“ソウルの女王”の異名を持つアレサ・フランクリン(1942~2018)が1972年に発表し、今なお「史上最高のゴスペル・アルバム」と讃えられ続けているライヴ・アルバム《AMAZING GRACE》。
そもそもこのライヴの収録模様をドキュメンタリー映画製作を想定して撮影していたものの、その後の技術的トラブルで映画化は頓挫。
しかし長き時を経てようやく完成させることが出来たという事実にまずは感嘆するとともに、現代のテクノロジーの進化に感謝したいところです。
またこのとき監督する予定だったのが名匠シドニー・ポラックであり、場内でキャメラを手にした彼の姿がチラホラ映るのも、映画ファンには嬉しいところでしょう。
(1969年の『ひとりぼっちの青春』がアカデミー賞9部門にノミネートされて注目を集めていた彼は1972年に『大いなる勇者』を、翌73年には『追憶』を発表しています)。
2日間にわたるロスのチャペルでのライヴの中、アレサ本人が登場した段階でそのオーラに圧倒されまくりなのですが、さらにはそのパワフルな熱唱と対峙するやいなやトランス状態に陥ってしまうほどで、正直彼女のことをそんなに知らない人でも、一瞬にして魅了されること間違いなし!
(論より証拠で、予告編をクリックして彼女の歌声に接してみてください。もう数秒で虜になること必至です)
圧巻なのはやはりタイトル曲の《アメイジング・グレイス》が悠々たる長さをもって歌われていくくだりですが、この時点で既にアレサと聖歌隊や演者、指揮者、そして観客ら場内にいる人たちはみんな一体化していますので、その盛り上がりはまさに神が降臨して来たかのように最高潮を迎える!
(本作の美徳は、この一体感にこそあるといっても過言ではないでしょう)
しかし映画はまだまだ終わることなく、その後の模様もさらにすごいことになっていき、とにもかくにも今から半世紀前のロスにタイムスリップしてソウルの女王の逞しくも素晴らしく熱いヴォーカルとその存在感を目の当たりにしながら、もういつ失神&昇天しても構わないと思えるほど至福のひとときを過ごすことが出来るのでした。
「映画館がライヴ会場になる!」とはこの手の作品の常套惹句ではありますが、本作こそはその言葉に最もふさわしい作品です。
映像の中の人々と共に、ぜひとも熱狂し、興奮し、歓喜と感涙とともに心を奮わせてください!
(文:増當竜也)
–{『アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン』作品情報}–
『アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン』作品情報
イントロダクション
2018年8月16日、惜しくもこの世をさってしまった「ソウルの女王」、アレサ・フランクリン(1942-2018)。
1972年1月13日、14日、ロサンゼルスのニュー・テンプル・ミッショナリー・バプティスト教会で行われたライブを収録したライブ・アルバム「AMAZING GRACE」は、300万枚以上の販売を記録し大ヒット。史上最高のゴスペル・アルバムとして今も尚輝き続けている。
その感動的な夜が遂に映像で蘇る。コーネル・デュプリー(ギター)、チャック・レイニー(ベース)、バーナード・パーディー(ドラム)らに加えサザン・カリフォルニア・コミュニティ聖歌隊をバックに、アレサが自らのルーツである”ゴスペル”を感動的に歌い上げた今や伝説となっているこのライブは、実はドキュメンタリー映画としても撮影されていた。撮影したのは、映画『愛と哀しみの果て』で知られアカデミー賞を受賞しているシドニー・ポラック。
アルバム発売の翌年に公開される予定だったが、カットの始めと終わりのカチンコがなかったために音と映像をシンクロさせることができないというトラブルに見舞われ、未完のまま頓挫することに。
しかしいま、長年の月日が経てテクノロジーの発展も後押しし、遂に映画が完成。
音楽史を塗り替えたといわれる幻のライブが、日本で初めてスクリーンに登場する!
予告編
基本情報
出演:アレサ・フランクリン/ジェームズ・クリーブランド/コーネル・デュプリー(ギター)/チャック・レイニー(ベース)/ケニー・ルーパー(オルガン)/パンチョ・モラレス(パーカッション)/バーナード・パーディー(ドラム)/アレキサンダー・ハミルトン(聖歌隊指揮) ほか
製作総指揮:ステファン・ノヴィツキ/ジョイ・キャリー/アレクサンドラ・ジョーンズ
公開日:2021年5月28日(金)
製作国:アメリカ