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MCUとは、マーベル・コミックを原作にした、同じ世界線で繰り広げられるヒーロー映画の総称。
近年では、実力あるインディーズ映画監督の発掘にも力を入れており、タイカ・ワイティティやライアン・クーグラーといった知られざる才能を世に知らしめてきた映画シリーズでもあります。
(そのため、洋画ファンにこそ必見と言えるシリーズなのです!)
今回は第1作から欠かさず、劇場でシリーズを追ってきた筆者が、そんなMCU作品の魅力をご紹介!
シリーズ初心者の方や映画好きの方、ヒーロー映画に興味がない方でも楽しめるように、各作品の見どころを振り返っていきます!
※この記事ではシリーズ第1作『アイアンマン』から、『アベンジャーズ』に至るまで、フェイズ1と分類されるMCU作品の魅力をご紹介します。
【フェーズ1】
・『アイアンマン』(2008年)
・『インクレディブル・ハルク』(2008年)
・『アイアンマン2』(2010年)
・『マイティ・ソー』(2011年)
・『キャプテン・アメリカ / ザ・ファースト・アベンジャー』(2011年)
・『アベンジャーズ』(2012年)
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–{『アイアンマン』の魅力}–
『アイアンマン』の魅力
『アイアンマン』は、MCUの記念すべき第1作となった記念碑的作品です。単独作品としての完成度も高く、本作だけでも十二分にMCU作品の魅力を知ることができるでしょう!
ストーリー
アフガニスタンで自社兵器のデモ実験に参加したトニー・スタークは、テロ組織に襲われ拉致されてしまう。胸に深い傷を負い捕虜となった彼は、組織のために最強兵器の開発を強制される。トニーは装着することで、圧倒的な破壊力とパワーを発揮できる戦闘用パワードスーツを敵の目を盗み開発。敵地からの脱出に成功するが、奇跡的に生還したトニーは、ある事実を知り愕然とする・・・。自らが社長を務める会社が開発した兵器がテロ組織に使用されていたのだ。トニーはその償いをすべく、テロ撲滅に命を捧げることを決断。最先端の技術を駆使し、新たなパワードスーツの開発に着手する。
トニーとロバート・ダウニー・Jr
本作の魅力は何といっても、主人公・トニー・スタークのキャラクターでしょう。
軍事企業の社長で独善的な主人公が、九死に一生の拉致経験から、ヒーローへと転身していく姿は痛快。
また、彼を演じたロバート・ダウニー・Jrさんは、薬物依存や代表作に恵まれない時期を乗り越え、本作の主演に抜擢された人物でもあります。
それゆえ、彼の人生経験が重なるような主人公の姿には、大きな説得力と深みが感じられるでしょう。
役者でもある名匠・ジョン・ファブロー
本作の監督を務めたのは、ジョン・ファブローさん。
2019年にディズニーの実写化史上最大のヒット作となった『ライオン・キング』や、スター・ウォーズシリーズ屈指の人気を誇る傑作ドラマ『マンダロリアン』のメガホンを握るなど、本作の成功を機にハリウッド映画界を代表する人物になりました!
また、俳優としても活躍する監督は、劇中で主人公・トニーの運転手兼ボディガードのハッピー・ホーガンとして出演。
のちの『アイアンマン』シリーズのみならず、MCU作品には欠かせない名脇役となっていきます。
リアル志向とエンタメの融合
本作では過去のマーベル映画と比べて、より現代社会に根差した物語が高く評価されました!
