ディーン・フジオカ「青天を衝け」で再び五代友厚を演じる〜彼の軌跡を振り返る〜

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「青天を衝け」より ©NHK

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NHK大河ドラマ「青天を衝け」ですが、いよいよディーン・フジオカが本格的に登場してきました。

しかも、何と彼の当たり役でもある「あさが来た」(15~16)と同じ五代友厚役!

「青天を衝け」の主人公・渋沢栄一(吉沢亮)と同時代を駆け抜けた実業家でもあった五代を再び演じるというニュースは、お茶の間のファンにも改めて感慨深いものがあることでしょう。

では今回はそんなディーン・フジオカの軌跡をざっと振り返ってみたいと思います。

衝撃の初監督&主演映画『I am ICHIHASHI 逮捕されるまで』

『I am ICHIHASHI 逮捕されるまで』より  (C)2013「I am ICHIHASHI 逮捕されるまで」製作委員会

ディーン・フジオカは1980年8月19日、福島県の生まれ。

2004年に香港のクラブでラップを踊っていたところを現地のファッション雑誌編集者にスカウトされ、香港を拠点にモデルとして活動を開始。

2006年には17歳の少女のひと夏の恋を描いた『八月の物語』で香港映画デビュー。

また同年より台湾ドラマに出演するようになり、俳優としての評価を高めていきます。

日本でも「サマー・テイル 夏のしっぽ」(07)などで、当時の彼のみずみずしい魅力にひたることができます。

2008年からはインドネシアで音楽活動も始めました。

日本で彼の存在が注目されるようになったのは、日本統治時代の台湾を背景にした映画『セディック・バレ』に彼が出演し、続いて『夢のむこう側~ROAD LESS TRAVELED~』(11)『ハーバー・クライシス(湾岸危機)Black & White』(12)と、出演映画が日本公開されるようになったあたりからでしょうか。

そして2013年、何とディーン・フジオカが主演のみならず監督・主題歌も務めた日本映画『I am ICHIHASHI 逮捕されるまで』(13)がお披露目されました。

これは千葉県市川市で起きた英国人女性殺害事件犯の逃亡の軌跡を描いた実録映画で、整形手術を施し、名前を幾度も変えつつ、常に逮捕の恐怖に怯えているうちに、いつしか現実と妄想の狭間に陥っていく主人公犯人を熱演していました。

台湾では善人役を演じることが多かった彼は、このとき周囲から実在の殺人犯を演じることに反対の声が多かったにも関わらず、さまざまなリスクを覚悟した上での挑戦として、作品に臨んだとのことです。

–{海外市場を見据えた日本映画『NINJA THE MONSTER』}–

海外市場を見据えた日本映画『NINJA THE MONSTER』

『NINJA THE MONSTER』より (c)2015 松竹

 2014年、ディーンフジオカはNHKBSプレミアム「撃墜3人のパイロット~命を奪い合った若者たち」で日本のテレビドラマに初出演。

また同時期の北米ドラマ「荒野のピンカートン探偵社」(14)にも準レギュラー出演しています。

そして2015年の秋からスタートしたNHK連続テレビ小説「あさが来た」に五代友厚として登場し、お茶の間の人気を得るようになりました。

さて、この時期に彼が主演した日本映画が『NINJA THE MONSTER』(15)です。

一瞬「外国のニンジャ映画?」と勘違いしてしまうタイトルですが、これは海外への輸出を企画のメインとして制作されたもので、その意味では国際的な活動を続けているディーン・フジオカを主演に向えるにふさわしいものでもありました。

