<ただ離婚してないだけ>最終回まで全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

国内ドラマ

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Kis-My-Ft2の北山宏光が主演をつとめるドラマ「ただ離婚してないだけ」が、2021年7月7日に放映スタートした。

本田優貴による人気コミックを原作としたこのドラマは、夫の不倫をきっかけに巻き起こる、いつ自分の身に起こっても不思議ではない戦慄の展開で話題沸騰の、未だかつてない不倫サスペンス作品。

cinemas PLUSでは毎話公式ライターが感想を記しているが、本記事ではそれらの記事を集約。1記事で全話の感想を読むことができる。

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もくじ

・第1話ストーリー&レビュー

・第2話ストーリー&レビュー

・第3話ストーリー&レビュー

・第4話ストーリー&レビュー

・第5話ストーリー&レビュー

・第6話ストーリー&レビュー

・第7話ストーリー&レビュー

・第8話ストーリー&レビュー

・第9話ストーリー&レビュー

・第10話ストーリー&レビュー

・第11話ストーリー&レビュー

・第12話ストーリー&レビュー

・「ただ離婚してないだけ」作品情報

第1話ストーリー&レビュー

第1話ストーリー



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フリーライターの柿野正隆(北山宏光)と、小学校教師の雪映(中村ゆり)は、結婚7年目となる夫婦。正隆の雪映への思いは冷めきっており、関係は「ただ離婚してないだけ」。しかも正隆には新聞配達員の萌(萩原みのり)という不倫相手がいた…。

ある日、正隆は萌と温泉旅行に行くことに。そこで萌から、ある衝撃の告白が…。

第1話レビュー

血まみれのリビング、嗚咽する中村ゆり、静かに涙を流し、次第に明らかに“ヤバい”目になる北山宏光。画面どころか、視聴しているこちらの部屋をも不穏な空気で覆ってしまうような感覚があった。2021年夏、かなりの問題作が生まれたのではないだろうか…。

フリーライターをしている正隆(北山宏光)と、小学校教諭の雪映(中村ゆり)。2人は夫婦だが、食卓を囲んでいる様子だけで関係が冷え切っていることが分かる。音楽がそれを増長させる。

雪映の表情からはあまり感情を読み取ることができないが、正隆は終始何かにイライラしている。朝食に並んだきゅうりのお漬物を一口かじっては吐き出すし、ふんぞり返って歯磨きをしたまま、仕事へ向かう雪映に「行ってらっしゃい」すら言わない。

冒頭のナレーションに、「俺は孤独だった」という言葉があった。それは家庭内不和だけが原因ではないようだ。

まずは仕事。正隆はフリーライターをしているものの、編集部に原稿を持ち込んだかと思えば嫌味たっぷりに突き返されてしまう。赤字を直そうとするも嫌になったのか、自室の壁に原稿を投げつけ、挙句の果てには「俺のする仕事じゃない」と宣う。

さらに問題なのは正隆の生い立ちだ。編集者が嫌味で言った「大会社に生まれたのにもったいない」。これがどうやら、正隆のいうところの“孤独”の根源。彼の実家は柿野製薬という日本でも指折りの製薬会社で、会長を父に持ってはいるものの、それは正隆の母の再婚相手だった。つまり、正隆との間に血縁関係はない。だから彼は、幼少期から家族の中にカウントされていなかった。誰もがうらやむ裕福な家に暮らしながら、その実、そこに存在していなかったのだ。この経験が、正隆の心に大きな孤独の種を植え付けた。

行き場のない孤独や怒りに腐り、生気すら感じられない正隆は、新聞配達のアルバイトをしている萌(萩原みのり)と不倫をしていた。完全に憂さ晴らしだからだろう、家にやって来た萌を、ダイニングテーブルでほとんどレイプするかのように乱暴に抱く。

この萌もなかなか難しい環境にあった。家に帰れば少年院を出たばかりの弟・創甫がおり、彼の生活費を工面するためアルバイトを掛け持ちしている。さらに、働いているガールズバーの店長・佐野(深水元基)とも付き合っているが、とても大事にされているようには見えない。登場する男たち全員から、いいように扱われてしまっている。

事態が動いたのは、2人が訪れた旅先でのこと。温泉に入っているときに、萌が妊娠を告白したのだ。言葉を失った正隆。

正隆はかつて、雪映との間にできた子どもを死産により亡くしていた。しかし彼はそれを悲しむではなく、むしろ安堵していたと振り返る。家族の中にあって家族を知らずに育った正隆には、家族というものとの向き合い方が分からなかったのだ。

そんな彼が、不倫相手との間に子どもを作ってしまった。すべてを煩わしがり逃げてきた正隆は、この問題にどう向き合うつもりだろうか。今回、あまり詳らかにされなかった雪映の心情も気になるところだ。

それにしても、今作の北山宏光は振り切っている。まったく笑わず、これまで見たこともないような“ヤバい”表情を度々浮かべる。さらに、かなり大胆な濡れ場もあった。ある程度どんな役柄なのか想像はしていたが、それを上回るクズっぷりを、淡々と静かに演じていた。バラエティー番組や歌番組などとはまるで違う顔を見せる北山に、戸惑った視聴者も多いはず。

おそらくは覚悟を持って臨んだであろう作品。切り拓かれる役者・北山宏光の新境地に期待したい。

※この記事は「ただ離婚してないだけ」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第2話ストーリー&レビュー}–

第2話ストーリー&レビュー

第2話ストーリー



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不倫相手の萌(萩原みのり)と温泉旅行に向かった正隆(北山宏光)。そこで萌から妊娠を告げられる。正隆が、堕胎するよう告げると萌は困惑するも、その言葉を受け入れる。自宅に戻った正隆は、子供を望んで産婦人科へ通う妻・雪映(中村ゆり)の診察券を見つけると、「子供なんていらねぇだろ」と吐き捨てる。そんな正隆は、自分の生い立ちから“家族”という存在と向き合えなくなっていた…。

第2話レビュー

重い…あまりにも重すぎる! CMでやっと息が吐ける、ただならぬ緊迫感は引き続き。

今回は、正隆(北山宏光)の過去が明らかになり、そして事態が少しずつ嫌な方向に動き出した。

正隆は以前、義父の会社・柿野製薬で働いていた時期があった。家族の中でずっとのけ者にされていたのかと思ったが、そうではなかったらしい。

仕立てのよさそうなスーツに身を包み、いい表情をしている。仕事も、かなりデキるようだ。当時はまだ彼女だろうか? 雪映(中村ゆり)とも仲睦まじい様子。初めて正隆の笑顔が見られて、なんだかホッとした。

しかし、この先に地獄が待っていた。重役たちが集まっている会議で、当時まだ社長だった義父が、突然の退任を発表した。次期社長に選ばれるのは当然正隆だろうと、周りも、おそらくは本人も思っていた。…が、義父が社長に任命したのは正隆にとって義弟、つまり義父の実の息子だった。会議は紛糾、正隆は放心状態だったが、次第に目が変わっていく。あぁ、今の、あの光のない目…。

なるほど、同情の余地は大いにありそうだ。

だとしても、萌(荻原みのり)に対する狂気ともいえる正隆のクズっぷりは目に余るものがあった。

不倫旅行で訪れた温泉で、萌から子どもができたかもしれない、と打ち明けられ、みるみる顔を歪ませる正隆。流されるまま憂さ晴らしのようにはじまっただろう萌との関係が、それだけでは済まなくなったことへの憤りから、叫び、「絶対に堕ろせ」とすごむ。そういう態度をとるだろうと分かってはいたが、最低だ。ちょっと顔を引きつらせながら「分かってるよ、当たり前じゃん」と笑顔を作る萌が痛々しい。

でもこんなのまだまだ序の口。萌への理不尽はさらに続く。中絶手術に関しても、「とりあえず20万おろしてきた」と費用だけを手渡した。挙句の果てには、「おおごとにしなくていい」なんて言い出す。さすがに意味が分からない。萌も、「ありがとう、気遣ってくれて」じゃない。もっと怒ったり泣いたりしてもいいんだよ…。

そして手術当日。正隆は、病院に付き添ってほしいという萌のささやかな願いすら叶えてやらなかった。

ただ、さすがにまずいと思ったのか、それとも家にいたくなかっただけなのか、会いたい、と連絡があれば出ては行く。待ち合わせ場所に現れた萌は、手術の影響でフラフラだった。その姿を見てもなお、非情にもハグを振り払う。

もちろん子どもができたことは、正隆だけではなく、あくまでも2人の問題だ。ただ、それによって萌がどれだけ心身ともに傷付いているのか、なぜこの男には想像すらできないんだろう。精神状態、やばすぎないか。

