『モータルコンバット』の真田広之に燃えているうちに『リメインズ 美しき勇者たち』というタイトルの映画を思い出した!

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2021年6月18日より公開のアメリカ映画『モータルコンバット』はずばり、真田広之の存在なしに語ることのできない一大格闘アクション作品です。

人気ゲームを映画化した本作の中、真田広之は白井流伝説の忍者ハサシハンゾウなる、ゲームファンにとって作品を代表する存在のキャラクターとして登場。

まずは冒頭10分すさまじいアクションを披露!

そう、真田広之といえば何と言ってもアクションです!

そしてX-MENやアベンジャーズなんかに負けないほどに、彼は本当に強いのだ!

今回の作品を見ながら久々にそのことを思い出すとともに、ふと“美しき勇者(たち)”というサブタイトルの映画が脳裏をよぎりました。

『リメインズ 美しき勇者たち』、もちろん真田広之主演のアクション映画です!

巨大熊とマタギの死闘を描く千葉真一監督作品『リメインズ』

 『リメインズ 美しき勇者たち』は史上最悪の害獣事件とも言われる1915年の三毛別羆(サンケベツヒグマ)事件をベースにした、巨大グマとマタギたちの闘いを描いたものです。

舞台は大正末期の北国で、赤マダラと呼ばれる女性だけを食べる人喰い熊が現れて家族が惨殺される事件が起きました。

家族の中で唯一生き残った少女ユキ(村松美香)は復讐を誓い、赤マダラ退治に出発しようとする鋭治(真田広之)やベテランの嘉助(菅原文太)ら5人のマタギ衆についていくのですが……。

本作は真田広之の師匠でもある千葉真一が主宰するJACの創立20周年を記念して作られたもので、千葉が初監督を務めています(アクション監督は金田治)。

もともと千葉真一は信頼を寄せる深作欣二監督に演出を依頼しましたが、「せっかく20周年記念なんだから、お前が監督したほうがいい」と逆に監督を勧められ、このようになったとのこと。

深作欣二は企画監修というクレジットですが、実際の撮影現場にも立ち会い、エキストラの指導などB班監督的な役割も担っていたそうです。

そして真田広之。

既に1980年代半ば以降の彼はアクション作品のみならずドラマ作品にも積極的に出演し続けていて、本作の前は『怪盗ルビイ』(88)『どっちにするの。』(89)といったコメディにも挑戦していた時期でした(本作の後もコメディ『病院へ行こう』90に出演)。

その意味で本作は久々のアクション映画ともいえますが、むしろこの作品が公開された1990年に30歳の誕生日を迎えた彼の、それまでの俳優としてのキャリアをしのばせる若々しい貫禄を発露させたドラマとしてこそ屹立している作品であり、だからこそ千葉真一もアクション監督を兼任せず、ドラマ演出に専念したのでしょう。

(また女性ファンに言わせると、この映画の彼は非常に男の色香が漂っているとのこと!)

さらに今回、本作で真田広之は音楽監督にも挑戦し(劇中曲の作曲は大谷幸が担当)、主題歌も作詞・作曲するなど、俳優業のみならずスタッフとしての活動にも意欲を示しています。

ちなみにこの数年後に彼が主演した『EAST MEETS WEST』(96)の海外版を制作する際、監督の岡本喜八は真田のセンスを見込んで彼に再編集を要請し、見事にその任を果たしています。

–{アクション=演技として活動し続ける真田広之}–

 アクション=演技として活動し続ける真田広之

『リメインズ』が公開された1990年あたりを境に、真田広之は単にアクションをメインとする作品よりも、あくまでもドラマの中にアクションが必須なものを選んで出演していった感があります。

『眠らない街 新宿鮫』(93)『EAST MEETS WEST』などはその代表格で、『リング』(98)にしても恐怖をアクティヴなもの(すなわちアクション)とみなして参加している感が見受けられました。

そして2002年『助太刀屋助六』と『たそがれ清兵衛』なる2本の時代劇秀作を経て、2005年ポリティカル・サスペンスとしてのアクション映画『亡国のイージス』(05)を最後に、彼は渡米してハリウッドを活動の基盤としていくのです。

現在YouTubeの普及などもあって、ハリウッドの若いスタントマンたちもかつての真田広之の壮絶なアクションの数々に触れて大いに感化されるなど、着実に新たなファンを増やし続けていると聞きます。

今回の『モータルコンバット』でさらに彼のアクションに驚嘆し、次は彼を主演にしたハリウッド・アクション映画を製作してくれるプロデューサーなり現れないものかと今は心待ちにしているところ。

同時に、そろそろ久しぶりに日本に帰ってきての主演アクション映画も見て見たいと常に願っている次第です。

『柳生一族の陰謀』(78)で本格デビューした彼の魅力は、同世代の映画ファンならみんなよく知るところですが、たとえば『戦国自衛隊』(79)で空飛ぶヘリコプターから飛び降りたり、初主演映画『忍者武芸帖 百地三太夫』(80)では高さ25メートルの天守閣からダイビングし、『燃える勇者』(81)ではロープを使ったターザンジャンプで走る汽車に飛び移る!

初海外作品『龍の忍者』(82)では現地スタントマンを驚嘆させる技の数々を披露し、また『里見八犬伝』(83)がアジア各国で大ヒットしたことで、真田広之のアクション・スターとしての人気はアジア全域にまで広がっていきました。

しかし彼自身は、アクションもまた演技のひとつといったスタンスで『道頓堀川』(82)『麻雀放浪記』(83)など非アクション映画にも積極的に出演し始めていき、そのことが後々の彼の俳優としての深さを掘り下げていくことにも繋がっていったのです。

真田広之のことを考えると、自分らが果たせなかったかっこいい夢を彼が代わって実現させてくれているような気持ちにさせられます。

「映画はアクションだ」とは深作欣二監督の名言であり、海外では「アクション!」と唱えて映画の撮影を開始します。

即ち、アクションとは本来演技そのものを指すのであり、真田広之こそはそのことを実践し続けている、かけがえのない我らが真のスターなのです!

 (文:増當竜也)