「全裸監督シーズン2」レビュー完結編&「全裸監督」を観終わったらこの作品を観て欲しい

国内ドラマ

→画像ギャラリーはこちら

[関連記事] 「全裸監督 シーズン2」キャスト|AV女優役で恒松祐里や増田有華ら|出演者も概ね続投

[関連記事] 「全裸監督シーズン2」ファーストレビュー | ナイスな見どころは「破裂寸前のヒリヒリ感」

いよいよ全話解禁となったNetflixオリジナルドラマ「全裸監督シーズン2」。

主演の山田孝之に加えて玉山鉄二、満島真之介、森田望智、柄本時生、伊藤沙莉、リリー・フランキー、國村隼などのシーズン1からレギュラーメンバーに加えて、シーズン2からは恒松祐里、吉田栄作、MEGUMI、渡辺大知、伊原剛志、石橋蓮司、宮沢りえ等が新たに登場しました。

総監督はシーズン1に続いて武正晴が務めています。

 あらすじ

シーズン2前半戦では、村西とおるはバブル景気の波に乗ってAV界の帝王となり、公私に渡るパートナー黒木香もタレントとして一般層にも認知されていくなど上り調子。

しかし、村西が銀行員・本田の薦めるままに衛星事業に乗り出すことで仲間と離反、新たな会社を興して衛星事業にさらに進み続けることになります。新たな会社ダイヤモンド映像には後に村西夫人となる乃木真梨子こと千葉ミユキの姿もありました。

スキャンダラスな手法(今でいう炎上商法)で売り上げを伸ばしていく一方で、黒木香は自身の新作を村西が撮らないことで、心の距離を感じてしまいます。

村西は村西で衛星事業を仕切る海野から“所詮ポルノ屋”、“(多くの前科を持つ)道のりがアウト”と蔑まれ衛星事業になかなか食い込めずにいます。

それでも衛星事業のキーマンの高宮悦子や渡部を口説き、強引に参入を果たします。“エロが空から降ってくる”を売り文句に衛星事業を推し進める村西は数十億円もの資金を投資していきます。

しかし、バブル経済が崩壊、銀行からの融資が打ち切られた村西は一点窮地に。

衛星事業の維持費だけでなく、スタッフ・キャストへの給与の未払いも発生し、新たな公私に渡るパートナーとなった乃木真梨子の支えもありながらも村西とダイヤモンド映像は事実上崩壊していきます。

村西の暴走と崩壊、バブル経済の破綻、暴力団への締め付けなどからかつての仲間だった川田やトシの人生も揺さぶっていきます。

さらに、村西のもとから去り順子と共に共同生活を過ごしていた黒木香が転落し重傷を負うという事件が起きてしまいます。

 受け身から台風の目へ

「全裸監督シーズン1」の村西はどちらかというと自分の身に降りかかる出来事、時代のうねりに対して“受け身に回っている”部分がありました。

それにしては派手過ぎる立志伝ですが、外側からの出来事で“確変”していく姿を描いているのが「シーズン1」でした。

それに対して「全裸監督シーズン2」の村西はまさに台風の目、自らが動き、周囲の人々を巻き込みそして、大混乱に陥れたうえで、自らは見事に堕ちていくというまさに巨大な嵐のような姿を見せています。

「シーズン1」では村西は無理矢理テンションを上げていた感があったのですが、「シーズン2」の村西は終始ハイテンション。

それに着いていけずどんどん仲間が脱落していく姿がとても“物悲しさ”を感じさせるのですが、当の村西はそれを分かっていながらも止まるどころか、さらに前に前にと進んでいきます。たとえ、その先には破滅しかないと分かっても止まることをやめません。

–{去り行くヒロインと傾国の美女}–

去り行くヒロインと傾国の美女

「全裸監督シーズン1」で村西のミューズとして登場したのが黒木香。「全裸監督シーズン2」では村西との公私に渡るパートナーとなると同時に、サブカルチャーの面でも存在感を増してタレントとしてブレイクしています。

時には村西を上回る認知度を見せることもあり、このことが村西と黒木の間に微妙な空気を生んでしまいます。
そして、村西が衛星事業に本格進出したことが契機となり村西と黒木は別離を迎えます。

