これだけ知っていればわかる『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の話

映画コラム
(C)創通・サンライズ

新型コロナウィルスの感染拡大の影響による公開延期を繰り返した中で2021年5月21日に映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』が公開されます。

3部作となる予定の第1部であり、『ガンダム』シリーズの劇場長編最新作でもあります。ロボットアニメ大作映画というと『シン・エヴァンゲリオン劇場版』もありますが、元祖ロボットアニメであるガンダムとしては負けていられません。

そこで、今回は映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』を見るために必要な予備知識をまとめます。これだけ読めば、『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』をスムーズに楽しむことができます。

そもそもの話

(C)創通・サンライズ

 
「ガンダムシリーズ」と一言で言っても、何せ、40以上の歴史を持つシリーズということもあって実は多種多様な流れがあります。
その中で『閃光のハサウェイ』は第1作「機動戦士ガンダム」から続く、宇宙世紀を舞台にしたメインストリームのエピソードです。

宇宙世紀というのは分かりやすく言えばシャアアムロが、ガンダムザクが登場する世界線です。「親父にもぶたれたことないのに」「赤くて3倍速い!」の世界です。最近では生田斗真が出演しているエンジニア人材派遣会社のCMにも登場しているあの世界観です。

映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』はこの宇宙世紀が約100年程続いた時期の物語です。

–{ 宇宙世紀の歴史=「機動戦士ガンダム」第1作の物語}–

 宇宙世紀の歴史=「機動戦士ガンダム」第1作の物語

世界各国が地球連邦という大きな枠組みにまとまり、総人口が100億人を超えたころ(決して遠くない未来)。人口問題を解決するために地球連邦は多くの人類を宇宙に作ったスペースコロニー(コロニー=植民地)に移住させる計画を立てます。

西暦から宇宙世紀に年号が変わったのもこの人類の本格的な宇宙への進出がきっかけになっています。

しかし、その統治体制は地球から各コロニー群を支配するという体制が取られていました。この頭ごなしの支配体制に徐々に反発が生まれます。

コロニーの集団(サイド=地区や空域)の一つサイド3に革命的指導者のジオン・ダイクンが現れ、宇宙に住む非支配層の人々“スペースノイド”の地球に住む支配者層の人々“アースノイド”からの自治権の獲得と拡大、さらには独立を叫ぶようになります。

ジオン・ダイクンはその運動の最中に非業の死を遂げますが、その遺志を継いだザビ家の一党によって独立戦争が始まります。

国力の差が圧倒的な地球連合軍はジオン公国と名を変えたサイド3など簡単につぶせると思っていましたが、汎用人型兵器モビルスーツ(MS)“ザク”の大量投入とスペースコロニーを地球に落とすという荒業“コロニー落とし”によって戦況はジオン有利に進みます。

この時ジオン軍のエースパイロットとして赤くカラーリングされたザクに乗り“赤い彗星”“3倍速い!!”と恐れられたのがシャア・アズナブルです。

実はこのシャアという人物ジオン・ダイクンの遺児であり、ザビ家によって父が殺されたと考え、その真相究明と復讐のために身分を偽ってジオン軍の中枢に潜り込んでいたのでした。

モビルスーツという新型兵器でジオンにいいようにやられていた地球連邦軍は、遅まきながらも新型MSの開発に着手します。

そのMSこそがガンダムと名付けられた新型機でした。

このガンダムの開発主任の息子だったアムロ・レイは、ジオンによるガンダム開発工場襲撃に巻き込まれ、ガンダムのコックピットに乗り込みザクを撃破します。

–{ちなみに「名探偵コナン」にある“ガンダムネタ”}– 

ちなみに「名探偵コナン」にある“ガンダムネタ”

さて、ここでガンダムから少し話がそれて、ちょっとしたトリビアを。

「機動戦士ガンダム」でアムロの声優を担当したのが古谷徹。

「巨人の星」の星飛雄馬や「ドラゴンボール」のヤムチャなどで知られる古谷徹ですが、「名探偵コナン」では安室透(アムロトオル)/ 古谷零(フルヤレイ)というキャラクターを演じています。

