吉高由里子の魅力:『最愛』でのヴィジュアル最強説をここに宣言する

俳優・映画人コラム

金曜ドラマ「最愛」(C)TBS

2021年10月期 TBSドラマ『最愛』で、純真な高校生/艶麗な社長・真田梨央という女性の過去/現在を演じる、吉高由里子。

本ドラマのプロデューサー&演出家は、『夜行観覧車』、『Nのために』、『リバース』、『私 結婚できないんじゃなくて、しないんです』、『アンナチュラル』、『MIU404』他、挙げきれない程の名作ドラマを世に送り出す鬼才・新井順子×塚原あゆ子のタッグ。聞けば納得。

原作は、奥寺佐渡子と清水友佳子によるオリジナル脚本。この二人、『夜行観覧車』と『リバース』でもW脚本を務め、『リバース』では第93回ザテレビジョンドラマアカデミー賞を受賞という黄金コンビ。

非の打ち所がない制作スタッフと豪華俳優陣が集結し、放送前から期待が高まりに高まっていた『最愛』。
今夜、第3話が放送となるが、これからの展開に目が離せない…もはや一週間も待てない。困った困った。

金曜ドラマ「最愛」(C)TBS

冒頭でも記載した通り、本作品で吉高由里子は【過去】純真な高校生と【現在】艶麗な社長の一人二役を熱演。いや、同一人物なので二役ではないのだが、一人二役と言っても過言ではないほどのキャラクターの違いを魅せつけてくれている。

年齢についてあまり言及したくはないが、今年33歳の吉高由里子が高校3年生を演じるのはさすがに無理があるのでは…と思っていたものの、化粧っ気のない天真爛漫なその姿は紛れもなく高校生で、驚くほどに違和感がない。

金曜ドラマ「最愛」(C)TBS

その一方で、真田ウェルネスという製薬会社の代表取締役へと成り上がった15年後の梨央には観ている誰もが見惚れてしまっただろう。『最愛』の吉高由里子、ヴィジュアル最強説をここに宣言する。

女優としての躍進は止まることなく、むしろ加速し続けている。
第2話、【過去】で衝撃的な事実を知り涙を流す姿には思わず息を呑んだ。溢れ出る涙、止まらない震えと嗚咽…アラが出てしまいがちな泣きの芝居、そんな不安要素は1ミリもなく、『最愛』の世界に完全に引き込まれた瞬間だった。

数々の話題作に出演し、”お仕事ドラマの女王”とも呼ばれる吉高由里子。そんな彼女の代表作はお仕事ドラマだけには留まらない。

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–{もはや”ドラマの女王”に登り詰めた吉高由里子主演・推しドラマたち}–

もはや”ドラマの女王”に上り詰めた吉高由里子主演・推しドラマたち

お仕事ドラマの女王”の印象が強い吉高由里子だが、”ミステリー”、”お仕事”、そして”恋愛”と、どんなカテゴリをも網羅する存在に。

日曜劇場「危険なビーナス」(C)TBS

私的”ミステリードラマ”代表作は、東野圭吾原作危険なビーナス』。もちろん、『最愛』で覆る可能性は大いにある。

謎に包まれた女・矢神楓に毎週翻弄されていたのは私だけではないだろう。最終話で手島伯朗(妻夫木聡)の妄想がついに現実となったときには見ているこっちがニヤニヤしてしまった。よかったね、伯朗。

続いて、私的”お仕事ドラマ”代表作は『わたし、定時で帰ります。』と『知らなくていいコト』。

火曜ドラマ「わたし、定時で帰ります。」(C)TBS

『わたし、定時で帰ります。』では、WEB制作会社でディレクターを勤め、「絶対残業しない」をモットーにどんな仕事をもバリバリ仕事をこなすキャリアウーマン・東山結衣として。

定時退社後に結衣行きつけの店、上海飯店のハッピーアワーでビールを飲む姿は某ウィスキーのCMを彷彿とさせる。すみません、一杯だけでいいので乾杯させてもらえないでしょうか…

「知らなくていいコト」(C)日本テレビ

『知らなくていいコト』では、「週刊イースト」特集班の敏腕記者・真壁ケイトとして。
『SCOOP!』(16)をはじめとして、こういう作品を観ると「リスキーな世界、楽しそう…一度でいいから文春とかで働いてみたい…」なんて思ってしまう。

バリキャリ吉高、まじでかっこよくて大好きなのだが、なぜかJuice=Juiceの『「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?』が浮かんでくるのは多分、感情移入しすぎてるせい。

最後に、私的”恋愛ドラマ”代表作は『東京タラレバ娘』。

「東京タラレバ娘」(C)日本テレビ

数年前、どっぷりハマった『東京タラレバ娘』。いやはや、東京で生き抜くアラサー女子、全員がハマりますよねこれは。『私が恋愛できない理由』然り、こじらせ女3人衆の恋愛ドラマは中毒性がありすぎる。

『東京タラレバ娘』では、一切気を遣わない女子会の居心地の良さに入り浸り婚期どころか恋愛のタイミングさえ逃し、売れない脚本家として毎日を精一杯生きる鎌田倫子を好演。