2001年、世界トップレベルの軍事力を持つと言われるアメリカ合衆国に大きな脅威をもたらしたのが、9.11テロ事件。
この影響から国内外で対テロ戦争を進めたアメリカですが、主人公・トニーにはそんな国の姿が反映されているようにも感じられます。
イスラム過激派を想起させるテロ組織や、自社が開発した兵器を根絶するために戦いを始める主人公の描写も象徴的で、当時のアメリカを写した鏡ともいえる作品なのです。
また、深い題材を描きつつ、エンタメ作品として楽しめるのも本作の素晴らしい部分。
コミカルな場面や手に汗握るアクションシーンを盛り込み、誰が見ても楽しめるヒーロー映画として完成されたことで、多くの人々に愛される娯楽作品が実現したのです。
ヒーロー映画の新時代到来
本作が上映された2008年には、DCコミックス原作の『ダークナイト』も公開されました。
「世界の警察官」と呼ばれたアメリカを象徴する主人公・バットマンと、「テロリズム」の権化・ジョーカーとの二項対立。
こちらの作品も、9.11テロ事件以降のアメリカを反映した物語が評価されており、社会派なテーマを描いた両作が、以後のヒーロー映画に大きな影響を与えることになりました。
また、劇中に登場するセリフ「I am Iron Man」は、後のマーベル映画の方向性を決定づけた名台詞とも言えます。
「X-MEN」シリーズや「スパイダーマン」旧三部作など、かつては自身の能力に葛藤し、世間に正体を隠す場合が多かったマーベル映画のヒーローたち。
そんな彼らが、本作の名台詞を機にオープンな存在へと変わっていったことで、これまでは踏み込めなかった領域(政府に管理されるヒーロー像など)を描くきっかけにもなったのです。
アベンジャーズへの伏線も
次第に広がっていくMCUの物語において、本作最大のポイントはシリーズを牽引する人気キャラ・トニー・スタークの登場ですが、それ以外にも様々な注目ポイントが!
謎の組織・S.H.I.E.L.D.(シールド)と、その諜報部員・コールソンの登場(のちに彼はスピンオフドラマの主人公にもなります)、さらには、ED後に登場する意外な人物など、オールスター映画『アベンジャーズ』へと繋がる様々な要素が隠れています!
そのため、シリーズを追っていくほどに何度も見返したくなる作品であることは間違いないでしょう!
人気映画シリーズMCUの記念すべき第1作となった『アイアンマン』。
本作の大ヒットがなければシリーズは生まれなかったとも言われており、単独作品としても満足度の高い一作。
ヒーロー映画の新時代を切り拓いた傑作という点で、シリーズものに興味がない方にこそ、まずは見ていただきたい作品です。
–{『インクレディブル・ハルク』の魅力}–
『インクレディブル・ハルク』の魅力
『インクレディブル・ハルク』は、MCU第2弾となった緑の怪物・ハルクを主人公にしたアクション映画。他作への繋がりが明白となったことで、シリーズの面白さが観客に広まった一作です。
ストーリー
科学者のブルース・バナーは、恋人ベティの父、ロス将軍の命令を受けて人体への放射線抵抗を研究していた。ところがその研究実験中に事故が発生、多量のガンマ線を浴びたブルースは、怒りを感じて心拍数が200を越えると約2.7メートルもの巨大な緑色のモンスター=ハルクに変身する特殊体質となってしまう。それ以来、彼を利用しようとする軍の追跡を逃れ、ブラジルに身を隠して治療薬開発と細胞の解明に専念するブルース。しかし、ふとした出来事からブルースの居場所が割れてしまい、ロス将軍によって送り込まれた特殊部隊員ブロンスキーらに包囲されてしまう。だがその時ブルースはハルクへと変身、部隊を一蹴し、間一髪のとこで逃亡に成功するのだったが…。
エドワード・ノートンが息を吹き込んだハルクの魅力
まるで、ジキル博士とハイド氏のように二面性を持つ主人公を見事に表現したのが、エドワード・ノートンさんです。
温厚な性格のブルース・バナー博士と恐ろしい力を持った怪物・ハルク。
自己に潜む脅威により社会から孤立してしまった博士の哀愁は、二度アカデミー賞にノミネートされた彼だからこそ実現できた魅力といえるでしょう!
また、彼は過去に監督経験がある人物でもあり、本作ではノークレジットながら脚本の改稿にも携わっていたそうです。
よりダークなトーンで二部作を描く予定だったそうですが、その構想がスタジオの想定していた展開とは大きく異なったことで却下。
このような創造上の違いもあり、公開後にノートンさんはハルク役を降板することになりますが、『アベンジャーズ』以降は、マーク・ラファロさんが彼の意志を引き継いで同役を演じています!
エンタメ映画の名手・ルイ・レテリエ
本作のメガホンをとったのは『タイタンの戦い』、『グランド・イリュージョン』など、人気シリーズの第1作も手掛けたルイ・レテリエ監督。
それゆえ、作品には確かな娯楽性が光ります。
主人公とヒロインのラブストーリーや、悪役・アボミネーションとのバトルシーンなど、様々な要素をテンポよく詰め込んだ内容には、エンタメ映画として納得の満足感が得られるでしょう!