(C)2018 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

(C)2018 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

これは名前を見ていただければわかる通りアムロレイ古谷徹という演者とその代表作が名前の由来になっています。

さらに、劇場版最新作『劇場版名探偵コナン緋色の弾丸』でキーパーソンを演じる赤井秀一の声優を担当している池田秀一は、「機動戦士ガンダム」で“赤い彗星”シャア・アズナブルの声を担当しています。

(C)2020 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

(C)2020 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
“赤い”彗星の池田“秀一”というわけです。これは「名探偵コナン」の原作社の青山剛昌が「ガンダム」の大ファンであることから来ています。

ちなみに赤井秀一の変名の諸大と沖矢が星にちなんでいるのも“彗星”から来ています。

アニメ化に合わせて、古谷徹と池田秀一を口説き落とせたスタッフと、それに応じた二人の対応の粋さを感じさせますね。

 『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の重要人物登場

さて、アムロが急遽飛び乗ったガンダムは圧倒的な実力差を見せて、ジオン軍を圧倒し始めます。この時アムロは徐々に特殊な感応能力、察知能力を見せるようになり、やがて“ニュータイプ”と呼ばれるようになります。

“ニュータイプ”というのは実はジオン・ダイクンが人類が宇宙に出ることで新たな能力を覚醒する者たちが現れるという理論「ニュータイプ理論」から来ている言葉なのですが、皮肉にも遺児のシャアではなくライバル関係になるアムロにその素質が芽生えます。

このガンダムとアムロが拠点となる戦艦ホワイトベースの艦長となったのがブライト・ノア『閃光のハサウェイ』の主人公ハサウェイ・ノアの父親です。

やがて、ジオンと地球連邦の戦い(一年戦争)は終結します。アニメ「機動戦士ガンダム」はこの戦争の後半数か月の物語です。中身の濃さで忘れがちですが劇中の時間があまり経過しないのは実はガンダムの特徴でもあります。

–{「機動戦士ガンダム」のその後}–

「機動戦士ガンダム」のその後

地球連邦とジオン公国の間で停戦条約が結ばれますが、ジオン軍の残党勢力は宇宙と地球の各地に点在していました。

これに対して地球連邦軍はアースノイドを中心にしたタカ派の軍事組織を創設して、残党を根絶やしにしようとします。この行動がさらにエスカレートしてスペースノイドへの弾圧に繋がっていきます。この極端な行動に地球連邦の中からも反対勢力が集まり、内部対立を深めていきます。

この時期のエピソードを描いたのがテレビシリーズの続編「機動戦士Zガンダム」(と「機動戦士ガンダムZZ」)です。

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ここでは一年戦争で目立ち過ぎたがゆえに閑職に追いやられていたブライトや軟禁状態にあったアムロ・レイ、さらにクワトロと名前を変えたシャアが集まってきます。

なんと一年戦争で対立関係にあった3者が地球連邦軍の強硬派に対抗するために手を結びます。

と書きましても、実は「機動戦士Zガンダム」と「機動戦士ガンダムZZ」に関しては彼らは脇役です。前作の主人公たちが脇に回り、しかも年齢を重ねさせるというのは当時のアニメーションとしては画期的なものでした。

地球連邦軍強硬派との戦いを通して、地球圏で宇宙に住む人々の総てを統治しようとする地球連邦への不満を感じたシャアとアムロとブライト。

しかし、その想いの実現のために選んだ手段で再び3者は対立していきます。

『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の前日談『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』


 
シャアはジオン軍の残党を集めると“ネオ・ジオン”を結成し、自ら総帥となります。そして地球への隕石落下作戦を進めます。地球を強制的に寒冷地化して人間が住めなくなるようにしようとしていたのでした。

これに対してアムロとブライトは地球連邦への不満を抱えつつも、シャアの極端すぎる選択肢を防ぐためにこの作戦を阻止するために動き出します。

この新たな戦乱の中で、父親のいる戦艦に乗り込むことになった青年がハサウェイ・ノア。そこで彼はともに戦艦に乗り込んだ少女クェス・パラヤに惹かれます。

しかし、地球連邦の高官の娘であったクェスは地球連邦の腐敗を目にしていたこともあって、シャアの思想に感化され彼のもとに奔ってしまいます。
そして、最終決戦巨大な小惑星基地を落下させようとするシャアに対してアムロは単独で押し戻そうとします。

