北村匠海の無視できない魅力:「Night Doctor」「にじいろカルテ」で魅せる医療従事者の表情

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「Night Doctor」より  (C)フジテレビ

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映画、ドラマ、バラエティ、CM、そして歌手としても活躍する俳優・北村匠海。恋愛ものからコメディまでジャンル問わず出演し、主役から脇役までカバーする演技力を持っている。

出世作となった『君の膵臓を食べたい』(17)から始まり、『君は月夜に光り輝く』(19)や『思い、思われ、ふり、ふられ』(20)など多数の恋愛映画で主役を務めた。かと思えば『とんかつDJアゲ太郎』(20)などのコメディで演技の幅をアピールし、『さくら』(20)『砕け散るところを見せてあげる』(21)など思わず世界観に没頭してしまう作品で存在感を発揮している。

そんな北村匠海、映画界だけではなくドラマ界でも様々な表情を魅せている。本記事で注目したいのは2021年1月〜3月で放送されていた木曜ドラマ「にじいろカルテ」と、2021年6月から放送されている月9「Night Doctor」それぞれで演じている医療従事者としての顔だ。

「にじいろカルテ」特徴的な髪型が印象に残る、脱普通を目指す看護師を熱演

「にじいろカルテ」より  (C)テレビ朝日

2021年1月〜3月放送の木曜ドラマ「にじいろカルテ」。村にひとつだけの診療所「虹ノ村診療所」に務める看護師・蒼山太陽を演じた北村匠海は、なんといってもその特徴的な髪型が印象に残る。前髪ぱっつんの、いわゆる「おぼっちゃまカット」だ。そんな髪型でもちゃんと格好良さ&可愛さが保持されているところがすごい

主人公である紅野真空(演:高畑充希)の赴任先として描かれる虹ノ村、そして虹ノ村診療所には、たくさんの個性的な仲間がいる。井浦新演じる医師・浅黄朔もそのひとりだが、看護師としてサポートする蒼山太陽もなかなかのくせ者だった。一見常識的で、突拍子もない行動をしがちな浅黄をたしなめる役割を担っている。けれど、彼には大きく屈折した部分があったのだ。

その屈折が爆発したのが、第5話。太陽は、「普通」であることを極端にコンプレックスに感じていることがあらわになった

「君は真面目すぎるよ」「つまんない奴だな」とことあるごとに言われてしまう太陽。自分としては、ただ与えられた役割を誠実にまっとうしているだけなのに、「普通だね」と評価を下されることに納得できないでいる。「つまんないって言うな!」と文句を言うも、周囲にはなかなか本気にされない。

「にじいろカルテ」 (C)テレビ朝日

そんな太陽を励ますべく、村の人たちが宴会を計画。酔いすぎた太陽は日頃の鬱憤をぶちまける。「みんなは何かしら持ってる、でも俺には何もない!普通なんだ!」ーー相当思いつめていることを知った村の人たちは、村の放送局をリニューアルし、村民たちの持ち回りでDJをしたらどうかと新たに提案。そのトップバッターを太陽にやってほしい、と持ちかけるのだ。

自分はつまらない人間だ、面白いことは言えないから辞退したい、と言い出した太陽に対し、浅黄が「屈折したところは誰にでもあるけどな、それは曲がりすぎだろ。自分で戻せ。お前ならできるだろ」と諭す。普通でもいい、と言うより、自分にだって人とは違う何かがあるかもしれないと思い直した太陽は、トップバッターを引き受けることに。放送で流したのは、学生の頃に作ったというメタルな曲「俺以外」だった。

それを聞いた真空は「どこが普通なんだよ」「よく看護師になれたな」と一人ごちる。仲間に弱音を吐き、支えてもらいながら、自身のコンプレックスと向き合っていく様を感情豊かに演じていた北村匠海。バランス感覚のある彼だからこそ、心の中に屈折を抱える蒼山太陽という人物を立体的に浮かび上がらせたのではないだろうか。

–{「Night Doctor」飄々としていながらも、何かを抱えていそうな救命救急医師・桜庭瞬}–

「Night Doctor」飄々としていながらも、何かを抱えていそうな救命救急医師・桜庭瞬

「Night Doctor」 (C)フジテレビ

2021年6月から放送されている月9ドラマ「Night Doctor」。本作で北村匠海が演じるのは、少し飄々としていて掴みどころがないように見えるキャリア3年目の医師・桜庭瞬だ。「にじいろカルテ」で演じた蒼山太陽とはまた違い、世の中を斜めに見るような、周囲の空気を読みすぎて道化になるような青年である。