さっさと帰っていく正隆の後ろ姿に、「もし、どうしても生みたいって言ってたらどうしてた?」と泣きながら問う萌。もちろんその声は、過剰なまでに背筋を丸めて人目を避けるように歩き去る正隆には届かない。

もしわたしが萌の友達だったら、今すぐに行って抱き締めてあげたいし、あんな男とはもう2度と会わないように手を回したかもしれない。でも萌は、正隆の不器用さ、寂し気な様子に惹かれたと、手術前に弟・創甫(北川拓実)に言うともなく打ち明けていた。だからきっと、こんな仕打ちを受けても、正隆を思う気持ちは消えないだろう。「その人のためなら何でもしたい」と言っていたときの思いつめた表情が気になる。一体何を考えているんだろう…。

一方の雪映は、クレジットカードの明細から正隆の不倫に勘づいたようだった。そもそも正隆には隠す気もなかったのかもしれないが、それにしてもあからさますぎる。事実上失脚した後も正隆を献身的に支えてきてくれただろう雪映に対して、こんな仕打ちはあんまりだ。

雪映は洗濯の際に正隆の下着に触れ、その後ものすごい勢いで手を洗う。もう1度子どもを授かりたいと考えていたのか、産婦人科にまで通っていたようだったのに…。(案の定、正隆は病院の診察券を見つけてブチ切れていたけど。)

それにしても、溌溂と働いていた頃の正隆を知っている雪映にとって、今の彼と一緒にいるのはかなり辛いだろう。というか、よく一緒にいられるなと思う。萌にしてもそうだが、正隆にはどこか放っておけない空気があるのだろうか。自身の無気力からどんどん立場を悪くしている正隆は、この後どこまで行ってしまうんだろう。

※この記事は「ただ離婚してないだけ」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第3話ストーリー&レビュー}–

第3話ストーリー&レビュー

第3話ストーリー

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正隆(北山宏光)との子供を堕胎した萌(萩原みのり)。手術の日以来、正隆から連絡を無視され、不安を募らせていた。妻の雪映(中村ゆり)もまた正隆が銀行口座から引き出した20万円を不審に思っていた…。
そんな折、萌は術後の不正出血で産婦人科へ行くと、雪映に出くわし、衝撃の事実を告げられる。それを聞いた萌は、子供を堕ろした深い悲しみと積み重なり、徐々に正気を失っていく。物語はスピードを上げて転がり落ち、衝撃の展開へ…!

第3話レビュー

中絶手術を終えた後、正隆(北山宏光)に「私、がんばったよ」と無理やりに笑顔を作って言う萌(萩原みのり)が、何度見ても痛々しい。でも、これはまだ入り口に過ぎなかった。

萌とあんなことがあったにもかかわらず、正隆は平然と暮らしていた。ソファに寝転んで電動歯ブラシなんて、いいご身分ですね、という気持ちになる。挙句、萌からの「今日は会える?」という連絡に、あからさまに面倒くさそうな表情。もしかして、もう女遊びは懲りたんだろうか。だったらいいのに、と思った矢先、正隆が見ていたのはマッチングアプリ。どこまでもクズ…! と思うと同時に、なんだか自ら不幸の奥深くへ潜り込んでいっているように見えた。

それは雪映(中村ゆり)も感じていたらしい。正隆が出張と称して鎌倉の高級旅館に泊まったり、口座から一気に20万円を引き出したり、度を過ぎた行動の数々に、我慢は限界に達していた。
萌からは自分を責め立てるような大量のLINEが届き、新しく引っかけた女の子はホテルに連れ込むも逃げられ、おそらくは散々な気分で帰宅した正隆。真っ暗な部屋の電気をつけると、今日も今日とてしっかりと準備された食卓を前に、雪映が静かに座っている。ある意味、恐怖映像だ。でも、暗闇に突如現れたことで、食卓の彩りがより鮮明に見えた気がした。この人は、いつも不機嫌で会話もままならない夫のためにここまで…と改めて気付く。

正隆が「なんとか言えよ!」と怒鳴ると、「これ以上自暴自棄にならないでよ! もっと自分を大切にして」と泣き出す雪映。生き生きと仕事をしていた姿を見てきて、いつか必ず立ち直るはずと信じてきたからこそ、ここまでやってこられたんだろう。「生き直してよ」「あなたを見捨てない」…初めて雪映が感情を言葉にしたんじゃないか。もしかしたらその裏側には、雪映の自己満足や執着も含まれているかもしれない。でも、今この状況で正隆に向き合ってくれるのは、たぶん雪映だけだろう。この叫びを無下にしたらだめだよ、がんばれ、と知らず知らず正隆を応援してしまっていた。

正隆は、萌に「別れよう」とLINEを送る。もうちょっとしっかり話をしなきゃ…と思ったのも束の間、LINEを受け取った萌は放心状態のまま、ほとんど躊躇いもなく手首を切る。なんでなんで、と泣く萌はやつれ果てていて、その迫力に息を呑んだ。萩原みのり、すごい演技だ…。

1人の若い女の子を地獄に落としておいて、おそらくはそのことに無自覚だろう正隆は、仕事にもやる気を見せる。今まで嫌味しか言ってこなかった編集者とは違う人と打ち合わせをしていた。そうそう、そうやって関わる人もある程度は選んだ方がいい。

雪映との間にも会話があるし、なんだか自然に夫婦になっていてほっとした。コーヒーを淹れようとしてフラついた雪映をすっと支える仕草もまったく白々しくないし、見ていて気まずい感じもない。ここまでの鬼気迫る正隆もかなり見応えがあったが、過不足のないこの微妙な塩梅をうまくやってのける北山宏光に脱帽してしまった。(え、あのシーン、すごくなかったですか…?)

何もかもうまくいきそう。光明が見えてきたとき、雪映が待望の妊娠。しかし、婦人科には萌も居合わせていて、雪映の妊娠をしってしまう。もうずいぶん人相が変わってしまっている。「おめでとうございます」の笑顔が怖い。

妊娠を知り、喜びから笑顔を隠せていない雪映、めちゃくちゃ可愛い。この笑顔、ずっと守りたい…が、現実はそんなに甘くなかった。突如正隆らの家を訪ね、ずかずかと上がり込んでくる萌。表情、言葉、行動、すべてから、精神的に壊れてしまっていることが分かる。萌は包丁を手に雪映に襲い掛かろうとするも、正隆が止めに入る。この状況で逃げずに雪映を守ったことで、また少し見直した。いや、これ全部正隆が蒔いた種なんだけど。

もみ合いの末、不可抗力で萌を刺してしまった。床には大量の血液。開ききった瞳孔に、もう息絶えていることが分かる。
こんなことってあるだろうか。せっかく前を向き、少しずつ歩み始めたところだったのに。あぁ、でも全部正隆が悪い。

こうならないためには、どうすればよかったんだろう。中絶をする前に、正隆が萌の話をもっとしっかり聞いていたらよかったのか? 別れ話を、納得がいくまで重ねておけばよかったのか?
なんだかどれも違う気がする。どんな選択をしても、同じところにたどり着いてしまっていたんじゃないか。

ジェットコースターのように物語が進んだ3話。この先、どんな未来が待っていても、見届ける覚悟を持っておこうと思う。

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–{第4話ストーリー&レビュー}–

第4話ストーリー&レビュー

第4話ストーリー

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正隆(北山宏光)に捨てられたショックで雪映(中村ゆり)に包丁で襲いかかった萌(萩原みのり)。もみ合いの末、正隆は萌の腹を包丁で刺してしまう。どんどん広がっていく大量の血。警察に通報しようとする雪映だったが、萌は絶命。2人は遺体を裏庭に埋める。普段通り過ごすよう雪映に命じた正隆だが、萌の幻を見るようになる。狂っていく夫を見た雪映は「もうついていけない」と言い残し、病院へ向かう…。

第4話レビュー

ホラーじゃん、もうやめて…! と、何度か顔を覆ってしまう第4話だった。

床に倒れた萌(萩原みのり)を前に、「どうしよう、救急車…」「警察に」と取り乱す雪映(中村ゆり)。しかし正隆(北山宏光)は、「持てって言ってんだよ!」と声を荒げ、萌の遺体を運ぶのを手伝わせる。そして、遺体を庭に埋めはじめた。無計画な急展開に驚きつつ、こんなことってあっていいのだろうかと苦しくなる。萌の人生ってなんだったのだろう。土がかけられていく萌を見て、せめて、せめて目だけは閉じてあげてほしいと思った。

そして、1話の冒頭へと繋がる。血まみれのリビングで疲れ果てた正隆と雪映からスタートしたあの場面は、萌を埋め、そのまま精魂尽き果ててしまっていたところだった。

自身もかなりの重傷を負っているはずなのに、病院へ行けない正隆。たしかに、包丁を掴んでしまっていたから受診の口実も難しい。雪映に手当てをしてもらい、「何なんだよあいつ!」と叫ぶ。萌のした行動も常軌を逸していたかもしれないけど、あなた、もう少し人の気持ちを考えようか…。

挙句、「普段通り過ごすんだ」と、仕事へ行かせようし、雪映もそれに従う。正常な判断なんて、とてもできる状態ではないのだろう。出勤の際、ゆっくりと萌が埋められている場所を映す。これ、もうホラーの描写だ。ふわっと血だらけの萌が登場したりしないか、目を細めながら画面を見てしまった。(筆者、結構ホラーが苦手です)

一方、萌の家に帰宅する弟。そういえば、一緒に暮らしていたんだった。姉の不在にも特に違和感のなさそうな創甫(北川拓実)だったが、正隆との旅行で萌が買った飾りが風に揺れ、萌の声が重なる。その表情は、何かを感じ取っている様子だった。何だか一波乱ありそう。(ところでこのシーンの「創甫…」という萌の声、みんな聞こえてましたよね…?)

