<日本沈没ー希望のひとー >最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

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小栗旬が主演を務めるTBS系日曜劇場「日本沈没―希望のひと―」が2021年10月10日(日)スタート。

1973年の刊行以来、何度も映像化されてきた不朽の名作「日本沈没」(小松左京)を大きくアレンジした本作。2023年の東京を舞台に、日本沈没という前代未聞の危機の中で希望を見出す人々を描き出していく。小栗旬をはじめ、松山ケンイチ、杏、ウエンツ瑛士、中村アン、与田祐希(乃木坂46)、國村隼、仲村トオル、香川照之ら豪華キャストが集結した。

cinemas PLUSでは毎話公式ライターが感想を記しているが、本記事ではそれらの記事を集約。1記事で全話の感想を読むことができる。

もくじ

・第1話ストーリー&レビュー

・第2話ストーリー&レビュー

・第3話ストーリー&レビュー

・第4話ストーリー&レビュー

・第5話ストーリー&レビュー

・第6話ストーリー&レビュー

・第7話ストーリー&レビュー

・第8話ストーリー&レビュー

・第9話ストーリー&レビュー

・「日本沈没ー希望のひとー 」作品情報

第1話ストーリー&レビュー

第1話のストーリー

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2023年、東京。東山総理(仲村トオル)は、世界環境会議で地球物理学の権威である世良教授(國村隼)のもと「COMS<コムス>」のさらなる推進を高らかに表明した。

さらに官房長官の長沼周也(杉本哲太)が、東山が“未来の日本”を見据えて各省庁の優秀な若手官僚たちを集めた“日本未来推進会議”を発足すると発表。そのメンバーに環境省の天海啓示(小栗旬)、経産省の常盤紘一(松山ケンイチ)も選ばれていた。目的達成のために強引な手段もいとわない天海は、自身の提案を通したいがために東山総理にすり寄り、同時に総理の抵抗勢力である政界のドン・里城副総理(石橋蓮司)をも懐柔しようとする。さらには、両者に顔が利く「生島自動車」会長兼経団連会長の生島誠(風間杜夫)を同期の常盤に紹介してもらい、近づいていく。

そんな折、ネットに関東沈没へ警鐘を鳴らす田所雄介(香川照之)の記事が載る。この記事が原因で、一部の団体がデモを起こし、天海は事態収束のために田所と対面する。しかし、田所は天海の話に一切耳を傾けず、「近い将来、伊豆沖で島が沈没する。その島の沈没は、私が恐れてきた関東沈没の前兆になる」という不気味な予言を放ち、天海は翻弄される。

そんな矢先、天海は週刊誌・サンデー毎朝記者の椎名実梨(杏)に「Dプランズ」という環境ビジネスで稼ぐ企業と環境省のあらぬ癒着疑惑を突きつけられる。
一抹の不安を抱えつつ、常盤と共に趣味のスキューバダイビングに出かけた天海は、そこで衝撃的な出来事に遭遇する…。

第1話レビュー

前クールで世帯平均視聴率No.1に輝いた「TOKYO MER」に引き続き、TBS日曜劇場枠で「日本沈没ー希望のひとー」が幕を開けた。

現実世界でも10月7日、千葉県北西部を震源地とする地震が発生し、東京と埼玉で2011年の東日本大震災以来となる震度5強の揺れを観測したばかり。だからこそ“日本沈没”というワードはとにかくタイムリーで、不吉な予感を漂わせる。

本作の主人公は、環境省の官僚・天海啓示(小栗旬)。彼は日本を環境先進国へと向かわせる総理大臣の東山(仲村トオル)が発足した、各省庁の優秀な若手官僚を招集した「日本未来推進会議」に環境省代表として参加することとなる。

同じく経産省代表で会議に参加し、大手財閥の父を持つ大学の同期・常盤(松山ケンイチ)の力も借りながら、大義名分のために東山総理や裏で実権を握る副総理・里城(石橋蓮司)にも擦り寄る野心家だ。

2010年に主演を務めた「獣医ドリトル」以来、11年ぶりに日曜劇場出演を果たした小栗旬。彼が演じる天海は飄々としているが、時折ドキッとするような表情を見せる。常に警戒を怠らず、自分の利益・不利益になり得る事象も人も見逃さない。

そんな天海が目をつけたのは、総理主導のCOMS(コムス)事業にとって足枷となる地震学者・田所(香川照之)。田所は、液化した汚染物質を海底地層の隙間に流し込むCOMS事業が伊豆関東沖の海底プレートに歪みを生じさせ、“関東沈没”の可能性があると主張していた。

主張の内容が派手であればあるほど、人々から大きな注目を集める。実際にコロナ禍ではSNS上で多くの偽情報が拡散され、世界は混乱の渦に飲み込まれた。コロナワクチンに関する陰謀説が広まったことも記憶に新しい。そのような出来事を機に「デマに惑わされない」という教訓を得た私たちだが、一方で何でもかんでも「デマ」と決めつけがちになってしまったのもまた事実だ。

警戒心が強いに越したことはないが、本当に鼻から嘘だと決めつけてしまってもいいのか?と本作は視聴者に問いかけてくる。

香川照之の怪演も相まって、とにかく偏屈で変わり者の田所が主張する関東沈没説を誰も信じようとはしない。もちろん最初は、環境問題に真剣に取り組む天海でさえも――。

しかし、天海は関東沈没の前ぶれとして海の底に沈むとされた伊豆沖の日之島で不思議な体験をする。海底に亀裂が入り、そこから熱水が噴出していたのだ。疑問に思った天海は敢えて、週刊誌サンデー毎朝の記者・椎名(杏)に田所と環境ビジネスで荒稼ぎする企業との癒着をリーク。政府は田所の関東沈没説を潰しにかかっているという印象を世間に与え、しっかり調査せざるを得ない状況を作り出した。

計算高く、目的のためなら手段を選ばない天海。ただ彼のすごいところは賢さだけではなく、熱い思いも内に秘めているところだ。中途半端な調査で田所の主張に根拠がないと決めつける官僚たちに食ってかかる。タイプは違えど、医系技官として日本の医療制度改革を目論む「TOKYO MER」の音羽(賀来賢人)を彷彿とさせた。

