていた彼。人情が垣間見られる平井よりも、むしろ冷静に嘘が付ける右京こそが、詐欺師になったら一番怖いのではないだろうか。
※この記事は「相棒 season20」の各話を1つにまとめたものです。
–{第16話レビュー}–
第16話レビュー
「やってやった。俺が殺してやった」
冒頭で聞こえてきたこのセリフ。ビルの屋上で見つかった死体を前にした一人の男(高橋和也)のモノローグだ。
被害者はビル内の広告代理店の社員・中松誠。凶器は大きなハサミだが、柄に指紋は残っていない。ふき取ったと思われるハンカチが残っており、刺繍されたイニシャルは“T”だ。
被害者に恨みを持つ者の犯行と睨んだ捜査一課の伊丹(川原和久)、芹沢(山中崇史)、出雲(篠原ゆき子)ら、そしてシレっと現場に来ていた右京(水谷豊)と冠城(反町隆史)は捜査を開始。そんな中、例のモノローグの男は他の社員たちとともに現場を見守っていた。「死んで当然の男」「ずっとこの日を望んでいた」など憎悪が混じる言葉を繰り返していて事件の犯人に思えるが、右京たちも捜査一課もまだ彼の存在を気にとめていない様子だ。
最初に犯人を明かす「刑事コロンボ」的な話も多い「相棒」。今回もその線かと思ったのだが……そうではない、まさかの真相が明かされる今シーズンきっての異色回となった。
右京たちや伊丹らが会社で聞き込みをした結果、捜査線上に数名の人間が浮上する。
1人目は中松の同期・田川(白畑真逸)だ。中松は彼との出世争いに敗れて閑職に追いやられたらしい。さらに、田川が行っていた水増し請求を中松が告発しようとしていたのも判明。しかも、彼の名字のイニシャルは例のハンカチと同じ“T”だ。
2人目の容疑者は中松の部下の山村(成田瑛基)。中松が告発の準備をしていると田川にばらした張本人だ。彼は中松を尊敬しつつも巻き添えで異動になったことに憤りを覚えており、パワハラをする中松について「死んでくれねえかな」とこぼしてもいた。また、凶器のハサミは山村が会社の経費で買ったものだともわかった。
この世話になった先輩を裏切る山村の行為の話を受けて、「そんな後輩がいたら、俺はただじゃおかねえがな」と物騒な感想を口にしたのは伊丹。それを聞いた後輩の芹沢は絶妙に面白く顔を歪ませていた。告発はともかく、このおっかない先輩の悪口くらいはどこかで言ってるのだろう。
田川と山村。いずれも中松を殺してもおかしくはないが、結局、犯行に及んだとは考えにくい……と右京の推理で明らかになる。こうして捜査が難航する中、例の男は引き続き見守るばかり。彼は一体何者なのか。
そして、3人目の疑わしい人物が会社を訪れる。中松の妻の陽子(冨樫真)だ。旦那が死んで間もないというのに、労災などお金の方が気になる様子の彼女。実は中松と離婚する準備を進めており、慰謝料前提でマンションまで買ったという。殺す動機は十分あるといってよく、また陽子の旧姓もイニシャル“T”だった。
次々に容疑者が現れる中、陽子が会社の人間と不倫している情報を掴んだ特命係。彼女の後をつけると、そこにいたのは例の男。しかし、右京の声がすると彼はスッとその場を離れてしまい、陽子と一緒にいた不倫相手は経理部の天野であるのがわかった。
その後、屋上に関係者を集めた右京。そこで明かした真相は「自殺でした」
現場にあったハンカチは陽子が結婚前に中松にあげたもの。山村のハサミを使って自殺した中松がハンカチで山村の指紋をふき取っていたために、自殺が事件に見えてしまったのだ。
そして、右京たちをずっと見つめていた男の正体もようやく明らかに。それは、中松誠本人(おそらく幽霊)だった。
