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その男、シャア・アズナブル。
『機動戦士ガンダム』を見たことがない人でも、“赤い彗星”“3倍速い”“坊やだからさ”などのワードを聞いたことがある人もいるのではないでしょうか?
アニメにおいて、時には主人公を上回る人気を誇る永遠のライバルキャラの元祖と言っていいでしょう。
しかし、実は“ガンダム”シリーズの数多くの作品で、シャア・アズナブルが出てくるものは決して多くはない、というか、実はかなり少ないというのはご存知でしょうか?
今回は実際の登場回数以上の存在感を放つシャア・アズナブルの魅力について、思う存分書かせていただきます。
仮面の下の正体は故郷を追われた革命家の子供だった
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シャア・アズナブルとはいったい何者か?
それはそのまま『機動戦士ガンダム』の歴史を語ることと言っても過言ではありません。シャア・アズナブルがいる世界線はいわゆる“宇宙世紀”モノに当たります。ガンダムと一言で言って、も実は世界観、設定が全く違うシリーズが複数あります。
その中でも“宇宙世紀”モノはテレビシリーズ第一作の世界観を踏襲したもので、ガンダムシリーズの中で最もスタンダードだと言ってもいいでしょう。シャア・アズナブルは最もスタンダードな設定の世界観のガンダムの登場人物です。
宇宙世紀とは現在の西暦の先の時代を指し、文字通り人類が宇宙での生活に踏み出した時代です。この時点で世界各国は地球連邦という大きな枠組みに統合されていて、総人口は100億人を超え、地球だけではそれだけの人間を支えられなくなっています。
そこで、地球連邦は宇宙空間にスペースコロニーを建造して、移民政策を進めることに。「コロニー」には植民地という意味がありますが、まさにその言葉通りで、スペースコロニーの集合体であるサイド1~7には一応の自治権がありますが、全て地球連邦の強い影響下にあります。
そんな中で、移民政策ならぬ“棄民”政策だ!と言って連邦を批判し、独立を目指そうという革命家がサイド3に現れます。
その名はジオン・ズム・ダイクン。シャア・アズナブルことキャスバル・レム・ダイクンの父親です。地球連邦にとっては非常に目障りな存在ですが、同調する多くの宇宙移民者(=スペースノイド)からは大きな支持を得ます。
そんなジオン・ズム・ダイクンを支えた人物がデキン・ソド・ザビとザビ家でした。しかし、いよいよ独立の機運が高まった中ジオン・ズム・ダイクンは急逝してしまいます。連邦による暗殺やザビ家による暗殺などいろいろな説がありますが、サイド3の実権はザビ家が担うことになり、ジオン・ズム・ダイクンの一族は難しい立場に追いやられます。
結果、ジオン・ズム・ダイクンの2人の子供キャスバルとアルテイシア(のちのセイラさん)は地球へと逃れていきます。
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ジオン・ズム・ダイクンの死後、サイド3は皮肉にも“ジオン”公国を名乗り、地球連邦に独立戦争を仕掛けます。
圧倒的な国力の差で、ジオンが不利と思われていましたが、汎用人型兵器モビルスーツの大量投入によって、ジオンが初戦から常に有利に戦争を進めていきます。
そのジオン軍の中で紅くペイントされた特注機で圧倒的な戦果を挙げるエースパイロットが現れます。
その名も“赤い彗星”ことシャア・アズナブル。
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紆余曲折を経て、名前と経歴を変え、素顔を仮面で隠したキャスバル・レム・ダイクンの成長した姿でした。シャアはジオン軍の中で成り上がり、中枢に接近、父の死の真相とかたき討ちを胸に秘め行動しています。
そんなシャアのもとに連邦が遅ればせながらもオリジナルのモビルスーツを作り始めているという情届き、これの偵察・破壊工作を目指してサイド7に侵入します。サイド7には宿命のライバルとなるアムロ・レイが乗る新型モビルスーツ“ガンダム”がありました。
“3倍速い真紅のモビルスーツ”に翻弄されながらも、ガンダムの性能の高さに助けられたアムロ・レイは何とかシャアを退けます。
やがてアムロは宇宙環境に適した新人類ニュータイプの素養が開花し、シャアはそれを目の当たりにします。そしてここから、長い長いシャアの物語がスタートします。
–{シャアがいなくてもシャアがいる!?}–
シャアがいなくてもシャアがいる!?