ラスト5分前には、天海が田所に味方したことで、ざわつく日本未来推進会議の場に一本のニュースが。田所が主張していた通り、日之島が沈没したのだ。天海が見た夢の中では、日之島のように東京のビルが次々と海に沈んでいった。

もしかしたら、あれは私たちが住む日本の未来の姿かもしれない。

不必要に不安を煽る必要はないが、出演者の杏と対談した国連環境計画(UNEP)のインガー・アンダーセン事務局長が語った「未来はあなたの手の中にあります。あなたがすること、しないことが、未来に影響を与えるのです。ドラマでインスピレーションを受けて、自分自身で行動を起こしてください。私たちは変化を起こすことができると希望を持ち続けて」というメッセージが思い起こされる。

起こり得る未来に絶望するのではなく、本作のタイトル通り“希望”を持って一人ひとりが自分にできることを考えること。エンターテインメントの力を信じて、環境問題という大きなテーマを投げかける日曜劇場「日本沈没」から今後も目が離せない。

※この記事は「日本沈没ー希望のひとー 」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第2話ストーリー&レビュー}–

第2話ストーリー&レビュー

第2話のストーリー

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田所博士(香川照之)の予測通り、日之島が沈んだ。それは関東沈没の前兆が起きたということになる。環境省の天海啓示(小栗旬)は日本未来推進会議で、対策を早急に行うように訴えるが、地球物理学の最高権威・世良教授(國村隼)は日之島が沈んだのはただの地滑りだと真っ向から否定し、東山総理(仲村トオル)と共に会見を開き、説明を行う。

納得がいかない天海だったが、週刊誌に天海が企業から不正にお金をもらっていたという記事が掲載される。疑惑を否定する天海の言い分は聞き入れられず、環境省では謹慎処分となり、未来推進会議からも外されそうになってしまう。

絶体絶命のピンチの中、天海は田所から「解決の糸口になるかもしれない」と、海上保安庁の海底調査のデータを入手するように頼まれる。天海は経産省の常盤紘一(松山ケンイチ)にデータの入手をお願いするが…。

一方、記者の椎名実梨(杏)は、天海の地元、愛媛に行き、天海の母・佳恵(風吹ジュン)に接触を図っていた。そこで椎名は重要な情報を入手する。
  
  内外に追い込まれていく天海と田所。国民を守るために逆転の一手をうつことはできるのか!?

第2話のレビュー

田所博士(香川照之)が予測していたように、日之島が沈んだ。

思いも寄らぬ出来事が起きると、人はどのような行動をとるか。「日本沈没ー希望のひとー 」第2話の冒頭で、日本未来推進会議のメンバーが見せた反応や権力者たちの行動はそれを教えてくれる。

田所と真っ向から対立する世良教授(國村隼)は、即座に日之島の沈没はただの地滑りだと“関東沈没説”を否定。地球物理学の最高権威である彼の冷静ぶりに、先ほどまで唖然としていた周囲の人間もホッと胸をなで下ろす。異常な出来事が起きた時に、「大したことない」と思い込む“正常性バイアス”が働いたのだろう。

東山総理(仲村トオル)も会見を開き、日之島沈没の原因の一端だとされるCOMSは「世界で安全を保障された環境技術」と説明した。日之島と同じように、今立っている場所も海に沈んでしまうかもしれない。そして、その原因を自分たちが作ってしまったかもしれない。今回のストーリーは、恐ろしさのあまり保身に走る人たちと、自分の過ちから目を逸らさず、責任を果たす人たちの対照的な姿を映し出した。

田所に味方したことで、日本未来推進会議の中で孤立し始めた天海(小栗旬)にさらなる試練が。週刊誌サンデー毎朝から、環境ビジネス詐欺の疑いがかかる企業「Dプランズ」と環境庁の癒着の黒幕は天海だとする記事が出されたのだ。

天海は謹慎処分となり、あわや未来推進会議のメンバーからも外されそうに。ここから本作は日曜劇場色が強い展開を見せていく。

鍵を握るのは、スロースリップの痕跡が映されていると思われる、潜水艇わだつみでの調査記録。世良教授が会議で提出したデータは改ざんの可能性が高く、海上保安庁からおおもとのデータを手にしなければならない。

そこで天海は上司・藤岡勲(小林隆)とDプランズの癒着を切り札に、生島自動車の生島会長(風間杜夫)に接近。改ざんを解明できる人物を紹介してほしい…と相談をもちかける。その後、スロースリップの痕跡が克明なデータを日本未来推進会議の場で突きつけた。

データを書き換えていたのは、潜水艦わだつみに同乗していた安藤(高橋努)。彼は世良教授に裏で指示され、体調不良を装い海底調査を中断させ、さらにデータを改ざんしたのだ。天海が問い詰めると世良教授はあっさりと事実を認め、田所への嫉妬を露わに。ただ関東沈没の可能性はわずか1割程度であり、それだけで首都経済をストップさせ、人々を不安に貶めるのかという世良教授の言葉に天海は惑わされていく。

そんな天海を再び奮起させたのは、真実を追い求める田所の姿だ。

「地球の環境や変化は人間が積み重ねた長い歴史の中でもたらされたものだ。その責任は我々全ての人間、一人ひとりにある。私も含めてだ。だから私はこうして研究を続けてる。君が何をするかは、君が決めろ」

田所の言葉は、COMS事業に主要な立場で参加した天海の心に突き刺さる。誰もが自分のおかした罪や失敗から目を背けたい。現実でも真実が曖昧にされ、さらに重大な問題に発展してしまうことがある。

本作は正義を貫く主人公を描いた日曜劇場の枠をはみ出さず、否応なく私たちを環境問題と向き合わせる。

田所が海保のデータから導き出した、遅くとも1年以内に起こる関東沈没から政府は国民をどう守るのか。そして同時に、天海を現在の地位から引きずり落とそうとする“黒幕”を見つけることが本作の終着点となるのだろう。

