2021年6月2日に映画『さんかく窓の外側は夜』のDVDレンタル&配信が開始した。本作で呪いを操る女子高生の非浦英莉可を演じているのが、現在絶賛放送中のドラマ「ドラゴン桜」(TBS系)、映画『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』と話題作への出演が相次いでいる平手友梨奈だ。
昨年にソロ活動を始動してからというもの、ソロ曲「ダンスの理由」でソロアーティストデビューやいくつものバラエティへの出演など、アイドルとして活動していたとき以上に表立った活動が増えてきている印象があり、女優のみならず多方面での活躍が期待されている。
そこで今回は目覚ましい活躍を遂げ、女優としても着実に進化を続けている平手友梨奈のキャリアについて振り返っていきたい。
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「徳山大五郎を誰が殺したか?」「残酷な観客達」欅坂46として歩んだ女優のキャリア
2015年に欅坂46の1期生としてアイドルのキャリアを歩み始めた平手。2016年4月6日にリリースされた1stシングル「サイレントマジョリティー」から全シングルでセンター表題曲を務め、絶対的センターとして多くのファンを魅了してきた。
そんな平手の初のドラマ出演となったのは欅坂46主演のドラマ「徳山大五郎を誰が殺したか?」(テレビ東京系)だった。
アイドルグループ主演ドラマはAKB48では「マジすか学園」、乃木坂46も「初森ベマーズ」(それぞれテレビ東京系)と企画モノとしての傾向が強かった。
しかし、欅坂46が挑んだ「徳山大五郎を誰が殺したか?」はミステリーに加えてコメディ的な要素も多分に含まれ、思春期の葛藤を描きながら過去に類を見ない完成度の高さを誇り、アイドルドラマとしては申し分ない出来だったといえるだろう。
また、その意味で欅坂46のファンに向けられた作品であると同時にグループを知らない人に向けられた入門的な役割を果たすことにもなった。
(c)「徳山大五郎を誰が殺したか?」製作委員会
本作では一応全員主演ということになっているが、物語の構成の中では平手を中心に展開している。初のドラマ出演ということで多少の拙さやあどけなさが出てくるのかと思いきや、アイドルとして示した佇まいそのままに第1話からポテンシャルの高さを見せ、回を重ねるごとに役者として開花していった。周囲に影響されず冷静沈着に推理を進めていく様は平手が作品を率いていける存在であることを証明しており、まさしく主役としての存在感を発揮していた。
続いて2017年にもドラマ「残酷な観客達」(日本テレビ系)に欅坂46のメンバーとして出演。
本作では本名ではなく初めて役名として出演し、平手は葉山ゆずき役としてまたもや主人公のポジションが与えられている。「残酷な観客達」は前作に引き続きミステリードラマとして描かれた。見られるものと見るものという二項対立を描き出した社会風刺的な作品性をもっており、メッセージとしては欅坂46的な要素を孕んだ作品だった。
一方でユニークな台詞が飛び交っており、平手も「うっせー、ファック」を殊更に言い放ったり、ポイントを獲得するため可愛らしい台詞にも挑戦したりと、様々な表情を覗かせていた。
この2作はアイドルグループのためのドラマであり、当然ながらアイドルファンしか見ていないという状況も大いにある。アイドルとしては圧倒的な表現力で魅了していた平手が、女優として飛躍を遂げるきっかけとなったのが初主演となった映画『響-HIBIKI-』だった。
–{『響-HIBIKI-』の出演が女優としての転機に}–
『響-HIBIKI-』の出演が女優としての転機に
欅坂46の活動を通して何者かを演じることのベースを築き上げた平手は、2018年9月公開の映画『響-HIBIKI-』で大きく飛躍を遂げることとなる。
原作者である柳本光晴が「『サイレントマジョリティー』のPVを見た時から、もし響が実写化するなら、主演は平手さんしかいないなと思いました」と話していたが、映画主演の大抜擢は単なる(グループの知名度を利用した)話題性ではなく、誰もが知る平手の表現者としてのポテンシャルによる実現だった。デビューから3年弱で主演までこぎつけたのは異例の速さで、それだけ平手のパフォーマンスが多くの人を魅了してきたということでもある。
『響-HIBIKI-』はマンガ大賞2017大賞を受賞した「響 〜小説家になる方法〜」が原作。平手は文学界に革命を起こすほどの圧倒的な才能を秘めた女子高生の鮎喰響を演じた。過去にも欅坂46としてドラマに出演していたが、ソロとしては初の映画主演ということで大きな話題となった作品だ。
Ⓒ2018映画「響 -HIBIKI-」製作委員会 Ⓒ柳本光晴/小学館
平手が演じた鮎喰響という役柄は天才としてもてはやされる一方で、時には大物作家に対しても蹴りをお見舞いしたり、記者会見の場で大暴れしたりと、奇行とも言える所業に及ぶことだってある。しかし、鮎喰響という人物の根底にあるのは自分の信念に従って生きるという生き方であり、平手はこの鮎喰響というキャラクターを自分自身と重ねながら演じていたのだそう。
