「今ここにある危機とぼくの好感度について」全5話のあらすじ&ネタバレ感想:「なぜなら我々は…腐っているからです」三芳総長(松重豊)にしびれた!神崎(松坂桃李)が見つけた好感度より大事なものとは)

国内ドラマ

松坂桃李主演のNHKの土曜ドラマ「今ここにある危機とぼくの好感度について」が、4月24日(土)より放映スタート。

本作は、名門大学を舞台に広報マンが数々の不祥事に振り回される姿を描くブラックコメディー。脚本をてがけるのは連続テレビ小説「カーネーション」で知られる渡辺あや。次々に持ちあがる大学の不祥事で追い込まれていく主人公を松坂桃李が演じる。

もくじ

・第1話あらすじ&感想

・第2話あらすじ&感想

・第3話あらすじ&感想

・第4話あらすじ&感想

・第5話あらすじ&感想

・「今ここにある危機とぼくの好感度について」作品情報

第1話あらすじ&感想

第1話のあらすじ

イケメンアナウンサー・真(松坂桃李)は当たり障りのない発言だけを心掛けて来たが人気が低迷。恩師・三芳(松重豊)の誘いで大学の広報マンに転身する。

石田(渡辺いっけい)率いる広報課に着任早々、須田(國村隼)、鬼頭(岩松了)ら理事たちに呼び出された真は、スター教授・岸谷(辰巳琢郎)の論文不正を告発した非正規研究者・みのり(鈴木杏)に接触するよう命じられる。彼女は大学でほんの一時期付き合った元カノだった。

第1話の感想:『新聞記者』とは真逆のダメで薄っぺらい松坂桃李もまたよし。この作品は自分を映す鏡だと思って観ることにする

このドラマのタイトルとビジュアルの一部が出た時、真面目な主人公が振り回される系のお話かなと思っていた。全然違った。振り回されるという意味では外れていなかったけど、主人公の真(松坂桃李)は何も考えず自分の保身ばかり考えてる薄っぺらい人間だ。

ニュースキャスターをやってきた間、自分の発言が問題になって波風が立たないように、中身のあることは何も言ってこなかった。劇中で「私は何も言ってきませんでしたから」と笑顔で話す。本当は考えてることがあるがあえて言わないわけではなく、本当に何も考えていないのだ。
それだけではない。ビジュアルとステイタスはあったために女性には困らず、調子に乗ってとっかえひっかえしてきて思い出せない人もたくさんいる……というクズっぷりだ。付き合ってた女性と言われて大量の女性の顔写真のカメラロールからカタカタ探している演出には笑ってしまった。

さらに、真が恩師の引き合いで新たに勤めることになった大学のお偉いさん方も、欲を優先して都合の悪いことは隠したり捻じ曲げてよう、面倒なことは人に任せようという人たち。元カノでポスドクのみのり(鈴木杏)が名物教授のデータ不正を内部告発したため、元カレの真を使って何とかしようと考える人たちだ。

真に「みのりの任期が切れた後、新たに助教授のポストが空いた。そこに推薦してあげるからデータ不正への内部告発を取り下げてくれないか」と持ち掛けてくる。真も真で「その条件なら問題ないですね、僕も肩の荷が下りました」と何の疑問も持たずに引き受ける。みのりに「間違いなんて誰にでもあるし、あの教授は学校にとって大事な人だし、やっぱその人を守らなきゃね」などと言ってしまうし本気でそう思っているのだ。怖い。

これに対するみのりの返答が小気味良かった。
「そんなクソダサい条件私は飲みません」
よく言った~!!!