※この記事は「日本沈没ー希望のひとー 」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第3話ストーリー&レビュー}–

第3話ストーリー&レビュー

第3話のストーリー

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「関東沈没が1年以内に始まる」という田所博士(香川照之)の分析報告を総理官邸で聞いた天海(小栗旬)は、対策の緊急性を強く訴える。
しかし、里城副総理(石橋蓮司)は田所を詐欺学者と決めつけて相手にせず、東山総理(仲村トオル)もすぐには決断できないでいた。

天海とともに危機感を募らせる常盤(松山ケンイチ)に、記者の椎名(杏)が接触してくる。彼女は田所が総理官邸に招かれたことで、ただならぬ事態が起きていると感じていた。
その夜、常盤は常盤グループ会長で父親の統一郎(小野武彦)に呼ばれる。呼ばれた先には、里城がいた。
同期である天海の人間性や関東沈没説に対する見解を聞かれ……

日本未来推進会議で関東沈没への対策を議題に検討会が開かれた。
その席で天海が、地球物理学の世界的権威であるアメリカの教授・ジェンキンスが田所博士の分析を支持したことを告げると、会議は一気に緊迫感を増す。

各省庁の代表がそれぞれの視点から論争が繰り広げられる中、国民にどう伝えるかで天海と常盤の意見が割れてしまう。
そして、その裏には里城副総理の影が…。

四千万人の国民の命か…国の経済か…
天海が決断へ、一歩踏み出す!

第3話のレビュー

遅くとも、1年以内に関東が沈没する——。「日本沈没」第3話では田所説がどんどんと現実を帯び、日本未来推進会議のメンバーが中心となって対策に向け動き始めた。

直面する課題は、国民に関東沈没の可能性を伝えるか、伝えないかだ。

データを改ざんし、スロースリップの痕跡を隠していた世良教授(園村隼人)は関東沈没の可能性を10%と予想したが、田所博士(香川照之)よればその確率は50%だという。

沈没するのは1年後、もしくは半年後。いや、もしかしたら明日にも始まってしまうかもしれない。だとしたら、少しでも早く国民を関東以外の土地に避難させなければならないはずだ。

しかし、天海(小栗旬)は対策の緊急性を強く訴えるも、里城副総理(石橋蓮司)は田所を詐欺学者と決めつけ、聞く耳を持たない。東山総理(仲村トオル)は札幌に第二首都を置く“首都機能分散構想”を推し進めているため、対立する里城は、東山が自分に有利な説を唱える田所を連れてきたと考えたのだろう。

東山もすぐには決断できず、天海は田所説に信憑を持たせるため、地球物理学の世界的権威であるアメリカのジェンキンス教授に見解を求めることにした。一方、彼と同じように危機感を募らせる常盤(松山ケンイチ)に、記者の椎名(杏)が接触。椎名は政府のCOMS事業に反対する田所が総理官邸へ招かれたことに、違和感を抱いたのだ。

常盤は椎名を軽くあしらうも、夜には常盤グループ会長で父親の統一郎(小野武彦)に呼ばれる。そこには里城が同席し、関東沈没説に対する見解や天海について聞かれる常盤。副総理であり、財務大臣でもある里城に「私の後継者として期待している」とそれとなく便宜を図るよう諭されるのだった。

次に開かれた日本未来推進会議では、関東沈没への対策が議題に。ジェンキンス教授が田所の分析を支持したことで、そこにいたメンバーは当惑の色を見せる。会議に集められた各省庁の精鋭たちがそれぞれの立場から意見を述べる中、段階的に情報を開示するか、憶測や情報格差を避けるために全国民へ広めるかで常盤と天海の意見が対立。

もし本当に関東が沈没するとしたら。想像するだけでも恐ろしいが、一刻も早く真実を知りたいという人がほとんどだろう。しかし、同時に全国民がパニックに陥り、日常生活が崩壊することは想像に難くない。どちらの意見もわかる。

日本未来推進会議でも結論は出ず、関東沈没に関する情報は国家機密となった。それにもかかわらず、里城は自己判断で情報を流し、東京の再開発計画から手を引く企業が多発。天海が危惧していたように、情報格差が生まれてしまったのだ。このことが公になってしまえば、政府は国民からの信頼を失ってしまう。

さらに、海保のデータを元に調査を進める田所から、遅くとも半年以内に70%の確率で関東沈没が起こると新見解が飛び出す。いかに関東4000万人の命を守るか、まだ方針が定まらない中で天海と常盤が会談する場にボイスレコーダーを仕込んだ椎名は真実を知ってしまうのだった。

しかし、政府は椎名が所属するサンデー毎朝に圧力をかけ、徹底した情報統制を図る。そこで天海が取った行動は椎名と手を組み、真実を国民に告げることだった。翌日、毎朝新聞が大々的に関東沈没説について報道。国民は予想通り、パニックに陥る。

これまで、大義のためには手段を選ばず、大胆な行動に出る天海の良きパートナーとしてそばで支えてきた常盤。慎重過ぎる面もあるが、常に冷静な判断を下す彼は安心感があった。しかし、容赦なく迫り来る“関東沈没”が二人の仲をプレートのように引き裂く。

覚悟を決めた天海の横顔を、静かに睨みつける常盤の表情が不穏な空気を漂わせていた。

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–{第4話ストーリー&レビュー}–

第4話ストーリー&レビュー

第4話のストーリー

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新聞に「半年以内に関東圏沈没」の記事が出た。
里城副総理(石橋蓮司)や長沼官房長官(杉本哲太)がネタ元の特定に躍起になっている中、東山総理(仲村トオル)は椎名(杏)を呼び出し問い詰めるが、椎名は東山が会見をするべきだと伝える。

その後、天海(小栗旬)とも話した東山は、会見を開くことを決意。そこで、時期や確率は明確にしなかったが、関東沈没の可能性が総理の口から語られたことで、人々は大混乱に陥る。

