<志田彩良>に今こそ最注目!|『かそけきサンカヨウ』公開前に観るべき2つの映画<今泉力哉タッグ>

俳優・映画人コラム

(C)2020 映画「かそけきサンカヨウ」製作委員会

2021年10月15日より公開を控える、今泉力哉監督最新作『かそけきサンカヨウ』。本作品でヒロインを務めるのは志田彩良

今泉監督はわりと決まった俳優を何度も起用する傾向にある。今泉監督に限らずこういう傾向を持つ監督・脚本家は多い。園子温監督でいうでんでん、坂元裕二脚本でいう松たか子、有村架純など。

今泉監督は深川麻衣、成田凌、若葉竜也、芹澤興人あたりをよく起用している印象。そして志田彩良とは今回で3度目のタッグ、ヒロイン級の役どころでの出演は初となる。

恋愛群像劇の旗手・今泉力哉


2019年に公開された監督作品『愛がなんだ』が大ヒット。角田光代原作ということで原作ファンからも期待が湧いていた中、原作を裏切らない脚色とキャスト、原作を知らない10〜20代女子からは共感の嵐でSNSでも話題沸騰に。

なによりも、原作と今泉監督が描く世界観が丁度よくマッチしていたように思う。

(C)2019「愛がなんだ」製作委員会

マモちゃん至上主義でなにもかも失ってしまうテルコ(岸井ゆきの)、テルコの好意に甘えながらもそのいきすぎた尽力具合に辟易とするマモちゃん(成田凌)、高すぎるプライドに苦しめられる葉子(深川麻衣)、好きという思いを公にしながらも葉子とのセフレ関係を容認するナカハラ(若葉竜也)、「なんでマモちゃんはこの人のことが好きなんだろう」と観客全員が感じるであろうすみれ(江口のりこ)。

「共感はできないし誰にもなりたくないけど心のどこかで応援したくなる人」たちに不思議な魅力を感じてしまう。中でも一番好きなのは圧倒的ナカハラ。「幸せになりたいっすね」は真意であり名言。幸せになりたいっすね。

わたしにとっても今泉監督を認知するキッカケとなった本作品。公開当時は2回観に行った。テルコがひとり金麦を飲むシーンが印象的で、映画を観た帰りは最寄り駅の1つ手前で降りて金麦を飲みながら帰ったりしたもんだ。

(C)2019「愛がなんだ」製作委員会

好きな作品が故につい『愛がなんだ』について語ってしまったが、本作品を皮切りに『アイネクライネナハトムジーク』(19)、『mellow』(20)、『his』(20)、『あの頃。』(21)、『街の上で』(21)など話題作を連発。

正直すぎる&タイムラインを埋め尽くすほどのツイートからわかる人間性も相まって、続々と【今泉力哉沼】にはまる人が増えているように思う。かくいうわたしもそのひとり。人間の面倒くささを描かせたら右に出る者はいない、唯一無二の存在だ。

–{令和時代の清純派女優・志田彩良}–

令和時代の清純派女優・志田彩良

“志田彩良”という名前を聞いただけでは誰のことかすぐにわからない方も多いかもしれない。でも、ドラマ「日曜劇場 ドラゴン桜」で学園文系トップの秀才・小杉麻里を演じていた黒髪ボブの少女と言うとわかるのではないだろうか。そう、彼女こそが志田彩良だ。

志田彩良は、スカウトで芸能界入り。事務所は田中麗奈や井浦新らが所属するテンカラット。2013年よりピチレモン専属モデルとして活動し、2014年に太田市PR短編映画『サルビア』で主演として女優デビュー。2017年に『ひかりのたび』で長編映画初主演、2020年にドラマ「ゆるキャン△」のメインキャスト・斉藤恵那役で一躍有名になった。

そんな彼女の人気を博することになった作品が、2021年放送「日曜劇場 ドラゴン桜」。発達障害を持つ健太(細田佳央太)といつも一緒にいる才女・小杉麻里を熱演。秀才なのに受験せず就職を希望する麻里の秘密が暴かれ、いつもは冷静沈着な彼女の感情がむき出しになる第6話は、誰もが涙する神回だった。

「ドラゴン桜」より ©TBS

目力からわかる意志の強さ、透明感のある透き通った声、若き頃の宮崎あおいを彷彿とさせる雰囲気。今後ドラマや映画にますます引っ張りだこになるだろう。

そんな今泉力哉と志田彩良のこれまでのタッグ作品では、どんな化学反応が起きているのだろうか。

“志田彩良らしさ”が際立つ、『パンとバスと2度目のハツコイ』


今泉力哉オリジナル脚本作品である『パンとバスと2度目のハツコイ』(18)。『愛がなんだ』の葉子役が記憶に新しい深川麻衣の映画初出演にして初主演作品だ。

志田彩良は、深川麻衣演じるふみの妹・二胡を演じた。美大の予備校に通うため、東京に住むふみの家に居候することになる。ふみの周囲に起こる”ちょっと非日常な毎日”を優しく見守る、姉妹であり一番の良き理解者だ。