自分の立場で告発するからには下準備をかなりしたし覚悟してやった、「見下すのは勝手だけど見くびらないほうがいいよ」と言われて素直に「すみません」と謝る真。しかしこの言葉を聞いてハッとするでもなく、わが身を反省するでもなく「上の人たちからのミッションを達成できなかった、自分の落ち度にならないだろうか」ということしか考えていないのだ。な、何なんだこいつ……。

高い評価を得た彼の主演映画『新聞記者』で演じた役、危険を顧みず真実を暴こうとする姿とはある意味真逆の役だ。松坂桃李自身と真もまた印象が真逆に近い。個人的に彼のこの「薄っぺらい人間の薄っぺらさを出す」演技力は映画『彼女がその名を知らない鳥たち』での不倫男の役を観て以来すごいなと思っていて、真がどう変わっていくかと一緒に真のダメな感じを松坂桃李がどう演じるかにも注目していきたい。

真や大学のお偉方にあきれると一方で、わが身を振り返りたくもなった。もちろんここまでひどくはないと思いたいが、波風を立てないために本当は何かを思ったのに伝えず何も言わなかったこと、真実や正論よりも保身を優先してしまったこと、全くないとは言えない。また、自分の意見を持つべきだけどどう思うのが正解なのかわからないなと感じることも多い。あらためて自分がどうしていくかも一緒に考えようと思う。

また本作の脚本は映画『ジョゼと虎と魚たち』『メゾン・ド・ヒミコ』連続テレビ小説「カーネーション」などの渡辺あやさん。良くも悪くも人間らしさを浮き彫りにする言葉選びも楽しみだ。

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–{第2話あらすじ&感想}–

第2話あらすじ&感想

第2話あらすじ

真(松坂桃李)の説得が失敗し、元カノで非正規研究者のみのり(鈴木杏)は、岸谷教授(辰巳琢郎)の論文不正を世間に告発。大学当局は本調査に乗り出すことを余儀なくされる。だが、理事の須田(國村隼)らから過小報告のプレッシャーを受けた調査委員・上田教授(国広富之)が倒れてしまい、みのりもなぜか調査への協力を拒み始める。そんな中、大学で一、二を争う変人・澤田教授(池田成志)が調査委員を継ぎ、真を訪ねてくる。

第2話の感想:神崎(松坂桃李)がほんの少しだけ成長&大学内の風向きも少しだけ変化した様子

みのり(鈴木杏)に嫌われた神崎(松坂桃李)に「行動をもって挽回なさるしかないんじゃないでしょうか」とアドバイスしてくれる秘書安藤さん(安藤玉恵)優しい。

調査委員を引き継ぐ澤田教授(池田成志)のキャラが濃かった。自分の頭にPCのキーボードの間とかに入れるスプレーを吹きかけてる冒頭から危ないし、ミスターレッドカードと呼ばれる変人っぷりは半端ない。
学生が女性からもらったという赤いマフラーを取り上げ、闘牛士よろしく振り回してタクシーを止め、余計なことを言う。

さらにみのり(鈴木杏)を気に入ったと言い、「あの女は気骨があると見た」「あの女は70年代の匂いがする。一緒にこたつに当たりたいねぇ」「みのりに会いたい」などとのたまう。最終的にはみのりがバイトする店で酔っ払って歌いまくり、真(松坂桃李)に延髄蹴りを食らわせて退場(停職処分)していった。

倒れた人を写真撮りまくる人々にちょっと引いたが、「さすがに学生たちは良心に従って今撮影したものを消した」となってちょっと安心(むしろなぜ撮った)。

神崎がほんの少しだけ成長したというか、一歩進んだ気がしたのは良かった。
「いつのまにかみのりちゃんのために来たつもりになってた」と言い、結局九州に再就職することになったみのりを見送る際「俺は自分だけがかわいいけどこんなにいろいろ考えてるんだなと思って」「こんなこと女の人に思うのも初めてで」自分でもよくわかっていないようだけど、強気に屈せず不正を糾弾しようとしたみのりに何かしら心を動かされたようだ。

「私うれしかったよ、神崎くんが『私のために来たと思った』って言ったとき」
「また連絡して」首を振って「駄目」と言って別れるシーンが切ない。
みのりは神崎のこと、好きだったんだなぁ。

「何か大事なものを失った気がする。それが何だかわからず、何で埋めていいかもわからずにふわとろオムライスを食べることにした」というナレーションで終わる。ふわとろオムライス……
すごく微々たる成長で、大きく変わるわけじゃないかもしれないけど、この少しずつ変わっていく神崎を見守りたいなと思った。

