『ドント・ブリーズ2』レビュー:最凶の盲目老人、再び!今度は何と少女の壮絶奪還劇!

ニューシネマ・アナリティクス

■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

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邸宅に押し入った3人の若き泥棒たちに壮絶過剰の域を越えた暴力で対峙し、それどころか実は前代未聞の(文字にするのもおぞましい!)変質者であったことまで発覚する最凶最悪の盲目老人(スティーヴン・ラング)がもたらす、文字通り息もできないスリル&サスペンスの恐怖を描いた『ドント・ブリーズ』(16)。

戦地で負傷して盲目となったと思しきキャリアながら、脅威的な実戦テクニック(まるで目が見えているような!?)で敵を駆逐していくそのさまは、盲目老人版“ランボー”のように例えられつつ、その正体ゆえに観客はもはや登場人物の誰にもシンパシーを寄せることができなくなってしまうという、ある意味暴力がもたらすカタルシスを拒絶した意欲的な作りは、単なるヴァイオレンス・ホラー・スリラーの域を超えた斬新なものがありました。

さて、あれから5年経ち、ついにファン待望の続編がお目見えとなったわけですが、前作の監督フェデ・アルバレスは製作(&共同脚本)に専念し、その盟友でもあるロド・サヤゲスが長編映画初監督。

そればかりが理由ではないでしょうが、はっきり申して今回は前作とかなりテイストが異なります。

『エイリアン』と『エイリアン2』ほどの相違があると言えば、映画ファンなら理解していただけるでしょうか。

今回の老人は、何と少女フェニックス(マデリン・グレース)とともに暮らしています。

もしかして、あのスポイトから生まれた子? などと、前作を知る側の脳裏をよぎるさまざまな不安や疑問をよそに、突如謎の武装集団が老人の屋敷を急襲し、フェニックスを誘拐!

当然、老人は彼女を奪還するために壮絶な戦いを繰り広げていきます。

前作が登場人物の誰にも肩入れできない作りに徹することで、主人公老人の「罪」が強調されていたのとは真逆に、今回は少女救出という確たる目的もあって、とりあえずは老人にシンパシーを抱くことが出来るかもしれません。

前回の敵は素人若者衆だったことで、老人の行為がもたらす殺戮恐怖も増大していったわけですが、今回はなかなか手ごわいプロの武装集団が相手なので、老人も前作以上にランボー的ミラクルな活躍を大いに見せつつ、それでもかなり苦戦を強いられていくあたり、よりバトル・スリラー映画としての色が強まっています。

また、やがて導かれる衝撃の真相などから、今回は主人公の贖罪みたいなものが露になっていきます。

即ち前作を「罪」とすれば今回は「罰」とでもいった関係性をもって、この2作を合わせ鏡のような存在として成立させようというのが、製作サイドの意図のようにも思えてなりません。

老人役のスティーヴン・ラングは、本作で完全に役を掴み得たと思しき自然体の貫禄が備わっています。

フェニックスを演じる新星マデリン・グレースも、今後の活動に期待したい好演でした。

(文:増當竜也)

–{『ドント・ブリーズ2』作品情報}–

『ドント・ブリーズ2』作品情報

【あらすじ】
人気のない郊外の古びた屋敷に住む、ある盲目の老人。彼はその屋敷で一人の少女を大切に育て、二人だけで静かに暮らしていた--
その男こそ、8年前、強盗に押し入られた被害者として生きているが、実は強盗団を惨殺した過去をもつ、あの盲目の老人だった・・・。

ある日、謎の武装集団が老人の屋敷に静かに忍び込む。その目的は少女--。
暗闇の中、全てを知り尽くした屋敷内で全員の抹殺を試みるも、訓練されていた集団は老人を襲い、火を放つ。
命からがら炎の中から逃げ出したが、そこに少女の姿はない。目覚める狂気の怒り。老人は己の手で大切に育てた少女を取り戻すため、
武装集団の後を追う・・・。

その集団はなぜ少女を狙うのか、少女はいったい何者なのか、老人はなぜ少女に固執するのか。
全ての真実を知ったとき、前作を超える衝撃に息が止まる--。

【予告編】

【基本情報】
出演:スティーヴン・ラング/ブレンダン・セクストン3世/マデリン・グレース

監督:ロド・サヤゲス

製作国:アメリカ