また、過去の実写作品へ敬意を払った小ネタの数々も見所です。
公開時のインタビューで70~80年代に放送されたテレビ版のファンだということを公言している監督。
それゆえ、劇中ではテレビ版でハルクを演じた俳優がカメオ出演しているほか、『逃亡者』の設定も強い影響を受けていると言われています。
ちなみに、ラストのサプライズ展開は監督たっての希望で追加された場面。
アメコミ映画に熱い思いを抱えた監督だからこそ生まれた名シーンは、本作の面白さをより高みに押し上げています。
軍事国・アメリカへの批判的視点
本作では『アイアンマン』同様、世界トップレベルの軍事国・アメリカを批判するような視点も目立ちます。
というのも、『インクレディブル・ハルク』における悪役は、まさしくアメリカ軍だからです。
大量の戦車や軍隊を投入する軍人・ロス将軍や、常軌を逸した肉体改造に臨む精鋭兵士・ブロンスキーなど、劇中では軍事力を過信する米軍たちが意図的に描かれているのです。
彼らの兵器がスターク・インダストリーズ(アイアンマンことトニーが社長を務める軍需企業)製であるという小ネタも印象的で、『アイアンマン』と同様に、当時の軍事産業を批判的に描いた作品と受け取ることもできるのです。
スリリングな逃亡劇と切ない恋愛物語
本作はヒーロー映画でありながら、スリリングな逃亡劇や切ない恋愛物語としても楽しめる一作です!
物語の前半、ブラジル・リオデジャネイロを舞台に主人公が追っ手から逃げる場面には圧倒されます。
「住居から住居へ飛び移っていく」という特殊なロケーションを活かしたアクションシーンには、観客の誰もが興奮することは間違いないでしょう!
また、主人公とヒロインの儚いラブストーリーにも注目です!
恐ろしい怪物を宿した主人公がかつての恋人と再会し、惹かれ合う展開には王道ながらも心に響くものがあるのではないでしょうか。
お互いを思うゆえに簡単には近づくことの出来ない二人。
そんな彼らの関係性が、単なるヒーロー映画とは異なる、魅力的なドラマを生み出しているのです。
『アイアンマン』との繋がり
本作では、シリーズ前作『アイアンマン』と繋がる場面も多数登場します。
秘密諜報機関・S.H.I.E.L.D.の長官・ニック・フューリーや、スターク・インダストリーズの名前が登場するOPシーンほか、S.H.I.E.L.D.について言及されるシーンがあるなど、小ネタは満載です。
特にラストシーンは『アイアンマン』を観た方であれば、より楽しめるサプライズも!
また、今後登場するヒーロー・キャプテン・アメリカに関わる「スーパーソルジャー計画」というキーワードも登場します。
ちなみに、本作のロス将軍は『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』に再登場。
今後、公開される『シャン・チー/テン・リングスの伝説』で悪役・アボミネーションの再登場が発表されているほか、配信予定のドラマ『シーハルク』(ハルクの従姉妹である弁護士が主人公!)では、精鋭兵士・ブロンスキーが再登場する予定です!