自分のことしか考えられず、自分すら幸せにできない。そんな自身にうんざりして、自ら苦しい人生に終止符を打った中松。そんな彼を前に、見えているのか否かわからないが、自分で自分を殺す行為である自殺を許したくはない……と右京は語りかける。
捜査を進める中、本当は皆と幸せに生きたかった中松の思いを感じとっていた右京。「だからこそ、僕には残念に思えて仕方ありません」と弔うかのような言葉を口にする彼を前に、「もう少し早くあんたらに会えてたら、まだここにいられたのかもしれないな」と中松は瞳を潤ませる。そして、右京たちが屋上を後にすると、彼の姿も消えていた。
今回、カンの鋭い視聴者も多かったようで、男の正体については、放映の最中に「幽霊では?」と推測する声がTwitterでいくつも見られた。ちなみに筆者が気づいたのは、会社に来た陽子を中松が「お前」と呼んだとき。この呼びかけはもしや夫?と思い当たり、幽霊ならば社内にいるのに誰とも絡まず、普段怪しい人物を見逃さない右京が気づかないのも辻褄が合う……と思いあたった。
なお、作品ファンとしては、超常現象好きな右京の目の前に幽霊が姿を現したのがどうにも気になった。果たして右京は霊的なものを少しでも感じとれたのだろうか。
※この記事は「相棒 season20」の各話を1つにまとめたものです。
–{第17話レビュー}–
第17話レビュー
「相棒」シリーズの人気者の一人・米沢守(六角精児)が久々に登場。鉄道愛好家の彼は休日に線路脇で遺体を発見し、右京(水谷豊)に連絡する。
現場を訪れた右京と冠城(反町隆史)に死亡推定時刻などを伝える米沢。彼らに文句たらたらで絡んでくる伊丹(川原和久)たち。昔と変わらない彼らのやりとりが心を躍らせる。かつて米沢が伊丹を嫌いとこぼしていたのをつい思い出してしまった筆者である。
ローカル線「星川鉄道」が絡む今回の事件。同線の廃線をめぐって地元の星川町では廃線反対派と支持派の対立が起きていて、殺された吾妻元彦(藤本浩二)は廃線支持派の中心人物だった。
鉄道の運営会社に反対派らしき者から脅迫メールが届いたと、社員の松原(中原果南)から聞き出した右京たち。鉄道復活を願う、あるいは廃線で不利益を被る人物が犯人ではと睨む。
そんな中、容疑者として浮かび上がってきたのは二人の人物だ。
一人は、遺体遺棄現場近くで線路に侵入しようとして捕まった鉄道愛好家の今泉(松浦祐也)。廃線反対に署名していた彼は、凶器が見つかった場所周辺の防犯カメラに映っていた。
もう一人は、旅館を経営する白川(野中隆光)。「星川鉄道を復活させる会」のメンバーで、右京たちが訪れたとき、他の者たちと激しく争っていた彼。鉄道運休のために旅館は閑古鳥で、支持派の吾妻に暴言を浴びせたこともあった。
遺体発見者の米沢は引き続き右京の捜査に同行。落語好きなど共通点があるせいか、昔から妙にウマの合っていたこの二人。軽妙なやりとりで冠城とのそれとはまた違うツーカーさを感じさせる。
そして、特命係と米沢が調べていくうちに、今泉と白川の別の顔が明らかになっていった。
まず、今泉。当初、鉄道の撮影を好む“撮り鉄”だと思われていた彼だが、彼の自宅には写真も機材もない一方、電車の時刻表がびっしり。米沢は、今泉は時刻表でダイヤを分析したりダイヤグラム(列車運行図表)を書いたりして楽しむ「“スジ鉄”ですなあ」と推測。鉄道好きは、乗り鉄、撮り鉄をはじめさまざまな趣向があり、ただし、迷惑行為を行う鉄道好きは“クズ鉄”と呼ばれるのだという。
