『キャラクター』レビュー:菅田将暉 VS Fukaseが魅せる映画ならではの凄絶&豪華な「邪」!

ニューシネマ・アナリティクス

■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

最近のメジャー系公開の日本映画にしてオリジナル・ストーリーのサスペンスものという、これだけでも挑戦的なものが感じられて嬉しい作品ですが、まるでベストセラー小説or漫画の映画化のようにゴージャスな雰囲気が全体的に漂っているのも好ましいところ。

原案・脚本が「20世紀少年」などで漫画家・浦沢直樹とタッグを組むなど、エンタメ・プロデュースに秀でた長崎尚志ならではの意欲が巧みに結実しているものと思われます。

内容そのものはかなり凄惨凄絶で、特に殺人現場の遺体とおびただしくもグロテスクな血の「見せ方」は、そのうち主人公の漫画家・山城(菅田将暉)さながら、どこかしら猟奇的世界へ埋没しかねないほどの「魅せ方」として、危険ながらも魅惑的な映画ならではの豪華な「邪」を堪能させられること必至。

また、ここまで適材適所のキャスティングが成されている作品も珍しいほどで、菅田や清田刑事役・小栗旬たちの演じる上での努力を表に見せない好演などはいつもながらの頼もしさです。

ただし、やはり今回はFukase(SEKAI NO OWARI)を猟奇殺人鬼・両角(もろずみ)に起用し得たことが、本作の最大の成功の要因といっても過言ではないでしょう。

どこかイッちゃってる感を秘めた彼のあの可愛らしい笑顔、鑑賞後もしばらくは脳裏にこびりついて離れないほどです。

また出番はさほど多くないものの、最初の一家殺人事件の犯人だと自供する辺見役・松田洋治の不気味度100%のオーラはかなり脅威的でありました。

映画デビュー作『ジャッジ!』(14)から『帝一の國』(17)『恋は雨上がりのように』(18)など、永井聡監督作品とはかなり相性が良いほうではありましたが、今回のような個人的には不得手なジャンルである猟奇サスペンスものでも、一見淡白な情緒を忍ばせつつも気負いなくこちらを引っ張っていく演出の妙に感嘆。

ただし、そのことに気づいたのは当然ながら見終えてのことで、鑑賞中はただただスリリングに、映画鑑賞中のみに許される「邪」の魅惑に取りつかれていたことを正直に告白しておきます。

(文:増當達也)

–{『キャラクター』作品情報}–

『キャラクター』作品情報

ストーリー
売れっ子漫画家を夢見る山城圭吾(菅田将暉)は、高い画力を持ちながらも、お人好しな性格が災いし、悪役のキャラクターをリアルに描くことができず、万年アシスタント生活を送っていた。そんなある日、師匠の依頼で“誰が見ても幸せそうな家”のスケッチに出かけた山城は、住宅街で見つけた不思議な魅力を持つ一軒家に、ふとしたことから足を踏み入れてしまう。そこで彼が目にしたのは、無残な姿に変わり果てた4人の家族だった。さらに、その前に佇む一人の男(Fukase)……。

事件の第一発見者となった山城は、警察の取り調べに対して、“犯人の顔は見ていない”と嘘をつく。それどころか、自分だけが知る犯人を元にした殺人鬼“ダガー”を主人公にしたサスペンス漫画『34(さんじゅうし)』を描き始める。自分に欠けていた本物の“悪”を描いた漫画は異例の大ヒット。念願の売れっ子漫画家となった山城は、恋人の夏美(高畑充希)とも結婚。誰もが羨むような順風満帆の幸せな生活を手に入れる。

ところが、まるで『34』の物語をなぞるように、4人家族が狙われる事件が続発。刑事の清田俊介(小栗旬)は、あまりにも漫画の内容と事件が酷似していることに不審を抱き、山城に目をつける。共に事件を追う真壁孝太(中村獅童)は、暴走しがちな清田を心配しつつも、温かく見守っていた。そんな中、山城の前に、再びあの男が姿を現す。“両角(もろずみ)って言います。先生が描いたものも、リアルに再現しておきましたから”。交わってしまった二人。山城を待ち受ける“結末”とは……?

予告編

基本情報
出演:菅田将暉/Fukase(SEKAI NO OWARI)/高畑充希/中村獅童/小栗旬

監督:永井聡

公開日:2021年6月11日(金)

製作国:日本