人気映画シリーズMCUの第2作となった『インクレディブル・ハルク』。
日本では『アイアンマン』大ヒットの裏で知名度が低い本作ですが、ストーリーの面白さは前作にも匹敵する隠れた名作。
今後、MCUを追っていきたい方のみならず、アクションとロマンスが融合したヒーロー映画に興味があるという方にもオススメしたい、知られざる名作です。
–{『アイアンマン2』の魅力}–
『アイアンマン2』の魅力
『アイアンマン2』はMCU通算3作目として、『アイアンマン』の続編となった作品。前作以上にスケールアップしたバトルシーンと、人気キャラクターの登場にテンションが上がる一作です。
ストーリー
ヒーローになった男、トニー・スターク。次なる試練。自らアイアンマンであることを告白した大企業スターク・インダストリーのCEO、トニー・スターク。そんな彼に新たな危機が迫っていた。まず、米国政府がパワードスーツの没収を命令。そして、彼に恨みを抱く謎の男“ウィップラッシュ”が一撃で車を真っ二つにする電流ムチを携えて現れ、ライバルの武器商人ハマーも独自のパワードスーツを開発する。そんな中、胸に埋め込んだエネルギー源“リアクター”の影響でトニーの体は蝕まれていき…。
最悪の敵・ウィップラッシュ登場
本作の魅力は何といっても、悪役・ウィップラッシュの存在感でしょう。
トニーの父・ハワードに強い恨みを持ち、主人公へと襲いかかる男・イワン・ヴァンコ。
彼が兵器を装着した姿・ウィップラッシュは、アイアンマンを苦戦させる凶悪な存在となりました。
ジョン・ファブロー監督と主演・ロバート・ダウニー・Jrさんの熱烈なオファーを受けて、彼を演じることになったのがミッキー・ロークさん。
『シン・シティ』や『レスラー』での名演を継承するように野性的で危険な男を演じきり、原作とは全く異なるキャラクター像を生み出しました。
スケールアップしたアクションとさまざまな新要素
本作の見どころは、前作の人気を受けてスケールアップしたアクションとさまざまな新要素でしょう。
モナコのレースシーンから雪崩れ込むバトルシーンに女スパイ・ブラック・ウィドウの華麗なアクション、そして、複数のアーマーによる最終決戦。
2人の悪役や主人公の新スーツ、戦友・ローディが変身するヒーロー・ウォーマシンの初登場など、様々な部分で前作を超えようとする試みがみられる作品です。
感情を揺さぶる親子のドラマ
本作の物語で重要なテーマとなるのは、父と子のドラマです。
亡き父の意思を受け継いで、トニーに復讐を決意する男・イワン・ヴァンコと、亡き父にわだかまりを抱く主人公・トニー。
対称的な2人の設定が印象的で、分かりやすいアクション映画でありながらも、その根底には普遍的な親子のドラマが息づいているのです。
実体験と重なるロバート・ダウニー・Jrの熱演
本作では次第に弱っていく主人公の姿も記憶に残ります。
前作の事故が原因で体にアークリアクター(生命維持装置)を埋め込むことになったトニー。
その動力源となる物質により、体内を毒され、自暴自棄になっていく姿には衝撃を受ける観客も多いのではないでしょうか。
ちなみに、主人公を演じたロバート・ダウニー・Jrさんは過去に薬物依存から克服したという経歴の持ち主。
そんな背景を知っていると、落ちぶれていく主人公の姿とその再生に彼の実体験が重なって見えてきます。
進み始めるアベンジャーズ計画
本作から、本格的に動き始めるアベンジャーズ計画にも注目です。
前作ではカメオ出演にとどまっていた重要人物・ニック・フューリーが物語に関わり、主人公をサポートする本作は、まさしくアベンジャーズ結成前夜ともいえる内容。
のちに、そのメンバーとなるブラック・ウィドウの登場など、様々な場面で『アベンジャーズ』へと繋がる部分も散見されます。
ちなみに、本作の時系列は前作『インクレディブル・ハルク』と重なっているという設定。
そのため、本編終盤に登場するモニター映像を見ると『インクレディブル・ハルク』の内容を思わせるニュース映像が確認できます。
MCUでは初の続編となったシリーズ通算3作目の『アイアンマン2』。
前作以上にアクション性が増した作風には観客の好みが分かれそうですが、『アベンジャーズ』に繋がる様々な布石が描かれたという意味では重要な一作。
個性豊かなキャラクターや新たなアイアンマンスーツの魅力など、前作を上回る要素の数々に、ぜひ心を躍らせて欲しい作品です!