モデル・KEY(坂口健太郎)や早坂哲郎(鈴木亮平)との恋愛シーンに毎度ドキドキさせられたもんだ。

どんなドラマにも必要なスパイス的存在となっている吉高由里子。

そして、言うまでもないが、ドラマのみならず映画界でも華々しい活躍を見せている。

ここからは、吉高由里子を知る上で欠かせない、映画作品2選を紹介していく。

–{世間に名を知らしめた激震の映画初主演作『蛇にピアス』}–

世間に名を知らしめた激震の映画初主演作『蛇にピアス』

第130回芥川龍之介賞受賞作品で、金原ひとみのデビュー作でもある『蛇にピアス』。2008年に映画化された。

(C)2008「蛇にピアス」フィルムパートナーズ

キャッチコピーは「19歳、痛みだけがリアルなら 痛みすら、私の一部になればいい。」。
R-15指定作品だが、R-18指定でもいいのでは?と思うほどの性描写と画面を直視できないほど痛々しい場面が多い。

ほぼ無音なバックミュージックとともに、渋谷のスクランブル交差点をグルグルする映像。ふと、黒人が目の前に現れ、どこかに導いていく。完全視聴者主観のアングルに、まるで主人公は自分なのではないかと錯覚させられる。
連れて行かれた先は地下のクラブ。にも関わらず、引き続きほぼ無音。赤髪モヒカン、顔面ピアスだらけと誰が見てもイカツすぎる男・アマ(高良健吾)が話しかけてきてもその声はルイ(吉高由里子)には届かない。「音声バグってる?」と思わされたところで、ルイが耳につけていたイヤホンを外す。その瞬間、爆音がなだれ込んでくる。

監督・蜷川幸雄独特の世界観に虜になってしまうこの冒頭、完全にやられた。

その後、ルイはアマと付き合い、同棲を開始。アマのスプリット・タン(蛇のように舌に二股の切れ目を入れること)に惹かれ、身体改造に興味を持ち始め、アマ行きつけの身体改造のお店に通い始める。

そこのオーナーがシバさん(ARATA)。当時はARATAとして活動していたのでそう表記するが、今は井浦新として活動している。そう、『最愛』で共演しているあの2人。今観返してみると井浦新の外見がかけ離れすぎていて「すごい」としか言えない。

…話が逸れてしまったが、シバさんはアマと同等、いや、それ以上のイカツさな上に、異常なほどのサディスト。
シバさんはルイのマゾヒストをひと目で見抜き、ルイもそれに服従し、アマには内緒で肉体関係を持つようになる。

アマは、ルイにこそ従順だが、好きだからこそルイに近付く男に対して止まらない苛立ちを覚えてしまう。挙句の果て、なんと、男一人殺してしまうのだ。

このシーンを観てからはもう、震えが止まらなかった。ルイとシバさんの関係がアマにバレて、シバさんがアマに殺される未来しか見えないーーそう思っていたが、結末は異なる衝撃的なものだった。

それは、ご自身の目で確かめてほしい。

本作が映画初主演作品となった吉高由里子。19歳のからっぽなギャル・ルイとしての体当たりの演技は必見だ。

–{演技派女優としての地位を確立、『きみの瞳が問いかけている』}–

演技派女優としての地位を確立、『きみの瞳が問いかけている』

吉高由里子と横浜流星がダブル主演を務めた『きみの瞳が問いかけている』(20)。
チャールズ・チャップリンの名作『街の灯』にインスパイアされて製作された韓国映画『ただ君だけ』(11)を、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』、『僕等がいた』の純愛映画の名手・三木孝浩監督によるリメイク作品だ。

(C)2020「きみの瞳が問いかけている」製作委員会

視力を失くした女・柏木明香里(吉高由里子)と、とある闇を持つ元ボクサー・篠崎塁(横浜流星)の、希望、後悔、苦悩、葛藤…あらゆる感情が入り混じる、涙涙の純愛物語。
キャラクターこそ違うが、現在放送中の日本テレビ2021年10月期水曜ドラマ『恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜』を連想させる。

大人になってから視力を失くしてしまったにも関わらず、いつも明るく笑顔な明香里の姿に心打たれる。だからこそ、対比する”悪”ーー弱みにつけ込んでくる明香里の上司・尾崎隆文(野間口徹)や、塁のことをどこまでも追い詰める佐久間恭介(町田啓太)への憎悪は増すばかり。

とある小さな勘違いから出会った明香里と塁。異なる意味で”暗闇”で生きてきた2人に、観ている誰もが幸せになってほしいと願ったことだろう。
しかし、そんな陽だまりのような生活はそう長くは続かない。明香里と塁の秘密が混じり合った瞬間、豊かだった日常は一気に崩れてしまう。運命って、どうしてこうも残酷なのか。

(C)2020「きみの瞳が問いかけている」製作委員会

本作品で注目してほしいのは吉高由里子の確かな演技力
感情を操ることが得意な女優といえど、体験しようのない盲目という事象を自らの身体を用いて反映させることは想像以上に難しいことだろう。
彼女の女優人生において成長を加速させた作品であることは誰の目にも明らかだ。

『蛇にピアス』でセンセーショナルな姿を世に魅せつけ、数々のドラマで多様な役柄をコンプリートし、『きみの瞳が問いかけている』で女優としての集大成を披露、そして『最愛』でそれをも越える存在感で魅了する吉高由里子。

彼女の快進撃はまだまだ止まることを知らない。

(文・桐本 絵梨花)