『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』徹底解説|作品を読み解く「5つ」の疑問

映画コラム

2021年5月27日、映画ファン・アメコミファン待望の超大作ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカットの配信がスタートしました!

バットマン、ワンダーウーマン、アクアマン、サイボーグ、フラッシュ、スーパーマンといったスーパーヒーローたちが集結し、未知の脅威と戦った『ジャスティス・リーグ』。
その公開当時から存在が噂され、熱狂的なファンの呼びかけによって、ついに実現した約4時間にも及ぶ超大作。

今回は、早速、本編を鑑賞した筆者が、本作の5つの疑問を挙げて、徹底解説。
ネタバレなしの前半では、本作実現の経緯や通常版との違いを、ネタバレありの後半では劇中で描かれた謎や考察を紹介します!!

是非、現在配信中のジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカットと合わせて、お読みいただけると幸いです!

疑問①:そもそも「ザック・スナイダーカット」とは?

ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』は、2017年公開の『ジャスティス・リーグ』を、ザック・スナイダー監督本人が意図していた形へと作り直した、いわば完全版

というのも、2017年版『ジャスティス・リーグ』には製作当時、様々な不運が続いたため、作り手にとって不完全な形で公開されてしまったという事情がありました。

ダーク路線のシリーズに対する世間からの否定的な意見、『ワンダーウーマン』成功から明るい路線へと変更したかった重役の意向、上映時間の長さを巡る会社と監督の対立など、過去には様々な問題が報道されていましたが、最も大きかったのは、監督の身に起きた思わぬ出来事でしょう

それは、監督の愛する娘・オータムさんが20才の若さでこの世を去ってしまったということ。

「少しでも家族のもとにいたい」と制作を降板することに決めた監督でしたが、彼を引き継ぐ形で、かつて『アベンジャーズ』を成功に導いたジョス・ウェドン監督が就任。

公開まで約半年という過酷なスケジュールながらも、新撮シーンなどを撮り終え、なんとか完成した作品が2017年版の『ジャスティス・リーグ』でした。

ファンや批評家からも一定の高評価を受けた本作ですが、当初の予告編とは大きく異なる色調や、多くの未公開シーンが存在することで、熱狂的なファンはSNSを中心にスナイダー版『ジャスティス・リーグ』の公開を求める「#ReleasetheSnyderCut」というムーブメントをスタート。

当初は存在そのものすら闇に包まれていたスナイダー版でしたが、次第に「#ReleasetheSnyderCut」は大規模な署名活動へと発展し、ついに監督本人もスナイダー版の存在を発表することになります。

コロナ禍におけるストリーミングサービスの台頭や、厳しいスケジュールが定められた通常の大作映画とは異なる環境下で製作が実現したことなど、様々な幸運が重なったことで、ついに幻の一作は陽の目を見ることになったのです!

–{疑問②:通常版との違いとは?}–

疑問②:通常版との違いとは?

本作と2017年に公開された通常版との違いは数多くありますが、一言でまとめると、より濃密になった内容と言えます!

通常版の2倍となる約4時間にも及ぶ本編から浮かび上がるのは、各キャラクターの葛藤物語の深み

全7部構成で描かれる壮大な群像劇となった本作は、もはや「通常版がダイジェストだったのでは……。」と疑ってしまうほどに、別物の作品になっています!
大まかな物語の流れは変わっていないものの、その内容の濃さやファンサービスの数々は、DCコミックス映画の最高峰と言っても過言ではないものでした!

ちなみに、具体的な違いを挙げると、以下の例などがあります。
(若干、本編の内容に触れていますので、気になる方はお気をつけください。)

・IMAXカメラ撮影の縦長画面(アスペクト比1.66:1)
・各メンバーの背景を映像で語る壮大なOP
・サイボーグを深掘りする父と子のドラマ
・フラッシュの大活躍
・悪役・ステッペンウルフの葛藤
・各人物を深掘りするエピソードの追加
・シリーズの黒幕・ダークサイドの登場
・明らかになるマザーボックスの秘密
・黒いスーツを着たスーパーマンの登場
・通常版にあったロシア人家族の描写が削除
・意外なキャラクターのゲスト出演
・今後の展開を示唆する驚きの場面

その他にも、様々な違いを発見することが出来ますが、気になった方は、是非、本編をご覧いただきたいです!

※次のページからは『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』の本編に関わる重大なネタバレに触れていきます。観賞後にお読みくただくことをオススメします。

–{疑問③:ED曲の意味とは?}–

疑問③:ED曲の意味とは?