右京が「撮り鉄もどきのクズ鉄を装ったスジ鉄」と称した今泉。脅迫メールの主であるのもばれて犯行を認めるが、取り調べ中に突如倒れてしまう。実は今泉は悪性腫瘍に犯されていた。病気のために職場で雇い止めとなり、星川鉄道に自分を重ねて蘇らせたかった……と冠城に明かす。しかし、右京たちは彼が他の誰かを庇っていると考える。
そして、白川。彼の旅館を訪れた右京は不動産売却の本を見つける。つまり、白川は既に旅館を手放す気。鉄道復活への思いなどなかったのだ。実は彼は運営会社のスパイ。お金で雇われて過激な反対派を演じ、地元民たちの分断及び復活させる会の解散を狙っていたのだ。
今泉が庇っていたのはこの白川。それを知って「たかが鉄道のために」という白川に、「たかが鉄道に救われる人もいるんです」と米沢は怒りをぶつける。
白川の正体を知った今泉は、真実を打ち明ける。あの晩、吾妻と会うために都内のホテルを訪れたとき駐車場で遺体を発見。白川が犯人だと思い、罪をかぶるべく鉄道マニアの犯人を自ら演じていたのだ。
駐車場で証拠を探す特命係と鑑識の制服を着た米沢。現場での鑑識の結果、足跡からついに犯人が特定された。
吾妻を殺したのは、運営会社の社員・松原だった。彼女が白川を雇っていると知って怒り、世間に公表しようと言ったために吾妻は殺されてしまったのだ。
上に怒られるのも恐れず、一鉄道ファンとしての筋を通して事件を解決に導いた米沢。鉄オタかつ優秀な鑑識である彼の活躍、健在ぶりをたっぷり見られて非常に楽しい回だった。
事件解決後、冠城は今泉の心に思いを馳せる。仮に彼が運営会社の工作に気づいていたとしたら? 庇う演技をして白川の心を路線変更させ、鉄道復活のために人々がつながるダイヤグラムを描いていたのでは……と。
冠城の見立てを聞いて「同じようなことを考えていました」と話す右京。長年コンビを組んできた二人は、考え方もどこか似てきたのかもしれない。
しかし、そんな彼らに危機が訪れるよう。次回予告で冠城が刺される場面が映し出され、彼の名を呼ぶ右京の声が響いた。この先何が起こるのか。冠城が特命係を去る日は刻々と近づいている。
※この記事は「相棒 season20」の各話を1つにまとめたものです。
–{第18話レビュー}–
第18話レビュー
いきなり冠城(反町隆史)が刺されるシーンから始まった18話。どうにも穏やかではないが、その後、ドラマは時間を遡り、なぜこのような事態になったのかを描いていく。
うつろな目をして踏切に手をかける女性・マキ(太田莉菜)が気になった右京。その後、「あたしの詩を買ってください」と看板を掲げた彼女から詩集を買った。
「千里一歩(せんりかずほ)」というペンネームで書かれたマキの詩はなかなか伝わってくるものがあり、どうやら才能があるようだ。ただ、彼女は明らかにカタギでない男性(日向丈)と接触していたり、雑誌のページを見て「私は惨めな思いをしてきたのに…」とつぶやいたりと、どうにも物騒な気配がある。
マキが見ていたのは、KAZHO(篠原真衣)という名の新進気鋭のデザイナーの記事だった。自分のペンネームと同じ名を持つ女性に嫉妬しているのだろうか。
マキが何かことを起こすのではないか……と考える右京たち。そこで、冠城はマキを尾行することに。非番の青木(浅利陽介)も呼び出して手伝ってもらう。とはいっても、青木が任されたのは冠城の車の番。すごく嬉しそうに冠城の元へやってきていただけに、若干彼に同情を覚えてしまった。
一方マキの書いた詩にヒントを得た右京は、とある小料理店にたどり着く。その店は前日に女将の澄江が心筋梗塞で亡くなったばかり。マキはこの店で住み込みで働きながら澄江に詩の手ほどきを受けていた。