東山の命により危機対策が日本未来推進会議に委ねられて、常盤(松山ケンイチ)を中心に迅速な対応が進んでいく。

そんな中、ワイドショーで関東沈没の現状を赤裸々に話す田所(香川照之)。
それは東山が発表していない情報で、勝手な告発に常盤は怒りを抑えられない。一方で毎朝新聞にリークしたのも天海ではないかという疑念がぬぐえずにいた。

二人の仲に不穏な空気が漂う中、二人は企業からの支援を募るために、経団連会長の生島(風間杜夫)に会いに行った。
しかし、そこには思いがけない人物が…。

第4話のレビュー

「少なくとも半年以内に関東が沈没する」

経済と天秤にかけられた人命を助けるため、手を組んだ天海(小栗旬)と椎名(杏)によって衝撃的なニュースが国民に伝えられる。

現実世界では、10月31日に第49回衆議院議員総選挙の投票・開票が行われた。誰もが各政党の政策や公約を比較しながら頭を悩ませたと思うが、何よりも国民が重要視しているのは“信頼できるか否か”ではないだろうか。

もし不都合な真実を隠されていたら?しかも、それが命に関わることだったら?

そんな不安の渦に突如として巻き込まれた国民の姿が描かれた「日本沈没」第4話。空港や駅は一刻も早く地方へ自主避難を試みる人たちで溢れかえり、中には航空券をフリマアプリやオークションサイトで高額転売する人も。株価は急落し、世の中は大混乱に陥る。

政府は未来推進会議のメンバーを中心に危機対策を開始することになったが、一方で各人の正義と正義がぶつかり合う。

特に今回顕著に現れたのは、大義のためなら強引な手段もいとわない天海と熟考してから物事を進めたい常盤(松山ケンイチ)、先ずは人命を最優先に考える東山総理(仲村トオル)と日本経済の衰退を危惧する里城副総理(石橋蓮司)の対立構造だ。

誰が国家機密を新聞社にリークしたのか。その疑いをかけられる天海だが、一度腹を括った彼は強い。大学からの盟友である常盤にも真実を明かさず、東山総理と里城副総理を上手く転がして危機対策を円滑に進める。

「何も起きなかった時は、壮大な避難訓練は終わりましたって言ってみんなで乾杯すればいい」

もしこれだけ国民を不安に陥れて、関東沈没が起きなかったら?と不安を抱える椎名に放った言葉には天海の覚悟が滲む。きっとこんな頼もしく、安心して日本の未来を預けられるリーダーを誰もが待っているはずだ。

しかし、天海の動向を密かに追っている人物がいた。その人物は関東沈没説の記事を書いた椎名と親しげに話す天海の写真を、東山総理に送りつけのだ。

天海の足を引っ張る人物の顔は見えていなかったが、おそらく内閣官房長官の長沼(杉本哲太)だろう。

長沼は東山総理のサポート役である一方、里城副総理にも頭が上がらず、対立する二人の間で器用に立ち回ってきた。かたや一官僚であるにもかかわらず、環境問題への造詣が深く東山総理から頻繁に意見を求められ、里城副総理からの妨害も上手くかわす天海の存在は、長沼にとって脅威となるだろう。

このことで天海は東山総理と常盤の信頼を失い、未来推進会議のメンバーからも外されてしまう。

失意のどん底に落ちた天海は地方へバスで避難する妻と娘を見送り、同じく母を送り出した椎名と遭遇。その帰り道、ついに恐れていた関東沈没が始まってしまうのだった。

ビルは崩れ落ち、道路はどんどんと崩壊していく。思わず息を呑むような光景に二人は立ち竦むも、すぐ我に返って走り出した。

第5話の次回予告では、常盤が中心となって奔走する姿が映し出される。しかしながら、そこに天海の姿は見えず、視聴者の不安を煽る。果たして誰よりも危機を感じ、国民と日本の未来を守ろうとした天海は無事なのだろうか。

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–{第5話ストーリー&レビュー}–

第5話ストーリー&レビュー

第5話のストーリー

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恐れていた関東沈没は突然始まった。首都圏を中心に深刻な打撃を受けた。
沿岸部にいた天海(小栗旬)と椎名(杏)も関東沈没に巻き込まれて、その被害を受ける。

さらに、天海の妻・香織(比嘉愛未)と娘の茜(宝辺花帆美)、椎名の母・和子(宮崎美子)らが乗った避難バスが、トンネル崩落事故に巻き込まれたという情報も入る。
そんな中、東山総理(仲村トオル)は総理官邸の災害対策本部から、国民に向け全力の対応を約束する。
そして、常盤(松山ケンイチ)ら日本未来推進会議のメンバーは、不安を感じながらも東山総理の指示の下、被害状況の把握や被災者の救助などの対応にあたっていた。

今や政府も国民も注目しているのは第二波がくるのかどうか。
昼夜を徹してデータの検証作業を行っていた田所博士(香川照之)が一つの結論に達する。
導き出したこととは…

第5話のレビュー

「日本沈没ー希望のひとー」の第一章が、11月14日放送された第5話で幕を閉じた。

少なくとも半年以内に沈没すると予測された“関東沈没”。日本未来推進会議を中心に政府は4000万人の避難誘導を図るが、運命の時は前触れもなく訪れる。

椎名(杏)と共に、迫り来る地割れから命からがら逃げた天海(小栗旬)が目を覚ますと街はガラリと姿を変えていた。

まだ幸いにも、沈没したのは関東沿岸部のみ。死傷者も最小限に収まった。それでも海の中にビルやマンション、レインボーブリッジが沈み、スカイツリーだけがそびえ立つ映像は中々に衝撃的だ。

被災した住民たちは混乱し、余裕のなさから至るところで諍いが起きる。なにせ、みんな「これで終わるはずがない」と思っているのだ。地震や水害のように、避難所にいれば安心というわけでもない。

もし第二波が来れば次にどの場所が沈むのかもわからない、もしかしたら関東全域が沈没するかもしれない。想像するだけでも恐ろしい状況で誰もが怯え、確かな情報を求めていた。