正隆も雪映も普段通りの生活を送ろうとするが、心ここにあらず。正隆に至っては何度もフラッシュバックを起こし、萌の幻覚を見る。生きた心地なんてしないだろう。
人を殺したショックに呑まれて、正隆の不倫のことはうやむやになってしまうのかと思ったが、雪映がついにしびれを切らす。

「あの子をめちゃくちゃにしておいて、殺したのよ…」「ついていけない」「もう無理」

雪映の感情がむき出しになった瞬間だった。正隆はこれに怒鳴り声をあげて反論するでもなく、無気力に、ただ街を徘徊するようになる。その表情は、正隆たちの家に乗り込んできたときの萌のそれと、ほとんど一緒だった。

萌に堕胎させておいて自分だけ産むことはできないと考えたのか、中絶手術の予約をしようとする雪映。あんなに子どもを欲しがっていたはずなのに。お願い、誰か止めて…と思うと同時に、止めたところで幸せなのかなと考えてしまう。八方塞がりって、こういうことをいうのだろう。

さらに、自首をしようと交番の前で立ち止まるも、その瞬間、正隆からのプロポーズを思い出す。「幸せにするから」と優しい笑顔でいう正隆と、やわらかく微笑む雪映は、絵に描いたような幸せの絶頂だった。ここから2人でもっと幸せになるはずだったのに。あの笑顔を、雪映はもう1度取り戻させたかったんだろうな。本当に、何でこんなことになってしまったんだろう。

どこまでいっても萌の幻覚に追いかけられる正隆。これはまるで勝ち目のない鬼ごっこだ。それでも日常を続けようとするが…
ついに2人で囲む食卓で、正隆の糸が切れる。静かに泣き出した正隆は、次第に嗚咽を漏らしはじめ、最終的には子どもみたいに 「ごめんなさい、ごめんなさい…」と声を上げて泣き続けた。(こんな泣き方、ちょっとズルいぞ北山さん、と思ったのは内緒)

何に対して謝っているのか、もうきっと本人にも分からないだろう。ただなんとなく、初めてちゃんと感情を開放して泣くことができたんじゃないかなという気がした。子どもの頃から居場所のなさを感じていたこと、社長になれなかったこと、萌の命を奪ってしまったこと…。

そういった不安や憤り、罪悪感、全部がごっちゃになった涙だった。こんな姿を見せられたら、雪映だって抱き締めるしかない。さらに、この状況で子どもができたことを告げる雪映。そのとき初めて、正隆の目の焦点が合ったように感じた。

そして、「頼む、一緒にいてくれ」と気持ちを伝える正隆。その言葉、本当はもっとずっと前に聞きたかった。ちょっとずつ前に進むかに見えたところで、すべてがぶっ壊れたこの非情な現実が辛い。

そういえば、今回これまで以上に正隆のセリフが少なかったんじゃないだろうか。それでも、正隆が発している様々な感情が伝わってきた。表情や涙だけで、こんなに雄弁に語れるとは。特に最後の泣きのシーンは動きのない数十秒から、静かに涙を流すのがすごく印象的だった。映像ならではの表現と贅沢な時間の使い方に、今は全部が間違ったところにあるけれど、ここが2人にとってのスタートを象徴しているように見えた。

やっと本当の意味で心を一つにできただろう2人。どうか一緒に、未来へ向けて建設的な行動をしてくれと願うばかりだ。

※この記事は「ただ離婚してないだけ」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第5話ストーリー&レビュー}–

第5話ストーリー&レビュー

第5話ストーリー

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正隆(北山宏光)は不倫相手の萌(萩原みのり)を殺したことを自覚し、涙が止まらなくなる。雪映(中村ゆり)は、そんな正隆を励ますと共に、妊娠したことを告げる。正隆と雪映の夫婦の間には、萌を殺めたことにより異質な絆が芽生える――。そんな折、萌がいなくなったことにより、騒ぎが起きていないか心配になった正隆は、様子を窺おうと客のフリをして萌が働いていたガールズバーを訪れるが――!?

第5話レビュー

八方塞がりの状況に追い込まれて、やっと感情をぶつけ合えた正隆(北山宏光)と雪映(中村ゆり)。
これまで冒頭のナレーションは正隆の声だったが、今回は雪映に。母となる彼女の、強さが見えはじめる合図だろうか。

朝、食卓を囲む雪映は「何もなかったの。この家で悪いことは何も」と口にする。正隆に諭すように、自分に言い聞かせるように。この人は、すべてを背負って、お腹の子どもを守ると決めたのだろう。

それに対して大きな反応は見せない正隆だったが、仕事へ向かう雪映を送りに出てくる。こんな状況になって雪映に依存しているならそれはちょっとずるいぞと思いつつ、1人でイライラしている正隆は見ていられなかったし、こうやってコミュニケーションをとれるようになったことは進歩だ。

仕事終わり、自身の妹の家に立ち寄った雪映は、妹から離婚を勧められる。子どもができたからやり直せる、と反論するが、妹は「子どもがいれば何とかなると思ってる?」と完全に呆れ顔だ。彼女には子どもがいて、実際に子育てをしているからこそ言える言葉だろう。「何かあってからじゃ遅いんだよ」と妹は言ったが、たぶんもう、何もかもが遅い。雪映にどれほど深く突き刺さったことか。

一方で、不穏な動きを見せるのは、ヤクザの仁科(杉本哲太)だ。萌(萩原みのり)が勤めていたガールズバーのオーナー・佐野(深水元基)にお金を貸しているが、店の経営状況は芳しくない。「搾り取れるものは搾り取った方が得する」と唸るように言う杉本哲太が怖すぎる…。

そんな発言がされていることには気づかないまでも、やばい奴から借金をしている自覚はあるはずの佐野も、この状況に苛立っていた。売り上げも悪いし、付き合っていた女も忽然と消えてしまったのだ。この人の素行だってどう考えても褒められたものではないけれど、なかなかツイてない。

そこへ、萌の弟の創甫(北川拓実)が乗り込んでくる。姉ちゃんはどこだと詰め寄る創甫に、当然ながら俺も知らないとキレる佐野。やりとりを見ていたバイトのほのか(大原優乃)は、萌が妻帯者と不倫をしていたことをぺらぺらと喋ってしまう。そんなこと、お金に困っている男の前で言わないで…と、弁護のしようもない正隆を守りたい気持ちが湧いてきてしまった(なぜだ)。

正隆や雪映の存在がバレなければいいのに、と思ったが、そんな虫のいい話があるわけがない。

まず忍び寄ってくる陰に気付いたのは雪映。健診に訪れた産婦人科で、萌を探しにやってきた創甫と鉢合わせてしまった。態度こそ最悪だが、萌を探す必死な様子からお姉ちゃんを大事に思っていたことが伝わってくる。きっと、長い間黙って家を空けるなんてこと、萌はしなかったんだろうな。もちろん向こうは気づいていないが、“夏川萌”という名前を口にする創甫を見、雪映はどんどん顔面蒼白に。生きた心地なんかしなかっただろう。早く逃げて…! と、心の中で叫んでしまった。

同じ頃、自宅で事件にまつわるルポルタージュか何かを執筆していた正隆は、気が動転して110番をしかける。こんな状況で、この人は何を好き好んで犯罪系の記事を書いているんだろう、という気持ちは置いておいて、警察への電話を思いとどまらせたのは雪映と幸せの絶頂にあったあの場面。もう何度ヤラれたか分からない、北山宏光の優しい笑顔がまぶしい「結婚しよう」だ。微笑んで頷く雪映を守りたいのなら、頼むからしっかりしてほしい。過去を思い出し、ちゃんとせねばという思いがあったのだろう。創甫と遭遇して気が動転した雪映「大丈夫、俺がいるよ」と小さい声でいたわる。…うん、自分もかなりメンタルやばいはずなのに、よく言えたもんだ。

