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「鬼滅の刃」の主人公・竈門炭治郎。家族想いで自分よりも他人のことを優先し、誰にでも優しい。努力家で精神力にも優れている。だがそれだけではなく、一見長所なのか短所なのかわからない部分も、炭治郎をより魅力的にしているのではないだろうか。
キャラクターとしても魅力的なだけでなく、こんなメンタルで生きたいなと思わせてくれる炭治郎。
普段主人公タイプにあまり惹かれないが炭治郎は好きな筆者が、その魅力についてあらためて考えてみた。
まず炭治郎を見て感動するのは、気持ちに関する部分だ。
1:心のきれいさ
もう100万回くらいは言われていることだろうが、その優しさは間違いなく大きな魅力だ。5人きょうだいの長男として弟妹に優しいのはもちろん、それ以外の人にも、鬼にすら優しい。1個しかないおにぎりを善逸にあげ、それを知った善逸が半分渡すともともと自分のものなのに「ありがとう」と言う。
伊之助がおかずを盗み食いしても、さらにほかのおかずを差し出すなど、大人もびっくりの心の広さだ。音で人の心までわかる善逸が「泣きたくなるような優しい音」がしたと言い、無限列車編で見られた炭治郎の無意識領域はウユニ塩湖のような美しさで、さらにそこにいる小人(優しさの化身)は侵入した青年が(壊すために)核を探していると察して案内してあげ、相手を改心させるほど。
2:戦いながら考え抜く力
炭治郎の戦い方で好きなのは、常に考え続けるのを止めないところだ。どんな窮地に陥っても、ギリギリまで考えている。普通この状況でそんなに考えられないと思う場面でも、諦めてしまいそうな場面でも、必ず考えて活路を見出していた。その思考の量にいつも圧倒される。
3:決して諦めない、信じる力
考え抜く力の延長でもある、どんな状況でも諦めないところにも励まされる。身についたものというより、もともと持っている資質かもしれない。ストレングスファインダーを受けたら、確実に上位にポジティブがありそうだ。
主人公が師匠や友人の言葉で励まされて力を出すシーンはよく見るが、炭治郎はわりと自分で自分を励ませちゃうタイプだ。この力、身につけたら現代でもいいだろうな~とよく思う。
そして、一見短所というか損になるかもしれない部分こそ、炭治郎らしさであり、最終的には絶妙なバランスで本人や周りの人に良い形で働きかけていることに気づいた。
–{4:自分より強い相手にもひるまない勇敢さ}–
4:自分より強い相手にもひるまない勇敢さ
鬼との戦いのとき以外、自分からケンカをふっかけるタイプではない炭治郎だが、たまに自分より強い相手に対してとんでもないケンカを売ることがある。
そこでそんなことして、攻撃されたらどうするの? とヒヤヒヤしてしまう。
でもその窮鼠力とでもいうべき無謀な勇気とまっすぐな言葉は、私たちの心を打ち、炭治郎本人の決意をより強いものにした。
無惨にタンカを切る炭治郎
浅草で無惨と遭遇した際すぐに話しかけ、相手が立ち去ろうとすると大声で「鬼舞辻無惨!! 俺はお前を逃がさない。どこへ行こうと地獄の果てまで追いかけて必ずお前の頸に刃を振るう。絶対にお前を許さない」と怒鳴った。
無惨が家族を殺したと知っていたとはいえ、ラスボスにいきなり接触&タンカを切る様子にびっくりしたしヒヤヒヤした。
柱に「柱なんてやめてしまえ!」と言う炭治郎
柱合会議では後ろ手に拘束された状態にも関わらず、禰?豆子の入った箱を刺した風柱・不死川実弥に飛び頭突きをかまし「善良な鬼と悪い鬼の区別もつかないのなら柱なんてやめてしまえ!!」と言う。
この件に関しては、確かに実弥は勝手で横暴な行動に出たし、視聴者としては禰?豆子にひどいことをして許せない場面ではあった。当然、兄の炭治郎としては怒って当然だ。だがそもそも鬼を殺すため前線で戦ってきた柱にとって、今まで会ってきた鬼はみんな悪かったのだ。
善良な鬼がいる可能性なんて考えられないのが普通だ。さらに、後に明かされる実弥の過去を思うと「鬼=悪」であり、絶対に殺さねばならないという思考になるのも無理はないのだ。
炭治郎の勇気は買うが、少しだけ理不尽な気もする。まあお互い様か。
上弦の鬼を煽る炭治郎
無限列車での戦いの後、突如現れ煉獄と戦い、瀕死の重傷を負わせ朝日から逃げる上限の鬼・猗窩座(あかざ)に対して叫んだ。炭治郎が珍しく、我を忘れて癇癪を起こした子どものようになっているのが印象的だった。
「逃げるな卑怯者!! 逃げるなァァァ!!! いつだって鬼殺隊はお前らに有利な夜の闇の中で戦ってるんだ!! 生身の人間がだ!! 傷だって簡単には塞がらない!! 失った手足が戻ることもない!!」
「逃げるな馬鹿野郎!! 馬鹿野郎!! 卑怯者!! お前なんかより煉獄さんの方がずっと凄いんだ!! 強いんだ!! 煉獄さんは負けてない!! 誰も死なせなかった!! 戦い抜いた!! 守り抜いた!! お前の負けだ!! 煉獄さんの勝ちだ!!」
