“ピノキオ”といえばディズニーのアニメーション映画をはじめとして世界中で幅広く知られる物語であり、ウソをつくと鼻が伸びるなど子どもたちへの教訓を示唆してくれている人気キャラクターでもありますが、本作は『ゴモラ』などで知られるマッテオ・ガローネ監督が、そもそもの原作であるイタリアの作家カルロ・コッローディによる児童文学の世界観により近づけながら手掛けた作品で、そうするとどこかしら美しくも不気味で残酷、それでいて甘美なダーク・ファンタジーとしての色合いがぐっと強まるという興味深い印象の作品に仕上がっているのでした。
何よりも木目の肌の質感が実にリアルなピノッキオ(フェデリコ・エラピ)のキャラクター構築が秀逸で、可愛くもあり、人間になりたいと臨む純朴な悪ガキとしての愛らしさが自然に醸し出されています。
一方で特殊メイクによるさまざまなクリーチャー・キャラクターたち、特にコオロギの造形は登場した瞬間「ホラーか?」と思えるほどで、また森の中や後半の海などに登場してくるさまざまなクリーチャーたちもそれぞれ大いに異彩を放ちつつ、それによって妖精の美しさも一層引き立つ効果をもたらしているかのようです。
総じて、一見ファンタジーと夢見がちに唱えられがちなジャンルの奥底に潜むダーク・テイストと、それゆえに人は惹かれてしまうといった闇の諸要素、即ち人生そのものまでも見事に描出されており、たとえば『シザー・ハンズ』『アリス・イン・ワンダーランド』などを手掛けたティム・バートン監督も、本作の原作児童文学などの影響を多分に受けているのかもしれません。
ジェペット爺さんに扮するロベルト・ベニーニの名演も忘れられないところで、実は彼、2002年に映画『ピノッキオ』を監督・主演したこともあり、そういった縁もあってか、実に本作の趣旨にも賛同しながらノリノリで演じている感が大いに窺えました。
(文:増當竜也)
ーーーーー
cinemas PLUS コミュニティを作りました!
・お気に入りの著者をフォロー&記事のブックマーク
・ムビチケや独占試写会プレゼントのご案内
・週2回メルマガ配信
今後もコミュニティ会員限定のプレゼントやイベントを企画予定!
コミュニティ登録はこちらから↓
https://cinema.ne.jp/auth/register
–{『ほんとうのピノッキオ』作品情報}–
『ほんとうのピノッキオ』作品情報
【あらすじ】
ある日、貧しい木工職人のジェペット爺さん(ロベルト・ベニーニ)によって丸太から作られた人形が、命を吹き込まれたように喋り始める。ピノッキオ(フェデリコ・エラピ)と名付けられたそのやんちゃな人形は、ジェペットのもとを飛び出し、森の奥深くへと誘われる。道中、ターコイズ・ブルーの髪を持つ心優しき妖精の言いつけにも、おしゃべりコオロギの忠告にも耳を貸さないピノッキオ。「人間の子どもになりたい」という願いを叶えようと、ピノッキオはなおも命からがらの冒険を繰り広げてゆくが……。
【予告編】
【基本情報】
出演:ロベルト・ベニーニ/マリーヌ・ヴァクト/フェデリコ・エラピ
監督:マッテオ・ガローネ
上映時間:124分
映倫:G
製作国:イタリア