雪映から、萌のことを探してる人のことを考えてしまったと聞いた正隆は、思い出したように、萌の所持品を確認する。正直、まだそんなもの持っていたのか…という気もするが、電源を入れたスマートフォンの待ち受けは、萌と正隆の2ショット。うかつに捨てることもできなかったのだろう。そこにはほのかや創甫、もちろん佐野からも大量の連絡がきていた。

そして、何を思ったか変装のようなものをして街に繰り出す正隆。こんな時に、雪映のことを1人にしないでほしいんだけど…。

佐野と創甫の萌探しもまだまだ続く。

萌と創甫が暮らす家にやってきた佐野は、がちゃがちゃと部屋をあさりはじめた。そこで、萌が正隆の家に無言電話をかけていた時に見ていたメモが見つかってしまう。ご丁寧に、名前と電話番号が書いてある。考えうる中でも1、2を争うレベルで最悪な状況だ。

正隆は、なぜか萌が働いていたガールズバーを訪れる。何か考えがあるのかもしれないけど、それにしたって挙動もおかしいし、正隆が何をしたいのか全然分からない。様子を探りたかったのかもしれないが、萌に聞いてこの店に来たと口走ってしまった挙句、ほのかのペースに乗せられてLINEの交換までしてしまう。登録名は、しっかり“柿野正隆”のまま。気が動転してたとはいえ、あまりにもお粗末な行動だ。

その時、もちろん家には雪映だけ。鳴り響く固定電話に、絶対出ないで…! という思いも通じるわけはなく、仕事帰りで落ち着かぬままの雪映はそうとは知らず電話に出てしまう。

相手は案の定佐野だった。いわく、萌が正隆にボロボロにして捨てられたことで迷惑をこうむっているから500万円を慰謝料として支払えと言う。取り乱した雪映は、自分が教師であるかのようなことまでほのめかしてしまう。こちらも気が動転していたとはいえ、夫婦そろってすぐに墓穴を掘りがちでは…。

雪映との通話を終えた佐野は、店に戻って来る。当然そこには挙動不審の正隆がいる。また萌はいないのか、と萌に電話をすると正隆のポケットの中で振動する萌のスマホ。じっとりと舐めるような佐野の目線に、見ているこちらまで息が詰まりそうになる。さらに正隆のもとへ雪映から「脅迫の電話があった。柿野って名前まで知っていた」と連絡が入る。慌てて帰ろうとする正隆の背に向かって、ほのかは「また来てくださいね、柿野さん」と笑顔だ。完全に、万事休す。

自分たちの行動が、より事態を悪化させているようにも見えた第5話。じわじわと、大きな蛇にでも締め上げられているような感覚だった。

それにしてもほのかは、正隆のことをどこまで把握していたんだろうか。1番怖いのはこの子なのではという気がしてしまった(可愛いけど)。

絶体絶命の展開、次回はもっと息ができなくなりそうだ。

※この記事は「ただ離婚してないだけ」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第6話ストーリー&レビュー}–

第6話ストーリー&レビュー

第6話ストーリー


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萌(萩原みのり)の残していたメモから、佐野(深水元基)に正体がバレてしまった正隆(北山宏光)。慰謝料として1000万円を要求される。佐野もまた、ヤクザの仁科(杉本哲太)への借金に追われているのだった。そんな佐野は、雪映(中村ゆり)の小学校にまで押しかけてくる。夫婦に最大のピンチが訪れるが…!?また、雪映は萌の弟・創甫(北川拓実)と接触する。萌が正隆の子供を堕胎していたという事実を知り…!?

第6話レビュー

様子見のつもりで、萌(萩原みのり)の仕事先を訪れる正隆(北山宏光)。雪映(中村ゆり)から助けを求める電話を受けて帰ろうとするも、その背に向かって、「か~き~の~さん♡」とほのか(大原優乃)が声を掛けた。天使みたいにかわいい顔をして、悪魔のようなことをしてくる子だ。

そもそもこのほのか、ずっとワケ知り顔で、佐野(深水元基)や仁科(杉本哲太)とは違う怖さがある。
正隆が佐野から逃げる過程で奪われてしまった萌のスマートフォン。そのパスワードをあっさり突き止めてしまったことも、萌がいなくなった状況を正隆に監禁されているのではと言い出したことも、何か知っているんじゃないかという気がしてくる。単に勘がいいだけだろうか。

萌のスマートフォンをチェックする佐野。カメラロールに入っていた萌と正隆の2ショット写真から、雪映の勤務先が特定されてしまう。自暴自棄になっていたとはいえ、不倫をしているにしては正隆に危機管理能力がなさすぎて呆れた。どうして張本人の正隆ではなく、雪映のほうが危険にさらされなければならないんだろう。

案の定、佐野は雪映が勤める小学校に乗り込んでくる。小学生にまで絡み出す佐野にはうんざりだ。その様子を物陰から見ていた雪映は、自らの危険を顧みず、子どもたちを守った。自分の旦那がまいた種とはいえ、勇気ある行動だったと思う。だが、やはり相当な恐怖を感じていたのだろう。同僚の先生に家まで送ってもらった後、玄関先で座り込んでしまった。

この時点で、正隆はもっと雪映を気にかけるべきだったのだ。夫が不倫の末、相手を妊娠させ堕胎を迫り、挙句の果てには殺してしまった。さらにヤクザまがいの人に脅され、職場にまで押しかけられた。精神的な影響を考えると計り知れない。まして、彼女は身重なのだし。

佐野が執拗に正隆らを追い回すのには理由があった。自身も借金を理由に、仁科(杉本哲太)に追われているのだ。杉本哲太が演じているのだから、仁科には迫力がある。舎弟の薮(山口祥行)も粗相をしたらしい相手を殺してしまいそうな勢いでいたぶっている。そんな人たちに「3日後までに700万」とすごまれ、佐野も縮み上がった。いい気味だと思ったが、この矛先はすべて正隆へ向けられてしまう。

怯えきった雪映を見た正隆は、この問題を解決すべく佐野と連絡を取る。すると、「1000万用意しろ」と佐野。すべてが悪い方向に転がっていた。

翌日は仕事を休んだ雪映。一方の正隆は金策に走っていた。やらなきゃいけないことも分かるが、どうか今日くらいは雪映のそばを離れないで欲しかった…。

悪い予感は的中し、雪映はふらつく足取りで萌の家へ。産婦人科で見かけないからと萌を心配するフリをして弟の創甫(北川拓実)に声を掛け、家に上がり込む。萌が殺されても仕方のない女だった思い込めるような判断材料が欲しかったのだろう。

でも、雪映を迎える創甫は、見た目こそちょっと怖いけど、実に好青年だ。姉ちゃんのことを心配してくれてうれしい、とお茶を出し、自分の味方は姉ちゃんだけだったと話す。この子は、というか、この姉弟は随分大変な人生を送ってきたようだ。「家柄は変えられないけど、外見は変えられる」と、創甫にジャケットを着せる萌の行動がそれを物語っていた。ちょっとはにかみながら「大学行って姉ちゃん食わしたいです」という創甫がいじらしい。同時に、萌がどんなに弟思いの優しい人物だったかを痛感させられる。耐えきれず、泣き出してしまう雪映。

そんなことになっていると知る由もない正隆は、仕事先にまで給与の前借を請いに行っていた。これまでの勤務態度から取り付く島もない状況だったが、実家の製薬会社が収賄疑惑でゴシップ誌の餌食になっていることを知らされる。「ネタを掴んでくればギャラ弾むよ」と言い出す編集者。

思い詰めた表情で帰宅した正隆が柿野製薬のニュースをテレビで見ていたとき、2階から雪映が飛び降りてしまう。だから言わんこっちゃない、と思ってしまった。正隆は雪映を1人にするべきではなかったのだ。

殺人というあってはならない共通の秘密ができたことで、正隆と雪映は再び手を取り合うことができた。さらに雪映の妊娠をきっかけに、正隆は久しぶりに未来への希望を感じられたはずだ。物語の前半と比べて、正隆の顔が穏やかになり、目の焦点も合っているのはそのためだろう。

だが、すでに取り返しのつかない場所まできている正隆を、もうひとつの地獄が誘う。1度は裏切られたとはいえ、実家を売るような真似はきっとしない方がいい。そこへは足を踏み入れて欲しくない。
そして、気になるのは雪映の安否だ。追い詰められていたことを考えると、衝撃的ではあったが、ああなることは予想できないことではなかった。とにかく無事を祈るが、果たして…。

※この記事は「ただ離婚してないだけ」の各話を1つにまとめたものです。

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第7話ストーリー&レビュー

第7話ストーリー

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雪映(中村ゆり)が自殺を図った。病院へ運びこまれ一命はとりとめたものの、翌日も意識の戻らない雪映を心配して正隆(北山宏光)は病院へ向かう。しかし、雪映の妹・菜穂(西川可奈子)から追い返される。頭の整理がつかない正隆の元に贈賄疑惑の渦中にいる弟の利治(武田航平)から連絡が来る。柿野製薬の会長で父の利通(団時朗)が危篤状態だという知らせだった…。そんな折、佐野(深水元基)が自宅に押しかけてきて…!?絶体絶命の大ピンチ!!