江戸へ向かう幸姫(森川葵)の一行に正体を伏せて加わった忍びの伝蔵(ディーン・フジオカ)と、もののけとの戦いをVFXを駆使して描いた特撮アクション時代劇。

危険な旅路やNINJA&姫の身分違いの恋なども含め、上映時間84分の中に盛りだくさんの内容となっています。

2018年の2本の意欲作『海を駆ける』『空飛ぶタイヤ』

「あさが来る」で一躍日本での人気を得たディーンフジオカは、以後日本での活動も俄然増えていきます。

映画だけでも2017年、に結婚詐欺師を演じた主演作『結婚』や、人気漫画の実写映画化『坂道のアポロン』に出演。

そして、あの伝説的大人気漫画の実写映画化『鋼の錬金術師』では、人気キャラクターのロイ・マスタリングをさっそうと演じてくれました。

『海を駆ける』より (C)2018「海を駆ける」製作委員会

2018年には深田晃司監督による日本&フランス&インドネシア合作映画『海を駆ける』に主演。

これは2004年の大地震&大津波で壊滅的な被害を受け、今なおその傷跡が残るインドネシアのバンダ・アチュを舞台に、正体不明の日本人らしき男ラウ(ディーン・フジオカ)がさまざまな奇跡と事件を巻き起こしていきます。

日本からは太賀(現・仲野太賀)、阿部純子、鶴田真由らが共演

日本でも3・11があったことを思うに、単によその国の出来事として片付けられないものもあり(深田監督自身その意図はあったと思われます)、ファンタジックな情緒を通じた真摯なメッセージが発信されている作品です。

ちなみにディーンフジオカが演じた男ラウとは「海」という意味があります。

『空飛ぶタイヤ』より (C)2018「空飛ぶタイヤ」製作委員会

2018年にはもう1本、本木克英監督の『空飛ぶタイヤ』もありました。

池井戸潤の同名小説を原作に、トレーラー脱輪人身事故をめぐる車両の欠陥に気づいた運送会社社長・赤松(長瀬智也)と、製造元の大手自動車メーカーとの確執と攻防を骨太のタッチで描いていく社会派エンタテインメント。

この中でディーンフジオカはメーカー側の代表として赤松と対峙していく沢田を演じています。

公私の狭間に立たされた企業側の人間の苦悩をスマートに演じ切っているあたりは、やはり彼ならではの魅力の賜物でしょう。

それにしても『I am ICHIHASHI』にしても『結婚』にしても本作にしても、ディーン・フジオカはどこかしらピカレスクなものに惹かれて演じる傾向があるような気もしないでもありません。
(また、だからこそ『鋼の錬金術師』のロイもさまになるのでしょう!)

–{ユニークな企画に賛同&参加した 『エンジェルサイン』}–

ユニークな企画に賛同&参加した『エンジェルサイン』

『エンジェルサイン』より  (C)「エンジェルサイン」製作委員会

2019年のディーン・フジオカは、三谷幸喜監督の政治コメディ『記憶にございません!』で記憶喪失と化した人気なしの総理大臣(中井貴一)の秘書官のひとり伊坂を好演していました。

そしてもう1本、ユニークな作品として『エンジェルサイン』を挙げておきたいと思います。

これは『キャッツアイ』『シティハンター』などで知られる人気漫画家・北条司が実写映画の総監督として初挑戦したもの。

しかしこの作品、いわゆる撮影台本は存在せず、北城総監督による直筆絵コンテを基に現場で演技を指導。

しかも台詞は一切なしで映像と音楽の妙でドラマを構築していくという斬新な趣向が図られているのでした。

一応ストーリーそのものを文字化すると、チェリストのアイカ(松下奈緒)とピアニストのタカヤ(ディーン・フジオカ)、音楽の極みを目指す恋人同士の行く末を描いたものです。

こうしたチャレンジングな企画に参加するのも、世界をかけめぐり続けるディーン・フジオカならではの活動ともいえるでしょう。

そして2021年、いよいよ「青天を衝け」で再び五代友厚を演じる彼ですが、実は大河ドラマはこれが初出演。

おそらくは「あさが来た」とはまた一味違った五代像を体現してくれることでしょう。

(文:増當竜也)