『胸が鳴るのは君のせい』レビュー:美 少年・浮所飛貴主演のジャニーズ青春ラブストーリー3カ月連続 第1弾公開

映画コラム

この夏、ジャニーズの若手アイドルが主演する青春ラブストーリー映画、美 少年・浮所飛貴主演の『胸が鳴るのは君のせい』、Snow Man・ラウール主演『ハニーレモンソーダ』、King&Prince・平野紫耀主演の『かぐや様は告らせたい~天才たち恋愛頭脳戦~ファイナル』が3カ月連続で公開されます。

その第1弾は2021年6月4日公開の『胸が鳴るのは君のせい』。
まずはこの作品からご紹介していきましょう。

2012年から2014年まで「ベツコミ」で連載され、累計発行部数250万部を突破した紺野りさ原作の人気コミック「胸が鳴るのは君のせい」が待望の実写映画化されました。

中学から高校までの物語だった原作を、映画化に合わせて原作者の紺野自身が高校生活3年間の物語に凝縮することを提案するなど、コミックの「胸が鳴るのは君のせい」を映画の『胸が鳴るのは君のせい』にするために試行錯誤が繰り返され、脚本は実に25回も改稿を重ねました。

監督の高橋洋人はこれまで堤幸彦監督の元で監督補や編集ディレクターして活躍し、本作で長編監督デビューを飾りました。

新鋭キャスト集結!!

主演を務めるのはドラマ・ミュージカル・バラエティ番組と個人での活躍も目覚ましい、ジャニーズJr. 美 少年の浮所飛貴。

2020年の雑誌MYOJOの企画「第26回あなたが選ぶJr.大賞」の最注目部門「恋人にしたいjr.」部門で第2位にランクインした次世代ジャニーズアイドルの期待の星です。

浮所飛貴は本作『胸が鳴るのは君のせい』の有馬隼人役で映画初出演・初主演となります。

相手役・ヒロインの篠原つかさを演じるのは白石聖。

吉岡里帆や新木優子を輩出した若手の登竜門的な存在の結婚情報誌「ゼクシイ」の12代目CMガールに抜擢され、その後ドラマ「シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。」や「恐怖新聞」、現在放映中の「ガールガンレディ」などに主演・出演。本作で初めて王道青春ラブストーリー映画のヒロイン役に挑んでいます。

2人に大きく関わってくる長谷部泰広役に『ソロモンの偽証 前篇・事件/後篇・裁判』や『初恋ロスタイム』の板垣瑞生。NHKの大河ファンタジー「精霊の守り人」、朝の連続テレビ小説「エール」、大河ドラマ「麒麟がくる」などに立て続けに出演した若手俳優の有望株です。

その泰広のいとこで有馬の元カノ・長谷部麻友役を演じるのは『3月のライオン』『はらはらなのか』『罪の声』の原菜乃華。

この4人が”すべての片想い経験者の胸を鳴らす”青春ラブストーリーを繰り広げていきます。

ちなみに、TOKIOの城島茂がびっくりする形で登場しているのでお見逃しなく。

あたしの全部で、恋をした

高校1年の3学期、転校してきた有馬隼人(浮所飛貴)はイケメンではあるもの、少し不愛想でとっつきにくい部分がありました。

同じクラスとなった篠原つかさ(白石聖)は、そんな有馬のことが何となく気になり始めます。

有馬はつかさの名前を褒めてみたり、遅刻して風紀担当の教師に捕まりそうになった所を助けてくれたりと、何かにつけてつかさとの距離感が近い状態で接してきます。

高2の最後の日、周りから「有馬とは両想い」だと囃し立てられたつかさは思い切って有馬を呼び出し想いを告白。

しかし、有馬からは「そういう目で見たことがない」ときっぱり断られてしまいます。

新学期、3年になっても有馬と同じクラスになったつかさは、変わらぬ距離感で接してくる有馬のことが諦めきれずに「ふられても、頑張る」と宣言します。

しかし、そこに3年から同じクラスになった長谷部(板垣瑞生)から自分のいとこは有馬の元カノだと聞かされて、恋愛そのものに有馬は興味がないのではと思っていいたつかさは大きなショックを受けます。

さらに、つかさはオリエンテーションキャンプ先でその元カノの麻友に遭遇、有馬への想いを残す麻友から「有馬君とよりを戻したいから、協力して欲しい」と頼み込まれてしまいます。

さらに長谷部からはアプローチを受けたりとつかさの気持ちはもどかしく絡み合っていきます。諦めないと決めたつかさの想いの行方は果たして?