第7話レビュー

自宅の2階から飛び降りた雪映(中村ゆり)だったが、なんとか大事には至らず、お腹の子も無事だった。
搬送中も雪映の名前を叫び、病院の廊下でも悲壮な表情を浮かべる正隆(北山宏光)。そこに雪映の妹・菜穂(西川可奈子)がやって来て、「帰って、2度と近づかないで。お姉ちゃんのことは私が見ます」「お姉ちゃんのそばにいて欲しくない」と感情的だ。これまでの正隆の態度を考えると分からなくはないが、あまりにも一方的な対応はいかがなものか。

柿野製薬の不祥事を聞いたからだろう、正隆は義父・利通(団時朗)のことを思い出す。母に連れられて初めて利通に会ったとき。作中、何度か流れている回想だが、利通の眼差しには確かに正隆への親愛の情が込められていたように見える。

雪映の一件から、また少し自暴自棄になっている正隆。食事もろくに取っていないようだし、コーヒーを床にぶちまけても片付けようともしない。
そんな折、利通の秘書を名乗る男性、そして弟の利治(武田航平)から矢継ぎ早に電話がかかって来る。利通が危篤で、今夜もつかどうかという状況らしい。そんな状態になってもなお、正隆に話したいことがあるという。だが、2人の懇願もむなしく、正隆はその申し出を断った。会社の危機だから頼ってきたのか?と勘繰りたくもなるし、今更何を、というのもあるだろう。いろんなことが、ちょっとずつ今じゃない。

一方、萌(萩原みのり)の帰りを待つ創甫(北川拓実)は、“姉ちゃんがいなくなった日”を、カレンダーを塗り潰し数えていた。すでに55日が経過。この間、彼はどれだけの不安を抱えていたことだろう。強い瞳と、「見た目で判断されちゃうから」というかつての萌の言葉を守り、萌が買ってくれたスーツに袖を通す様子から必死さが伺える。萌までいなくなってしまったら、創甫にはもう頼れる人はいない。警察署の前で「行方不明者の捜索ってどうやってお願いしたらいいですか」と問う真剣な眼差しに、胸が張り裂けそうだった。

雪映が入院しているのとは全然違う、豪華な病室。結局、正隆は利通の病院を訪ねた。ところが、利通はすでに息を引き取った後だった。
そして訪れた正隆と利治、2人だけの時間。利治の「まだ兄さんは僕のことを許してくれるのか?」という言葉から、柿野製薬に残った人たちが見てきた現実と、正隆が見てきた現実が大きく異なっていたことが明らかになる。弟は弟で、兄の不在により苦労をしてきたらしい。こんな不幸なすれ違いはあんまりだ。「兄さんの育てた会社、ダメにしてごめん」という謝罪があまりにも切ない。
それまでの実績があったにもかかわらず社長になれなかったというのは、もちろん挫折だろう。でも、正隆のプライドが許すのならば、彼がそこで手腕を振るうこともできたのかもしれない。人はすべてが終わってしまってから気付くことばかりだけど、年月をかけて少しずつこぼれ落ちていったものの大きさに打ちひしがれた。

今回、雪映の夢か空想と思われる映像が2度流れた。
これまでにも見たその映像は、正隆が子どもと遊んでいるのを後ろから眺めている構図。雪映はそこへ足を踏み出すが、1度目、我が子の手を取ることができなかった。そして、2度目。今度はしっかりとその手を掴んだ。これが、雪映の母としての覚悟が決まった瞬間だったのだろう。

菜穂の思いは届かず、正隆とともに自宅へ帰る雪映。義父が亡くなったことを聞き、「生き直すの」「私、必ずこの子を産む」と前を見据えて宣言する。とても強い目だった。
そこへ、インターホンが鳴り響く。不穏。
やって来たのは佐野(深水元基)だった。玄関前で騒ぎ散らす様子に、いっそ警察を呼べばいいのに…と思いもしたが、大事にはしたくないのか正隆は佐野を家に入れてしまう。約束の1000万を用意できなかったことで、佐野は部屋の中を荒らして回る。これまではあくまで佐野との接点は外の世界でのみだったが、ついにこんなところまで。来るところまで追い詰められたな、と背中を冷たいものが走った。

そして、口論の末、正隆が佐野を階段から突き落としてしまう。動かなくなる佐野。意識を失わせてしまって、一体どうするのかと思いきや、夫婦で佐野の手足を縛りあげる。目が覚めるまで待っていたら仕返しが怖いし、かといってこのまま家の前に出すわけにもいかない。とはいえ、これはどういう選択なのだろう…と思わずこちらまで息を潜めてしまった。
自身の状況に気が付き、再び暴れ出した佐野。そこへ、突如雪映が熱湯をぶっかける。もだえ苦しむ佐野に、「静かにして」「言うことを聞きなさい」と雪映。ただ動揺の中で見つめる正隆。
これまで見たことのない、冷たくて硬い雪映の視線が印象的だ。我が子を守るというその一心での行動だろう。

事態はどんどん悪い方向へ。
だが、ここ数話で正隆はだんだんと自分のこれまでの現実に向き合いつつある。まだまだ吹いたら折れてしまいそうな脆さはあるけれど。対して、壊れはじめているのは雪映だ。大きく乖離し、再び交わった夫婦の曲線は、一体今後どういう形を描いていくのだろうか。

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第8話ストーリー&レビュー

第8話ストーリー


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雪映(中村ゆり)が自殺を図った。病院へ運びこまれ一命はとりとめたものの、翌日も意識の戻らない雪映を心配して正隆(北山宏光)は病院へ向かう。しかし、雪映の妹・菜穂(西川可奈子)から追い返される。頭の整理がつかない正隆の元に贈賄疑惑の渦中にいる弟の利治(武田航平)から連絡が来る。柿野製薬の会長で父の利通(団時朗)が危篤状態だという知らせだった…。そんな折、佐野(深水元基)が自宅に押しかけてきて…!?絶体絶命の大ピンチ!!

第8話レビュー

前回、暴れ出した佐野(深水元基)を大人しくさせるため、一気に態度を豹変させた雪映(中村ゆり)。正隆(北山宏光)と向き合い、「やるしかないよね」と包丁を手にする。この時の暗い瞳が、少し前の正隆とダブった。正隆は雪映を制止し、「俺が殺るから」と佐野を監禁している2階へ上がる。
どうしてそうなってしまうんだろう。それしか方法はないのだろうか? もうかなりダメージを負っているように見える佐野の首筋に包丁を当てる正隆。ここで涙を流す彼の心は、以前より人間らしさを取り戻しているように感じた。

一ヶ月後――。
平然と暮らしているように見える正隆。なぜか書斎ではなく、ダイニングで仕事をしていた。雪映も産婦人科へ定期健診に行き、充実した表情を浮かべていた。お腹の子どもは順調らしい。
ソファで並んでエコー写真を見る2人に、かつてのようなよそよそしさやぎこちなさはない。あぁ、ここだけ見ていたら幸せそうなのに…。

そんな折、正隆らの家に菜穂(西川可奈子)が娘の陽菜を連れてやって来る。すると、陽菜がどこかへ行ってしまう。

窓もカーテンも閉め切られた薄暗い部屋。一部のみを照らす小さな電気が灯され、扇風機だけが静かにまわる。まさか…と、最悪の想像が頭を過る。この空間はどう考えても普通じゃない。筆者だったら怖くなってすぐに引き返すだろう。でもまだ幼い陽菜は、好奇心が勝ったのだろうか、部屋の奥へと歩を進めてしまう。じわじわと見えてくる全貌に、思わず呼吸をするのを忘れた。

クローゼットを改装したらしい狭い空間には、口をガムテープで塞がれ、オムツを履かされた佐野がいた。威圧感は微塵もない。痩せこけ、縄で繋がれ、衰弱しきっていた。
そこに正隆が駆け込んでくる。もう遅いって…と思うと同時に、なぜこういう場合を想定して対策をしておかなかったのか疑問だ。

監禁している佐野に、わずかな食事を与える。
この時の雪映の表情は冷徹そのものだった。エコー写真を見せ「私に似てる?」と笑顔を浮かべていたのと同一人物とは到底思えない。正隆がこれまでしてきたことよりも、雪映の狂気に背筋を冷たいものが走った。

