『素晴らしき、きのこの世界』レビュー:菌糸こそは地球のネットワーク!?キモ美しく幻覚的ネイチャー・ドキュメンタリー映画

ニューシネマ・アナリティクス

■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」

キノコと聞いて、真っ先にキノコ人間の恐怖を描いた『マタンゴ』を思い出してしまう方は特撮映画ファン、♪き~のこきのこ~と歌いたくなってしまう方はTVアニメ「きんぎょ注意報!」を見て育った世代?

本作は、そんなキノコの生態に迫るといった域に留まらず、菌類そのものの地球の未来における可能性をも追求していきつつ、その奥に潜む不可思議ないかがわしさまでも暴露してしまう(?)驚異のネイチャー・ドキュメンタリー映画です。

何よりも、キノコそのものが生まれ育っていく様を早送りの映像で見せこんでいきますが、そのキモ美しいこと!

まるで花が咲き乱れていくかのような光景は、いつまでも見続けていきたくなるほどに圧巻です。

一方で、菌がさまざまな生態系を腐らせて土に戻していく光景を同様に映していくことで、実は菌が地球そのものの生態系を護っていく貴重な存在であることが明らかになっていきます。

つまりは菌こそが、さまざまな生命の再生を促し、維持させているのです。

さらには菌の研究を進めることで、アルツハイマーやガンなどの治療や、さらに環境汚染の浄化にまで役立っていることが判明!

新種のウイルスなどにも対応できる事実も明かされ、おそらくは今のコロナ禍に際して菌類で実験を続けている科学者もいることでしょう。

一方で、キノコには良くも悪くものドラッグ作用があったりもしますので、そこに言及したコーナーも設けられ、科学者のみなさんもついつい口が弾みます。
(きっとみんな、きのこドラッグの甘美な罠にはまったことがあるのでしょう!ってか、実はこの部分に妙な力が入っているあたりも、この作品のヘンなところ!?)

菌糸こそは地球のネットワーク!

まさにインターネットのような存在である菌と、その胞子を外界にばらまくツールとしても機能する象徴的存在のキノコ。

そんな素晴らしきキノコの世界(でも、どこか不気味でいかがわしい雰囲気も見受けられるのがご愛敬!?)をとくと堪能できるドラッグ感覚の81分です。

(文:増當竜也) 

–{『素晴らしき、きのこの世界』作品情報}–

『素晴らしき、きのこの世界』作品情報

【あらすじ】
奥深く、あまりにも神秘的な小宇宙、きのこ・菌類。食物としてだけでなく、様々な生命の再生や維持、アルツハイマーやがんなどの治療、環境汚染の浄化にまで役立つことから、様々な問題への応用が期待されている。菌類学者のポール・スタメッツやドキュメンタリー「フード・インク」にも出演したジャーナリストのマイケル・ポーラン、人気フードライターのユージニア・ボーンら様々な専門家が登場し、医療や治療、環境問題などに対する菌類を使った解決策を明かしていく。 
 
【予告編】

【基本情報】
監督:ルイ・シュワルツバーグ

製作国:アメリカ

上映時間:81分