<ネタバレ厳禁>なるべく何も見ずに観たほうがいい映画「11」選

映画コラム

基本的に、映画は「何も知らずに観たほうがいい」というのが個人的な持論としてある。

もちろん「あらすじ」程度のことは知っていた方が話の流れが飲み込みやすくなるし、作品の特徴を知ることが観る動機にもなる。続編やシリーズものであれば関連作品を知っていた方が楽しめるし、時代背景を知っておいたほうがより興味深く観られる場合もある。

だが、映画の中には「何も予備知識を入れないまま観て!」と主張したい作品も存在する。あらすじすらも観る人によってはネタバレになったり、中核となる魅力そのものがネタバレ厳禁であったり、タイトルを検索するだけでもネタバレになってしまいかねない作品もあるからだ。

ここでは、そんな風に「ネタバレを踏む前にとにかく観て!」と訴えたい映画を11作品紹介しよう。奇しくも、2021年の11月に「ほとんど何も知らないまま観てほしい」優れたスリラー/ホラー映画が連続して公開されるので、このタイミングで紹介しておきたかったのだ。なお、知っていても問題のない程度のあらすじ、もしくはむしろ知っておいて欲しいと思う情報は記している。ご容赦いただきたい。

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1:『フロム・ダスク・ティル・ドーン』(1996)

続編やテレビシリーズも作られた人気作だ。「強盗殺人犯の兄弟が、平凡な家族を脅して逃亡に加担させる」というあらすじ以外は何も知らないまま、サスペンスフルな犯罪映画およびロードムービーを期待するのがおすすめだ。冷静な兄役のジョージ・クルーニーが、トラブルメーカーのクエンティン・タランティーノを何とかしようと四苦八苦する様が何とも可笑しかったりもする。

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2:『パッセンジャー』(2016)

約5000人の人間を乗せた超大型宇宙船の中で、人工冬眠ポッドの故障により1人の男が目覚めてしまうという物語だ。しばらくして彼はもう1人の目覚めてきた女性と2人きりの時間を過ごすのだが……。観た後は、劇中のとある「秘密」について、誰かと「あなたならどうする?」と議論を交わしたくなるだろう。賛否両論もある作品だが、俳優の演技力が際立つドラマと、大作SF映画ならではの派手な見せ場は大いに楽しめるはずだ。

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3:『大脱出』(2013)

こちらは日本の宣伝および売り出し方に問題がある。日本の予告編の冒頭から、中盤で明らかになる重大なネタバレが提示されており(そのためこの記事では海外版の予告を貼っている)、ポスターにもその文言が大きく載るばかりか、一部の動画配信サービスの説明文からも堂々と記されているのだ。NetflixやU-NEXTでは説明文でのネタバレはなかったので、そちらで観てみるといいだろう。本編はツッコミどころは満載だが、シルヴェスター・スタローンとアーノルドシュワルツェネッガーの豪華共演ぶりを大いに楽しめるだろう。

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※リンク先の紹介文、予告編映像はネタバレ注意!

4:『スプリット』(2016)

23人の人格を持つ男と、拉致監禁された3人の女子高生との攻防戦が展開するスリラーだ。監督は『シックス・センス』(1999)や『アンブレイカブル』(2000)などのM・ナイト・シャマランであり、その過去作をなるべく多く先に観ておいたほうがいいだろう。なぜなら、それぞれの映画に「作家性」が如実に表れており、その価値観や美学を知っておいたほうが、よりこの『スプリット』を楽しめるからだ。「すべての事象に意味があるのかを摸索する」シャマラン監督ならではの物語が、本作でどう帰結するのか、楽しみにして観て欲しい。

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5:『カメラを止めるな!』(2017)


※予告編もネタバレ注意!

もはや説明不要、インディーズ映画でありながら口コミで社会現象を巻き起こした伝説的な作品だ。ブームとなったのは「この映画に関しては内容は何も言えないんだ!とにかく観てくれ!」と観た人がその衝撃そのものをネタバレできないことを含め語ったことも理由にあるのではないか。広く知れ渡った作品であるが、まだ観たことがないという方は、あらすじも見ないまま、「ゾンビ映画」というジャンル以外は知らずに観て欲しい。ちなみに、『アーティスト』(2011)のミシェル・アザナヴィシウス監督によるフランス版リメイクが日本でも2022年に公開予定である。

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–{後半、6作品は…?}–

6:『ドロステのはてで僕ら』(2020)

カフェオーナーの男が、モニターから「2分後の自分」が話しかけてくる様を目の当たりにすることから始まる物語だ。その後に起こることは実際に観て欲しいが、とにかく「全編ほぼワンカット・リアルタイム進行の映画」の最高傑作であり、「小さな範囲のSF映画」の最高傑作であり、「この世で一番面白い70分間(上映時間)」であることを断言しよう。人気劇団のヨーロッパ企画が手がけた練りに練られた脚本、映画という媒体だからこそ可能だったアイデアが素晴らしく、それを実現したスタッフとキャストの奮闘に心から拍手を送りたくなる。なお、タイトルにあるドロステとは「同じイメージが再帰的に繰り返される視覚効果」を意味している。

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7:『ミセス・ノイズィ』(2020)

大音量の音楽を流すなどして騒音を出し続け「騒音おばさん」の名前で有名になった2005年の奈良騒音傷害事件をモチーフとした映画だ。序盤こそ「ヤバいお隣さんとのバトル」がコミカルに描かれるのだが、次第に「笑えない」事態になっていく。心の平穏が奪われていく様はもはやホラーであり、中盤ではさらなる驚きの展開が、そしてクライマックスには予想もつかない感動が待ち受けていた。SNS時代の炎上や誹謗中傷、もっと広い意味での差別や偏見など、誰にとっても他人事ではない問題も描かれているので、より多くの人に観て欲しい。