そんな中、データ検証から導き出した田所博士(香川照之)の結論が日本に希望をもたらす。沈没による地震で海底プレートが断裂。その跳ね返りによって、沈み込む動きが止まったのだ。

「関東沈没は最低限の被害で収束した。第二波はこない!」

力強い言葉に人々は安堵し、みんなが復興に向けて動き出す。正直なところ、第5話は不自然なほどにスピード感を持って物語が動いていった。

天海と妻の香織(比嘉愛未)や娘、椎名と母・和子(宮崎美子)との感動的な再会。そして何よりも市民の避難を優先し、被害を最小限に留めた功績を認められ、天海が仕事に復帰するなど、最終回のような展開が続く。しかし、本作のタイトルに今一度注目してほしい。

“関東”沈没ではなく、“日本”沈没なのだ。

視聴者の嫌な予感は的中し、関東沈没はこれから訪れる絶望の前触れでしかなかったことに田所博士は気づく。名古屋で、わずかにスロースリップ現象が観測されたのだ。

次回予告では、「第二章 日本沈没篇」というテロップを皮切りに、今度は日本沈没から国外へ逃れる人々の姿が描かれていた。関東4000万人の次は、日本1億2千万人の避難。しかも、その先に見知らぬ土地で移民として暮らすことを想定して、政府は計画を進めなければならない。

日本が世界から忽然と姿を消す。そんな状況下でも、天海たちは確かな希望を見出すことはできるのだろうか。

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–{第6話ストーリー&レビュー}–

第6話ストーリー&レビュー

第6話のストーリー

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日本未来推進会議に天海(小栗旬)が戻って来た。首都東京の復興に向けて、取り組む決意を誓い合う。

国民も日常を取り戻しつつあり、政府でも、復興に向けた議論が進められていた。
その復興計画をめぐり、東山総理(仲村トオル)と里城副総理(石橋蓮司)は再び対立。
関東沈没を経て、東山も里城に立ち向かう覚悟を決めていた。

しかし、東山主導のもと、未来推進会議が進めていた復興計画に突如ストップがかかる。里城が東山の覚悟を上回る奇策を講じてきたのだ。

そんな中、天海は田所博士(香川照之)に呼ばれる。
そこで伝えられたのは日本沈没、という事実。
1億2千万人の命を救うために、動かなくてはいけなくなる。
ただ、里城だけはその事実をいまだに認めていない。天海は独断で、国民の命を救うためにできることをやろうとするが、高い壁に阻まれる。
そんな中、衝撃の出来事が起こる!

第6話のレビュー

今年8月、反政府勢力タリバンがアフガニスタンの首都カブールを制圧。国外脱出を切望する市民で溢れかえったカブール国際空港や、離陸する米軍の輸送機にしがみつき、落下する人たちを映し出した映像は世界中に衝撃を与えた。

あの時、アフガニスタンで起きていることを“遠い世界の話”ではなく、自分事として捉えた人はどれくらいいるだろう。

あれから3ヶ月、「日本沈没」は私たちに問う。「もしも日本が安心して暮らせる国ではなくなり、国外へ避難するしか道がなかったとしたら?」と。


天海(小栗旬)も仕事に復帰し、関東全体の復興に向けて動き出した日本未来推進会議。

その中で企業を積極的に地方へ移転しようと提案する東山総理(仲村トオル)と企業を中心に首都東京の復興を進めたい里城副総理(石橋蓮司)が対立。再び権力争いが起きるのは、良くも悪くも日常が戻り始めていることを知らせてる。

しかし、裏では刻一刻と日本の悲惨な運命が近づいていた。

誰もが希望を信じ、前進もうとしていた矢先。田所博士(香川照之)から天海たちに「1年以内に日本沈没が始まる」という衝撃的な事実が突きつけられる。目の前の現実を受け止めようにも、頭が追いついていかない彼らの表情がリアルだ。

けれど、関東の一部沈没を経験したため、誰もがショックを受けて立ち止まっている暇などないことを知っている。今度は“日本沈没”を最大の国家機密とし、1億2千万人の日本人を他国に移民として受け入れてもらうため、日本未来推進会議は水面下で動き始めた。天海も今回ばかりは慎重な対策に同意する。

一方、関東沈没の時と同じようにメディアで勝手な発言を繰り返す田所。それを契機として、日本沈没への対策に待ったをかけたのが、誰よりも混乱の最中にいる里城副総理だ。関東沈没の第二波が来るという情報が環境ビジネスで荒稼ぎするDプランズ社に漏れており、里城副総理は田所博士に漏洩の疑いをかける。

関東沈没をその目で見たはずの里城副総理が、なぜそこまでして田所博士の主張を退けるのか。それは、きっと誰よりも彼が起こりうる悲劇に怯えているからだろう。現実から目を逸らし、思考停止に陥った姿はあまりにも痛々しく、それでいて悲しい。

問題は田所博士が捕まってしまったら、今後は誰がスロースリップの検証をするのか。その存在を失ってしまったら、日本未来推進会議は確かな情報もないまま、対策を講じていかねばならない。

天海の「こんなことをして何になるって言うんだ!」という叫びは、数々の現実から目を逸らしてきた一人ひとりに語りかけられている。

※この記事は「日本沈没ー希望のひとー 」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第7話ストーリー&レビュー}–

第7話ストーリー&レビュー

第7話のストーリー

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日本沈没の機密情報を漏洩した疑いで、田所博士(香川照之)が東京地検特捜部に連行された。
国家機密とされていた日本沈没も里城副総理(石橋蓮司)主導のもと、なかったことにされようとしていた。

追い討ちをかけるように、著名なジェンキンス教授(モーリー・ロバートソン)も日本沈没を否定。企業の協力も得ることができず、天海(小栗旬)は、窮地に追い込まれる。

一方、Dプランズから政府に接触があり、海外の土地購入の話を持ちかけてくる。秘密裏に動くべく、その土地を東山総理(仲村トオル)は購入を決断。
そんな中、天海は椎名(杏)の協力を得ながら、田所を陥れたい人物を特定しつつあった。
その人物とは……?