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–{『マイティ・ソー』の魅力}–
『マイティ・ソー』の魅力
『マイティ・ソー』は、神話を基にしたヒーロー・ソーが活躍するMCU第4作。主人公と彼の弟・ロキとの関係性は『アベンジャーズ』へと繋がるため、シリーズを追いかける上で特に重要度の高い一作です。
ストーリー
神の世界アスガルドの王オーディン(アンソニー・ホプキンス)の息子ソー(クリス・ヘムズワース)は、選ばれた者しか持つことのできない伝説の武器“ムジョルニア”を手に、最強の戦士としてその力を誇っていた。しかし強すぎるあまりその傲慢さから、氷の巨人の世界へ身勝手に攻め込み、アスガルドを戦乱の危機に陥れる。その行為に怒ったオーディンはソーの力とムジョルニアを奪い、地球へと追放する。地球の荒野で目覚めたソーは、天文学者ジェーン(ナタリー・ポートマン)たちの乗った車に追突される。ジェーンたちはソーを病院へ連れていくが、ソーはそこでも暴れ出す。ソーは慣れない人間生活を送るが、ジェーンとの出会いによって人間の痛みや弱さを学び、彼女に心を奪われていく。一方そのころ神の世界では、邪神ロキ(トム・ヒドルストン)がアスガルド征服を狙い、陰謀を企てていた。ソーの護衛であったホーガン(浅野忠信)、ヴォルスタッグ(レイ・スティーヴンソン)、ファンドラル(ジョシュア・ダラス)の三銃士は、国家の危機をソーに伝えるため地球へやってくる。しかしロキは、破壊者デストロイヤーというマシンをソーに向けて放っていた。さらに危機は、ジェーンにまで迫っていた。ソーは力を取り戻し、地球と神の世界を救うことができるのだろうか?
クリス・ヘムズワースさんによる野性的な魅力をもったソー
本作の見どころは、なんといっても、クリス・ヘムズワースさんが演じた北欧神話の神・ソーの魅力でしょう!
粗野で横暴な性格から神の能力を失い、地球に追放されてしまった主人公。
そんな彼が次第に改心していくさまには、愛くるしさを感じる人も多いはず!
外見から滲み出る野性的な魅力と内面から滲み出る優しさのギャップは、多くの観客を虜にしたことでしょう。
いまや、ハリウッドを代表する人気俳優として地位を確立したクリス・ヘムズワースさんですが、そのきっかけとなったのが本作と言えるのです!
シェイクスピア俳優・ケネス・ブラナー
監督を担当したのは、映画界きってのシェイクスピア俳優・ケネス・ブラナーさん。
20代でロイヤル・シェイクスピア・カンパニーに参加し、数多くの舞台経験を踏まえた彼は、監督・俳優業を両立しながら、過去には数多くのシェイクスピア作品を映画化してきました。
そのため、作中の様々な描写には、シェイクスピア文学を彷彿とするものが見受けられます。
主人公の弟・ロキが抱える苦悩と一族への嫉妬心には『から騒ぎ』等を、話術たくみに企みを成し遂げる様子には『リチャード三世』等を想起させられる部分が……。
また、横暴な主人公に堂々と自身の主張を伝えるヒロインの姿には『じゃじゃ馬ならし』、神と人間という隔たりを超えたロマンス描写に『ロミオとジュリエット』等の影響を感じるのも、気のせいではないのでは。
過去のインタビューで「凶暴なヨーロッパ人が死闘を繰り広げる展開は『ヘンリー五世』に似ている」と発言していた監督だけに、その点を着目してみると、様々なシェイクスピア文学の影響が感じられるのではないでしょうか。
北欧神話を基にしたヒーロー映画の誕生
本作では、ヒーロー映画でありながら北欧神話を題材にした異色のストーリーが注目を集めました!
最強の戦神と言われるソーに悪戯好きの神・ロキ、光の神・ヘイムダルに戦争と死の神・オーディンといったキャラクター。
ムジョルニアと呼ばれるハンマーや虹の橋・ビフレストといった用語に至るまで、劇中で描かれる要素の多くは北欧神話と共通するものと言えます。
CG技術の発達により映像化が可能になった神々の王国・アスガルドの描写も相まって、過去のヒーロー映画とは異なる壮大な世界観をもたらした本作は、のちのマーベル作品にも大きな影響を与えたと言えるでしょう!
大人気キャラ・ロキの誕生
いまやスピンオフドラマが制作されるまでの人気キャラクターになった悪役・ロキの初登場も本作の見どころです。
出生に複雑な事情を抱え、兄であるソーや父・オーディンに嫉妬心を募らせるロキ。
神でありながら人間臭い彼の描写には、過去作の悪役以上の時間が割かれ、影の主役といってもいいほどに、圧倒的な存在感を放っています!
本作で人気キャラクターとなった彼は、のちの『マイティ・ソー』シリーズはもちろん、『アベンジャーズ』シリーズでも大活躍を果たすことになります!