お店でナイフを購入するなど、危ない兆しが感じられるマキ。彼女が恨んでいると思われるKAZHOはマキの写真に見覚えがないと語った。しかし、右京に聞かれて名乗った本名は「千里一歩」。まったく無関係とは思えない。
マキを追う冠城。彼女がナイフを買おうとするところ、さらに詩を売っているところに偶然を装って接触し「絶望的に思えるときでも必ず光が見えてくるもの」と言葉をかけ、彼女から詩集をもらった。
その後、角田(山西惇)や伊丹(川原和久)らの協力も経て右京たちが探りあてたのは、マキとKAZHOを結びつける非常に深刻な事情だった。
カギを握っていたのは、マキに近づいていた大倉という男。実はこの男は戸籍売買に手を染めており、かつてマキ=本名・千里一歩の戸籍を買ってKAZHOに売っていたのだ。
自分の戸籍を買った相手が有名デザイナーとして成功していると大倉から聞かされて許せなくなったマキ。公衆電話で「あたしの名前で生きているあんたがどうしても許せない」と訴え、会わないならマスコミにばらすと脅してKAZHOを呼び出す。夜の公園で近づく二人を止めようとした冠城は、KAZHOの振りかざしたナイフに刺されてしまったのだった。
冠城が殉職、もしくは致命傷か?と心配したが、幸い傷は浅かった。胸元にマキからもらった詩集を入れていたからだ。
不幸なめぐりあわせで争うことになってしまったマキとKAZHO。彼女たちの壮絶な過去が明らかになる。学校にも行けず母親から虐待されて育ち、母の死後に逃げ出して新たな戸籍を買ったKAZHO。やはり母を亡くして家を出て、男性に騙され借金を被らされて戸籍を売ったマキ。冠城いわく「コインの表と裏」のような二人の人生。聞いていてなんとも苦しくなった。
戸籍を売った後、自分がこの世に存在していないかのような思いを味わい、何度も自殺を考えたというマキ。そんな彼女に助けの手をさしのべたのが亡くなった澄江。澄江は遺言状と預金通帳を残しており、自分が死んだ後もお店や詩を書くことを続けてほしいとマキにメッセージを残していた。マキには「詩人の魂があるから」と。
遺言状を手に泣き出していくマキ。「千里の道も一歩から。自分の名前に戻ってもう一度一から人生を始めてください」という右京の言葉に、彼女は大きくうなずいた。
今回、殺人事件になりかねない事態をなんとか未然に防いだ右京たち。ただ、ひたすら車の番をさせられていた青木がちょっと気の毒だった。友情の証として青木を女性と会わせるかのようなことを言っていた冠城。果たしてこの約束、彼が特命係を去る前にちゃんと果たされるのだろうか。
※この記事は「相棒 season20」の各話を1つにまとめたものです。
–{第19話レビュー}–
第19話レビュー
ついに、冠城亘(反町隆史)の最後の物語(前後編)が幕を開けた。
特命係が挑むのは、大物政治家・鑓鞍兵衛(柄本明)をめぐる事件。8年前に彼を襲撃した京匡平(本宮泰風)という男が出所。再び鑓鞍を狙っているという情報が浮上したのだ。
総選挙を控えている鑓鞍。内閣情報官の社美彌子(仲間由紀恵)にいわゆる“国替え”をするのかと聞かれた彼はそれを認めた。新たに出馬する区で議席を争うのは議員返り咲きを狙うあの片山雛子(木村佳乃)だ。
かつて世話になっていた王隠堂家の長男・鷹児が鑓鞍のせいで選挙に負けて失意のまま事故死したため、鑓鞍を恨んで襲った京。彼と鷹児の父・鷹春(勝野洋)が鑓鞍への仇討ちを計画しているのに気づいた鷹児の妹・美馬(酒井美紀)は警察に相談に行くが、そこへ鷹春が現れて、連れ帰る道中で美馬を殴打。鷹春は逮捕されてしまう。