「蓋をしたままにした」という正隆のナレーションが入ったが、考えうる中でも最悪の方法ではないかと思う。正隆たちのここまでの行動に褒められるものはほとんどないし、肩を持つことは到底できないけれど、やっぱりすべてが中途半端だ。このまま逃げおおせたいのか、バレてもいいと思っているのかよく分からない。第一、無事に子どもが生まれたとして、こんな環境にある家に大事な我が子を連れ帰ってこれるだろうか…? どう考えても普通の神経じゃない。

そして、事態が動くのは陽菜が描いた1枚の絵。そこには、正隆の家で見た佐野の姿が描かれていた。妙に生々しく、それでいてまったく現実感がない。真っ黒に塗りつぶされた中に、浮かぶように存在する髭面の男。こんな絵を自分の娘が描いたら、かなり心配になるだろう。

案の定、菜穂が再び雪映を訪ねてくる。「(雪映が)寝てるから」、「散らかっているから」となんとか菜穂を2階に上がらせまいとする正隆の言い訳が全部苦しい。そもそも正隆に不信感を持っている菜穂をごまかせるわけがない。
さらに、そんなタイミングで佐野が暴れ、拘束が解けてしまう。追い詰められた雪映は2階の別の部屋に菜穂がいるにもかかわらず、佐野を扇風機で殴る…!?
正隆の焦る様子からも、聞こえたはずの大きな物音からも、もはやこの家で何か大きな隠し事をしていると確信しただろう菜穂。

正隆らの犯行を暴きかねない人物は、菜穂だけじゃない。
佐野にお金を貸していた仁科(杉本哲太)ももちろんまだ佐野を探しているし、創甫(北川拓実)だって萌の捜索状況を確認しに連日警察に足を運んでいるらしかった。かつて創甫を捕まえたという、一癖も二癖もありそうな少年課の刑事・池崎(甲本雅裕)まで登場し、より複雑に。

もはや逃げ切るのは困難なように見えるが、2人は次にどんな行動を取るのだろう。

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第9話ストーリー&レビュー

第9話ストーリー

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正隆(北山宏光)と雪映(中村ゆり)の元にやって来た雪映の妹・菜穂(西川可奈子)。不審な物音に気付き、佐野(深水元基)を監禁している部屋に入ろうとするが、その時見た光景とは…!?
また「近所で異臭騒ぎになっている」と、市役所の男が訪ねて来る。庭に埋めてある萌(萩原みのり)の死体が原因だった。
焦った2人は萌の死体を別の場所に移すことにするが…!?
一方、萌の弟・創甫(北川拓実)は刑事の池崎(甲本雅裕)と共に萌の行方を追っていた。

第9話レビュー

雪映(中村ゆり)が扇風機で佐野(深水元基)を殴った、その決して小さくはなかっただろう物音を、本を落としたことにしてごまかした雪映。菜穂(西川可奈子)が姉の言葉をすんなり受け入れたことに安堵し、同時に何でもない風を装える雪映への恐怖が募る。今、人を殴ったんだよ…? この人、本気でヤバイ。

この家に誰かがいるかもという可能性は捨ててくれた菜穂だったが、今度は異臭を指摘する。それはそうだろう。なんといっても、萌(萩原みのり)の遺体を庭に埋めてからもう約90日が経っている。しかも、季節は夏だ。「萌に侵食されておかしくなった」という正隆(北山宏光)のナレーションが入ったが、あなた(たち)に人生を大きく狂わされたのはむしろ萌のほうだ。その発言は撤回してほしい。

扇風機で殴られた佐野を手当てしている正隆。救急箱の中身をぶちまけてしまい、気付かないうちに佐野にピンセットを奪われてしまう。これまでもそうだったが、隙がありすぎて綻びだらけだ。そして何より佐野にまだそんな気力が残っていたことに驚いた。

創甫(北川拓実)から話を聞き、萌の行方を追うことになった刑事・池崎(甲本雅裕)は、萌の働いていたガールズバーを訪れ、仁科(杉本哲太)と顔を合わせる。脇に控える薮(山口祥行)も含めて、なんとも怖い絵面だった(褒めてる)。
正隆に関わった人間が2人も消えていることが発覚し、ともに正隆を調べようとする。罪を隠すためにさらに罪を重ねた結果、警察とヤクザの両方から目を付けられることになるとは。
それにしても、藪の怒声にもビビらず、正隆について教えろと言った仁科に「高いよ?」と言えるほのか(大原優乃)がやっぱり1番強いかも(ちなみに筆者は藪が投げ飛ばした灰皿の音に本気でビビりました…このドラマ、音量が難しい)。

近所の人が異臭のクレームを入れたことで、正隆の家を市役所の職員が訪ねてくる。異臭の原因を突き止めるためとはいえ、家の中に踏み込んでクンクン嗅ぐ…市役所の人ってこんなことまでするのか。後ろめたいことがなかったら、怒る人も多そうだ。
ちなみに、庭には大量のゴミを仕込んでおいたらしく、役所の調査はなんとか難を逃れたが、もう時間はない。遺体を遠くへ埋めに行く計画を立てる。でも、今は佐野から目を離さないほうがいいよ…。

案の定、正隆と雪映が庭を掘り返している間に、ピンセットで拘束を解くことに成功した佐野。よれよれのタンクトップにオムツ姿のまま立ち上がると、改めてその細さが際立つ。深水元基の役者魂というか、この役に挑む心意気みたいなものが胸に迫るし、生々しくも非現実的な作品に、現実感を与える役目を果たしていた。
佐野は2人の行動を窓から覗き見し、2人が萌を殺していたことを知る。普通だったら、こんな奴らの家にはもう1秒だっていたくないだろう。だが、佐野は棚に置かれた正隆のカメラを使って萌の遺体を運ぶ過程を写真に収めていた。まだ目にそんなに強い光を宿らせることができたなんて。この状況に置かれて、むしろ生気を取り戻す佐野もまた十分にヤバイ奴だった。

大雨の中、何とか萌の遺体を遺棄した正隆と雪映。最後の確認をする正隆は、そこで萌の幻覚を見る。白いワンピースに身を包んだ萌は、悲しげな表情ではあったが一緒にいた頃の天真爛漫さを彷彿させる。そうだ、萌はたしかにずっといい子だったのだ。そんな場面を見た後で、「行くよ」と正隆の手を掴む雪映のほうが、地獄へ手招きをしているように見えてしまった。

いよいよ正隆の家が仁科たちにバレ、さらには池崎が創甫を伴って家に訪問してきた。佐野も決定的な証拠を持って逃げ出すタイミングを見計らっているだろう。絶体絶命の中、正隆と雪映が次にとる行動に注目したい。

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第10話ストーリー&レビュー

第10話ストーリー

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正隆(北山宏光)と雪映(中村ゆり)の元に刑事の池崎(甲本雅裕)と萌(萩原みのり)の弟・創甫(北川拓実)がやってくる。2人は萌と佐野(深水元基)の失踪について問い詰めるが、雪映は冷静なまま、不倫相手だった萌を心配したフリをする。池崎は2人が殺されている可能性を指摘し、家中の部屋を見せるよう要求するが…?一方、正隆の仕事部屋に監禁されている佐野は結束バンドを切り、逃げ出す機会をうかがっていた…。

第10話レビュー

刑事の池崎(甲本雅裕)が柿野家を訪ねてきた。横には威嚇するように睨みをきかせた創甫(北川拓実)も一緒だ。2人を迎える正隆(北山宏光)は案外冷静に見えるが…?