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シャア・アズナブルが主要キャラとして出演する作品は、『機動戦士ガンダム』(とその映画化『機動戦士ガンダム』3部作)、『機動戦士Zガンダム」(とその映画化『機動戦士Zガンダム』3部作)、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』、『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の4タイトル。
拡大解釈しても。これに『機動戦士ガンダムUC』『機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ』が加わるくらいです。
ガンダムシリーズはテレビアニメ、OVA、劇場用作品などなど多岐にわたり、カウントの仕方にもよりますが、60タイトルほどあります。
この中にはもともとあった作品を再編集したた作品含まれているので、内容的に重複しているものも多々あります。
その中で多めに数えても、シャア・アズナブルが登場するのは10本前後というのが実際のところで、シリーズ全体で見るとわずか15%ほど。あなたが適当にガンダムシリーズの中から作品を選んでみたとき5~6作品に1作品シャアがいるかいないかという話になります。
ランダムにガンダムを視聴するとずっとシャアが出てこないなんてことも。しかし、“シャアがいなくてもシャアがいる”それがガンダムの醍醐味なのです。
他作品の至るところにもシャアが存在する
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シャアが出演しない作品でシャアが存在する作品として、1番わかりやすいシリーズは『機動戦士ガンダムUC』とその続編『機動戦士ガンダムNT』でしょう。
この2作品には人工的にシャアを再現した強化人間(人工ニュータイプ)のフル・フロンタルとゾルタン・アッカネンが登場します。
フル・フロンタルは成功例としてジオンの残党軍“袖付き”の首魁となりますが、ゾルタン・アッカネンは失敗作の烙印を押されていることが原因で、かなりこじらせています。フル・フロンタルは外見的にもシャアそっくりに仕上げられていて、乗るモビルスーツも真紅の機体です。
しかも映像化に当たって、ボイスキャストをシャア・アズナブルを演じ続けてきた池田秀一が担当していることもあって、大変わかりやすく“シャアの存在”を感じることが可能。ほか、宇宙世紀モノでは『機動戦士Vガンダム』のクロノクル・アシャーは帝国の王子でマスクをしていますし、『機動戦士ガンダムF91』にはその名もずばり鉄仮面というキャラクターが登場します。
最初の『機動戦士ガンダム』でシャアの人気と存在感があまりにも高まったため、なんと“宇宙世紀モノ以外”にもシャア(的な)が登場していて、シャアを登場させることが半分義務のようになっている感も否めません。
『新機動戦記ガンダムW』には亡国の王子で、軍のエースパイロットで金髪で赤い制服を着ていて仮面で素顔を隠すゼクス・マーキスというキャラが重要なポジション、主人公のライバルキャラとして登場します。
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シャアの顛末を詳しく知らない人が見たら、フル・フロンタル同様「えっ、このキャラってシャアじゃないの?」と疑問に思うことでしょう。
『機動戦士ガンダムSEED』、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』(機動戦士とありますが宇宙世紀モノではありません)にはラウ・ル・クルーゼとネオ・ロアノークという金髪で仮面をつけたキャラが、主人公の前に立ちはだかります。
『ガンダムGのレコンギスタ』にも、仮面を着けたマスク(本名ではありません)という名のライバルキャラが登場しますし、『機動戦士ガンダムOO(ダブルオー)』にも金髪&仮面のミスター・ブシドー(本名ではありません)が登場します。
また、現時点で最新のテレビシリーズの『機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ』にはモンタークとヴィタールという仮面の男が登場。どちらもある重要人物が過去と素性を隠すために仮面を隠したキャラクターなのですが、どちらもちょっとぎょっとするような仮面の姿です。
ただ、シャア・アズナブルがあらゆる“ガンダム”に対して有形無形の形で強烈な影響を残していることもあって、“仮面の男”が普段の風景にいることに何ら抵抗を感じることもなく受け入れてしまうでしょう。
変則的な作品では『機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ』の主人公ハサウェイ・ノア(ブライトさんの息子)はシャア・アズナブルとアムロ・レイの意思を受け継いで、地球連邦に反旗を翻すという設定になっています。
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そんなわけで“どのガンダム”にも“シャアがいなくてもシャアがいる”という現象が起きてしまうのです。
来年には久しぶりのテレビシリーズ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』が放映されることが決まりましたが、シャア的な仮面のキャラクターは出てくるのでしょうか?
これは重要な話なんですが、シャアが仮面をつけているのは『機動戦士ガンダム』だけで、その後はずっと素顔なんです。しかし、シャアと言えば仮面の男です。
これもまた、最初のイメージがあまりにも強烈なためと言えるでしょう
国民的アニメ『名探偵コナン』にもシャアが存在した
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やはり最後は、この話題に触れないわけにはいません。
今年の『名探偵コナン 緋色の弾丸』で重要な役どころを担った赤井秀一。
FBI捜査官で、コナンと共闘することが多く頼もしい存在ですが、赤井秀一の由来となっているのが、シャア・アズナブルの“赤い彗星”という異名とその声優・”池田秀一”。さらに映像化に当たって。ボイスキャストを務めたることになったのが池田秀一なのです。
赤井秀一は“何から何までシャア・アズナブル”だと言っても過言ではありません。
ちなみに青山剛昌のガンダム好きは有名な話で、ガンダムを由来とするネーミングのキャラクターが複数存在します。
1番有名なのは人気キャラクターの安室透。本名は降谷零ですが、こちらもアムロ・レイとそのボイスキャストの古谷徹の姓名を入れ替えて漢字を変えただけ。ボイスキャストもガンダムシリーズでアムロ・レイの声を務め続ける古谷徹です。
そのため2人が登場すると、「名探偵コナン」なのに「機動戦士ガンダム」な気分になります。
(文:村松健太郎)
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