大学の上層部は相変わらず腐っていて、結局調査委員の教授は買収され、不正は隠蔽されて終わる。だが一方で理不尽に学生新聞の活動を止めたことに対しては猛抗議が起こり、前回より「おかしい」と言う人も増え、活動停止は撤回された。ほんの少しだけ風向きが変わったようだ。

ところで神崎のファンキーな着信音が気になるのは私だけだろうか。あれちょっと好き。

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–{第3話あらすじ&感想}–

第3話あらすじ&感想

第3話あらすじ

帝都大百周年記念イベントのゲスト・浜田剛志(岡部たかし)の主張が思わぬことからネットで炎上。真(松坂桃李)ら広報課員は連日苦情電話の対応に追われる。爆破予告を機に須田理事(國村隼)たちはイベントの中止を、三芳総長(松重豊)に進言するが、浜田が外国特派員協会の記者会見で「言論の自由」を盾に大学への批判を表明したため、帝都大の立場を説明するべく、三芳も会見することになる。真は想定問答集の作成に燃える。

第3話の感想:神崎(松坂桃李)の成長に感動&三芳総長(松重豊)の心を動かした言葉にハッとした

みのり(鈴木杏)との再会と別れをきっかけに、変わったはずの神崎真(松坂桃李)。
だが「連続講座とは、つまり連続した講座ですね」と説明してしまう中身のなさは健在(?)で、本当に変わったんかーい! とつっこみたくなってしまう。

SNS炎上をきっかけに帝都大百周年記念イベントのゲスト・浜田剛志(岡部たかし)の出演を見合わせたことで、三芳総長(松重豊)が矢面に立ち会見することに。学生時代に彼の元で考古学を学び、恩義を感じている真は想定問答集の作成に燃える。前回「僕は自分だけがかわいいけど」と明言しちゃってたのに、人のために動ける人だった(もしくはなった)ことがわかってうれしい。感動すら覚える。

だができた問答は本当に当たり障りなく、何を聞かれても「学生の安全を第一に……」と言うだけのもの。中身がない、馬鹿だと思われる、などと突っ込まれてしまう。自分をよそに議論を始める石田課長(渡辺いっけい)や室田教授(高橋和也)、学生たちを見て真が考えた内容はこうだ。

なぜみんなこんなにはっきりと自分の意見を言えるんだろう。これまで、自分の意見など言えたためしはなかった。人に好かれたいばかりにいつもそれを放棄してきた。好感度を犠牲にしてまで言うべきことなど何もない気がしていた。しかしその神崎真は変わったはずであって。好感度を犠牲にしても、言うべきことを言える人間になりつつあるはずだった。

珍しく声を荒げた真は、総長の好感度維持のために中身のない原稿を用意したこと、たとえ馬鹿だと思われたとしても、中身がない=記事に大きく取り上げられる可能性が低いことを挙げる。会見の視聴者を誰であるかと想定することが大事で、大多数は日本人のはず。嫌われる原因はいつも意味です。意味を最小限に控えることこそ、日本における正しいリスクマネジメントである、と息巻く。

理事たちの前でも同じように話し、絶賛される真。好感度をかなぐり捨て好感度の重要性を訴えたら好感度が爆上がりした、と不思議に思う。ただ、三芳総長は何だか浮かない顔で、自分は何か間違えただろうか、役に立ててないだろうかと気にする真。ベストかどうかはわからないけど、自分の保身以外の目的のために動く真は新鮮だった。だがよく考えると、前回もみのりのために動いていた。自分で気づいていなかっただけで、もともと真にも人のために動く気持ちはあったのかもしれない。

真と水田理事との二人のやり取りも印象的。並んでいる理事たちひとりひとりの人となりが少しずつ見えてくるのも楽しみだ。

会見の日、真は「やっぱりおっしゃりたいことをおっしゃってください」と訴える。例え炎上したって先生のおっしゃる意味には意味があると思うと言うが、三芳は「そんなに簡単なことじゃないんだよ」「すまん」と言って会見へ向かう。

