「日本沈没ー希望のひとー 」第1話レビュー:日曜劇場からまた、視聴者に大きなテーマを投げかける(ストーリーネタバレあり)

国内ドラマ

→「日本沈没ー希望のひとー 」画像ギャラリーへ

小栗旬が主演を務めるTBS系日曜劇場「日本沈没―希望のひと―」が2021年10月10日(日)スタート。

1973年の刊行以来、何度も映像化されてきた不朽の名作「日本沈没」(小松左京)を大きくアレンジした本作。2023年の東京を舞台に、日本沈没という前代未聞の危機の中で希望を見出す人々を描き出していく。大義のために手段を選ばない野心家の官僚・天海啓示を演じる小栗旬をはじめ、松山ケンイチ、杏、ウエンツ瑛士、中村アン、与田祐希(乃木坂46)、國村隼、仲村トオル、香川照之ら豪華キャストが集結した。

本記事では、第1話をcinemas PLUSのドラマライターが紐解いていく。

「日本沈没ー希望のひとー 」第1話レビュー

前クールで世帯平均視聴率No.1に輝いた「TOKYO MER」に引き続き、TBS日曜劇場枠で「日本沈没ー希望のひとー」が幕を開けた。

現実世界でも10月7日、千葉県北西部を震源地とする地震が発生し、東京と埼玉で2011年の東日本大震災以来となる震度5強の揺れを観測したばかり。だからこそ“日本沈没”というワードはとにかくタイムリーで、不吉な予感を漂わせる。

本作の主人公は、環境省の官僚・天海啓示(小栗旬)。彼は日本を環境先進国へと向かわせる総理大臣の東山(仲村トオル)が発足した、各省庁の優秀な若手官僚を招集した「日本未来推進会議」に環境省代表として参加することとなる。

同じく経産省代表で会議に参加し、大手財閥の父を持つ大学の同期・常盤(松山ケンイチ)の力も借りながら、大義名分のために東山総理や裏で実権を握る副総理・里城(石橋蓮司)にも擦り寄る野心家だ。

2010年に主演を務めた「獣医ドリトル」以来、11年ぶりに日曜劇場出演を果たした小栗旬。彼が演じる天海は飄々としているが、時折ドキッとするような表情を見せる。常に警戒を怠らず、自分の利益・不利益になり得る事象も人も見逃さない。

そんな天海が目をつけたのは、総理主導のCOMS(コムス)事業にとって足枷となる地震学者・田所(香川照之)。田所は、液化した汚染物質を海底地層の隙間に流し込むCOMS事業が伊豆関東沖の海底プレートに歪みを生じさせ、“関東沈没”の可能性があると主張していた。

主張の内容が派手であればあるほど、人々から大きな注目を集める。実際にコロナ禍ではSNS上で多くの偽情報が拡散され、世界は混乱の渦に飲み込まれた。コロナワクチンに関する陰謀説が広まったことも記憶に新しい。そのような出来事を機に「デマに惑わされない」という教訓を得た私たちだが、一方で何でもかんでも「デマ」と決めつけがちになってしまったのもまた事実だ。

警戒心が強いに越したことはないが、本当に鼻から嘘だと決めつけてしまってもいいのか?と本作は視聴者に問いかけてくる。

香川照之の怪演も相まって、とにかく偏屈で変わり者の田所が主張する関東沈没説を誰も信じようとはしない。もちろん最初は、環境問題に真剣に取り組む天海でさえも――。

しかし、天海は関東沈没の前ぶれとして海の底に沈むとされた伊豆沖の日之島で不思議な体験をする。海底に亀裂が入り、そこから熱水が噴出していたのだ。疑問に思った天海は敢えて、週刊誌サンデー毎朝の記者・椎名(杏)に田所と環境ビジネスで荒稼ぎする企業との癒着をリーク。政府は田所の関東沈没説を潰しにかかっているという印象を世間に与え、しっかり調査せざるを得ない状況を作り出した。

