<眞栄田郷敦>&<賀来賢人>、ギャップが愛おしい二人の魅力|「プロミス・シンデレラ」「TOKYO MER」

デフォルト

続々ラストスパートを迎える秋ドラマ。今期特に惹きつけられたのが、ツンデレ要素のある男性たちだ。性格や生い立ちや仕事での立場など、さまざまな事情で素直な気持ちを表現できない男たち。本記事では、そんな彼らの魅力に迫りたい。なお普段ツンデレにはまったく食指が動かない筆者も陥落してしまったので、ツンデレ興味ない、という方もぜひチェックしていただきたい。

眞栄田郷敦…「プロミス・シンデレラ」壱成役

「プロミス・シンデレラ」より(C)TBS

まず紹介したいのは、「プロミス・シンデレラ」で壱成を演じた眞栄田郷敦だ。壱成は、初登場の時点ではほんとに「生意気で最低なクソガキ」だった。実家がお金持ち、小遣いをたくさんもらっていて、見た目もよくて女子にもモテる。さらに日頃のうっぷんを晴らすべく、クラスメイトにゲームと称して罰ゲームのようなことをさせて楽しんでいる。

主人公・早梅(二階堂ふみ)を出会い同居することになるのも、「寝床を提供してやる代わりにゲームをして俺を楽しませろ」といった暇つぶしがきっかけ。このゲームの内容というのがひどい。「水着で買い物に行く」「メイドコスプレで交番の警察官を萌えさせる」「八百屋のおやじに「ハゲ!」と叫ぶ」「セレブパーティーの主役に恥をかかせる」などなど……このラインナップを見たときは正直、性格最悪だなと思った。

「プロミス・シンデレラ」より(C)TBS

壱成が満たされないのは、幼いころ母親が出て行った際「あんたなんていらない」と言われてしまったことがずっと傷になっていたからだった。その前から周りの大人たちの対応を見て「次男は必要ないんだな」と感じていたため、より自信をなくし、ひねくれてしまった。

第一印象最悪ながら、回を追うごとに魅力が垣間見えた人物でもあった。前情報で「眞栄田郷敦と岩田剛典が兄弟対決」と知り、「ふーん、私は岩ちゃん派だなぁ」と思ったが観ているうちに壱成派になってしまった人、かなり多いのではないだろうか。作者もそのうちの一人だ。それほどに壱成は魅力的な人物だったし、演じている眞栄田郷敦の魅力もたくさん知れた。

不器用な優しさ

「プロミス・シンデレラ」より(C)TBS

性格最悪かと思いきや、序盤から不器用な優しさを見せてきた壱成。2話では体調不良で倒れたらしき早梅を助けにやってくる(そもそも倉庫で探し物をするように指令を出したのも壱成ではあるのだが)。朦朧としながら弱音を吐く早梅に「話せよ。話すだけで楽になることもあんだろ」と優しく肩を貸す。

早梅が離婚を言い渡してきた夫・正弘(井之脇海)と話をつける回では、家を出てきたがスッキリしない顔の早梅を見て部屋に乗り込む。不倫相手のことをひたすらかばう正弘に怒り「テメーにとってこいつは何だったんだよ!」とぶん殴る。外に出てから涙が出てきてしまった早梅に、憎まれ口を叩きながらティッシュを持ってきてくれるシーンもキュンとする。

自分がつらい思いをしたからか、人の心の機微を察して気遣ってくれるところがある。いやー、たまらん。

心が伝わってくる「目の演技」

「プロミス・シンデレラ」より(C)TBS

今回の役柄で非常に秀逸なのは「目の演技」だ。物語中盤までは、心とは真逆のことを言ってしまうことが多かった壱成。その一言では表せない心情を、目で見事に表現していた。

特に印象的だったのは第5話で早梅が出て行ってしまうシーン。こっそり忍び込んだ早梅と兄・成吾(岩田剛典)の食事。壱成に恋愛感情があるのでは? と成吾に言われた早梅が否定したのを聞いてしまい、帰宅後「最後のゲーム、ここを出ていったら借金チャラ」などと言ってしまう。