このことから仇討ちの信憑性が高まり、王隠堂家を訪れた右京(水谷豊)と冠城、伊丹(川原和久)ら。当の京は「計画を練ろうとしただけ」と話すだけでスキを見せない。しかし、後に彼は思わぬ挑戦状を叩きつける。ネットに告発動画をアップしたのだ。
動画の中でかつて鑓鞍が鷹児を潰したこと、自身が警察に狙われていることなどを明かした京。この動画がもとで、抑止力になればと王隠堂家に張り込んでいた伊丹たちは上司たちから叱られてしまう。
警視庁同様に京の動画で打撃を受ける鑓鞍。ただ、彼は「怪文書以上の破壊力だね」と驚きつつも、態度がなんとも飄々としていて、本当にショックを受けているのだろうか?と疑いたくなった。この男、己の身を守る策とともにそれ以上の何かもたくらんでいそうな気がする。
かつて京に襲われた際に身を挺して自身を守った津崎真茅(野波麻帆)をわざわざ指名して警護につけた鑓鞍。この人事も何かしら裏があってのことに思える。なお、この津崎、組んでいるもう一人のSPと肉体関係を持っていた。これもまた事件に何か絡むことがあるかもしれない。
鑓鞍の周りの他の女性たち、社美彌子と片山雛子もそれぞれ何か思惑があって動いているのが伺える。特に雛子は、これまでものし上がるために狡猾な手を平気で使ってきた女性。鑓鞍の周りで起きていることを利用して選挙を有利に進める策などを考えていてもおかしくはない。
そして、この前後編の主役ともいえる冠城。青木との約束を二回も反故にしたりそそくさと帰宅したりと様子が変な彼を見て、右京と青木は“春”が来た(恋人ができた)のかと疑う。実際に彼が会っていたのは、中学生と思しき若い少女だった。
しかし、このことで冠城は思わぬ不幸に見舞われる。彼と少女とのツーショットが載った“パパ活”疑惑を伝える紙面が警視庁と警察庁に送られてきたのだ。
一緒にいたのはいとこの娘だと弁明する冠城。しかし、彼の日頃の行いのせいか、上司たちは厳しい視線を向ける。そして、右京は、冠城の姉・由梨(飯島直子)に確かめて、冠城に娘を連れだす程親しいいとこはいないと暴いてしまう。
プライベートなことはほっといてくれという冠城に「ほっとけませんよ!」と右京は怒る。理由は、「相棒が不名誉なパパ活疑惑をかけられているのですから」。
右京は基本冷静沈着なタイプだが、実は怒ることも多い。彼が怒るのは本当に許せない、見過ごせないものを目にしたときだ。おそらく、冠城に対する侮辱に心底怒りを覚えたのだろう。右京が冠城を「相棒」と呼んだ瞬間は、さすがに胸が熱くなった。
右京は冠城が会っていた少女にも心当たりがあった。携帯が鳴り出ていく冠城。その後、彼は少女を迎えに行く。二人が向かった場所に待っていたのは美彌子。冠城が一緒にいたのは美彌子の娘のマリアだった。
冠城がマリアに近づいた理由は何なのか。鑓鞍に対する仇討ちは本当に行われるのか。謎が増えていくばかりだったこの前編。次回はついに最終回。冠城は果たしてどのような形で特命係を去るのか。
なお、筆者は個人的に青木と冠城の別れがどのようなものになるかも気になっている。毎週見てきて、いつも憎々しい態度で突っかかる青木が本当は冠城を大好きなのがよくわかってきたからだ。できれば、この二人の別れが悲しすぎるものにならないことを祈っている。
※この記事は「相棒 season20」の各話を1つにまとめたものです。
–{第20話レビュー}–
第20話レビュー
20年目の「相棒」がついに最終回。
鑓鞍兵衛(柄本明)暗殺計画の真実が明かされ、そして、冠城亘(反町隆史)が右京(水谷豊)の元を去っていくストーリーが描かれた。
仇討ちを計画した真の黒幕は…?
