『クルエラ』レビュー :憧れずにはいられない新たなヴィラン像を描いた傑作!

Disney+作品評

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ディズニーの実写映画『クルエラ』が、2021年5月27日(木)に映画館で、5月28日(金)にDisney+(ディズニープラス)プレミアアクセスで公開されました。

本作の主人公は、ディズニーアニメ『101匹わんちゃん』に登場するヴィラン「クルエラ・ド・ビル」。一人の少女が、いかにしてディズニー史上最も悪名高きヴィランに変貌していくのか。クルエラ誕生の秘密が、ようやく明かされます。

クルエラを演じのは、『ラ・ラ・ランド』でアカデミー賞主演女優賞を受賞したエマ・ストーン。『ハワーズ・エンド』でアカデミー賞主演女優賞を受賞したエマ・トンプソンや、『キングスマン』でお馴染みのマーク・ストロングなど、豪華キャストにもご注目!

少女「エステラ」が「クルエラ」に変貌するまでを清々しく描き切る!

舞台は1970年代のロンドン。生まれつき人と異なる髪色を持つ「エステラ」は、ファッションデザイナーになることを夢見ていました。そんなある日、エステラは、カリスマ・ファッションデザイナー「バネロス」と出会います。バネロスのもとで働くことになったエステラは、デザイナーとしての才能を開花させていくのですが……。

ファッション業界を背景に繰り広げられる、傍若無人なカリスマ上司「バロネス」と才能溢れる新人「エステラ」のやりとり。まるで『プラダを着た悪魔』を彷彿させます。このまま、少女「エステラ」のサクセス・ストーリーとして展開するのか……?と思った矢先、あることをきっかけに物語が思わぬ方向へ転がります。
エステラが封じ込めてきた過激な内面が一気に解き放たれ、「クルエラ」として覚醒していく様子には、清々しさを感じました。

クルエラといえば、ダルメシアンとの関係も気になるところ。『101匹わんちゃん』でクルエラは、なぜ、あんなにもダルメシアンの毛皮に執着したのか。本作では、クルエラにとってダルメシアンは、トラウマとなり得る存在であることが判明しました。(重要なネタバレになるので詳しくは明かせませんが……)ダルメシアンを見つめるクルエラの眼差しには、複雑な感情が入り混じります。
本作のクルエラが、『101匹わんちゃん』の悪行につながっていくのか。解釈が分かれるポイントかと思います。本作を観て、確認してみてください!

また、『101匹わんちゃん』の泥棒コンビ、ジャスパー&ホーレスも登場。幼少期に親を亡くしたエステラとジャスパー&ホーレスは、家族のように支え合いながら生きてきました。エステラが才能を発揮するきっかけを作ったのも、ジャスパー&ホーレスなのです。そんな二人も、エステラがクルエラとして変貌していく様子に戸惑い、見放そうとします。が、結局クルエラに協力してしまう二人。『101匹わんちゃん』には描かれなかった三人の関係性に、感慨深くなりました。

–{『101匹わんちゃん』『101』とは一味違う「クルエラ」像}–

『101匹わんちゃん』『101』とは一味違う「クルエラ」像

『101匹わんちゃん』でクルエラは、忌み嫌われる悪役として描かれていました。ガサツで怒りっぽく、自分の欲望のためなら手段を選ばないクルエラ。実写映画『101』でも、グレン・クローズ演じるクルエラが、突き抜けた狂人っぷりを見事に再現していました。

一方、本作でクルエラは、並外れた才能を発揮するカリスマ的存在として映ります。周りの常識や限界をダイナミックに破壊していく様は、クレイジーで型破り。『101匹わんちゃん』『101』と異なるのは、そのカリスマ性とクレイジーさで周囲の人々をどんどん魅了していくところでしょう。

自らのポリシーや美意識に従い、才能を武器に相手を屈服させようとするクルエラは、ダーク・ヒロインとも言えます。もはや、憧れすら抱きました

実写化されたヴィラン「マレフィセント」との共通点・相違点

ヴィランが主人公のディズニー実写映画といえば、『マレフィセント』を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

本作と『マレフィセント』の共通点は、「復讐」が物語展開の鍵となる点です。本作でエステラは、とある人物への復讐を誓うことによって、クルエラへと変貌していきます。『マレフィセント』でも、オーロラ姫の父に裏切られたマレフィセントが、その復讐として、オーロラ姫に呪いをかけました。

異なる点は、ヴィランが最後までヴィランとして振り切るかどうか。
マレフィセントは物語を通してオーロラ姫への愛憎で揺れ動き、結果、マレフィセントはオーロラ姫を救うヒーロー役となります。ある意味マレフィセントは、ヴィランであることによって、自分自身を抑え込んでいたのではないでしょうか。

一方でクルエラは、ヴィランとしての自分を出し切ることが突極の自己表現となっています。
人は悪役を求めている。だからこそ私が、喜んで演じる。
そう言い切るクルエラからは、ヴィランとして生きる決意が感じられました。

少女「エステラ」が、クルエラとして変貌していく様を描いた本作。ギラリと燃える目でこちらを見据える、エマ・ストーンにもゾクゾクします!

思わず息が止まるような展開が続き、あっという間に過ぎ去っていった140分でした。

→ディズニープラス(Disney+)

(文:みまみさ)