「お前がそうしたいならそうしろよ」と言いつつ、傷ついた捨て犬のような目で「行かないで」と訴えていて、見ているこちらが切なくなってしまった。結局早梅が出ていき、傷ついた顔をしていたのも、自業自得とはいえかわいそうな気持ちになった。眞栄田郷敦は目でお芝居できる人なんだな、と印象づけられた。

改心した後のかわいさ、限界突破してしまう

早梅とのやり取りを経て、ここ数話は改心し、ひねくれ発言が消えまっすぐ気持ちを伝えるようになった壱成。もはやツンデレではなくデレだし、繰り出すセリフがいちいちかっこよくて破壊力がえぐい。

早梅に見合った男になりたいと、祖母に頼んで夏休みの間、あんなに毛嫌いしていた旅館で働くことにした壱成。着物似合う~! 早梅が嫌がらせされていることを知り仲居たちに聞き込みしたり、空いた時間にいけた生け花が才能にあふれていたり……。仲居たちに大人気なほか、短期でバイトしにきたかわいい女子高生にも惚れられる始末。

一方で、ストレートに夏祭りに誘えず、屋台で対決ゲームにして誘うところはかわいすぎた。仲居からのやっかみを気にして一緒に帰るのを拒否されてショックをうけ、何でだろう? と目を丸くして考えるところもよい。

だが決めるところは決める。夏祭りの後「俺の気持ちははっきりしてる。だからてめーは俺のことだけ見とけよ、バカ女」とキスするシーンはかっこよすぎた……! 「抱きしめていい?」とストレートに聞いてきたり、あの夏祭り誘うのにもじもじしてたのは何だったんだよという……。

最終回ではどんな風にキュンキュンさせてくれるのか、非常に楽しみだ。

–{賀来賢人…「TOKYO MER」音羽役}–

賀来賢人…「TOKYO MER」音羽役

「TOKYO MER」より(C)TBS

もう一人、今までにない魅力を放ったのが、ひと足先に最終回を迎えた「TOKYO MER」で音羽尚役を演じた賀来賢人だ。音羽は救命救急チーム「TOKYO MER」の一員だが、医師でありながら厚生労働省の官僚でもある医系技官。実は厚生労働大臣に「TOKYO MER」解体を命じられたスパイという役どころだ。

解体を狙っているためチーフである喜多見(鈴木亮平)の過去をさぐったり、チームの粗を探し、チームの団らんには加わらない音羽。嫌な奴かと思いきや、医師としては熱い心を秘めており、患者を救いたい気持ちと自分が課せられた命令の間で心揺れる様子がひじょうに魅力的だった。

一見水と油、真逆のような喜多見と最強のバディになっていく様子に心が高鳴った。結局ギリギリのところでは自分の立場より患者の命を優先し、ピンチのときに助けてくれる音羽。なんど音羽先生……!!! と思ったか知れない。なのに褒められると「政治家に媚び売りたいだけです」とか自分は嫌なやつなんだと思わせる発言をするところもかわいい。

ピンチのときに助けてくれる音羽

忘れもしない第1話、ガスが漏れていて危険な中、制止を押し切り一人事故現場に入り、患者の処置をする喜多見。もう少しというところで、気を失いそうになる。倒れかけた瞬間、後ろからそれを阻止した人物。音羽だった。かっこよすぎて叫んだ。でもその後喜多見にグータッチを求められると「余計な接触は避けましょう」と拒否、喜多見も「ですね」と引っ込める。以来このやり取りはたびたび出てきて、二人の関係性を示すお決まりのやり取りとなる。

エアグータッチ事件

第4話、移植用の心臓を運ぶ車がトンネル崩落に巻き込まれてしまう。多くの命の選択を迫られた中、なんとかみんなの命を救い、心臓移植も成功。オフィスに戻ったあと、疲れて寝る喜多見を見、2階からエアーでグータッチする音羽。ええ、かわいすぎない……? とんだツンデレであった。

「命より大事なものなんて、僕にはない」

「TOKYO MER」より(C)TBS

仮病で入院する天沼、喜多見の妹・涼香(佐藤栞里)、帝王切開を控えた妊婦と4人で乗ったエレベーターに閉じ込められた5話。はじめは天沼を優先して動き、涼香に「最低」と言われる音羽だが、最終的にはオペが必要な妊婦を優先する。