この混乱の中でクェスはハサウェイを庇う形で命を落とします。

サイコフレームという未知の新技術とアムロのニュータイプ能力が起こした奇跡によってアクシズは地球落下軌道から逸れ、地球壊滅の危機は免れるのでした。

その後、ジオンの残党勢力と新たなガンダムとの闘いがありましたが、これは『機動戦士ガンダムUC』(UC=ユニコーン)『機動戦士ガンダムNT』に描かれています。この頃に宇宙世紀はちょうど100年を迎えることになります。

–{そして、『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』へ!!}–

そして、『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』へ!!

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“シャアの反乱”と呼ばれた戦争から12年。宇宙世紀105年、地球連邦の腐敗は進み環境汚染が加速していました。

そんな中で連邦政府高官を暗殺するという反地球連邦運動を進める組織“マフティー”が動き始めます。

そのリーダー“マフティー・ナビーユ・エリン”こそあのハサウェイ・ノアでした。

アムロとシャアの想いをつぎ、そしてクェスを救えなかったことから反地球連邦運動の指導者になったハサウェイは、未だ現役で連邦軍の英雄的な存在になった父・ブライトの存在をいい意味で利用しながら、地球圏の帰還を果たします。

しかし、そこでギギ・アンダルシアという少女と連邦軍大佐のケネス・スレッグと出会い、少しずつ計画に修正箇所が出てくることも。そんな中でハサウェイは自ら最新型ガンダムΞガンダム(クスィーガンダム)に乗り込み戦乱に身を置くことになります。

 小説版「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」との関りは如何に!?

実は『閃光のハサウェイ』にはガンダムの生みの親である富野由悠季による小説が存在しています。基本設定は踏襲していますが、映画の『閃光のハサウェイ』はこの小説を原作とはしていません。

第1部となる今作は比較的小説に近しい展開が続きますが、実際に映画を見ると小説にない展開も多く含まれています。また、前日談にあたる『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の影響が色濃く出ていることも感じられます。『逆襲のシャア』は現在サブスク系配信サービスで多く取り扱われているので、ぜひ、見ておいてください。

ハサウェイの思想や行動理念、さらに回想シーンの意味合いの大きさを感じることができます。

また、今回は第1部と言うこともあって本格的なロボットアクションより人間ドラマに重きが置かれていることも、物語に深みを与えてくれます。

実は自分が「ガンダムシリーズ」の真の面白さ、奥深さを知ったのは大学に入って政治学を学んでからでした。そういう意味でも大人でも考えさせられ部分が「ガンダムシリーズ」と映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』にはあると思います。

以上、これだけ知っておけば、『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』にスムーズに見ることができるでした。
 
(文:村松健太郎)

–{『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』作品情報}–

『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』作品情報

ストーリー
第二次ネオ・ジオン戦争(シャアの反乱)から12年後のU.C.0105。世界は変わらず混乱状態にあり、断続的に軍事衝突が発生していた。そんななか、地球連邦政府の腐敗は地球の汚染を加速させ、強制的に民間人を宇宙へと連行する非人道的な政策“人狩り”を実施する。反地球連邦政府組織「マフティー」は、連邦政府高官を暗殺するという苛烈な行為で抵抗を開始。リーダーはマフティー・ナビーユ・エリンと名乗るが、その正体は一年戦争も戦った連邦軍大佐ブライト・ノアの息子ハサウェイ(声:小野賢章)であった。アムロ・レイとシャア・アズナブルの理念と理想、意志を宿した戦士として道を切り拓こうとするハサウェイ。しかし、連邦軍大佐ケネス・スレッグ(声:諏訪部順一)と、謎の美少女ギギ・アンダルシア(声:上田麗奈)との出会いがその運命を大きく変えてゆく……。 

予告編

基本情報
出演:小野賢章/上田麗奈/諏訪部順一/斉藤壮馬/古谷徹

監督:村瀬修功

脚本:むとうやすゆき

上映時間:95分

製作国:日本