2021年7月5日放送の第3話は、そんな桜庭に焦点を当てた回。1話や2話めでも、たびたび桜庭が薬を服用するシーンが描かれていた。精神的なものか身体的なものかは不明だが、何かしらの持病を抱えながらも周りにそれを隠しているように見える。この辺りは、「にじいろカルテ」の主人公・紅野真空が負う事情に通じるところがあるかもしれない。

そんな桜庭、第2話の最後で暴漢に襲われる主人公・美月(演:波瑠)を身を呈して守った。あらすじを見る限り、どうやらみつきも桜庭も大事には至らず軽症で済んだようだ。

病院を取りまとめる柏桜会の会長であり、そして桜庭の母親である麗子(演:真矢ミキ)の意向により、桜庭は海外への留学を勧められる。危険な職場でこれ以上働かせるよりも、今一度、医師としての力をつけるために修行したほうがいいといった意味合いもあるのだろう。第3話の展開は、複雑な心境を胸に「なぜ自分が救命救急に携わりたいと思ったか」を吐露する桜庭に焦点を当てる形になりそうだ

「Night Doctor」 (C)フジテレビ

「にじいろカルテ」で演じた蒼山太陽もそうだったが、「Night Doctor」の桜庭瞬も、そう簡単には解けないような屈折した思いを抱えたキャラクターのようだ。一見、普通の青年に見えるも、その腹の中が見えてこないような複雑な人柄は、演じる役者を選ぶ。ジャンル問わず演技の幅を年々広げている俳優・北村匠海だからこそ、陰陽取り混ぜた表現の仕方で桜庭が持つ人間性を表出させられるのではないか。

主役ではもちろんのこと、脇役の立ち位置にいてもしっかりと存在感を表し、作品の土台を固めている。続けての医療系ドラマ出演となったが、二番煎じ感はまったくない。月9「Night Doctor」は、最終回まで見逃せない展開となりそうだ。

–{ナレーションでも真価を発揮、声の魅力にも注目したい「サウナーーーズ」}–

ナレーションでも真価を発揮、声の魅力にも注目したい「サウナーーーズ」

WOWOWオリジナル番組「サウナーーーズ 磯村勇斗とサウナを愛する男たち」では、北村匠海がナレーションを担当。DISH//でボーカルを務めているのは周知の通り、その声の魅力を余すところなく発揮している。

歌声・話し声どちらにも独特な陰が感じられ、一言では表現できない魅力があるのだ。掠れているわけでも透き通っているわけでもない。高くもなく低くもない。声そのものに色がついているような、温度をともなって耳に届くような、不思議な質感がある。長く聞いていても飽きない声質は、歌うのにはもちろん、ラジオや番組のナレーションをするのにもピッタリだろう。

磯村勇斗と同じく、サウナ好きとしても知られる北村匠海。「サウナーーーズ2」では二人でサウナを楽しむ様子が見られる。演技、歌、ナレーション、そしてバラエティにも通じる北村匠海の振り幅は、今後ますます大きくなっていくだろう。

『東京リベンジャーズ』 (C)和久井健/講談社 (C)2020 映画「東京リベンジャーズ」製作委員会

2021年7月公開映画『東京リベンジャーズ』では主人公・花垣武道を熱演する。高校生の頃はイケイケなヤンキー集団に属するも、卒業後はパッとしない人生に辟易する武道。高校生の頃に付き合っていた彼女が事故で亡くなったことを知ったある日、なんと10年前にタイムスリップしてしまう。それをきっかけに、大切な人を守るため奔走することになるのだ。

恋愛物語のみならず、こういった拳を振るい合う熱い青春劇も演じ切る北村匠海。『十二人の死にたい子どもたち』(19)や『アンダードッグ』(20)でも影のある演技を見せてくれたが、それらとはまた違った泥臭さを表現している。一度は諦めかけた人生を、歯を食いしばって取り戻そうとする武道の姿に、我が身を顧みる人も多いだろう。

2022年には『明け方の若者たち』公開が待っている。カツセマサヒコ原作の、なんとも行き場のない恋愛模様を描いた作品だ。『思い、思われ、ふり、ふられ』の甘さとも違う、『君は月夜に光り輝く』の切なさや痛みとも違う、北村匠海の新しい表情が見られることを期待したい。

(文:北村有)

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