家の中に入ってきた池崎と創甫。リビングには雪映(中村ゆり)の姿が。
この瞬間まで失念していたが、そういえば創甫と雪映には面識があったのだった。まずいのでは…と思う間もなく、何であんたがここにいるんだと噛みつく創甫に、スラスラと嘘を並べる雪映。「萌さんに謝りたくて」「この人から不倫を聞いた時はショックだった」「しかも堕胎手術まで…」。雪映ってば、女優だ。改めて、覚悟を決めてからの雪映の振り切れ具合に驚愕する。

池崎に、萌(萩原みのり)と佐野(深水元基)について尋ねられた正隆と雪映は、事実を半分くらい認めながら、佐野に渡したお金で2人は新しい生活を始めているのではないかと言い出す。たしかに、ちょっと辻褄は合ってはいるのだけれど。
もちろん黙っていないのは創甫だ。姉ちゃんがあんな最低な奴と一緒にいるはずがない、と怒鳴る。この子、萌のことを上手に大事にできていなかっただけで、めちゃくちゃ頼りにしていたんだろうな。冒頭の睨みもそうだけれど、虚勢を張る様子に不安が滲み出ているように見えた。

確認のために家の中を見せて欲しいという池崎の申し出も、雪映は断固として突っぱねる。平静を装いつつ、時折目が泳いでしまっている正隆とは対照的に、雪映には一切の迷いがない。

前回、ピンセットを手に入れた佐野は、ついに手元の拘束をといてしまう。
そして正隆と雪映が出かけた隙を見て、脱出しようとする佐野。隠してあった煙草を吸った時の昇天してしまうのではないかという表情が妙に生々しかった。
ところがそこへ、忘れ物を取りに雪映が戻って来る。異変に気付いた雪映は、今回は扇風機ではなく電子レンジで佐野を殴りつけた。何でもっとちゃんと確認しないんだろうか、またしても詰めの甘さで危機を招いてしまった。

刑事にも目を付けられ、佐野からは脱出への意欲が消えていない。追い詰められた雪映は「衰弱死させる」「あの人が勝手に死ぬの…」と、うわ言のようにつぶやき始める。その姿を見つめる正隆の表情から、動揺が伝わってくる。
でも、この事態を招いたのはほかでもない正隆なのだ。その後のナレーションにもあった「昔の俺の毒が移った」という表現が、まさにその通りだと思う。

翌朝、佐野が脱出に成功する。どうやらライターを隠し持っていたらしい。油断も隙もありゃしない。よれよれのタンクトップにオムツ姿のガリガリの男性が、閑静な住宅街で息を切らして走る様は信じられないくらい異様だった。映像だけでトラウマになりそう。絶対に遭遇したくない。
さらに狂気じみてきた雪映は包丁まで取り出して佐野の太ももを刺し、1度は佐野を連れ戻せたかに見えたが、結局は脱出を許してしまう。火事場の馬鹿力とでもいおうか、命の危険を感じた佐野はもう止まらなかった。

佐野の脱出にまつわるスリリングな展開が続いた第10話。
今回大きな動きのなかった仁科(杉本哲太)らだったが、正隆が柿野製薬元社長の息子であることを掴む。それを知った仁科、次はどんな行動に出るのか。
池崎の捜査にもどかしさを感じてしまったらしい創甫も、単独で何か行動を起こしてきそうだ。正直、この子にはもう悲しい出来事を経験してほしくないのだが…。

ところで、今回気になったのは創甫を演じる北川拓実だ。正隆を威嚇する睨み、萌の部屋に飾られたお土産を見る切ない表情、そして何かを決意した強くて鋭い視線…と、繰り出す様々な表情が印象的で、放送終了後に調べてしまった。筆者は今作で彼のことを知ったようなものなので金髪/細眉のイメージしかないのだが、本来は王子様系の正統派アイドルであることに、画像検索をして驚いた。当たり前だが創甫が持つ“少年院上がりのヤンキー”の要素は微塵も感じられない。
そんな北川がこの役にこんなにぴったりハマっている。顔つき、喋り方、歩き方など、容姿的な部分だけでなく、かなり細かく作り込んだのだろうと思う。そのおかげで、敵意を剥き出しにして人を寄せ付けない中に、少年の危うさを感じさせる創甫が出来上がったのだろう。
先述の通り、創甫にはもう傷付いてほしくないなと思う。ただ、萌がすでに殺されているという事実に直面した時の創甫を、北川がどんな風に演じるのかだけは見てみたいかもしれない。

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正隆(北山宏光)と雪映(中村ゆり)の元から監禁していた佐野(深水元基)が逃げ出した。自分たちの身に警察の捜査が及ぶと考えた2人は逃避行生活を送っていた。その頃、佐野はヤクザの仁科(杉本哲太)から再び拷問を受け、正隆たちが萌(萩原みのり)の遺体を掘り返している様子を撮影したSDカードを渡す。正隆と雪映、そして2人の間に生まれてくる子供の運命はどうなるのか…!?

第11話レビュー

佐野(深水元基)の脱走を許してしまった正隆(北山宏光)と雪映(中村ゆり)。
「俺たちどこまで堕ちるんだろう」「死ぬか」と、絶望の色が濃い正隆の隣で、「私決めたの、3人で生きていくって」と雪映はまだ前を向いていた。というより、訪れるはずだった未来に執着していた。誰が見ても行き止まりの状況なのに。

その後、正隆と雪映は逃亡の旅に出る。並んで海岸を歩く姿は、爽やかな恋愛映画かと錯覚する。「やっと来れたね、新婚旅行」「今が1番幸せ」と呑気に言う雪映。正直なところ、正気か?と思ってしまった。いくつもの犠牲の上に成り立つ幸せなんてあるはずがない。さらに、2人はまだ追われている身なのだ。

一方の佐野は、柿野家から脱走した直後に、仁科(杉本哲太)らに捕まえられてしまう。両手を縛られ、袋を被ったまま水を浴びせられる、フォークで顔や腹を刺される…見ているのが辛くなるくらい痛々しいシーンの連続だった。
拷問の末、正隆が萌(萩原みのり)の遺体を遺棄している証拠を収めたSDカードは、仁科の手元へと渡った。1番避けたかった未来が、どんどん現実になっていく。

佐野が焼死体となって発見されたことをテレビのニュースで知った正隆ら。最初こそ動揺したものの、これで家へ帰れるのではないかとすぐに安堵した。そうだ、この人たちは佐野に写真を撮られていたことを知らないのだった…。そして2人は自宅へ。菜穂(西川可奈子)に「本当の夫婦みたい」と言ってもらえたのは、本当は喜ぶべきことのはずなのに。2人が深めた絆が、あまりにも悲しくてやりきれない思いがした。

正隆の新しい仕事も決まり、平穏な日常を取り戻したかに見えた。
だがもちろん、現実はそんなに甘いわけがない。まずは道端でいきなり創甫に襲い掛かられる正隆。佐野の死を知らされた時、「無駄だよ、姉ちゃんはもう死んでいる」と呟いた表情、そしてナイフを持って正隆の上に馬乗りになる状態が萌とダブる。この子を、この姉弟を、こんな風に変えてしまったのは紛れもなく正隆だ。その事実に直面し、自分がしてしまったことの大きさに動揺しているように見えた。
警察での取り調べを終えた正隆に、「社会は1度堕ちた人間を許さない」と刑事の池崎(甲本雅裕)が呟く。これは創甫のことを指しているようで、その実、正隆へカマをかけたのではないかと思った。お前の罪を社会は許さない、だから覚悟しておけよ、と。そして正隆もまた自分自身を重ねていたようだった。こういう場面でこそ、目線の揺らぎに含みを持たせる北山宏光の表現力が光る。

そして、恐れていた出来事はすぐにやって来た。
仁科が柿野家を訪ねてきて、写真のデータを1億円で買えという。行くところまで行ってしまった感。
雪映は「(お金の)受け渡しの時にあいつらを殺す」と言い始めた。それはさすがに無理なのではないかと思う。正隆も反対する様子を見せるが…。

次回、ついに最終回。
八方塞がりの状況の中、正隆と雪映はどう決着をつけるのか。それがどんな結末だったとしても、受け入れる覚悟をしておきたいと思う。

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–{第12話ストーリー&レビュー}–

第12話ストーリー&レビュー

第12話ストーリー

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佐野(深水元基)が死んだことによって自分達の罪を知る人物がいなくなり、平穏な暮らしができると思って安堵していた正隆(北山宏光)と雪映(中村ゆり)。その矢先、ヤクザの仁科(杉本哲太)が2人の元にやってくる。仁科は2人が萌(萩原みのり)の遺体を掘り起こす写真を見せ、1億で買い取るよう要求し…!?夫婦は再び、絶望の淵に追い込まれる。
いよいよクライマックス!殺人を犯した夫婦が辿る運命とは!?

