〈新作紹介〉『グレタ ひとりぼっちの挑戦』レビュー:15歳で環境問題活動家となった少女の真実の姿とは?

ニューシネマ・アナリティクス

■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

2021年、本年度のノーベル賞物理学賞は、大気中の二酸化炭素濃度の増加が地球温暖化に影響することを実証した真鍋叔郎が受賞しましたが、やはり世界はますます環境問題に対して無関心ではいられなくなってきたようです。

さて、そのノーベル賞に2年連続で候補となったスウェ-デンの環境活動家が、グレタ・トゥーンベリです。

2003年1月3日生まれの、現在18歳。

2018年8月、15歳でストックホルムの国会議事堂前でストライキを始め、数か月のうちに国内外にその活動が広まるとともに一躍時の人となった彼女、歯に布着せぬストレートな言動の数々は若さならではの賜物で、しかし一方ではそれゆえに反感や偏見を持たれることも少なくありません。

本作はそんなグレタの熱く激しい運動のキャリアを軸にしつつ、その実彼女のプライベートな内面にも着目していきます。

なぜ若干15歳の少女が、世界の環境のために立ち上がったのか?

そこにはアスペルガー症候群など彼女の持病が深く関わっていることを本作は明らかにしますが、彼女自身はアスペルガーそのものを病気ではなく「スーパーパワー」と前向きに捉えています。

ストライキで注目された彼女は、やがて各地でスピーチしたり、各界の大物たちと対話することにもなりますが(その中にはアーノルド・シュワルツェネッガーも!)、目まぐるしく変わっていく彼女自身の環境そのものには、常に傍にいる父親(俳優のスヴァンテ・トゥーンベリ)がヒヤヒヤしっぱなしといった様子も、さりげなく映像に収められています。

正義を貫こうという愛娘の行動を応援しつつ、やはり親は心配で仕方がないのです。

グレタ自身、実は世界中から寄せられる心無い誹謗中傷には大いに心傷つけられ、それでも気丈にふるまう様がどこか痛々しく思えます。

環境問題上の理由から飛行機の搭乗を拒む頑固さからレーシングヨットで大西洋を渡っていますが、その際も大揺れの船の中で怖がる姿をキャメラは逃しません。

そこには不安におびえる普通の女の子の姿が映されています。

彼女自身の運動そのものにはさまざまな意見があるかと思われますし、私自身ときどき過剰に捉えられてしまう瞬間もないわけではありませんが、そういった批判にめげることなく自身の主張を貫き通そうとする姿勢の勇気そのものは、もっと認められてしかるべきでしょう。

公に発する激しい言動の数々も、若さならではのストレートなまぶしさとして、時にうらやましく映えることも、正直しばしばなのです。

(文:増當竜也)

–{『グレタ ひとりぼっちの挑戦』作品情報}–
『グレタ ひとりぼっちの挑戦』作品情報
【あらすじ】
2018年8月、気候変動に対する政府の無関心に抗議するため、15歳のグレタはたったひとりでストックホルムにある国会議事堂前に毎週金曜日に座り込み、学校ストライキを開始。自作の看板を掲げ、リーフレットを配りながら通行人の質問にも丁寧に答えるうちにその行動はFridays For Future(未来のための金曜日)と呼ばれるようになり、数ヶ月のうちに国内外へ広がる一大ムーブメントになっていった。2019年にはニューヨーク国連本部で開かれた気候行動サミットで涙ながらに強く訴え、同年のフォーブス誌にて『世界で最も影響力のある女性』に選出、タイム誌でも『今年の人』として紹介された。気候問題に関する専門的知識と揺るぎない覚悟を持ち、国連総長アントニオ・グテーレスやフランスのマクロン大統領、ローマ教皇など世界のリーダーらと議論を重ねるグレタ。そんな彼女にカメラは密着し、犬や馬と戯れるリラックスした姿、自身のアスペルガーの症状について分析する姿、重圧と向き合い葛藤する姿、彼女の様々な行動を支える家族の姿を交えながら、真っ直ぐなメッセージと行動力で気候変動対策を訴える若き環境活動家の素顔に迫る。

【予告編】

【基本情報】
出演:グレタ・トゥーンベリ

原案:ペール・K・キルケゴー

監督:ネイサン・グロスマン

脚本:ネイサン・グロスマン/ペール・K・キルケゴー/ハンナ・レヨンクヴィスト