そして、すべてが明らかになった時、世界との駆け引きが始まる。
はたして、日本人総移民の希望を見出すことができるのか。

第7話のレビュー

「日本沈没」第7話。最終回まで残りわずかというところで、本作がようやくスタートラインに立った気がした。

日本全土が1年以内に沈没すると予測した田所博士(香川照之)の逮捕。それを受け、里城副総理(石橋蓮司)は移民交渉の切り札として用意していた日本企業と共に首都復興に乗り出す。関東沈没説を支持していたジェンキンス教授(モーリー・ロバートソン)までも、里城副総理へ大義名分を与えるように日本沈没を否定。

まるで、最初からなかったことのように日本沈没は闇に葬られようとしていた。

前回のラストで、天海が叫んだ「こんなことをして何になるって言うんだ!」という言葉が脳裏をよぎる。不都合な真実から目を逸らしても、現実は何も変わらない。永遠に繁栄し続けると信じた日本と共に、いつの間にか自分の身体も海へ沈みゆくかもしれないのに何故——?

そこには建国から2681年、日本人が積み上げてきたものを一瞬で失い、見知らぬ土地へ放り出されることへの「恐怖」と「怒り」があった。

天海が椎名(杏)の協力を得て、田所博士を陥れた人物を探ったところ、黒幕の存在が発覚。Dプランズ社と手を組み、事前に買い付けた海外の土地を政府に多額で売り捌こうとしていたのは長沼官房長官(杉本哲太)だった。

政府が日本企業の海外移転を条件に移民枠を獲得すると、Dプランズが購入した土地が売れなくなってしまう。長沼はそれを恐れ、田所博士の助手を脅してジェンキンス教授に不完全なデータを送っていたのだ。

ジェンキンス教授は、改めて田所博士の日本沈没説を支持する。長沼も東京地検に連行され、何も知らなかった里城副総理は憔悴しきっていた。そこから里城副総理が現実を受け入れるまでの複雑な心境を表現した石橋蓮司の演技が圧巻だ。

「戦後のどん底から、我々が必死に、必死に築き上げてきた産業や文化はどうなるんだ。真面目で勤勉な日本国民が、努力を重ねて守り続けてきたこの豊かさと繁栄も、丸ごと沈むというのか」「日本は沈むんだな」

戦後を生き抜いてきたからこその言葉が重い。振り絞るようなセリフ回しが、積み上げてきたものを一瞬で壊される絶望を物語っていた。

しかし、「希望のひと」というサブタイトルにもあるように、絶望の中にも希望は生まれる。現実を受け入れ、再び立ち上がった里城副総理は強かった。生島自動車の移転を交渉カードに、里城副総理は中国から1000万人の移民受け入れを取り付ける。

また田所不在の間、データ検証を行っていた世良教授(國村隼)も実質研究職に復帰。田所博士との因縁も解消され、二人は手を取り合って、今後の検証作業に入る。

全てがうまく行き始めた。そう思った矢先、中国と同時に交渉を進めていたアメリカに、「(生島の移転先は)必ずアメリカでまとめる」と東山総理(仲村トオル)が勝手に約束していたことが明らかとなった。

さらにはアメリカの大統領が早々に、ナショナルモータースと生島自動車の合併を会見で発表。不信感を持った中国も日米両政府に抗議を表し、なんと日本沈没を全世界に発表してしまうのだった。

最終回まで残り2話。日本の大混乱が予測される今後、天海たちは無事に1億2000万人の国民を海外に避難させることはできるのだろうか。

※この記事は「日本沈没ー希望のひとー 」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第8話ストーリー&レビュー}–

第8話ストーリー&レビュー

第8話のストーリー

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アメリカの会見を受けて、中国は日本政府との移民交渉を完全に遮断。そして、世界各国も中国の動きに同調し、もはや世界との移民交渉の窓口は閉じられた。
また、日本沈没という情報が全世界に知れ渡り、日本国内でも政府や東山総理(仲村トオル)に対しての怒りやデモは日増しに高まっていた。

そんな中、中国に再度交渉しに行った日本政府は、到底不可能な条件を突きつけられる。
天海(小栗旬)と常盤(松山ケンイチ)は、何とか移民交渉を進めるために中心となって動くが、なかなかうまくいかない。

八方塞がりの中、田所博士(香川照之)からは日本沈没はいつ起きてもおかしくないという話を聞かされる。

追い込まれた天海は、唯一の打開策を思いつく─
それは、中国に対しての一か八かの危険な賭け。里城副総理(石橋蓮司)の協力も得て、その賭けに出る天海だったが…。
そして、衝撃的な出来事が待ち受けていた…

第8話のレビュー

極秘で進められていたアメリカと中国への移民交渉が、東山総理(仲村トオル)のミスで失敗に終わった。日本沈没の情報が全世界に知れ渡ると状況は一変。中国を裏切った代償は大きく、日本は信頼を失って円は大暴落、世界との移民交渉も頓挫してしまう。

自暴自棄になって居酒屋で暴れる者や、COMS事業を推し進めた東山総理を批判する街宣車も現れた。関東沈没を乗り越え、復興に向けて歩み始めた国民の夢や希望が一瞬にして打ち砕かれたのだ。無理もない。

1億2千万人の移民先は見つかるのか。見つかったとして、無一文で見知らぬ土地に放り出された国民の生活は保障されるのか…。

日本が未曾有の危機に直面した時、天海(小栗旬)が「やっぱり希望が必要だな」と呟く。「日本沈没」第8話は、いよいよ本作のテーマである“希望”に深く切り込む回となった。

再び中国政府との交渉に乗り出した日本政府だったが、常盤医療を含む大企業5社を譲り渡すという厳しい条件を突きつけられる。しかし、常盤(松山ケンイチ)の父・統一郎(小野武彦)はこれを拒否。大切な社員を少しでも良い環境で働かせたいという会長としての責任から、独自にカナダとの移民交渉を進めていた。

