〈新作紹介〉『ひらいて』レビュー:山田杏奈×作間龍斗×芋生悠が、綿矢りさ原作の残酷かつ繊細な思春期の狂気と哀しみを真摯に体現!

ニューシネマ・アナリティクス

■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

『ミスミソウ』(18)や『名も無き世界のエンドロール』(21)『樹海村』(21)など、山田杏奈が出演している映画は「何か」があるような気がして、進んで見るようにしています。

一見童顔な風情の中、硬軟善悪淑女に悪女、何でも真摯に演じることのできる、そんなオーラを常に発散させ続ける彼女の今回の顔は実にエキセントリックかつ残酷、しかしそういった行為に及べば及ぶほど自身が傷ついていく繊細な心の痛みを隠し通すこともできません。

そんなヒロイン愛と、これまた『左様なら』(19)『ソワレ』(20)など大注目の芋生悠扮するⅠ型糖尿病を患う美雪が絡み合っていくわけですから、これが面白くないわけがありません。

何せ原作が綿矢りさであるからして、少女同士の愛憎の描出に怠りがあるはずもなく、新進気鋭の首藤凛監督もまたそうした原作のエッセンスをとりこぼすことなく、同級生たとえ(作間龍斗)をめぐっての偽りの友情とも愛情ともつかないやりとりが、いつしか不可思議な、まさに“映画的”としか言いようのない三角関係と化していくあたりの情緒が実にスリリングで秀逸なのです。

また、その伝では女子ふたりの間に立たされながらも凛とした姿勢を崩すことのない作間龍斗の存在感にも好感が持てるところ。

自分が好きな相手を独占したいという想いは大なり小なり誰しも持ち合わせているものでしょうが、それがエスカレートしていくことの悲劇も狂気もすべてひっくるめての思春期であり青春であることを見事に、そして真摯に訴え得た秀作であり、2021年の青春映画を代表する1本足り得ていると個人的には確信しています。

ラストの一言も、首藤監督をずっと応援してきたファンからすると、きっと溜飲の下がるものであることでしょう。

(文:増當竜也)

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–{『ひらいて』作品情報}–

『ひらいて』作品情報

【あらすじ】
高校3年生の愛は、成績優秀、明るくて校内では人気者。そんな彼女は、同じクラスの“たとえ”に片思いをしている。彼はクラスでも目立たず、教室でもひっそりと過ごす地味なタイプの男子だが、寡黙さの中にある聡明さと、どことなく謎めいた影を持つたとえに、愛はずっと惹かれていた。しかし、どこか人と関わりを持つことを避けているようなたとえに、愛はなかなか近づけずにいた。自分だけが彼の魅力を知っていると思っていた愛だったが、彼が学校で誰かからの手紙を大事そうに読んでいる姿を偶然見てしまったことで事態は一変する。「たとえに、恋人がいるのではないか……」その疑惑がぬぐいきれず、愛はある夜、悪友たちと学校に忍び込み、その手紙を盗んでしまう。手紙の差出人は、糖尿病の持病を抱える地味な少女・美雪。その時、愛は、初めてふたりが密かに付き合っていることを知るのだった。学校内でも目立たない美雪が突如たとえの彼女だと知り、熱い恋心が乱反射する。そして自らの気持ちを隠して美雪に近づいていく愛。そこから愛と美雪、たとえの関係は思いもよらぬ方向へ向かう。 

【予告編】

【基本情報】
出演:山田杏奈/作間龍斗(HiHi Jets/ジャニーズJr.)/芋生悠/山本浩司/河井青葉/木下あかり/板谷由夏/田中美佐子/萩原聖人

原作:綿矢りさ

監督:首藤凜

脚本:首藤凜

上映時間:121分

映倫:PG12

製作国:日本