鑓鞍への仇討ち計画。実はこの黒幕は王隠堂家の娘・美馬(酒井美紀)だった。父親に自分を殴らせ、京の告発動画を撮影したのも彼女だ。
王隠堂家を訪れ、京の警護を強引にかってでる右京たち。特命係を連れ戻すという名目で示し合わせてやってきた伊丹(川原和久)たちとともに王隠堂家を見張る。しかし、美馬が差し入れた夕食を食べた後彼らは眠ってしまう。どうやら薬をもられたらしい。電話が来たため夕食をとらなかった冠城が戻ると、皆が眠る中で京と鷹春が姿を消していた。
冠城が見つけたときやはり眠っていた美馬。そんな中、右京は告発動画の撮影場所=鷹春の部屋(実は美馬の部屋)を調べだす。このあたりから美馬があやしいと感づいていたよう。後に冠城が明らかにしたが、ガラケーを愛用する鷹春や服役していた京がネット活用ができるとは考えにくかったからだ。
その後、鑓鞍が参加する公開討論会の会場に姿を現す京と鷹春。美馬も同じ会場へ来てなんとSPの津崎(野波麻帆)から銃を受け取った。美馬は彼女とつながっていたのだ。
自分に鑓鞍を殺させる代わりに、津崎が憎む相手=京を差し出す。これが美馬が企てた真の計画だった。
かつて、京の襲撃から身を挺して鑓鞍を守った津崎。その際に負った傷のせいで子どもを産めない身体になってしまった。前回、仲間のSPと関係を持った際に避妊をしなかったのはそういうことだったのだ。美馬同様に仇討ちをしたかった津崎。そのために鑓鞍に土下座してSPを志願していた。
ピストルを手に鑓鞍の控室に入る美馬と京に切りかかろうとする津崎。間一髪、特命係と伊丹たちの活躍で殺人は未遂に終わる。とはいえ、京への憎しみを泣き叫ぶ津崎が悲しかった。もちろん殺人を犯してはならないが、実際女性としてどれだけ絶望したことか……と思う。
美馬と京が自供する中、右京は鷹春に疑問を感じる。美馬や京と異なり仇討ち計画に乗り気でなかったのではないか?と。
実は鷹児は事故死でも殺されたのでもなかった。彼は自ら命を絶ち、鷹春だけがそれを確信しているのでは……と推察する右京。鷹児は鑓鞍に殺されたのだと否定する鷹春だったが、過去に彼は鷹児の遺書と思われる紙を燃やしていた。
右京たちから話を聞いて「やっぱり自殺でしたか」と言う鑓鞍。当時思い上がっていた鷹児にお灸をすえるつもりで公認をはずしたと明かし、「政治家なんてものはさ、ずぶとくなきゃ生き残れんのよ」と言いつつハンカチで目を抑える。どうにも本心がつかみにくかった鑓鞍だが、最後に見せたのは意外にも人情のある姿だった。
鑓鞍が“国替え”をした狙いとは
鑓鞍が国替えをして選挙に挑んだ狙い、それはおそらく片山雛子(木村佳乃)の当選だ。
刺客候補となった鑓鞍への批判票が雛子に集中し、彼女の支持率は爆上がり。雛子の前では認めなかったが、雛子が当選しても自身は比例で復活できるのを見越してのぞんだ選挙だったようだ。
なぜ彼が雛子のためにそんなことしたのか。その理由ははっきりしなかった。この先のシーズンでもおそらく出番があると思われる鑓鞍と雛子。いずれ彼らの因縁がより深く描かれるときが来るのかもしれない。
“パパ活”疑惑をばらまいた犯人の意外な正体
前回、右京が憤りを見せた冠城の“パパ活”疑惑。問題のビラをバラまいた犯人はなんと青木(浅利陽介)。内調を探っている彼をこらしめようとした美彌子(仲間由紀恵)がその事実を突き止めた。
さんざん憎まれ口を叩きながらも、冠城を慕っているのが伺えた青木。正直、筆者は彼がこんなことをしたのがかなりショックだった。ただ、冠城が青木をこき使う一方ないがしろにしてきたのは確か。最近約束もたてつづけに反故にされ、ついに青木も堪忍袋の緒が切れてしまったのかもしれない。
