時には男子高校生、時には天才大学生、時にはパンダの飼育員……。
令和を代表する若手俳優として、着実に知名度を上げている横浜流星。毎週火曜22:00放送のドラマ「着飾る恋には理由があって」で演じる藤野駿についても、これまでの横浜流星とは違う表情が見られると好評である。
過去には話題作「あなたの番です」や映画『虹色デイズ』などに出演。それぞれの作品で異なった魅力を放出してきた。アクション系天才キャラからイマドキの若者まで、その演技の振れ幅に注目したい。
「着飾る恋には理由があって」横浜流星演じる駿が新感覚男子
火曜22:00放送中「着飾る恋には理由があって」では、川口春奈とW主演。キッチンカーで手料理を提供する個人事業主の料理人・藤野駿を演じる横浜流星。このドラマで見られる横浜流星は、これまでとは印象が違うのである。
まずは、そのキャラクターだ。飄々と軽すぎるわけではなく、かといって真面目でお固すぎるわけでもない。実に「ちょうどいい」バランスを保った青年なのである。川口春奈演じる真柴くるみとは、シェアハウス内で共同生活を送ることになるのだが、つかず離れずな距離の縮め方が新しい。「これが令和のラブコメなのか……」と妙に真剣に観てしまう。
1話で印象に残ったシーンを挙げよう。とある理由から大急ぎで目的地へ移動しなければならなくなったくるみを、たまたま通りかかった駿がキッチンカーで送り届ける冒頭のシーンだ。「写真や動画をアップしなくちゃ」「バッテリーを忘れたから充電させてほしい」と慌てふためくくるみに対し、「物悲しいですね」と一刀両断する駿。テレビやネットなどに興味がなく、スマホも家に置いたままだという駿にくるみは驚く。最初の出会いから、ふたりの見ている世界がいかに違うのかを見せつけられるシーンだ。
このシーンの駿の言葉まわしに、思わず注目してしまう。「私、携帯がなかったらソワソワしちゃって、いてもたってもいられません」と言うくるみに対し、「物悲しいですね。電車でもみんな、こうやって見てますもんね」と返す駿。「自然の声に耳を傾けないと」と続ける彼の表情や声音には、目の前の相手に不要な忖度をする色はいっさいない。
一般的には、初対面でここまで自分の哲学を開示することはないだろう。ある意味、空気を読めてないとも言える。「相手が何をどう思おうとも、自分はこう思う」と自分の意見を主張することを許されてきた、令和に生きる若者代表といった印象が拭えない。しかし、その思い切り加減が妙に清々しいのだ。
妙な忖度をしない人物かと思いきや、人懐っこい面を見せたり、急に距離を縮めてきたりなど、先が読めない部分もある。
2話の冒頭では、くるみが広報を務める会社「el Arco Iris」の路面店へ視察へ行った帰りに、たまたま駿のキッチンカーが止まっているところを発見。くるみが「カレーひとつ」と注文するや否や「俺に会いに来たんじゃないの~?」と駿が軽口をたたくシーンがある。隣の部屋同士で共同生活をしている気安さも手伝ってか、その後も笑顔を見せたり真摯な一面を見せたりと、表情がくるくる変わるのだ。見ていて飽きない。その急な距離の縮め方も、彼なりの誠実なステップがあってこそだとわかる。
「着飾る恋には理由があって」の横浜流星は、なんとも新感覚な男子なのだ。
–{爽やかイマドキ男子高校生な横浜流星がみられる映画『虹色デイズ』}–
爽やかイマドキ男子高校生な横浜流星がみられる映画『虹色デイズ』
新感覚男子もお手の物だが、これまでのオーソドックスな魅力を備えたイマドキ男子高校生をやらせても上手い。2018年に公開された映画『虹色デイズ』を挙げる。
本作で横浜流星が演じたのは、同級生の恋を応援する男子高校生・片倉恵一。佐野玲於、中川大志、高杉真宙らとW主演としてメインを張った。佐野玲於演じる夏樹と吉川愛演じる杏奈の恋愛が実るよう、試行錯誤する様子がまさに恋愛青春映画そのもの。