『アベンジャーズ』への重要な布石
本作で描かれたソーとロキの確執など、劇中には『アベンジャーズ』へと繋がる重要な布石が散りばめられています。
のちにメンバーの一員となるホークアイの初登場や、エンドクレジット後に登場する映像にも大きなヒントが……。
また、『アイアンマン』以降の作品で、シリーズのお馴染みキャラクターとなったS.H.I.E.L.D.諜報部員・コールソンも本作で再登場。『アイアンマン2』直後という設定で、メインキャラクターと敵対する役割を担っています。
人気シリーズMCUの第4作となった『マイティ・ソー』。
過去作とは異なる舞台を登場させ、シリーズにさらなる広がりを与えたという意味で、大きな意義を持った本作。
シェイクスピア文学や北欧神話といった題材に興味がある方にこそ観ていただきたい、ヒーロー映画の異色作です!
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–{『キャプテン・アメリカ / ザ・ファースト・アベンジャー』の魅力}–
『キャプテン・アメリカ / ザ・ファースト・アベンジャー』の魅力
MCU第5作となった『キャプテン・アメリカ / ザ・ファースト・アベンジャー』は、第二次世界大戦下を舞台にした作品。シリーズの時系列上、初期となる内容ゆえ、他作に登場したアイテムや、キャラクターの起源なども垣間見られる一作です。
ストーリー
1942年、病弱なため兵士として不適格とされたスティーブ(クリス・エヴァンス)は、軍の極秘計画“スーパーソルジャー実験”に志願する。スティーブはパワー、スピード、身長等あらゆる身体能力だけでなく、正義感溢れる魂も極限まで高められ、別人のような姿に生まれ変わったが、政府は彼を兵士として認めなかった。そして、星条旗デザインのコスチュームを着た“キャプテン・アメリカ”という名前で軍のマスコットに仕立てられ、国中の人気を集めるが、仲間である兵士たちからは相手にもされなかった。そんななか、親友が所属する部隊が全滅の危機に瀕すると、スティーブは実戦経験もないまま、無断で仲間の救出に向かう。そんな彼の前に立ちはだかったのは、ナチス化学部門ヒドラ党の支配者レッド・スカル(ヒューゴ・ウィーヴィング)だった。かつてないエネルギー源で世界侵略を企てていたレッド・スカルもまたスーパーソルジャーで、野心を極限まで凶悪なものへと変貌させていた。キャプテン・アメリカは、大軍を率いるヒドラ党を倒し、本物のヒーローになれるのだろうか?
正義の象徴・クリス・エヴァンス
本作の主人公・スティーブ・ロジャースを演じたのは、クリス・エヴァンスさん。
動じない勇気と自信を持ち、努力を積み重ねた結果、超人的な肉体を手にする正義感溢れるヒーロー・キャプテン・アメリカを見事に演じきりました!
マーベルを代表する人気キャラクターのオファーに最初こそ戸惑いを感じたというエヴァンスさん。
しかし、製作陣のミーティングやロバート・ダウニー・Jrさん(『アイアンマン』主演)の説得にも励まされ、出演を決意したそうです。
劇中では、人体実験を経て、脆弱な姿から変貌を遂げる主人公ですが、撮影のため、肉体を鍛え上げたエヴァンスさんに合わせて、製作の際には特殊な視覚効果を使用。
合成や代役、グリーンバックの撮影を駆使しながら、まるで別人のようなスティーブ・ロジャースの大変身を実現させたそうです。
ちなみに、彼がマーベル映画のヒーローを演じるのは本作が二度目。
2004年以降、2作品が作られた『ファンタスティック・フォー』シリーズでは、本作とは真逆のプレイボーイキャラ「ヒューマン・トーチ」というヒーローを演じていました。
時代の空気を取り入れる達人・ジョー・ジョンストン
本作の監督は『レイダース / 失われたアーク《聖櫃》』でアカデミー賞最優秀視覚効果賞にも輝いたジョー・ジョンストン監督。
40年代を忠実に再現した衣装やセット、当時の撮影技法を踏襲するこだわりや『レイダース / 失われたアーク《聖櫃》』を手本にした物語によって、第二次世界大戦下のアメリカを冒険映画の形式で映像へと写し取りました。
ちなみに、彼は1991年に『ロケッティア』という作品を監督しています。
こちらの作品では、第二次世界大戦直前を舞台に、飛行装置で悪に挑む主人公を描いており、まさしく、その内容は本作の原型といえるもの。
敵組織として登場するナチスやクライマックスの飛行船での戦い、さらには、本作のキャラクター「ハワード・スターク」のモデルとなった実在の人物「ハワード・ヒューズ」も登場していました。
プロパガンダ的ヒーロー像への批判
本作が、過去のヒーロー映画と大きく異なる部分のひとつに「戦時中のヒーロー」を現代的な視点から描いたということがあります。
