国内外の新型コロナウィルス感染拡大の影響で公開延期が続きましたが、ついにモンスター映画大作『ゴジラvsコング』が2021年7月2日に日本公開されます。
『ゴジラ』映画としては日本版、アニメ版、ハリウッドリメイク版などを含めると36作目にあたり、『キングコング』映画としてはこれが9作目にあたります。また“モンスターバース”の第4作でもあります。
そしてゴジラとコングが正面からぶつかり合うのは日本映画1962年の『キングコング対ゴジラ』(ゴジラ初のカラー映画でした)以来のことで、約60年ぶりの再戦となります。
今作を観る前に知っておくとより楽しめるポイントをこれまでのゴジラ、コングの作品と共に5つご紹介したいと思います。
1. ゴジラの歴史
ゴジラは1954年の『ゴジラ』でスクリーンに初登場すると、以降断続的に映画が作られ続け2016年の『シン・ゴジラ』までで29作品、これにアニメ映画3部作、今はなかったことにされている1998年のハリウッドリメイク『GODZILLA』、そして今回の『ゴジラvsコング』を含む“モンスターバース”作品(2014年『GODZILLAゴジラ』、2019年『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』)などなど様々な形で映像化されています。
現在Netflixでは初のアニメシリーズ「ゴジラS.P<シンギュラポイント>」が放映されています。
2. コングの歴史
対するキングコングは1936年に最初の映画が作られていて、ゴジラより20年近く先輩にあたります。
映画はゴジラよりもかなり少なく1930年代2本の映画が作られた後、東宝にキャラクター使用権が渡り1962年と67年に日本で2本の映画が作られ、その後、1970年代、1980年代にそれぞれ一本ずつ作られました。近いところでは『ロード・オブ・ザ・リング』の大成功を引っ提げてピーター・ジャクソン監督が3時間を超す超大作版を作りました。
そしてリブートされた『GODZILLA ゴジラ』から始まる“モンスターバース”の一作として2017年に『キング・コング:髑髏島の巨神』が作られました。
“モンスターバース”としては第2作にあたりますが、時系列的にはこちらが先になります。
3. “モンスターバース”の歴史
1998年のローランド・エメリッヒ監督の『GODZILLA』が日本はもとより、アメリカでも「これはゴジラじゃない」という感想を抱かれてしまい、シリーズ化がとん挫。
それでもあきらめきれなかったハリウッドは2014年にゴジラに加えて、モスラ、ラドン、キングギドラのキャラクター使用権をレジェンダリー・エンターテイメント獲得したと発表しました。
その後レジェンダリー=ワーナー・ブラザースとの共同体制が整い、2014年に『GODZILLA ゴジラ』からリブートが始まりました。こちらは着ぐるみ怪獣のゴジラのオリジナルのデザインに近いものとして登場。
また渡辺謙がレギュラーとして登場、役名も1954年の『ゴジラ』の監督の本多猪四郎とキーパーソンの芹沢博士からとった芹沢猪四郎となっていたり、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』が日本の1964年のゴジラ映画『三大怪獣 地球最大の決戦』にオマージュを捧げていたりという感じに分かりやすいリスペクトがあって、日本のファンにも好意的に迎えられました。
そして当初の想定どおりのシェアードユニバース“モンスターバース”がスタートしました。
マーベルの“MCU=マーベル・シネマティック・ユニバース”の成功以来、ハリウッドは多くのユニバースの確立を目指しましたがDCコミックの“DCEU=DCエクステンデッド・ユニバース”、『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』の失敗でいきなり失敗した“ダーク・ユニバース”などなど、失敗が続きました。
そんな中で“モンスターバース”は興行収入的な面でも批評の面でもまずまずの成功をおさめ、結果としてMCU以外では継続が発表されている映画ユニバースになっています。
–{これまでの“モンスターバース”のおさらい}–
4. これまでの“モンスターバース”のおさらい
『GODZILLA ゴジラ』
フィリピンの炭鉱落盤事故現場から巨大な繭のような物体が発見され、何かが這い出た形跡が残っていた。一方、日本の原発で不可解な地震が起き原発が爆発する。
15年後、地震の原因になった巨大な繭から怪獣ムートーが誕生し飛び立つ。
秘密機関“モナーク”の芹沢博士はムートーを追うことに。ハワイにムートーが襲来した時についにゴジラが出現して闘いになる。
ムートーは雌雄2体おり、サンフランシスコでゴジラと最終決戦を迎える。
ムートーを放射熱戦でゴジラは芹沢博士らが見送る中で海へと戻っていく。
『キング・コング:髑髏島の巨神』
1973年ベトナム戦争末期、“モナーク”のランダは未知の島・髑髏島(スカルアイランド)に調査に向かう。イギリス特殊空挺部隊隊員のコンラッドと共に島に向かうとそこにコングが姿を現す。