片倉恵一、通称恵ちゃんは自他ともに認めるモテる男子。仲間内で馬鹿騒ぎもするキャラだが、美形ゆえにひっきりなしに女子から告白される一面も。
とあるシーンで、女子からの告白を後腐れなく断るために、タイミングよく通りかかった杏奈を呼び止める恵一。ちょうどそのとき杏奈も、しつこい先輩の絡みを振り切るのに必死だったので、互いに助け合う形となった。なかなか夏樹と杏奈の仲が進展しないのを心配していた恵一は、ここで絶妙なアシストをする。
杏奈に目を閉じるよう促し、こう言う恵一。「声がします。場所は草原でも、海でも、とにかく、後ろから小早川さんを呼ぶ声がします。いま、瞼の裏に誰が浮かびましたか?」ーー誰も浮かばない、と返答した杏奈だが、浮かぶようになったらその人が好きな人だよ、と教えられ、なんだか思い詰めた表情に。
最初から、杏奈は夏樹のことを憎からず思っていたはずなのだ。この一言をきっかけに、杏奈はより強く夏樹のことを意識するようになったはず。他にも横浜流星演じる恵一が良い働きをするのだ。
最後の最後で、恵一の粋な計らいでふたりっきりになれた夏樹と杏奈。「敵の目を欺くためには、まず味方から」という言葉があるように、ふたりの仲を取り持つために身を徹して嘘をつく恵一。それを信じ込んだまっつん(演:中川大志)と一触即発の状態になってしまうが、すべて事が丸く収まった後には「焼肉おごれよ?」の一言で済ませる男気の強さも見せた。
恋も友情も勉強も、何ひとつ手を抜かない。身近にいそうでいない、リアリティを持った男子高校生を見事に演じ切ってみせた横浜流星。まだまだ演技力の底が知れない。
–{横浜流星はアクションも!「あな番」「シロクロパンダ」}–
横浜流星はアクションも!「あな番」「シロクロパンダ」
話題を呼んだミステリーサスペンスドラマ「あなたの番です」で、横浜流星が演じたのはITに通じた大学院生・二階堂。反撃編からのキャスティングとなった彼は、物語が進むにつれ重要な役割を担っていく。
そして、2020年に放送されたドラマ「シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。」では医学生・森島を演じている横浜流星。「あな番」で演じた二階堂と同じ学生という立場で、少し影のあるキャラクターである点も共通している。二階堂と森島、もうひとつの共通点は「アクション」だ。
物語の性質上、詳細は控えるが、「あな番」の終盤では体を張ったアクションが多く見られる。最初こそ横浜流星演じる二階堂は、パソコンに向き合っているか、主演である田中圭と鍋を食べているかのシーンが多いが、佳境に入っていくにつれアクションシーンが増えていくのだ。
果たして、連続殺人ゲームの発端となった黒幕とは誰なのか? 物語の重要な鍵を握るキャラクター・二階堂を演じる横浜流星のアクションにも、ぜひ注目して見てほしい。
「シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。」で演じた医学生・森島も、シーン自体は少ないけれど各所でアクションが挟まる。清野菜名演じるミスパンダと、じゃれ合うように始まるアクションもこのドラマの見どころだ。
第2話の中盤でも「暇だったから」という理由で、部屋に入ってきた森島を突然ミスパンダが襲う。医学生でありながら見事にすべての攻撃を交わし、顔面に飛んできたパンチも難なく片手で受け止める様は、見ていて惚れぼれしてしまう。
アクションから、天才キャラから、イマドキのお調子者、そして新感覚男子まで……。横浜流星の演技力の振れ幅は、今後もどんどん魅力を増していくだろう。
(文:北村有)