1940年の連載開始当初はヒトラーや日本兵の登場など、プロパガンダ的な側面が強かった『キャプテン・アメリカ』。
本作ではあえて、そのような歴史から目をそらさず、「アメリカの象徴」として政治家に利用される主人公の姿を描いています。
この脚本からは「プロパガンダ的なヒーロー像」を、一歩引いた現代的な視点から捉えた独自性が感じられました。
また、2010年代以降のアメリカを象徴していた「アイアンマン」と比較すると、本作で描かれた「キャプテン・アメリカ」は、1940年代のアメリカを象徴するヒーローと言えるのかもしれません。
恋と友情の物語
『キャプテン・アメリカ / ザ・ファースト・アベンジャー』では、のちのシリーズに繋がっていく「恋」と「友情」の物語も印象的です。
本作のヒロインである「ペギー・カーター」は、今後の物語でもキャプテン・アメリカに大きな影響を与える重要人物。
単独ドラマ『エージェント・カーター』が作られるほど、シリーズには欠かせない存在になっていきます。
また、主人公の親友として登場する青年「バッキー・バーンズ」にも注目。
劇中では意外な展開が待ち受ける彼ですが、のちのシリーズでは、その存在が思わぬ出来事を引き起こすことになります。
本作のキャラクターは、シリーズが進むほどに重要性が増していくため、繰り返し観たくなる作品と言えるでしょう。
MCUの起源
本作でも、他作品に繋がる小ネタが多数登場します!
冒頭で『マイティ・ソー』に登場した「オーディンの宝物庫」について触れられるほか、『アイアンマン2』に初登場したアイアンマンの父・ハワード・スタークはメインキャラとして登場。
物語のキーアイテム「四次元キューブ」や驚きのラストシーンは、そのまま『アベンジャーズ』へと繋がっていきます。
このような形で、本作ではシリーズの始まりとなる描写も多いため、MCUの起源とも言える作品なのです。
人気映画シリーズMCUの第5作となった『キャプテン・アメリカ / ザ・ファースト・アベンジャー』。
物語の舞台を過去に遡り、シリーズにおける時間的な広がりをみせたという点で、さらなる世界観の拡張に貢献した本作。
1940年代という時代を映画的に再現した内容に、過去作とは異なった趣があるヒーロー映画の名作です!
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–{『アベンジャーズ』の魅力}–
『アベンジャーズ』の魅力
『アベンジャーズ』は、MCU第6作となった初のオールスター作品。フェイズ1の締め括りとなり、これまでの作品の集大成となった「お祭り映画」といえる内容です。
ストーリー
長官ニック・フューリー(サミュエル・L. ジャクソン)率いる国際平和維持組織シールドの基地で、世界を破壊する力を持つ四次元キューブの極秘研究が行われていた。だが突然、制御不能に陥ったキューブが別世界への扉を開いてしまう。そこから現れたのは、神々の国アスガルドを追放され、地球支配を目論むロキ(トム・ヒドルストン)。彼は、セルヴィグ博士(ステラン・スカルスガルド)やシールド最強のエージェント、クリント・バートン(ジェレミー・レナー)を操り、キューブを強奪して姿を消す。その野心を知ったフューリーは、最強ヒーローたちによる“アベンジャーズ”結成を決意し、女スパイのナターシャ・ロマノフ(スカーレット・ヨハンソン)やエージェントのフィル・コールソン(クラーク・グレッグ)とともに、ヒーローたちを招集する。70年の眠りから覚めたキャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャース(クリス・エヴァンス)、インドのカルカッタに身を隠していたブルース・バナー(マーク・ラファロ)などが集結。キューブの力で異世界の軍隊を地球に呼び込もうとするロキはドイツへ向かうが、ロジャース、ロマノフ、トニー・スターク(ロバート・ダウニーJr.)らによって捕えられてしまう。ロキを特殊監房に収容しようとしたところ、姿を現したのは兄のソー(クリス・ヘムズワース)。一堂に会したアベンジャーズだったが、意思に関係なく集められた彼らは、チームを組むことを拒否する。そこへ、ロキ奪還を狙い、バートン率いる部隊が空飛ぶ母艦ヘリキャリアを急襲。爆発の衝撃で我を失ったバナーは、凶暴なハルクに変貌し、暴れ始める。混乱に乗じてロキは逃走。ソーとバナーも乱戦の果てに姿を消し、アベンジャーズは存続の危機に陥る。ロキの地球侵略計画によって、マンハッタン上空に次々と姿を現す地球外の軍勢。この危機を前に、アベンジャーズは世界を救うことができるのか……?