本作のエンディングには、ザック・スナイダー監督の亡き娘に対する強い愛を感じました。

エンディング曲として使われたのは、Allison Croweさんによる楽曲『Hallelujah』。

実は、この楽曲、監督にとってお気に入りの一曲のようで、過去作『ウォッチメン』のとある場面ではLeonard Cohenが歌うバージョンが挿入歌として使用、本作の予告編でも、同楽曲が使用されていました。(監督の公式twitterに投稿された白黒版の予告編でも、同楽曲が使用されています。)



本作のエンドクレジットでは、『ジャスティス・リーグ』製作の最中、亡くなってしまった監督の娘・オータムさんへの追悼の言葉が映し出されますが、それを踏まえて、楽曲の歌詞に着目してみると、そこに監督の強い思いを感じられます。

「信念」や「神様」、「天国」といったキリスト教的な言葉を用いながらも、その主軸として歌われるのは「愛する者との別れ」。

また、本作では物語において、通常版以上に「愛する者の喪失から前へ進む者たちの物語」という側面が強調されています。

亡き恋人を思って戦うワンダーウーマンや、父の死を乗り越えて新たな人生を歩むサイボーグ、クライマックスで崩壊した世界を元に戻すフラッシュの姿には、そんなテーマが象徴されていたのではないでしょうか。

ヒーロー映画という題材でありながらも、その核にはザック・スナイダー監督の亡き娘に対する強い愛を感じられ、その内容に筆者は強く感動しました。

疑問④:ラストに登場した謎の人物の正体は?

本作のラストシーンでは、悪夢から目覚めたバットマンのもとに「マーシャンマンハンター」と名乗る謎の人物が登場します。

マニアックかつ、日本での知名度も低いキャラクターゆえに、登場した直後、疑問を抱えた人も多いのでは?

実はこの人物、ワーナーブラザーズの公式サイトによれば、スーパーマンに匹敵する力を持ったスーパーヒーローの1人とのこと。

また、劇中ではスーパーマンの育ての母・マーサに変身し、彼がスーパーマンの恋人・ロイスに助言を与えるシーンも描かれており、その正体が、シリーズの常連キャラクター・カルヴィン・スワンウィック国防長官だったことが明らかになります。

つまり、彼は、劇中で未来のキーパーソンとなることを示唆されていたロイスを助けるため、その守護者として行動をしていたのです。(また、スーパーマンの蘇生シーンでは、ロイスの死によって、未来のスーパーマンが悪に陥る展開が示唆されていました。)

ちなみに、今回、初登場となったキャラクターには、サイラス博士(サイボーグの父親)の右腕・ライアン・チョイという人物もいました。

原作シリーズの彼は「アトム」というヒーローに変身する超重要人物。(DCのTVドラマシリーズでは、映画でスーパーマンを演じた経験もあるブランドン・ラウスさんが、同ヒーローに扮していた。)

このように、劇中では今後のシリーズ展開を左右するような重要キャラクターの布石が多数あり、本作の続きがあれば、一体、どうなっていたのかは、強く気になる部分です。

–{疑問⑤:今後の展開は?}–

疑問⑤:今後の展開は?

本作で、最も気になるポイントは、続編があるのか否かでしょう。

本編を観ると分かる通り、物語の中には、のちの展開を示唆する場面が多々盛り込まれる一方で、それらの要素が回収されることなく、終わりを迎えます。

しかし、残念ながら、続編の可能性を聞かれた監督は、すでに過去のインタビューで、実現の可能性は低いということを語っています。

そこには、『ジョーカー』といった単独作品や、『シャザム!』などを筆頭とする明るい路線のDC作品が成功している現状などが考えられますが、実際は、どうなのでしょうか。

ちなみに、映画監督でもある世界的なアメコミオタク・ケヴィン・スミスさんは、『ジャスティス・リーグ』のスタッフから、監督が本来意図していた三部作の構想を聞き、こちらの動画で紹介。

宇宙を舞台に新ヒーロー・グリーンランタンが登場し、黒幕・ダークサイドがジャスティス・リーグの面々を壊滅に追いやる続編や、荒廃した地球で残されたメンバーたちが力を合わせて戦う完結編の展開などを語っています。

あくまで噂話の域を出ない内容ですが、本作で示唆されていた今後の展開からは、かなり、信憑性が高いのでは?

ちなみに、今後、制作が決定しているシリーズ新作『ザ・フラッシュ(原題:The Flash)』では、ゲストキャラクターとして、ベン・アフレックさんが演じるバットマンが登場するという噂も……。

形はどうであれ、『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』のその後が描かれる日は、意外と近いのかもしれません……。

(文:大矢哲紀)

–{『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』作品情報}–

『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』作品情報

【あらすじ】
スーパーマンの壮絶な犠牲を決して無駄にしてはならない。ブルース・ウェインはダイアナ・プリンスと手を組み、迫りくる破滅的な脅威から世界を守るために超人たちのチームを作ろうとする。だが、その困難さはブルースの想像を超えていた。彼が仲間に引き入れようとする一人ひとりが、乗り越えがたい壮絶な過去をもつために、その苦しみからなかなか前に進めないでいたからだ。しかし、だからこそ彼らは団結することができ、ついに前例のないヒーローたちのチームを結成する。バットマン、ワンダーウーマン、アクアマン、サイボーグ、そしてフラッシュは、ステッペンウルフ、デサード、ダークサイドとその恐るべき陰謀から地球を守れるのか、それとも時すでに遅しなのか……。

【予告編】

【基本情報】
監督:ザック・スナイダー

出演:ベン・アフレック/ヘンリー・カビル/ガル・ガドット/レイ・フィッシャー/ジェイソン・モモア/エズラ・ミラー/エイミー・アダムス 

上映時間:242分

製作国:アメリカ