計算高く、目的のためなら手段を選ばない天海。ただ彼のすごいところは賢さだけではなく、熱い思いも内に秘めているところだ。中途半端な調査で田所の主張に根拠がないと決めつける官僚たちに食ってかかる。タイプは違えど、医系技官として日本の医療制度改革を目論む「TOKYO MER」の音羽(賀来賢人)を彷彿とさせた。

ラスト5分前には、天海が田所に味方したことで、ざわつく日本未来推進会議の場に一本のニュースが。田所が主張していた通り、日之島が沈没したのだ。天海が見た夢の中では、日之島のように東京のビルが次々と海に沈んでいった。

もしかしたら、あれは私たちが住む日本の未来の姿かもしれない。

不必要に不安を煽る必要はないが、出演者の杏と対談した国連環境計画(UNEP)のインガー・アンダーセン事務局長が語った「未来はあなたの手の中にあります。あなたがすること、しないことが、未来に影響を与えるのです。ドラマでインスピレーションを受けて、自分自身で行動を起こしてください。私たちは変化を起こすことができると希望を持ち続けて」というメッセージが思い起こされる。

起こり得る未来に絶望するのではなく、本作のタイトル通り“希望”を持って一人ひとりが自分にできることを考えること。エンターテインメントの力を信じて、環境問題という大きなテーマを投げかける日曜劇場「日本沈没」から今後も目が離せない。

「日本沈没ー希望のひとー 」第1話ストーリー

2023年、東京。東山総理(仲村トオル)は、世界環境会議で地球物理学の権威である世良教授(國村隼)のもと「COMS<コムス>」のさらなる推進を高らかに表明した。

さらに官房長官の長沼周也(杉本哲太)が、東山が“未来の日本”を見据えて各省庁の優秀な若手官僚たちを集めた“日本未来推進会議”を発足すると発表。そのメンバーに環境省の天海啓示(小栗旬)、経産省の常盤紘一(松山ケンイチ)も選ばれていた。目的達成のために強引な手段もいとわない天海は、自身の提案を通したいがために東山総理にすり寄り、同時に総理の抵抗勢力である政界のドン・里城副総理(石橋蓮司)をも懐柔しようとする。さらには、両者に顔が利く「生島自動車」会長兼経団連会長の生島誠(風間杜夫)を同期の常盤に紹介してもらい、近づいていく。

そんな折、ネットに関東沈没へ警鐘を鳴らす田所雄介(香川照之)の記事が載る。この記事が原因で、一部の団体がデモを起こし、天海は事態収束のために田所と対面する。しかし、田所は天海の話に一切耳を傾けず、「近い将来、伊豆沖で島が沈没する。その島の沈没は、私が恐れてきた関東沈没の前兆になる」という不気味な予言を放ち、天海は翻弄される。

そんな矢先、天海は週刊誌・サンデー毎朝記者の椎名実梨(杏)に「Dプランズ」という環境ビジネスで稼ぐ企業と環境省のあらぬ癒着疑惑を突きつけられる。
一抹の不安を抱えつつ、常盤と共に趣味のスキューバダイビングに出かけた天海は、そこで衝撃的な出来事に遭遇する…。

(文:苫とり子)

–{「日本沈没ー希望のひとー 」作品情報}–

「日本沈没ー希望のひとー 」作品情報

小栗旬が11年ぶりに日曜劇場に戻ってくる!
環境省の官僚として、日本沈没という未曾有の危機に立ち向かう!
さらに、共に戦う共演者に松山ケンイチ、杏、仲村トオル、香川照之が決定!
– 信じられるリーダーはいるか。あきらめない。未来は絶対に消させない! –
盤石の布陣が日本の危機に挑む!

出演
小栗旬/松山ケンイチ/杏/ウエンツ瑛士/中村アン/与田祐希(乃木坂46)/國村隼/小林隆/伊集院光/風吹ジュン/比嘉愛未/宮崎美子/吉田鋼太郎(特別出演)/杉本哲太/風間杜夫/石橋蓮司/仲村トオル/香川照之

原作
小松左京「日本沈没」

脚本
橋本裕志

音楽
菅野祐悟

主題歌
菅田将暉「ラストシーン」(Sony Music Labels Inc.)

