『恋の病~潔癖なふたりのビフォーアフター』レビュー:重度の潔癖症カップルが織り成す予測不能の恋の行方!?

ニューシネマ・アナリティクス

■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

家の中の掃除や手洗いは当たり前、外出するときは防塵服にマスクは必須といった、かなり重度の潔癖症として社会を生きるボーチン(リン・ボーホン)とジン(ニッキー・シエ)。

この完全潔癖武装男女が、ひょんなことから運命的な出会いを果たし、同居生活を始めたら?

直接関係はありませんが、どことなくコロナ禍の今、こういったカップルがいてもおかしくはないかなと何となく思わせてしまうユニークな設定で進む、予測不能の台湾発ラブ・ストーリー。

お互い「自分は他人と隔絶しながら独りで生きていくのだ」と決めていたものの、いざ一緒に生活してみると「同病相愛」「同病相隣」といった同じライフスタイルゆえに息もぴったり!

やはりカップルというものは、ライフスタイルをいかに共有していくがが長続きの秘訣の鍵なのかなとも気づかされます。

またこのふたり、実に相性が良いというか良すぎるというか、はたから見たら変人でも、このふたりからするとお互い実にまっとうで息もピッタリなわけです。

しかし、逆に少しでもお互いにズレが生じてしまうと……。

はじめは少々カリカチュアライズされた潔癖症描写などでコミカルに進んでいく本作、しかしながら後半は徐々に勝手が違っていくあたり、意外にシビアで現実的に恋愛の本音を衝いた快作に仕上がっているのでした。

台湾のアカデミー賞たる第57回金馬奨で6部門にノミネートされたのをはじめ、第24回富川国際ファンタスティック映画祭最優秀アジア映画賞、第5回ロンドン東アジア映画祭最優秀作品賞など世界中の映画祭で話題になった作品。

観客賞(第22回ウーディネ極東映画祭、第24回ファンタジア国際映画祭)の受賞が目立つのも、本作がお堅い批評家たちだけでなく世界中の映画ファンそのものに愛される要素が満載であることの証左でもあるでしょう。

監督はこれがデビューとなたリャオ・ミンイー。今後の動向が楽しみな、新たな逸材です。

(文:増當竜也)

–{『恋の病~潔癖なふたりのビフォーアフター』作品情報}–

『恋の病~潔癖なふたりのビフォーアフター』作品情報

【あらすじ】
重度の潔癖症の青年ボーチン(リン・ボーホン)は、家では隅々まで徹底的に掃除し、自身も何度も手を洗い、シャワーを浴びる毎日を送っていた。外出する時はさらに大変。防塵服を着た上に、手袋とマスクまでする完全武装。そのため、一般的な社会生活が送れず、他人から見るとまさに“偏人”だった。そんなある日、いつもの完全武装で電車に乗っていると、同じように完全武装した女性ジン(ニッキー・シエ)を発見する。こうして、運命的な出会いを果たす2人。ジンも重度の潔癖症で、屋外に4時間以上いると肌に発疹が出るアレルギー体質の上、スーパーマーケットで万引きを重ねてしまう窃盗症まで持ち合わせていたのだ。“自分は一生、他人と隔絶してひとりぼっちで生きていくのだ”と運命に縛られていた2人が天の采配で出会い、清らかな恋愛がスタート。それは“他人から疎外される”という恐れのない安心感に満ちた唯一無二の関係だった。こうして、何の希望もない暗黒の日々が、次第に色づいていく。だが、この運命的な関係は突然破綻を迎える。ボーチンからこの厄介な症状が消えてしまったのだ。永遠に続くと信じていた2人の関係だったが、次第にすれ違いが生じていき……。 

【予告編】

【基本情報】
出演:リン・ボーホン/ニッキー・シエ

監督:リャオ・ミンイー

脚本:リャオ・ミンイー