『るろうに剣心』完結!佐藤健・俳優デビュー15周年、挑み続ける男のこれから

俳優・映画人コラム

映画『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』より
©和月伸宏/集英社 ©2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会

『るろうに剣心 最終章 The Final』が新型コロナウィルスの感染拡大の影響による公開延期を経てついに公開されました。

直後に東京と京阪神地区に緊急事態宣言が発令され、映画館が休館に追いやられる中でも『The Final』は大健闘を見せ2021年の実写映画としては最大のヒット作となっています。そして、その流れを受けシリーズ完結編『るろうに剣心 最終章 The Beginning』が公開されます。

主演はもちろん佐藤健、今年で俳優デビューから15年、『るろうに剣心』に主演してからも10年が経ちました。

仮面ライダーから大河ドラマ、そして『るろうに剣心』へ

佐藤健は俳優デビュー2年目で「仮面ライダー電王」に電王/野上良太郎役で主演します。

菅田将暉、福士蒼汰、吉沢亮などなど若手俳優の登竜門的な存在の「仮面ライダー」シリーズですが、中でも「仮面ライダー電王」は従来のライダーファン、特撮ファンに加えて、鉄道ファン、声優ファンをも取り込み平成仮面ライダーシリーズ最大級のヒットシリーズとなりました。

佐藤健は3本の“電王”映画に主演し、卒業しますが、その後も電王のキャラクターは重宝されスピンオフ、新シリーズへの追加ゲストなどで平成シリーズに出続けます。

佐藤健はシリーズ卒業から10年後の2018年に制作された『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』に同じ役でサプライズ出演しファンを熱狂させました。

『電王』の翌年の2008年にはドラマ「ROOKIES」に出演、翌年には映画『ROOKIES-卒業-』にも引き続き出演します。

そして2010年にNHK大河ドラマ「龍馬伝」に岡田以蔵役で出演、ここで大友啓史監督と出逢います。この出逢いは2012年に『るろうに剣心』に結実します。

興行収入で30億円を超える大ヒット作となった『るろうに剣心』はその後10年間続く日本映画史に残る大ヒットシリーズとなっていきます。

ビジュアル的なことも含めて見事に緋村剣心にハマった佐藤健の緋村剣心は映画ファン、原作者の和月伸宏も絶賛、緋村剣心役は佐藤健にとっても自他ともに認める代表作・代名詞的な作品となりました。また本作で佐藤健はジャパンアクションアワードの栄えある第一回男優部門最優秀賞に受賞しています。

かつて「10年後に『るろうに剣心』が代表作になっていればうれしいと」と佐藤健は語っていましたが、一作目から10年、この言葉は現実のものとなりました。

–{代表作を得て}–

代表作を得て

映画『るろうに剣心』より ©和月伸宏/集英社 ©2012「るろうに剣心」製作委員会

『るろうに剣心』は2012年の一作目が公開されました。この時、佐藤健は21歳でした。
その後、2014年の『京都大火編』と『伝説の最期編』の二部作、そして2021年の『最終章 The Final』『最終章 The Beginning』と10年間・5作品で佐藤健は緋村剣心を演じました。佐藤健の20代は『るろうに剣心』とともにあった形になりますね。

文字通り“『るろうに剣心』が代表作となること”、パブリックイメージとして“るろうに剣心の人”と思われることに佐藤健は肯定的な見方をしています。

過去、多くの人気シリーズなど(アメコミや007)で“シリーズの顔”を担った俳優たちはイメージが固定されることを嫌って、卒業後は別の路線に挑んだりしています。

しかし、佐藤健は『るろうに剣心』と俳優・佐藤健がイコールで結ばれることを嫌っていません。

一つにはまず俳優にとって“代表作を得る”と言うことが稀なことで、貴重な出来事だという考えがあること。そして佐藤健自身が原作コミック「るろうに剣心」と緋村剣心の大ファンだったことがあります。

佐藤健は『るろうに剣心』シリーズのことを「ここまで人生を懸ける価値のある作品は、他にはない」と熱い思いを表しています。

もともと現場でも多くのディスカッションが飛び交った『るろうに剣心』の現場ですが、『最終章』では佐藤健は脚本作りから参加。
“剣心ならどう動くか?”“剣心ならどんな言葉を発するのか?”を考えられるようになるまでシリーズと一心同体となったことが分かります。

大ヒット映画から朝ドラ、ヒットドラマまで

映画「バクマン。」より ©2015映画「バクマン。」製作委員会

「仮面ライダー電王」と『るろうに剣心』という自他ともに認める代表作、名刺代わりになる代表作ができたことで、佐藤健の作品選びは自信を深めるとともに役選びに自由度が増し、大きな役どころのオファーも増えていきます。