初のオールスター映画
ファンの間で、長年、熱望されながらも実現が難しかった企画が『アベンジャーズ』でした。
マーベル・コミックのヒーローたちによるオールスターチームは、漫画では実現可能だったものの、実写作品ではキャラクターの権利問題から難しかったのが事実。
しかし、2008年、マーベル・スタジオは『アイアンマン』を機に独自製作となる実写化作品群・MCUをスタート。
本作の大ヒットを機に、キャラクターの権利回収を次第に進めることも可能になり、念願のプロジェクトが実現したのです!
ヒーロー大集合映画の革命児・ジョス・ウェドン
本作のメガホンをとったのは、ジョス・ウェドン監督。
過去には『トイ・ストーリー』の共同脚本や様々なドラマシリーズの脚本、名作映画の脚本の修正・書き直し作業などを経験した人物で、本作の成功から、その名前を世界に轟かせることになります。
複数のヒーローたちが登場する本作では、各メンバーにスポットを当てた「群像劇」のような作風で物語を構成。
その成功を経て、2015年には本作の続編となる『アベンジャーズ / エイジ・オブ・ウルトロン』を担当し、2017年にはザック・スナイダー監督の後を引き継ぎ、DCコミックス原作のヒーロー集結映画『ジャスティス・リーグ』を完成させました。
痛快娯楽作では終わらない脚本の面白さ
一見、痛快娯楽大作に見える本作ですが、その中にも深いテーマを描いた内容が興味深いポイントです。
個性豊かなヒーローたちが集まって起きる内部分裂の危機や、明らかになる秘密諜報機関・S.H.I.E.L.D.の思惑、空中分解直前のチームに訪れる思わぬ転機など。
本来なら単なる「お祭り映画」で終わってしまいがちな題材を、一つのドラマ映画として成り立たせており、秀逸な脚本が本作の魅力を高めています。
監督・脚本を担当したジョス・ウェドンさんによれば、『七人の侍』、『特攻大作戦』といったチームものだけでなく、『ブラックホーク・ダウン』といった作品にも影響を受けたことで「戦争映画」としても意識していたという本作。
それゆえ、クライマックスに展開されるニューヨーク決戦のシーンでは、アクション映画でありながらも、過去に類を見ない壮絶な戦いが繰り広げられていきます。
人気シリーズの立て役者
世界の興行収入で15億ドルを超える大ヒットを記録し、世界歴代興行収入ランキングでは、未だにトップ10に位置している『アベンジャーズ』。
そんな本作が世界に与えた影響力は計り知れないでしょう。
日本でも、過去に公開されたMCU作品5本を超える大ヒットを記録し、本作を機にシリーズを知ったという人も多いのでは?
これまでの集大成でありながら、入門作としても鑑賞できる物語が人気を呼び、様々な新規ファンを生み出したことでシリーズの代表作にもなりました。
今後に繋がる要素
シリーズにおける一旦の集大成として完成された本作。
しかし、これを機にMCUはさらなる広がりをみせるため、様々な布石が散りばめられた作品でもあります。
劇中に登場した「四次元キューブ」や「ロキの杖」、また、本作の黒幕として示唆される強大な存在「サノス」など、のちの作品を観ていけば、次第に明らかになっていく謎にも注目してほしい一作です。
人気映画シリーズMCUの第6作となった『アベンジャーズ』。
ヒーローが集合するお祭り映画として、日本でも過去6作品の中で最もヒットした本作。
MCUの作品を世界に知らしめたという意味で、シリーズに興味がない人であっても、観ておいて損はないヒーロー映画史を代表する一作でした。
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(文:大矢哲紀)