そんな中、天海は行きつけの居酒屋で愛(与田祐希)が呟いた「この街ごとみんなでどっかの国に移動できたらいいのに」という言葉からヒントを得る。天海が統一郎と里城副総理(石橋蓮司)に提案したのは、関東沈没後に考えていたグリーンシティ構想の応用。企業5社の移転場所に日本人移民を振り分けて、各地にジャパンタウンをつくる計画だ。

「そして、いずれ世界中のジャパンタウン同士がネットに繋がる。日本の国土が失われても、日本人は世界のあらゆる土地で未来を作っていく。国土を失う日本人にとって、“希望”となるんじゃないでしょうか」

日本・中国両国にメリットがある現実的な施策でありながら、新たな未来に高揚感すら抱くような天海の提案に度肝を抜かれる。一縷の望みをかけ、天海と里城は中国に渡って楊元国家主席と交渉。40年前に日本企業団を中国へ連れてきた里城に恩義を返したいと、楊元国家主席は現主席に天海たちの思いを伝えると約束してくれた。

無事に中国からジャパンタウン構想受け入れの連絡が入り、固く抱き合う東山と里城。

「残したいものはたったひとつだけ
似た者同士だねって笑う、そんな景色だ」

主題歌「ラストシーン」(菅田将暉)のワンフレーズが、ずっと対立していた二人の抱擁を言い表しているようだった。移民を躊躇する人たちに椎名(杏)が用意した海外からのメッセージも胸を打つ。国土をたとえ失っても、全てが無駄になるわけではない。やっと見出すことができた希望は奇跡なんかじゃなく、何十年何百年と人々が紡いできた道のりの先に必然と現れた結果だ。

次回、ついに「日本沈没ー希望のひとー」が最終回を迎える。

※この記事は「日本沈没ー希望のひとー 」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第9話ストーリー&レビュー}–

第9話ストーリー&レビュー

第9話のストーリー

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東山総理(仲村トオル)を狙ったテロのニュースは、全世界に大きな衝撃を与えた。
国内の情勢が不安定と判断されて移民計画に影響することを恐れた日本政府は、早急に里城副総理(石橋蓮司)を総理代行にして世界へアピール。
しかし、移民計画が進行していた矢先に、さらに予期していなかった悲劇が起こってしまう…。

天海(小栗旬)、常盤(松山ケンイチ)ら未来推進会議が中心となって事態の打開に挑むが、状況は改善しない。そして、遂に全世界で日本人移民の受け入れ停止が発表される。

そんな中、追いうちをかけるように田所博士(香川照之)から、「日本沈没までもう時間がない」と警告される。それでも最後の一人を救うまで、天海は関東に残って立ち向かう決意をする。

そして、ついに恐れていた日本沈没が─
天海や常盤は、無事なのか…
日本人にとって希望のひととなれたのか!?

第9話のレビュー

まさか最終回で、新型コロナウイルスが蔓延した現実世界とリンクする状況が描かれるとは思いもしなかった。

「日本沈没ー希望のひとー」第9話。最終回は実に2時間3分という放送の中で、怒涛の展開を見せていった。

まずは、東山総理(仲村トオル)を狙ったテロの発生で世良教授(國村隼)が犠牲に。研究職に復帰し、田所博士(香川照之)との最強タッグが実現するかと思われた矢先の出来事は私たちに大きな衝撃を与えた。しかし、世良の死には、キャスト・スタッフがこの物語を通じて伝えたかったある“願い”が込められていたように思う。

事件前、経済活動を後押しするために都合良く学問を使ったことへの後悔を東山に語った世良は、「自分のように間違えないでほしい」と日本の未来を天海(小栗旬)と常盤(松山ケンイチ)に託してこの世を去ったのだ。

一時はテロ発生のニュースが「日本の情勢が不安定」との印象を世界に与えたが、大怪我をした東山の職務を引き継いだ里城副総理(石橋蓮司)から世界へのメッセージにより移民計画には大きな影響を及ぼさなかった。

生島会長(風間杜夫)が移民担当特命大臣に就任し、国内では1億2千万人の移民先を決定する抽選が始まる。どこの国に、誰と移住するか。一人ひとりの国民が少しでも早く、希望の国に行けるよう心の底から願っていた。

もちろん、中には見知らぬ土地に赴くことへの不安から、たとえ沈没しても日本を離れたくないと願う人たちも。天海の母・佳恵(風吹ジュン)や地元の人たちもそうだった。どうすれば、彼らにも希望を持ってもらえるのか。天海をはじめとした日本未来推進会議は「地域単位での移民申請」を可能にし、ついに移民申請者が1億人を突破。移民枠も続々と獲得し、計画は順調に進んでいると思われた。

しかし、ここにきてルビー感染症の変異株が国内で蔓延。変異株にはこれまでルビー感染症に有効だった常盤医療の薬は効かず、患者が死亡する例が相次いだ。天海の元妻・香織(比嘉愛未)の新たな恋人も犠牲になってしまう。さらに、既に日本人が移民した国でも続々とルビー感染症が発生し、パンデミックを恐れた各国が日本人移民受け入れを停止する事態に。

なんとか閉ざされた世界の門をこじ開けたい……。絶体絶命のピンチでも前を向く天海が田所から聞かされたのは、温暖化によりグリーンランドの永久凍土から溶け出した病原菌がルビー感染症の元になっているかもしれないという見解だった。

そんな中、常盤医療とハタ製薬の薬を複合投与した感染者の容態が劇的に回復。東山は世界環境会議で二社の製造特許放棄を宣言した上で、日本沈没や人を死に至らしめるウイルス蔓延を引き起こした地球温暖化は、世界中が取り組むべき問題であることをアピールした。

「この決断に私たちが至ることができたのは、日本沈没という危機の中で命こそが本当に大切で、本当に尊いものであることに改めて気づかされたからです」

熱がこもった東山の訴えは、私たちがこの2年間で実感したことでもある。日本が誇る大企業や美術品、特許技術を譲渡しても守りたかったもの。それは誰かにとって宝物のような存在である人々の命だ。