(C)2017映画「パンとバスと2度目のハツコイ」製作委員会

ふみの似顔絵を描きながらも、絵を諦めてしまったふみのことをどことなく気にする二胡。珍しく酔っぱらって帰ってきたふみを心配し、緑内障治療薬の目薬をふみの代わりにさしてあげる二胡。ふみのために服を選んであげる二胡。ふみの絵を描く理由を「興味があるから…かな。知りたいって思ったのかも、お姉ちゃんの時間を」と答えた二胡。

どこを切り取っても、深い姉妹愛が感じられる2人のシーン。ふみを見つめる二胡の目は一切色褪せておらず、そのまっすぐさは志田彩良が演じるからこそ尚際立つ。

ラスト、ふみの2度目のハツコイの相手であるたもつ(山下健二郎)とふみと二胡、3人が会話する、時たま誰かがトイレに行くだけの長回しのシーンはまさに「THE 今泉力哉作品」だ。

推したくなる”イケメンさ”が垣間見える『mellow』


『パンとバスと2度目のハツコイ』と同じく今泉力哉オリジナル脚本作品である『mellow』(20)。主役にはラーメン店で不倫カップルの別れ話を聞いて勝手に涙してしまうほどにはいい人すぎる花屋の店主・夏目誠一を演じる田中圭と、父から受け継いだ廃業寸前のラーメン店を営む古川木帆に岡崎紗絵。この2人を中心に、いろんな人のうまくいかない片思い模様が描かれる。

志田彩良は、中学3年生の浅井宏美役として登場。夏目の花屋から定期的にお花を購入している美容室を営む家庭の娘であり、木帆のラーメン店の常連であり、夏目に密かに思いを寄せる1人である。

(C)2020「mellow」製作委員会

2020年公開ということは、撮影当時おそらく19〜20歳あたりだと思われるが、まだあどけない中学3年生という役柄は童顔も相まって見事適役。

宏美の片思いは叶うことはないのだが、宏美は宏美で各所からモテる。後輩の女の子から夏目の花屋で買った花束と共に告白されたと思いきや、後日別の後輩の女の子からも告白され、3人でラーメンデートしちゃったりするんだから。その他にも2年の生徒数人から好意を持たれている模様。

本作では、清純さは残りつつも”かわいくてスポーツもできる、男女問わず憧れられるかっこよさを兼ね備える先輩”を好演しており、『パンとバスと2度目のハツコイ』とはまた違った魅力を今泉監督が引き出してくれている。

(C)2020「mellow」製作委員会

…志田彩良が登場するシーンではないのだが、『mellow』を語る上で外せないシーンがあるので紹介だけさせてほしい。

結婚式で花を担当したご夫婦の奥様・青木麻里子(ともさかりえ)から、旦那も同席する場で突如愛の告白をされるシーンだ。

この状況を想像していただくだけでも意味がわからないと思うのだが、見ている方も本当に意味がわからないし、麻里子と旦那のぶっ飛んだ倫理観にはもう笑わずには観ることができない。今泉監督のセンスに脱帽です、はい。

今泉力哉×志田彩良、3度目のタッグに期待膨らむ『かそけきサンカヨウ』


※『かそけきサンカヨウ』の主題曲「幽けき」MVには志田彩良が出演している

2021年10月15日公開『かそけきサンカヨウ』。
少女から大人になる、1分が1時間に感じられるその一瞬。様々な思いが交錯する複雑な心境を、志田彩良はどう演じるのだろうか。今泉監督だからこそ、より開花させた姿を魅せてくれることは間違いない。「日曜劇場 ドラゴン桜」では秀才コンビだった鈴鹿央士との共演にも期待だ。
ぜひ公開までに過去作品をチェックして、今泉力哉と志田彩良の軌跡を辿っておいていただきたい。

(文:桐本 絵梨花)

–{『かそけきサンカヨウ』作品情報}–

『かそけきサンカヨウ』作品情報

【概要】
窪美澄の同名短編小説を映画化。
高校生・陽は父の再婚相手と連れ子との暮らしが始まった。戸惑いながら新しい生活を送り、同級生の陸との淡い恋愛感情を優しく描いた物語。

劇場公開日:2021年10月15日
2021年製作/115分/日本
配給:イオンエンターテイメント

【主要キャスト】
国木田 陽:志田彩良
国木田 直:井浦 新
清原 陸:鈴鹿央士
鈴木沙樹:中井友望
有村みやこ:鎌田らい樹
宮尾数人:遠藤雄斗
劇中劇・レマ:石川 恋
国木田 美子:菊池亜希子
清原 絹枝:梅沢昌代
清原 夏紀:西田尚美
三島 佐千代 :石田ひかり

【スタッフ】
監督:今泉力哉
脚本:澤井香織
音楽:ゲイリー芦屋
撮影・照明:岩永 洋
美術:禪洲幸久
録音・整音:根本飛鳥
編集:相良直一郎
衣装:馬場恭子
メイク:寺沢ルミ

【原作】
水やりはいつも深夜だけど 」に所収