「お前の官僚人生は終わりだ」と言われても「はい。でも命より大事なものなんて、僕にはないですから」と言い切る様子がかっこよかった。母子ともに無事だった母親にお礼を言われ、自分の母はお金がなく治療を受けられず若くして亡くなったこと、自分が医療の制度をもっと拡充すると真摯に語るシーン。

なぜ音羽が官僚として出世したいのかが明かされ、胸を打たれた。涼香にお礼を言われても「買いかぶりすぎです。私は政治家に媚びを売ろうと思っただけです」っていうのがまたよい。

フィナンシエ事件

涼香がお詫びとお礼にと持ってきたフィナンシエ、はじめは「お気持ちだけいただきます」と拒否した音羽。つれない感じだったのだが、最終的に食べて「ごちそうさまでした」と伝えるのがかわいかった。

「ぶざけんなよ!」

停電により、多くの患者の命がさらされた病院。土砂崩れの危機も迫っている。危険を顧みず一人で電源を再開させたものの、足を滑らせ感電、心停止してしまった喜多見。懸命に心臓マッサージするが戻らず、危険だから救助をやめ退避するように命じられてしまう。そんな中一人諦めず心臓マッサージし続けたのが音羽だった。「ふざけんなよ! 引っ張りこんでおいて、さんざん無茶して、これで終わりかよ!」と怒りながら救命活動を続け、喜多見の命を救ったのだった。

最終回で見せた証言と涙、最高にあつい

「TOKYO MER」より(C)TBS

椿によって涼香が殺され迎えた最終回。最終審査会で喜多見のことを思い出しながら証言する音羽先生が本当によかった。

「このチームがいるというだけでみんなが安心する。TOKYO MERはそういう存在に成長しました」

「ああだこうだと理屈をつけて安全な場所から批判ばかりする、あなたたちに彼らを笑う資格なんかない!」

「現場を視察した医系技官として申し上げます。MERはこの国に必要な組織です」

よく言ってくれた、音羽先生! 

そのまま現場に駆け付け、ガス漏れの中患者の処置を続け、気を失いそうになった音羽。間一髪のところで助けたのが、妹・涼香を失ってから何もできなくなっていた喜多見だった。第1話で音羽が喜多見を救ったのと同じシチュエーションで立場が真逆になっており、ずっと観ていた視聴者はグッときたのではないだろうか。

また、涼香を殺した椿の命を再び救い「今は命を助けられてよかったと思っています」と笑顔を見せる喜多見に、手術室で涙する音羽にはもらい泣きしてしまった。

MER正式認可後、統括官となった音羽。彼自身の強い希望で喜多見をゴリ押ししたという。それでもやっぱり、喜多見にグータッチを求められると「接触は避けましょう」と拒否するところ、相変わらずツンデレ! だがそれでこそ音羽。これからも助け合いながら命を守っていってほしい。

ちなみにこのドラマ、はじめは喜多見と対立しがちだったレスキュー隊隊長の千住(要潤)、最後の最後にMERに認可を出した白金大臣(渡辺真紀子)など、ツンデレの宝庫なので未見の方はそちらにも注目してほしい。多くのツンを最終的にデレにしてしまったMER、そして喜多見、すごいなぁ。

–{眞栄田郷敦、賀来賢人。もっといろんな顔が見たい}–

眞栄田郷敦、賀来賢人。もっといろんな顔が見たい

前クールの「レンアイ漫画家」二階堂のイメージしかなかったが、今回本当にいろんな感情をまとうことができる俳優だとわかった眞栄田郷敦。「プロミス・シンデレラ」開始時には「新田真剣佑の弟」「千葉真一の息子」として認識したいる部分が正直あった。だが今は、眞栄田郷敦だから気になるし、もっともっといろんな役を見てみたい。

どちらかというとコミカルだったりストレートな感情を見せる役のイメージがあった賀来賢人。比較的最近のシリアスなものは「ニッポンノワール-刑事Yの反乱-」だが、どちらかというと個人での活躍シーンが多かった。
「TOKYO MER」初回では、こういった二面性のある笑わない役にキャスティングされるのが意外だった。だが今は、もっと彼のこういう役が見たい。

今回大いに楽しませてくれたことを感謝するとともに、二人の次回作を心待ちにしたい。

(文:ぐみ)