言ってもどうしようもないかもしれない。鬼が太陽から逃げるのは仕方ないことだし、煉獄さんはもう絶望的な状態かもしれない。観ているこちらも悔しかったし、その言葉を聞きながら震えている伊之助の姿も余計涙を誘う。でも炭治郎がこう言ってくれたから、少しだけ気持ちが救われた。勝ち負けとは何かを考える場面でもあった。
煽られて「俺は鬼殺隊から逃げてるんじゃない、太陽から逃げてるんだ」という猗窩座は情けなく見えた。
命の恩人にくってかかる炭治郎
またケンカを売ったこととは少し違うが、那田蜘蛛山の戦いでは、助けに来てくれた義勇が倒した鬼・累の身体を踏みつけにしたのに対し、「鬼は人間だったんだから 俺と同じ人間だったんだから」「足をどけてください」と食ってかかった。
言ったタイミングでは身の程知らずだったり、説得力がない言葉もあったかもしれない。でもどんな時も相手が誰でも、言うべきことを言う炭治郎の姿勢には心動かされるものがあった。実際自分を振り返ると、長いものにまかれて何も言えない場面も少なからずあるなと思う。そのほうが利口なのかもしれないが、炭治郎のように相手が誰でも良くないことは良くない、言うべきことは言える自分でいたいという気持ちになる。
こうして炭治郎がここぞというとき口にしてきた言葉は炭治郎自身を鼓舞し、無限列車以降の詳細については伏せるが、後々になってその言葉は大口ではなく説得力があるものになっていった。
「言葉にしたほうが叶う」とよくいわれるが、言霊のような効果もあるのかもしれない。もちろん本人はそんな目的で言ったわけではないだろうけど。
–{5:実は信頼される理由かもしれない、KY力}–
5:実は信頼される理由かもしれない、KY力
自分より他人を優先し、たとえ相手が鬼であっても人の気持ちを思いやることができる炭治郎。変にいじけたりすることもなく、意志も強い。まっすぐないい子だ。
その一方で、時折見せるぶっ飛んだ行動や、かみ合わない会話に度肝を抜かれることも多かった。
年下の子どもたちに「ズレてる」と言われるほど。天然というか、KYなのだ。このKYさこそが、炭治郎を炭治郎たらしめたんじゃないかと思う。
籠を譲ってくれたおじさんに「捨てるつもりだったから金はいらねえよ」と言われたのに無理やりお金を渡したあたりからその予感はあった。うどん屋が禰豆子も食べろと強要したらものすごい勢いで2人分のうどんを食べ、愈史郎に禰豆子を醜女(しこめ)と言われてムキになる。
名言(迷言)である「俺は長男だから我慢できたけど次男だから我慢できなかった」も、本人にとってはいたって真面目な自らへの鼓舞だが、そんなズレた部分の表れとも言える。誰もがうなずくような、もしくは何でそんなに立派に考えられるんだろうと関心するような名言と、いやおかしいだろ! それでいいのか? とツッコミを入れたくなるような迷言、どちらも繰り出すのが炭治郎なのだ。
炭治郎が関わる多くの人に気づきを与えたのは、このKYさがあったからかもしれない。思ったことがあったとして、この場でいっていいのか、この相手にいっていいのか考えて言えないこともあるのが普通の感覚だ。だがそういう空気は読まない炭治郎。ストレートに思ったことを伝える。
蟲柱・胡蝶しのぶ(1対1でじっくり話すのは初めて)に「怒ってますか?」と聞き、しのぶはハッとして「そう、そうですね。私はいつも怒っているかもしれない」と過去を話す。
鬼殺隊として戦えず蝶屋敷で働くアオイが自分を卑下すると「俺を手助けしてくれたアオイさんはもう俺の一部だから」「アオイさんの想いは俺が戦いの場に持っていくし」と言って去る。
幼い頃の虐待で心がなくなり、全部どうでもいいからと指示されたこと以外をコイントスで決めていた栗花落カナヲ。これまでは話しかけても言葉を発しなかった彼女に「表が出たらカナヲは心のままに生きる!」と持ちかけ「人は心が原動力だから心はどこまでも強くなれる!!」と励ます。
炭治郎がKYなのは天然な性格であることも関係しているが、「自分が人にどう思われるか」を気にしていないからだと思う。よく思われたいとか、嫌われたくないとか、そのあたりの感情を行動につなげることがない。
相手が励まされたであろう言葉も、相手がこう言ったらうれしいだろう、励ましてあげようと思っていったわけではない。どんな言葉も100%素直な感情から出た言葉なのだ。
そんな炭治郎だから、ここぞというときの言葉をスッと受け止められるし、信頼されるのだと思う。鬼ですら、戦いの最中や最期の瞬間に炭治郎にハッとさせられる者もいた。炭治郎のKY力は、知らぬ間に周りの人を救っているのかもしれない。
クセすら魅力の炭治郎。遊郭編での活躍にも期待
絶妙なバランスが魅力を作り出している炭治郎。彼がすごく良い人であることは間違いないが、ただの良い人ではないツッコミどころもあって、行動も伴っているから偽善者感がない。
炭治郎をはじめとした鬼殺隊士たち、そして柱の活躍がどう映像になるのか。炭治郎と周りの人たちの交流がどう描かれるのか。今から期待しかない。
(文:ぐみ)
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