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8:『黄龍の村』(2021年9月24日公開)

「若い男女が『村の決まり』のために阿鼻叫喚の地獄へ落ちる!」という「和製『ミッドサマー』(2020)」とも言える内容だ。PG12指定ならではのエグ目のホラー描写が続くかと思いきや、その後はネタバレ厳禁の予想の斜め上へと突っ走る。上映時間が1時間6分とタイトで無駄が全くなく、「いっぱい楽しんでいってね!」なサービス精神に溢れた映画となっていた。間違いなく「なるべく何も知らずに観たほうがいい度」は最高峰だろう。なお、監督は殺し屋の女の子2人の青春アクション映画『ベイビーわるきゅーれ』がSNSで熱狂的な支持を得た阪元裕吾で、2021年はさらに『ある用務員』と『最強殺し屋伝説国岡[完全版]』も公開されるという阪元裕吾監督祭りが起きていた。いずれもバイオレンスでありながらどこかユーモラスで親しみやすい(?)作品なので、ぜひ観て欲しい。

9:『アンテベラム』(2021年11月5日公開)


※予告編もネタバレ?注意

輝かしい成功を収めたベストセラー作家と、苦しい労働を強いられるアメリカ南部のプランテーションの奴隷という、全く異なる2つの視点が並行して描かれるスリラーだ。一見するとホラー映画のように見えるが、前述した『スプリット』などのM・ナイト・シャマラン監督作品や、同じく人種差別がテーマのホラー『ゲットアウト』(2017)が好きな人におすすめの、「謎解き」スリラーと言った方が近い。ほとんどが日常的な会話で構成されているのだが、そこはかとなく「違和感」を感じるところがあり、それらからジワジワと、時にはっきりと「真相」が明らかになっていく。重要なのは、この仕掛けが単に気をてらったものではなく、それ自体が作品の主題を伝えるために必要だった、ということだ。冒頭で表示されるメッセージを、よく覚えておくことをおすすめする。オープニングの「作り込み」と「カメラワーク」も圧巻。きっと「2回観たくなる」だろう。なお、タイトルの「antebellum」は「南北戦争前(戦前)の」という意味である。

10:『マリグナント 狂暴な悪夢』(2021年11月12日公開)

『ソウ』(2004)のような低予算スリラーから、『ワイルド・スピード SKY MISSION』(2015)や『アクアマン』(2018)のような大作アクション映画まで、クオリティの高い娯楽作を続々と手がけるジェームズ・ワン監督が、『死霊館 エンフィールド事件』(2016)以来5年ぶりにホラー映画でメガホンを取った作品だ。はっきり言って、これは超絶面白い!「夢で見た殺人が現実でも起こる」というホラーでは定番とも言える設定だが、実際の本編では「それ以上のもの」が観られる。残酷描写のため(エロは皆無)R18+指定という高いレーティングだが、意外にコミカルな描写も多く、「姉妹萌え」もあったりして親しみやすく、何より圧倒的なエンターテインメント性のおかげでのめり込んで観られるだろう。「新次元の恐怖」という触れ込みが伊達ではない、個人的には2021年に公開された全ての映画の中でもベスト級の大傑作だ。なお、タイトルの「malignant」は「悪性の(悪意のある)」という意味である。

11:『聖地X』(2021年11月19日公開)

同名人気舞台の映画化作品だ。物語の中心となるのは、とある「怪奇現象」。公式サイトでは恐ろしいホラーという印象を持つかもしれないが……実際の本編は「笑える」内容でもある。ジャンルとしても、ホラー以外に「○○もの」というはっきりしたものがあるのだが、それも知らずに観たほうがいいだろう。入江悠監督は「オラこんなイヤだ」な閉鎖的な村社会での気味悪さや嫌らしさを描くことが多いのが、今回もその作家性が「呪われた土地」という要素で最大限に発揮されていた。二転三転する展開がとにかく面白いので、幅広い層が楽しめるだろう。「ちょっとダメだけど優しいお兄ちゃんの岡田将生が、夫からひどい裏切りをされた妹の川口春奈のために一緒に住み始める」という兄妹の関係性が萌えるので、この2人のファンには是が非でも観て欲しい。なお、劇場での公開と、auスマートパスプレミアムとTELASAでの配信が同時に開始される作品でもある。

まとめ

他にも連作である『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』(2012)や『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)はあらすじそのものがネタバレと言えるし、『22年目の告白 私が殺人犯です』(2017)や『パラサイト 半地下の家族』(2019)はツイストの効いた展開がネタバレ厳禁の嵐だったりもしていた。

これらは「ラストのどんでん返し!」だけではないからこそ、ネタバレに遭遇しやすいとも言える。ラストシーンはどんな作品であれネタバレと言えるため誰彼構わず話してしまうということは少ないとは思うが、これらの作品の中には冒頭や中盤の時点でネタバレ厳禁の展開があったり、はたまた作品の「構造」そのものがネタバレだったりもするのだから、うっかりSNSで書き込んだり、話してしまいやすい(ネタバレを踏みやすい)と言えるのだ。

とはいえ、これらの映画を紹介する紹介・解説文や関連情報の多くは、もちろんネタバレに触れずしっかり作品の魅力を掲げているものが多いので、参照して欲しいという気持ちもある。実際に映画を鑑賞した後にそれらを読むのもいいだろう。

何よりここに掲げた作品を見て、「ネタバレってなんのこと?」と思っている方は幸運だ。ぜひ、その予備知識がほとんどない状態で、これらの映画を楽しんでほしい。ネタバレを踏んだとしても、あまりナーバスになりすぎず、その「仕掛け」をむしろ楽しみに観てみるのもおすすめだ。

(文:ヒナタカ)

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