第12話レビュー

雪映(中村ゆり)に、仁科(杉本哲太)たちを殺すよう言われた正隆(北山宏光)。拒絶なのか、絶望なのか、助走もなくポロリとこぼれた涙にこちらまで動揺させられてしまった。

刃物や、油を詰めた瓶、偽装した札束…あれ、これは何のドラマだったっけ? と疑うような“準備期間”の様子が淡々と流れる。マットレスを人に見立て、包丁を何度も突き立てる正隆。窓に写った自分を見た彼は、どんな思いだったのだろうと考えると苦しくなる。こんなこと、したくはなかったはずだ、もちろん。

そこへ、贈収賄で逮捕された弟の利治(武田航平)から連絡が入る。懲役3年、執行猶予5年という判決が下ったという報告。そして利治は、「正隆の本当の父親でありたかった」「私のような道を辿らないこと」「大切なものたちを傷付けないために」という遺言を父・利通(団時朗)が残していったことを伝える。
その中には、正隆ではなく利通を社長に据えたことについて、家柄にとらわれていたという反省の弁も含まれていた。筆者の考えすぎかもしれないが、作中、何度も流れてきた床に広がっていく血の映像を思い出してしまった。家柄、血筋…これもまた正隆を苦しめたもののひとつだったな。

雪映の手料理を「美味しい」「ありがとう」と言って食べる正隆。1話ではお漬物を吐き出していたというのに。短期間で人ってこんなにも変わるものなのかと慄く。そして、深夜、受け渡し場所へ。もはや完全に殺される…いや、自ら死にに行っているとさえ思える展開だった。

夜が明けても帰ってこない正隆を案じて、様子を見に行った雪映。だが、そこには正隆の姿も仁科の姿もない。混乱の中、泣きながらさ迷い歩く雪映。街頭ビジョンから聞こえてきたのは正隆逮捕のニュースだった。
正隆は、自首をしていたのだ。父の「偽りなく生きてくれ」、弟の「生き直そう」という言葉、そして守るべき妻とまだ見ぬ我が子の存在が背中を押した。最後の最後で正隆は、全ては挫折に起因する自暴自棄が引き起こしたことだとやっと自覚してくれた。これだけでも、これこそが、大きな1歩だと感じる。気付いてくれて本当に良かった。

雪映が街中で突如破水した時にはどうなることかと思ったが、子どもも無事に生まれた。萌(萩原みのり)の遺体も見つかった。利通の遺産、5億円はそっくり萌の弟の創甫(北川拓実)の手に渡った。正隆からの償い、姉の命の代償。お金で済む話ではないけれど、創甫がここからしっかりと生き直してくれることを願って止まない。傍らに寄り添う池崎(甲本雅裕)の「未来しかねぇ」という言葉にはこみ上げるものがあった。このドラマの中で、明るい未来を想像できたシーンはこれが初めてだったかもしれない。

正隆のもとへ面会に来た雪映と赤ちゃん。正隆は、雪映に離婚届を送っていたらしい。
「1つも約束守れなくてごめんな。この子と幸せになってくれ」と言う正隆に対し、「1人で立派に育てて幸せになる。もう2度とあなたに会わない」と雪映。ここまでは予想できうる展開だった。ところが、雪映はおもむろに離婚届を破り捨てる。そして、「私はあなたの妻。この子はあなたの子どもだから。私、今、幸せだよ」と涙を流した。
正直、その瞬間は何を言っているのか分からなかった。会わないのは分かる、犯罪者になってしまったのだから。でも、離婚しないのはなぜ? 子どもの幸せを考えたら、離婚こそしておくべきなのでは…。
だが、少しの間のあと、「俺も、今、幸せだよ」と答えた正隆は、何とも言えない穏やかな表情をしていた。

ああ、そういうことかと、身体の力が抜けた。このパターンの幸せはこんな感じ、と、無意識のうちに型にはめてしまっていたことに気付かされる。
この場合、5億円のうちの一部を手元に残して、雪映と子どもに託す、あるいは正隆の出所を待って3人でひっそり暮らしていくのが“幸せ”だろう。でも、この夫婦に限っていえば、もともとが信じられないくらい冷え切った関係だったのだ。あの頃に比べたら、経験したくなかった出来事を経てではあるものの、お互いを思いやれる今は、それは“幸せ”だろう。離れていても、会えなくても、愛する存在があるということの幸せがどんなに尊いのかということを、身をもって体感したからこそ、たどり着いたのだと思う。
「ただ離婚してないだけ」というタイトルの意味が180度転換した。見事な回収だった。

第1話の放送時、筆者はこの作品を「2021年夏の問題作」と表現した。
いつからか文化となった“不倫ドラマ”のひとつかと思いきや、普段はアイドルとしての活躍を目にする機会が多い北山が振り切った演技を見せ一気に引き付けられた。そこに追い打ちをかけるように、ホラー的な展開も織り交ぜながら1組の夫婦にまつわる破壊と再生の過程を描き切った。この衝撃は、しばらく消えないだろう。見ごたえのある作品を楽しめたことに感謝したい。

※この記事は「ただ離婚してないだけ」の各話を1つにまとめたものです。

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(文:シネマズ編集部)

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–{「ただ離婚してないだけ」作品情報}–

「ただ離婚してないだけ」作品情報

一つの不倫が招いた「最悪」の結末・・・
テレ東深夜が放つ、
ドラマ史上最も恐ろしい「不倫サスペンス」

結婚、妊娠、不倫――結婚生活7年目を迎えた、ただ離婚してないだけの冷え切った夫婦を描いた、本田優貴による人気コミック「ただ離婚してないだけ」 (白泉社)。夫の不倫をきっかけに巻き起こる、いつ自分の身に起こっても不思議ではない戦慄の展開で話題沸騰の、未だかつてない不倫サスペンス作品が、テレビ東京にて毎週水曜深夜に放送中のドラマ枠「ドラマホリック!」第7弾として実写ドラマ化!

一体なんでこんなことに…

結婚と不倫の果てに待ち受けていたものとは!?
「不倫」を深く、恐ろしく、切なく描いた、
未だかつてない不倫ドラマ「ただ離婚してないだけ」。
夫婦とは、そして家族とは・・・
史上最も恐ろしい不倫サスペンスをお見逃しなく!

あらすじ

フリーライターの柿野正隆(北山宏光)と、小学校教師の柿野雪映(中村ゆり)は、結婚7年目となる夫婦。お互いへの恋心はなく、関係は「ただ離婚してないだけ」。しかも正隆には萌という不倫相手がいて――。

ちょっとした出来心・遊び心が招いた最悪の事態…いつ自分の身に起こっても不思議ではない、罪が罪を招く、史上最も恐ろしい“衝撃の不倫サスペンス”ここに開幕!!

原作:本田優貴 コメント

長年思い続けていた念願の、、いや、野望でもありましたテレビドラマ化!

とても嬉しいです。

とてもハードな内容ですが、この夫婦の再生物語を主演の北山宏光さんがどんな形で再現してくれるのか今から楽しみです。

僕の描いた原作よりも深く、、濃く、、そんなドラマになることを期待しています。

プロデューサー:松本拓 コメント

約2年前、この原作に出会った時、そのタイトルから素直に面白そうだなと思いました。原作は2時間程で一気読み。このストーリー展開は、連ドラにもってこいだと感じたのを覚えております。

「夫婦」の話をやってみたい。

ずっとそう思ってきましたが、なかなか自分が自信を持って臨めるものに出会えませんでした。しかし、この「ただ離婚してないだけ」という原作に出会い、自分の中で一つ大きな扉が開いた気がします。

真の意味で、「夫婦」を繋ぐものとは一体何なのか。

今まで、テレビドラマでは描いてこなかったレベルまで、それを追求していきたいと思います。

北山さん、中村さんが演じる夫婦が、ある事件をきっかけに「最悪」の方向へ向かいます。しかし、この夫婦にとって、その「最悪」は「希望」でもありました。「不倫」「殺人」「隠ぺい」「絶望」そして「希望」。まさに令和のジェットコースタードラマ。中途半端には描きません。人間の「汚さ」、「脆さ」、そして「暖かさ」を究極なまでに突き詰めていこうと思います。

ご期待ください。

番組概要

番組名

ドラマホリック!「ただ離婚してないだけ」

放送日時

2021年7月7日(水)深夜0時

放送局

テレビ東京ほか

配信

動画配信サービス 『Paravi』『ひかりTV』にて配信予定

Paravi
https://www.paravi.jp

ひかりTV
https://www.hikaritv.net/

原作

本田優貴「ただ離婚してないだけ」 (白泉社)

出演

北山宏光(Kis-My-Ft2)中村ゆり 萩原みのり 深水元基 
北川拓実(少年忍者/ジャニーズJr.) 大原優乃 山口祥行 
西川可奈子/武田航平 団時朗 甲本雅裕 杉本哲太

監督

安里麻里 角田恭弥 松本拓

脚本

田中眞一 清水匡 安里麻里

主題歌

Kis-My-Ft2 「Fear」(avex trax)

チーフプロデューサー

山鹿達也(テレビ東京)

プロデューサー

松本拓(テレビ東京) 矢崎ゆうこ(ジェイ・ストーム) 中野剛  加藤毅

制作

テレビ東京/ジェイ・ストーム/東映ビデオ

製作著作

「ただ離婚してないだけ」製作委員会

公式HP

【ドラマホリック!】ただ離婚してないだけ | 主演 北山宏光(Kis-My-Ft2)
テレビ東京【ドラマホリック!】ただ離婚してないだけ オフィシャルサイト。 主演 北山宏光(Kis-My-Ft2) 冷え切った夫婦は「ただ離婚してないだけ」 しかし、ある一日、ある一瞬の過ちで 運命が動き出す―

公式Twitter

@tx_tadarikon

公式ハッシュタグ [#ただ離婚してないだけ][#ただリコ]

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