まだ成長の途中にあったコングは髑髏島で恐怖の対象となっていて、コングより上回る巨体を誇る怪獣・スカル・クローラーに立ち向かい、コンラッドたちの援護もあってこれを倒す。
コンラッドたちはその後モナークから「王はコングだけではない」と知らされ、古代生物が描かれた壁画を見せられる。そこには巨大な恐竜のような生物(ゴジラ)、翼竜(ラドン)、蛾(モスラ)、さらに三つ首竜(ギドラ)の姿が描かれていた。
『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』
ゴジラとムートーの闘いから5年。世界各地で休眠状態の怪獣=タイタンが次々と発見される。
そんな中で、エコテロリストの一団が南極の氷塊に眠るモンスター・ゼロ(=ギドラ)を目覚めさせる。そこにゴジラが姿を現しギドラと闘いに入る。決着つかないままギドラは空へ、ゴジラは海へと姿を消す。
ギドラの復活に合わせるように各地の怪獣ラドンやモスラが活動を始める。
ゴジラとギドラとの最終決戦は壮絶なものとなり、モスラの力を吸収したゴジラはギドラにトドメの一撃を与えすべての首を落とす。“キング・オブ・モンスターズ”となったゴジラのもとにラドン、ムートー、ベヒモス、スキュラ、メトシェラなどの怪獣が集まりひれ伏していく。
その後、調査の結果巨大な猿と恐竜が闘う姿が描かれた壁画が発見され、遠くない未来に起こる新たな闘いを予想させる。
5. そして、『ゴジラvsコング』
そして、ついに、ゴジラとコングが正面からぶつかる『ゴジラvsコング』が公開されます。
モナークの調査によると過去にも幾度となく闘ってきたと思われるゴジラ(の祖先?)とコング(の祖先?)との闘いが現代に蘇ることになります。
前作で犠牲となった芹沢博士(渡辺謙)の息子・芹沢レン役で小栗旬が出演。ハリウッドデビューを飾っています。やはり“ゴジラ”と名のつく作品には日本人キャストがいた方が安心感がありますね。
ここでお国柄が出るのが、人間側にコング、対抗する側にゴジラという風に分かりやすい立ち位置が確立されているところでしょう。
やはりと言うべきか、アメリカにとってはコング(巨大類人猿)の方に感情移入のしやすさを感じるようですね。劇中では手話でコミュニケーションをとるシーンまで描かれます。
前作『キング・オブ・モンスターズ』ではギドラを倒すためにゴジラと共同戦線体制を築いた人類ですが、それはあくまでもギドラに比べればとか、ギドラの脅威を取り除くためと言ったエクスキューズがあったようです。
細かい話ですが、今回の“モンスターバース”ではコングは“キングコング”とは呼ばれていません『キングコング:髑髏島の巨神』も原題は『Kong:Skull Island』となっています。
このことはコングは、未だ成長過程にあるという言うことを意味しています。
一方で、前作で“キング・オブ・モンスターズ”となったゴジラは“モンスターバース”の中で微妙に立ち位置を変え続けています。
これは相手をする怪獣の存在や人間側の捉え方によるところが大きいのですが、相対的に見たときに脅威になる度合いで感情移入するかどうかが決まるゴジラもちょっと可哀想な気がしますね。
映画自体は一切遠慮のないド迫力バトルが展開されていてシンプルに楽んでください。
サマーシーズンに入るとハリウッドの大作映画が続々と登場する予定になっています。
2021年7月2日公開のこの『ゴジラvsコング』に続いて、7月8日にはマーベルの『ブラック・ウィドウ』、8月6日には『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』、8月13日には『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』が劇場公開されます。
いよいよハリウッド大作が映画館に還ってきますね。
(文:村松健太郎)
–{『ゴジラvsコング』作品情報}–
『ゴジラvsコング』作品情報
【予告編】
【あらすじ】
モンスターたちの戦いによって壊滅的な被害を受けた地球では、各地で再建が進められていた。特務機関モナークは未知の土地で危険な任務に挑み、巨大怪獣(タイタン)の故郷<ルーツ>の手がかりを掴もうとする。だがその頃、深海の暗闇からゴジラが出現し、再び世界を危機へと陥れていく。人類は対抗措置として、コングを髑髏島<スカルアイランド>から連れ出す。そんななか、ゴジラを信じ真意を探ろうとする者、故郷を求めるコングと心を通わせる少女など、怪獣を取り巻く人間たちの思惑が錯綜する。やがて人類の生き残りをかけた争いは、ゴジラ対コングという最強バトルを引き起こし、人々は史上最大の激突を目にすることとなる……。
【基本情報】
出演:アレクサンダー・スカルスガルド/ミリー・ボビー・ブラウン/レベッカ・ホール/ブライアン・タイリー・ヘンリー/小栗旬/エイザ・ゴンザレス/ジュリアン・デニソン/カイル・チャンドラー/デミアン・ビチル ほか
監督:アダム・ウィンガード
ジャンル:SF/アクション
製作国:アメリカ