(C)2021「サマーフィルムにのって」製作委員会
いまだ、多くの作品でバイプレーヤーに徹しながらも圧倒的なインパクトを残す新人女優がいる。彼女の名前は河合優実。
俳優デビューわずか3年という短期間でありながら、名だたるキャストが揃う秀作の数々で抜群の存在感を発揮している新人女優である。
彼女は、いったい、何者なのか?
今回の記事では謎に包まれた彼女の正体を、過去の出演作を参考にしながら、3つのポイントで明らかにしていきたい!
記憶に残る女子高生
彼女の名前を世に知らしめた代表作のひとつが、現在上映中の映画『サマーフィルムにのって』と言えるだろう。
映画作りに励む高校生たちを描いた本作で、河合は仲良し女子高生3人組の1人・ ビート板を快演。
クールな性格ながら、親友にもなかなか言い出せない”密かな思い”を持ったキュートな眼鏡っ子に、多くの観客が親しみを抱いたはず!(以下の本編映像からも、そんな彼女の魅力が確認できる)
また、落ち着いた高校生のイメージとは裏腹に、積極的な役柄を演じられるのも彼女の強みだ。
(C)日本テレビ
平野紫耀が主演を務めた24時間テレビ ドラマスペシャル「生徒が人生をやり直せる学校」では、貧しい家庭に育ちながらも保育士の夢を持つ女子高生・緑川姫希を演じており、なにわ男子(関西ジャニーズJr.)・大西流星の主演ドラマ「夢中さ、きみに。」では謎の同級生・スズキに恋心を抱く荒川役を好演。
『サマーフィルムにのって』とは大きく異なる役柄ながら、あまりにも自然に役へと入り込んだ彼女の演技には同一人物とは思えない頼もしささえ感じられる。
さらに、今年の7月、WEB上で公開されたオリジナル短編ドラマ『みつめ』では、コロナ禍の現代を舞台に就活生・ミツメを演じた。
こちらの作品では、お笑い芸人・オズワルドの伊藤演じる兄・カイの妹として厳しい状況下で奮闘する彼女の姿が印象に残る。
上記の3作品とは異なり、大人への一歩を踏み出す健気な主人公の様子には強く胸を打たれるのだ。
–{2つ目のポイントは「確かな演技力」}–
確かな演技力
ここまでは一般的な女子高生役を演じてきた河合優実の魅力を紹介してきたが、彼女の実力はこれだけにとどまらない。
その圧倒的な演技に驚かされる一作が、現在公開中の映画『由宇子の天秤』である。
思わぬ事件に遭遇するドキュメンタリーディレクター・由宇子の葛藤を描いた本作で、河合は物語の鍵を握る少女・小畑萌を熱演している。
主人公の人生さえ脅かす衝撃の真実をカミングアウトする萌は、様々な問題を抱える難しい役柄。
そんな人物を見事に体現し、芯の強さと心細さを同居させた迫真の演技には観客の誰もが言葉を失ってしまうだろう。
また、河合はWOWOW製作のドラマ「さまよう刃」でも物語の起点となる少女・長峰絵摩を演じている。
こちらの作品では凄惨な犯行の末に愛娘を殺された男・長峰重樹(演:竹野内豊)の復讐が描かれるが、愛らしい日常描写を経て痛ましい死を遂げる彼女の姿があるからこそ、主人公のやり場のない怒りが受け手にも突き刺さるのだ(かなり、ハードな描写も多い作品ゆえ、鑑賞には、それなりの覚悟が必要だということも、念のために書き添えておく)。
そして、彼女の演技力を語る上で欠かせないのは、LINE制作による現在配信中の縦型ドラマ「上下関係」である。
窪塚洋介、大島優子、 田中麗奈、でんでん、板尾創路と名だたる実力派俳優陣が集結した本作で、彼女は田舎から上京したヒロイン・本田小夏に大抜擢。
連続失踪事件を描いたミステリードラマらしい鬼気迫る悲鳴の演技から方言にも挑戦し、豪華俳優陣に追いつくどころか上回る勢いの存在感を発揮している(本編はコチラで鑑賞可能。※LINEアプリのみ)。
もちろん、バイプレーヤーとしての彼女の演技力も忘れてはいけない。
(C)映画「佐々木、イン、マイマイン」
『佐々木、イン、マイマイン』(20)では、物語の中心人物・佐々木に一筋の光を与える女性・苗村を好演。
多数の人物で彩られた本作でも、彼女が登場する”カラオケオールナイト”のシーンは強く印象に残るのだ。
初対面の佐々木に突然ナンパされ、動揺する苗村。しかし、そのあとで彼女が帰り道を歩くカットでは、ふとした表情から”帰らない青春の美しさ”という作品の持つテーマを感じとることができるだろう。