そもそも青木が内調を調べていたのは冠城に頼まれたから。美彌子にそのことを伝えて頭を下げる冠城。そして、彼はあることを彼女に頼んだ模様。それが後に明らかになる。
今回、冠城に「お前、友だちだよな?」と聞こうとして聞けなかった青木。彼の屈折した思い、冠城はどれだけわかっているのだろうか。
青木が内調へ異動 冠城は公調へ
冠城が美彌子に頼んだこと。それは青木の内調への起用だった。ビラの件で立場が悪くなった青木に対する彼なりのフォローとお詫びといえる。
「余計なお節介するな」と冠城にくってかかりつつも、結局異動を受け入れる青木。すると、冠城は「これでお前と俺はライバル関係だな」と言いだす。そして、右京たちが驚く中、冠城は「警視庁やめて公安調査庁移ります!」と宣言した。
元上司の日下部(榎木孝明)にスカウトされてその気になったという冠城。しかし、決めた真の理由はおそらく美彌子と彼女の娘・マリアだと思われる。
今回、公調の人間と接触した週刊誌の記者がマリアに「お父さんのこと知りたくない?」と近づいていた。マリアのこととなると冷静さを失いかねない美彌子を「闇に落ちないで下さい」と案じていた冠城。おそらく、マリアや美彌子を守るために公調に入ることにしたのではないだろうか。
別れ際、右京が口にしたまさかの言葉
7年間コンビを組んできた右京と冠城。ついに二人の別れのときがやってきた。
「少し歩きませんか?」と右京が誘い、並んで歩く特命係の二人。心赴くまま居場所を変えられる冠城の軽快さがうらやましい…と嫌味もこめて言う右京だったが、その後、まさかの言葉を口にした。
「もう少し一緒にやりませんか?君が特命係を去ることをできれば拒みたい」
これまで、何人もの相棒を見送りながら、去る者は追わずの姿勢を崩さなかった右京。彼が初めて引きとめる言葉を口にした。さすがに多くの視聴者が心を打たれたようで、「右京さんが引き止めるなんて」という声がSNSでいくつも上がった。筆者も別れを惜しむ右京の顔を見てほろりとせずにいられなかった。
とはいえ、もちろん冠城の心は変わらない。「最高のはなむけの言葉です。長い間お世話になりました」と頭を下げる彼に右京はうなずき、そのまま二人は別れた。
一人「こてまり」を訪れる右京。いつもの席に座る背中が寂しさの余韻を誘う。今しばらくは相棒と別れた彼の心情を思いやっていたい。そう思わせるラストだった。
最後に余談だが、筆者は元旦スペシャルの際に冠城が話していた彼の少年時代の友人が卒業のキーマンになるのでは?と予想した。しかし、こちらは見事にはずれてしまった。
そんな中恐縮だが、卒業した冠城はまたどこかで「相棒」シリーズに登場するのではと予想する。なぜなら、彼がマリアの近くにいた理由が決して明確にはなっていなかったからだ。
いずれ冠城は美彌子やマリア絡みで再び右京の前に姿を現すのではないか。そのときはたぶん青木も一緒だろう。いつかまた彼らに会えることを願っている。
(文:田下愛)
※この記事は「相棒 season20」の各話を1つにまとめたものです。
–{「相棒 season20」作品情報}–
「相棒 season20」作品情報
放送日時
10月13日(水)スタート 毎週水曜日夜9:00~放送
出演
水谷豊/反町隆史/森口瑤子/川原和久/山中崇史/篠原ゆき子/山西惇/浅利陽介/田中隆三/神保悟志/小野了/片桐竜次/杉本哲太/仲間由紀恵/石坂浩二
脚本
輿水泰弘ほか
監督
橋本一ほか
音楽
池頼広
制作
テレビ朝日/東映