地震学監修
山岡耕春
篠原雅尚

記者監修
龍崎孝

演出
平野俊一
土井裕泰
宮崎陽平

プロデュース
東仲恵吾

製作著作
TBS

キャスト/スタッフコメント

小栗旬 コメント

「日本沈没」という未だかつてない困難に立ち向かっていく作品です。
ただでさえ苦しい環境の中、この題材は非常に難しいお話ですが、その中でも“希望”と“人間の強さ”を届けられるよう、自分を含め、キャスト・スタッフ全力で希望を持って真摯に作品に向かっていきます。
今を生きる皆さんへの賛歌になれるような作品にしていきたいと思っておりますので、ぜひご期待ください。

松山ケンイチ コメント

まだ全ての台本が手元に無いのでどんな話になるのか分かりませんが、想定外の国の危機に日本人はどう立ち振る舞っていくのか、どう助け合っていくのか、どんな答えが出るのか、楽しみです。
客観的に国のこととそこに生きている自分自身を見つめ直すきっかけになる作品になると思います。

杏 コメント

今回初めてTBS連続ドラマにレギュラー出演させていただくことになりました。
日本沈没というどうしようもない自然の脅威にどう立ち向かうかというキャラクターたちの姿は、今の混乱の世の中で戦っている皆様と近い気持ちで共鳴し合えるのかなと思っています。そして、演じる私たちもそのような不安や脅威を抱えつつ乗り切ることになります。これを映像として残せることは意味があるような気がしています。万全の体制で挑みつつ、全力でぶつかっていきたいと思います。

仲村トオル コメント

2007年の『華麗なる一族』以来の日曜劇場。はじめての総理大臣役に緊張しています。
僕が演じる東山首相は、物語のはじめは一国のリーダーとしてはやや弱く甘い男に見えますが、逆風の中、上り坂を登った足に力がつくように、最終回を観た人たちに、困難な状況の日々でも諦めず前を向いて歩き続けた人間の未来には少し強くなった新しい自分がいる、というような希望を感じていただけるように全力で頑張ります。

香川照之 コメント

政府側の海洋環境改革方針に対し、独自の理論で徹底的に異論を唱える頑固な博士の役です。ドラマの原作は何十年も前のものですが、環境破壊問題はいま別の形でこの地球を襲っています。その意味でも我々には、未来まで持続可能な環境への取り組みが不断に求められている。日本が沈没するという、かつては荒唐無稽と思われたテーマを通して、地球が現在抱えている多くの課題を、改めてこのドラマで訴えていきたいと思っています。

脚本家・橋本裕志 コメント

今へ、未来へと繋がる、新たな『日本沈没』を目指して、これまでに映像化されたものとは違った角度からのアプローチで取り組んでいます。
危機を前にした時にあぶり出される人間の様々な感情や、思いのぶつかり合い、極限状態だからこそ繰り広げられる人間ドラマが、そこにはあります。
明日が見えない中で、それでも希望を探して生きていく登場人物たちのエネルギーを通して、皆さんに勇気を与えられる作品をお届け出来ればと考えています。

プロデュース・東仲恵吾 コメント

今作のテーマは、未来への希望です。日本沈没が目前に迫ってくる中で、決して諦めずに今やるべきことを全力でやる人たちの人間ドラマを丁寧に描いていきたいと思っています。
そして「未曾有の危機でもこの人たちなら救ってくれるんじゃないか」そう思わせてくれる力強いキャラクターを、小栗旬さんをはじめ、松山ケンイチさん、杏さん、仲村トオルさん、香川照之さんと共に議論しながら、ドラマ版オリジナルキャラクターを作り上げました。
最後まで立ち向かった先にある“希望”を精一杯の熱量で作りたいと思います。