それにしても『響-HIBIKI-』における平手の演技は想像以上だった。欅坂46では平手の表現力の特異さに注目が集まっていたが、映画というフィールドでもそれは同じ。何より鮎喰響という傍目には初主演で演じるには難しさを感じてしまう役柄でも、平手自身をトレースしたかのように自然な演技が目につく。映画初主演ながらこの時点ですでに女優として完成されており、平手の表現には圧倒的な求心力があった。
Ⓒ2018映画「響 -HIBIKI-」製作委員会 Ⓒ柳本光晴/小学館
ご存じの通り、平手は本作で「第31回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞」の新人賞、第42回日本アカデミー賞新人女優賞、第28回日本映画批評家大賞の新人女優賞と、数々の新人賞を受賞している。
アイドルというフィールドを飛び越え、女優として本格的なキャリアを歩み始めた作品として『響-HIBIKI-』は重要な作品である。
–{『さんかく窓の外側は夜』「ドラゴン桜」『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』}–
『さんかく窓の外側は夜』「ドラゴン桜」『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』2021年も続々と話題作に出演
2021年に入り女優として本格始動を果たした平手。同年1月に映画でソロ活動後初の映画出演を果たす。岡田将生と志尊淳の主演で、平手は呪いを操る女子高生の非浦英莉可を演じている。
累計発行部数170万部を突破したヤマシタトモコの漫画の実写映画化である本作は、霊が見える書店員の三角(志尊淳)と除霊師の冷川(岡田将生)が未解決事件の解決に挑むミステリー・ホラー。
これまで平手は物語的に中心を担う主役(またはそれに準ずる役)を演じてきたが、本作ではバイプレイヤー的な立ち位置で出演している。決して出番は多いとは言えないなかで、相手に呪いをかける際に見せる眼力など要所で存在感を発揮していた。作品を見るまでは主役ではない彼女をどう見せるのかという点と平手自身がヒロインとしてどう立ち回るのかという点が気になっていたのだが、実際見てみると見事なバランス感覚で上手く演出されていて驚いた。
©TBS
4月からは過去に多数の人気女優を輩出した伝説のドラマとして知られるドラマ「ドラゴン桜」に出演していることで注目を浴びている。
本作は2005年に放送された第1シリーズの続編で、主人公の弁護士・桜木建二が、落ちこぼれの学生を東大合格まで導くというストーリー。平手は大学のスカウトに注目されるほどの実力を誇るバドミントン選手の岩崎楓を演じる。
これまでの諸作とは異なる役作りに平手は、リオデジャネイロオリンピックの混合ダブルスで日本人初のベスト8入りを果たした元バドミントン選手の栗原文音から教わり、「素人に見えないように、ちゃんと全国トップレベルに見えるように」ということを徹底して臨んだことを明かしている(引用:「バド×スピ!」【スペシャル・インタビュー】「もっと練習したい、もっとうまくなりたいと思った」 平手友梨奈が『ドラゴン桜』とバドミントンを語る)。
またインタビューでも「自信はないですが、でもそれをやらないと楓ではなくなるので、できるだけ近づけていけるように日々やっています」と語っており、役作りへの妥協を許さない姿勢が彼女らしい。
©TBS
岩崎にフォーカスされた第2話では、半月板の故障によってバドミントン選手としての夢を絶たれてもなお、新たな夢のため前を向いて頑張る岩崎の姿が描かれた。岩崎というキャラクターはというと、登場初期はコンビニで万引をしたり、桜木のテントに火を付けたりと、思春期ならではの不安定さ、危うさを持ち合わせていたが、桜木と出会い東大専科に加わってからは、以前よりも表情も豊かになり、真っ直ぐに努力し続ける優等生ぶりを発揮。この岩崎の多様な表情の変化、一挙一動を平手は繊細な演技を通して生き生きと表現していた。
また、第8話でも改めてフォーカスされたが、同じく繊細な演技で岩崎という人間に深みが与えられた。
©TBS
平手の演技に凄みを感じてしまうのは、演技の巧拙以上に、演じる役に説得力をもたせることが上手いからだろう。だからこそ回を重ねるごとに岩崎という人物に深く感情移入できてしまう。平手が演じることによって役に求心力が生まれ、結果的に物語にも強度を与えている。生徒役のカラーが作品のトーンに大きく影響を与える「ドラゴン桜」というドラマにおいて、平手が演じた岩崎は間違いなく非常に重要なポジションを担っているのだ。
表現力の高さは音楽番組を通して多くの人の目に触れることがあっても、女優として注目される機会はあまり多くはなかった。「ドラゴン桜」が放送されるたびにSNSでも平手の演技には多くの称賛のコメントが寄せられていることからも、これを機に女優として脚光を浴びることは間違いなさそうだ。
6月18日には前作が累計観客動員数130万人を記録した大ヒットシリーズの続編『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』への出演も控えており、平手は殺された両親の復讐を企てる車椅子の少女でヒロインの佐羽ヒナコを演じる。これまで主に普通の女子高生を演じてきた平手が、闇社会の殺伐とした世界観のなかで生きるヒナコをどう演じるのか期待したい。
(文:川崎龍也)
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