本作は全話を通して「守るべきは経済か?人命か?」というテーマを貫いてきたが、それは日本沈没に限ったことではなく、私たちの経済活動が起因となってもたらされた環境問題にも向けられている。

結果として、関東を起点に始まった日本沈没は九州と青森でストップ。それは国土を失う日本人にとって唯一の希望とも思えたが、逆に我々が生きる地球はそんなギリギリの状況にあることを示唆していたのかもしれない。このまま悲鳴を上げる地球の声を無視し続けていたら、いつか「日本の一部が残っただけマシ」と思えてしまう状況が訪れる。田所はどんなに周囲から疎まれようとも日本の危機を訴え続け、その声に天海は真剣に耳を傾けた。それが何よりの希望だ。

「止められるのは今しかないぞ。それができなければ、間違いなく地球は終わる」(田所)

「その未来は僕ら一人ひとりの未来にかかっている」(天海)

二人から地球の未来は私たちに託された。これまで何度も映像化されてきた小松左京の同名小説を大胆にアレンジした令和版「日本沈没」。そのラストには、“ただのエンターテインメントとして消費させるものか”というキャスト・スタッフの覚悟が滲んでいた。

(文:シネマズ編集部)

※この記事は「日本沈没ー希望のひとー 」の各話を1つにまとめたものです。

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–{「日本沈没ー希望のひとー 」作品情報}–

「日本沈没ー希望のひとー 」作品情報

小栗旬が11年ぶりに日曜劇場に戻ってくる!
環境省の官僚として、日本沈没という未曾有の危機に立ち向かう!
さらに、共に戦う共演者に松山ケンイチ、杏、仲村トオル、香川照之が決定!
– 信じられるリーダーはいるか。あきらめない。未来は絶対に消させない! –
盤石の布陣が日本の危機に挑む!

出演
小栗旬/松山ケンイチ/杏/ウエンツ瑛士/中村アン/与田祐希(乃木坂46)/國村隼/小林隆/伊集院光/風吹ジュン/比嘉愛未/宮崎美子/吉田鋼太郎(特別出演)/杉本哲太/風間杜夫/石橋蓮司/仲村トオル/香川照之

原作
小松左京「日本沈没」

脚本
橋本裕志

音楽
菅野祐悟

主題歌
菅田将暉「ラストシーン」(Sony Music Labels Inc.)

地震学監修
山岡耕春
篠原雅尚

記者監修
龍崎孝

演出
平野俊一
土井裕泰
宮崎陽平

プロデュース
東仲恵吾

製作著作
TBS

キャスト/スタッフコメント

小栗旬 コメント

「日本沈没」という未だかつてない困難に立ち向かっていく作品です。
ただでさえ苦しい環境の中、この題材は非常に難しいお話ですが、その中でも“希望”と“人間の強さ”を届けられるよう、自分を含め、キャスト・スタッフ全力で希望を持って真摯に作品に向かっていきます。
今を生きる皆さんへの賛歌になれるような作品にしていきたいと思っておりますので、ぜひご期待ください。

松山ケンイチ コメント

まだ全ての台本が手元に無いのでどんな話になるのか分かりませんが、想定外の国の危機に日本人はどう立ち振る舞っていくのか、どう助け合っていくのか、どんな答えが出るのか、楽しみです。
客観的に国のこととそこに生きている自分自身を見つめ直すきっかけになる作品になると思います。

杏 コメント

今回初めてTBS連続ドラマにレギュラー出演させていただくことになりました。
日本沈没というどうしようもない自然の脅威にどう立ち向かうかというキャラクターたちの姿は、今の混乱の世の中で戦っている皆様と近い気持ちで共鳴し合えるのかなと思っています。そして、演じる私たちもそのような不安や脅威を抱えつつ乗り切ることになります。これを映像として残せることは意味があるような気がしています。万全の体制で挑みつつ、全力でぶつかっていきたいと思います。

仲村トオル コメント

2007年の『華麗なる一族』以来の日曜劇場。はじめての総理大臣役に緊張しています。
僕が演じる東山首相は、物語のはじめは一国のリーダーとしてはやや弱く甘い男に見えますが、逆風の中、上り坂を登った足に力がつくように、最終回を観た人たちに、困難な状況の日々でも諦めず前を向いて歩き続けた人間の未来には少し強くなった新しい自分がいる、というような希望を感じていただけるように全力で頑張ります。

香川照之 コメント

政府側の海洋環境改革方針に対し、独自の理論で徹底的に異論を唱える頑固な博士の役です。ドラマの原作は何十年も前のものですが、環境破壊問題はいま別の形でこの地球を襲っています。その意味でも我々には、未来まで持続可能な環境への取り組みが不断に求められている。日本が沈没するという、かつては荒唐無稽と思われたテーマを通して、地球が現在抱えている多くの課題を、改めてこのドラマで訴えていきたいと思っています。

脚本家・橋本裕志 コメント

今へ、未来へと繋がる、新たな『日本沈没』を目指して、これまでに映像化されたものとは違った角度からのアプローチで取り組んでいます。
危機を前にした時にあぶり出される人間の様々な感情や、思いのぶつかり合い、極限状態だからこそ繰り広げられる人間ドラマが、そこにはあります。
明日が見えない中で、それでも希望を探して生きていく登場人物たちのエネルギーを通して、皆さんに勇気を与えられる作品をお届け出来ればと考えています。

プロデュース・東仲恵吾 コメント

今作のテーマは、未来への希望です。日本沈没が目前に迫ってくる中で、決して諦めずに今やるべきことを全力でやる人たちの人間ドラマを丁寧に描いていきたいと思っています。
そして「未曾有の危機でもこの人たちなら救ってくれるんじゃないか」そう思わせてくれる力強いキャラクターを、小栗旬さんをはじめ、松山ケンイチさん、杏さん、仲村トオルさん、香川照之さんと共に議論しながら、ドラマ版オリジナルキャラクターを作り上げました。
最後まで立ち向かった先にある“希望”を精一杯の熱量で作りたいと思います。