–{量産期を経て、青春ラブストーリーの今}–

量産期を経て、青春ラブストーリーの今

ベストセラーコミックやライトノベル(一時期の携帯小説)を原作にした青春ラブストーリー映画は2000年代に入るとヒット作が続きブームとなり、量産体制に拍車がかかり年に何本もの作品が公開されるようになりました。

これらの作品は若手俳優の登竜門的な立ち位置になり、ここから多くの人気俳優が巣立っていきました。

ただ、その一方で、流石に量産され過ぎてしまい、ある種のお約束事・フォーマットを抑えるだけで精いっぱいの作品も出てくるようになりました。
粗製乱造とまで言いませんが、過剰供給気味に感じることもあり、同じような流れで粗製乱造されて衰退したJホラーと重なって見えてしまう時もありました。

それからしばらく経った、現在は一時期ほどの量産体制は終わっていると言えるでしょう。映画化に値する程のベストセラーコミックが出切ったという見方もありますが、この流れは逆に一本一本にしっかりと力を注げる環境を整えることに結びつきました。

多少、観客から”飽き”の視線で見られることもあるので、より一層、一本一本をしっかりした作品にする必要もありました。

そんな中で、今年の2月に公開されたSixTONESの松村北斗と森七菜が W主演した映画『ライアー×ライアー』は主演の2人の好演もあってかなり楽しめました。

ジャンルとしては若手俳優を鍛える場として需要があるので、それなりのペースで作られ続けることを期待しています。

巧くはまったメインキャスト

主演の浮所秀貴はまだまだ演技経験が浅く、硬さを感じることもありましたが、今回演じた有馬隼人というキャラクターが気持ちを内側に溜めて、色々考えすぎてしまうタイプだったので、この硬さも上手い具合いに作用しました。
これが板垣瑞生の演じたチャラ男タイプだったら、違和感もあったのでしょうが、まさに適材適所という感じの浮所飛貴でした。

浮所飛貴の有馬隼人がどちらかという“静のタイプ”のキャラクターだったために、白石聖が演じるつかさはより能動的な部分が求められます。

ここは経験値のある白石聖が巧くはまりました。浮所飛貴の硬さがより一層白石聖のポジティブさを引き立ていて、主役カップルはいい組み合わせでした。

同じく経験値がある板垣瑞生はちゃんと求められているポジションを分かっていて、巧く立ち回っています。

今回大収穫だったのは有馬の元カノ・麻友を演じた原菜乃華ですね。ちょっとサイコが入った執着を見せるキャラクターで思わず笑ってしまうほどでした。

社会的なメッセージがあるとか、後世に伝えられる様な作品であるとかと言うことはありませんが、瑞々しい青春をしっかりと描き、適材適所な若手俳優がしっかりと機能した作品として『胸が鳴るのは君のせい』はしっかりと楽しむことができる映画です。

(文:村松健太郎)

–{『胸が鳴るのは君のせい』作品情報}–

『胸が鳴るのは君のせい』作品情報

【あらすじ】
有馬隼人(浮所飛貴)が転校してきて以来、篠原つかさ(白石聖)は自然と彼と多くの時間を一緒に過ごすようになる。二人はあっという間に親友のように仲が良くなり、つかさは普段飄々としている有馬がふと自分にだけ見せる優しさに惹かれていった。周囲からの後押しもあり意を決し有馬に告白。しかし、いい友達だと思っていると申し訳なさそうに断られてしまう。つかさは告白したことを後悔するが、それでも有馬は変わらず優しく接してくれ、彼を一途に思い続けることを心に決める。やがて高校生活最後の年を迎え、二人の関係は徐々に変化していった……。 

【予告編】

【基本情報】
出演:浮所飛貴(美 少年/ジャニーズ Jr.)/白石聖/板垣瑞生/原菜乃華/河村花/若林時英/箭内夢菜/入江海斗/浅川梨奈/RED RICE(湘南乃風)

監督:髙橋洋人

配給:東映

製作国:日本