もちろんイメージを変える部分もあったでしょうが、それ以上に演じることに深みを増していったという感じが強くあります。

デビューが17歳の時なので意外な気もしますが実は学生役が少なく青春ラブストーリー(いわゆる“キラキラ映画”)系の作品はほぼありません。あえて挙げるとすればドラマの「Q10」と『カノジョは噓を愛しすぎてる』くらいでしょうか?後者はラブストーリーですが、学生役ではありませんでした。

それ以外では『バクマン。』『いぬやしき』「半分、青い」などで高校生役を演じていますが、キャラクター的にキラキラ路線とは違う作品群です。

「半分、青い」に加えてドラマ「とんび」「天皇の料理番」「義母と娘のブルース」(ぎぼむす)「恋はつづくよどこまでも」(“恋つづ”)などは高視聴率を記録。

実は中には佐藤健主演作品ではなく、立ち位置として2・3番手の作品もあるのですが、抜群の存在感を示していて今となっては“佐藤健のドラマ”として認知されています。

「半分、青い」「ぎぼむす」「恋つづ」では永野芽郁、綾瀬はるか、上白石萌音といったタイプの違うヒロインをうまく受けて止めている印象も強いですね。

©TBS

佐藤健は意外と受けに回っても巧いというのは『るろうに剣心 最終章 The Final』で新田真剣佑演じる縁の激情を一身に受け止める場面を見たときに改めて感じました。

30本近い出演作がある映画で言えば『電王』と『るろ剣』を除いて『カノジョは噓を愛しすぎてる』『バクマン。』『亜人』『世界から猫がきえたなら』『何者』『8年越しの花嫁 奇跡の実話』『ドラゴンクエスト ユア・ストーリーズ』などがヒットの目安である興行収入10億円を突破。『電王』『るろ剣』を含むと映画の場合3本に1本以上の割合でヒットを記録するヒットメイカーぶりを発揮しています。

–{ポスト『るろうに剣心』、30代を迎えた佐藤健のこれから}–

ポスト『るろうに剣心』、30代を迎えた佐藤健のこれから

映画『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』より
©和月伸宏/集英社 ©2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会

俳優デビュー2年目で掴んだ「仮面ライダー電王」以降、常に話題作・ヒット作に名前を連ね続ける佐藤健。

王道エンタメの中心人物としての道を歩み、確実に実績を積みつつ、そこに安住せずにさらに自分の世界を拡げるチャレンジ精神も見せてくれています。
公式LINEアカウントや公式YouTubeチャンネルをスタートさせたり、アパレルブランドを立ち上げたりもしています。

『るろうに剣心』シリーズは原作やアニメシリーズ(「SamuraiX」としてお馴染み)の海外でのヒットも受けて、実写映画シリーズも東南アジア圏では大きな話題を呼び、佐藤健の名前も徐々に日本の外側に浸透しつつあります。

これは『るろうに剣心』の配給がハリウッドメジャーのワーナー・ブラザースだったということで世界に向けての発信がしやすかったこともあります。

さらに“サムライ”という分かりやすいキャラや、アクション映画において国際的なキーパーソンになりつつある谷垣健治による世界レベルのアクションといった分かりやすく世界に通じる要素を多く抱えていたことも大きいでしょう。

ちなみに、『京都大火編』ではフィリピンで佐藤健、武井咲、青木崇高、大友啓史監督が出席したアジアンプレミアが行われ、『The Final』の公開前オンラインイベントは世界中のファンを対象したものになっていました。

また、今年の上海国際映画祭のムービーフランチャイズ部門『るろうに剣心』5部作が一挙上映されます。これを受けて、大友監督は「シンガポール、フィリピン、インドネシアやマレーシア、タイ、南米もすごいんだけどそれ以上で。映画祭を訪れるたびに「るろ剣」の中華圏での人気を実感した」とシリーズのことを語っています。

佐藤健の海外への視線と言うことで言えば、ビジネス面では苦戦しましたが2019年には外国人プロデューサー・監督による『サムライマラソン』にも主演していますし、2022年にはNetflixで世界配信されるドラマ「First Love 初恋」への主演も決まっています。
このドラマは宇多田ヒカルの「First Love」「初恋」という二つの楽曲からインスパイアされた三つの時代の男女の物語で満島ひかりとのW主演作となっています。

映画『護られなかった者たちへ』より ©2021映画『護られなかった者たちへ』製作委員会

映画では阿部寛と共演する『護られなかった者たちへ』が公開待機中です。また、『るろうに剣心』を完成させた後での大友啓史監督との再競作もあれば楽しみです。すでに2018年の『億男』でコンビを組んでいる佐藤健と大友監督なので、『るろ剣』以外では実現しないコンビというわけでもないようなので、ここは期待したいところです。

『るろうに剣心』に10年という時間を費やした佐藤健ですが、年齢を見ればまだ30代前半。俳優としてはむしろこれから伸びしろがある年齢です。『るろうに剣心』5部作を完結させたという大きな経験を得た佐藤健の今後に注目です。

(文:村松健太郎)