また、河合は『転がるビー玉』でヒロインの一人・愛(演:吉川愛)のバイト仲間・萌子を演じ、作品を象徴するように「私、東京にいるってだけで満足しちゃってる」というセリフを発している。
両作とも出演時間にしては決して長くない彼女だが、一度見ると忘れられない名場面になっているのは確かで、ひときわ輝く表現力があるからこそ、作り手はこのような役回りを与えているのかもしれない。
–{3つ目のポイントは「秘めたる才能の萌芽」}–
秘めたる才能の萌芽
時折見せるトリッキーな役柄からは彼女の秘めたる才能も感じられる。
その最もたるものが『喜劇 愛妻物語』での”高速でうどんを打つ女子高生”役であろう。
そもそもの役名のインパクトからして常軌を逸しているのだが、何気に劇中において重要な役回りになっているのも、このキャラクターの興味深いところ。
その演技は予告編(1分21秒あたり)からも垣間見ることができるが、彼女はコメディエンヌとしても大成する可能性があるのかも……。
(C)「女子グルメバーガー部」製作委員会
ほかにも、驚異の飯テロドラマ「女子グルメバーガー部」での憧れのバーガーショップ店主に弟子入りし、上京する”れな”役(第2話)や、短編配信ドラマ「VerifieR-立証者-」(Rakuten TV登録者はコチラから無料で本編を鑑賞可能)で物語の鍵を握るヒロイン”真下ほのか”役を演じるなど、個性豊かな人物への起用は続く。
そして、今年、YouTubeで配信された異色ソーシャルドラマ「惑星サザーランドへようこそ」では、ついに宇宙人を演じることになった。
一般人に紛れ、地球で調査をしている宇宙人たちのゆるい日常を描いた本作で、彼女は地球外生命体の3人組の1人・麦を好演。
宇宙人とはいうものの第3話では地球人に密かな恋心を抱く様子が描かれ、セリフに頼らずとも表情の変化で感情を受け手に想像させる名演技を披露している(ちなみに、こちらの作品は、彼女の共演者として甲田まひる、主題歌をCody・Lee(李)が担当しており、『サマーフィルムにのって』との絶妙な繫がりも発見できる)。
このように奇想天外な役柄にさえ説得力を与えてしまうのも、彼女ならではの強みなのかもしれない。
そして、幼少期のダンス経験が役者へのきっかけになったという彼女ゆえ、身体性を活かした動きの表現力についても、言及しておくべきだろう。
くじらの楽曲「寝れない夜に feat.yama」のMVでは、服を着替えながら室内で激しく舞い踊る姿が美しい。
映画ファンには嬉しい小ネタや演出的なギミックも楽しい映像だが、あくまで、その主役は楽曲と彼女といえる。
たとえ、彼女を初めて見た人であっても、このMVからは大きな感動が得られることだろう。
ちなみに、『由宇子の天秤』の春本雄二監督は過去のインタビューで河合優実の表現力を絶賛。
彼女は学生時代から表現活動(脚本執筆、一人ミュージカルなど)を行っており、劇中に登場する”ある人物”の似顔絵も本人が描いているとのことである。
ここからも分かるように、彼女の能力はとにかく多彩である。
今後も、その表現力から多くの作り手を唸らせていくことだろう。
これからの活躍
今回の記事では女優・河合優実の出演作を振り返りながら、その魅力に迫ってきた。
先ほども触れた通り、彼女には未だ秘められた才能があり、今後、その魅力の開花が期待される。
しかし、彼女の出演作の中には、過去に製作された主演映画『透明の国』(20)のほか、短編作品『よどみなく、やまない』(19)など、現在では鑑賞が困難なインディーズ作品も存在している。
今後、これらの作品を目にする機会があるのかも、いちファンとしては気になる部分である。
(C)2021『愛なのに』フィルムパートナーズ
そして、来年には、監督・今泉力哉(『愛がなんだ』(18))×脚本・城定秀夫(『アルプススタンドのはしの方』(20)監督)コンビによるR15指定の大人向け恋愛映画『愛なのに』の出演も決定している。
今後、数年間の日本映画界で見逃せない逸材となるであろう女優・河合優実。
皆様にも、その大躍進を、今のうちから目撃していただきたい!
(文:大矢哲紀)