代わりに登場したのが、後に“村西にとって傾国の美女だった”と表される乃木真梨子。
後に本当に村西夫人となる人ですが、黒木に憧れ、村西のもとにやってきた女性です。

黒木が周りの女優たちにも慕われていた中での、村西の心変わりが周りの人間が離れていくことを加速させてしまいます。

森田望智の後半へいくほど不安定さを感じさせる表情と、自身なさげだったところから凛とした顔つきに変わっていく恒松裕里の熱演は見事です。

どうしても作品的にヌードや濡れ場などの“体当たり”演技に注目が浴びてしまう「全裸監督」シリーズですが、実際には激動の時代の流れの中で強く自分を出していこうという女性の姿を描いていて、そういう面での女優陣の熱演はもっと評価されていいかと思います。

最も近い傍観者と裏主役

玉山鉄二演じる川田は原作となった「全裸監督 村西とおる伝」の著者・本橋信宏がモデルになっているとされ、物語の語り部的な視点の持ち主です。

しかし、作品の過剰量産体制、そしてその利益のほとんどを衛星事業に投資しようとする村西の姿勢を見て早々に離反してしまいます。このことで村西は新たに“ダイヤモンド映像”を立ち上げ、よりワンマン体制になってしまうのは皮肉なことですが、この視線は醒めているのに最後まで村西を見届け続ける川田の存在は玉山鉄二の好演もあって、暴走気味な「全裸監督シーズン2」の物語を地に足のついたものにしています。

そして、「シーズン2」で裏主役に躍り出たのが、満島真之介演じるトシでしょう。

半分裏社会の住人のような形で物語に登場、村西に“アダルトビジネス”の世界を見せた人物でしたが、「シーズン1」ではあることから袂を分かち、収監までされてしまいます。
その後、ヤクザの組員となっていたトシですが、村西との奇縁は途切れず、「全裸監督シーズン2」の後半ではすべてを握るキーマンにまで成長していきます。

物語の中での成長具合いでは二人のヒロインと共にこのトシがダントツです。

–{「全裸監督」を見終わったら、ぜひ見て欲しい作品}–

「全裸監督」を見終わったら、ぜひ見て欲しい破天荒&ヒールタイプビジネスマン作品

「全裸監督」シリーズはそのタイトル、テーマからして非常に見る者を選ぶ、飛び道具的な作品という印象が強いのではないでしょうか?

実際に、そういう部分も多分にあるので、否定しきれませんが、その一方で、アウトロータイプ、破天荒タイプ、ヒール(=悪役)タイプの人間が独自のビジネス感覚でのし上がっていく異色の経済ドラマでもあります。

そういう意味では他にも似たようなタイプの作品がありますので、ここでいくつか“「全裸監督」を見終わったら、次に見たい”おすすめ作品をご紹介します。

ハリウッド版「全裸監督」と言ってもいいのがポール・トーマス・アンダーソンの1997年の『ブギーナイツ』でしょう。1970年代から80年代にかけてのアメリカのポルノ業界を舞台にした悲喜劇です。マーク・ウォルバーグのブレイク作品でもあります。

同時期の1996年に作られた『ラリー・フリント』もポルノ雑誌「ハスラー」の出版者であったハリー・フリントの半生をつづっています。

犯罪(違法行為)絡みの描写も多く「全裸監督」に通じる部分があります。ここ数年、意欲的な作品を次々と発表し続けるA24がロスを舞台にしたポルノ業界を描く『プレジャー/pleasure』の配給権を手にしたというニュースがあり、この映画も楽しみな一本です。

また、ビジネスのメインステージと言えばやはり金融関連となりますが、1987年の『ウォール街』と2013年の『ウルフ・オブ・ウォールストリート』は破天荒・ヒールキャラクターを主人公にしたビジネスものとして双璧をなすと言えるでしょう。どっちも最後は罪人となってしまうあたりも「全裸監督」に通じる部分があります。

日本の作品でも破天荒、ドロドロ、裏技スレスレで成功をおさめる者たちはいてNHKとテレビ朝日でドラマ化され映画にもなった『ハゲタカ』や岡田准一主演の『海賊と呼ばれた男』、WOWOWで大型企画として再ドラマ化された「華麗なる一族」などがあります。

 
「全裸監督」も含めて、ビジネスで大成(その後に大転落)をするような人は“まとも”では無理なのかなと?と凡人の側の人間としては呆れ半分、驚き半分といった感情が芽生えます。

 (文:村松健太郎)