三芳の態度を変えたのは、ある外国人記者の一言だった。「ドクターミヨシが安全確保のことを考えていることは十分わかりました。それ以外のことを言うつもりがないことも。でも諦めずに質問してみようと思います。なぜならこうした努力を続けることが、世界を少しでも良くしてゆくために必要だと思うからです」「先生は考古学がご専門でいらっしゃいます。ということは、人類の歴史において権力による独裁がどのように行われてきたかもよくご存じのはずです……」キング牧師の言葉も引いて訴える。「問題に対して沈黙するようになったとき、我々の命は終わりに向かい始める。そして最大の悲劇は悪人の暴挙ではなく善人の沈黙である」

「安全確保はとても重要です。ただ、私が残念に思うのは、先生のその沈黙です」

ここで三芳の心に火が付いた。英語で「目が覚めました」と答え、やるべきことは安全確保しつつ、イベントを当初の予定通りに行うこと。理事たちにも有無を言わさず断言する。前回まではただの事なかれ主義のおじさんだと思っていたけど、彼の中にも熱いものがあるとわかって、腐った人たちばかりじゃなかったとわかってうれしかった。

その後の理事たちが数人で話しているシーン、エヴァンゲリオンのゼーレの会議みたいだった。そして大口を叩いてしまったとシンジくんのように縮こまる三芳だったが、イベントは満員で大成功に終わる。

三芳の心を動かした外国人記者は、真と同じく三芳の教え子だった。二人の教え子が一生懸命になるということは、三芳は総長としてどうかはともかく、素晴らしい教授だったのだろう。

他人事なのでこんな風に書いてしまったが、自分も人に嫌われたくなくて意見を引っ込めたり、当たり障りなさそうな方を選んでしまった経験がなくはない。

「問題に対して沈黙するようになったとき、我々の命は終わりに向かい始める」
肝に銘じたい。

全体を冷静に見ていて肝が据わっている安藤秘書、いろいろ見えていて問題提起を投げかけてくる真の後輩・三谷准教授(岩井勇気)など、脇を固める印象的な人物が多いのもこの作品の特徴だ。彼らの今後の動きにも注目したい。

次回はあのお騒がせな澤田教授(池田成志)が返ってくるようで、またひと悶着ありそうだ。

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–{第4話あらすじ&感想}–

第4話あらすじ&感想

第4話あらすじ

帝都大が命運を賭けた次世代科学技術博覧会が開かれようとしていた。その予定地で謎の虫刺され被害が続出し、真(松坂桃李)も指を刺され発熱する。会場近くには吸血昆虫を飼育する足立准教授(嶋田久作)らの研究室があり、帝都大のその研究施設が疑いの目を向けられるが、内部調査で異常はないと報告される。だが、三芳総長(松重豊)は調査結果に疑念を抱いていた。そんな中、澤田教授(池田成志)が真に衝撃の事実を伝える。

第4話の感想:「都合の悪い真実は必ず隠される」「真実を知りたければ、自分で調べるしかないんだよ」ドラマの中だけの話じゃないのかもしれない

小指が腫れてキーボードが打てなくなった神崎真(松坂桃李)。打てないため音声入力でみのり(鈴木杏)へのメッセージを打っていた。だが、メッセージは送信することなく削除された。ナレーションの様子からすると、幾度も彼女へのメールを打っては送れずを繰り返しているようだ。

帝都大近辺では神崎だけでなく、謎の虫刺され被害が続出していた。今回この被害を巡り、人々のさまざまな思惑が交錯する。自分の目的を果たすために事実を捻じ曲げる人々が複数出てきて困惑するが、こういったことは実際にも行われているのかもしれないと思わせる内容だった。

まず、かつて神崎がイケメンアナウンサーの地位を奪われた後輩・若林(吉村卓也)が取材のために駆けつけてくる。神崎と違って切れ者の彼は、より話題になるようにするため、次世代科学技術博覧会の予定地と隣接する帝都大「稀少生物研究センター」で昆虫などの研究をしている足立准教授(嶋田久作)が飼育している蚊を逃がしたように見せかけたかった。わざと暗めのおどろおどろしい照明にし、ほしいセリフを言わせようとする。神崎は「恣意的な撮り方は困るよ」と抗議するが、実際に放送された映像はいいように編集され、大学には抗議や問い合わせの電話が殺到する。

これに対して怒りの電話をかける神崎。「先輩ってそんな物の言い方する人でしたかね? 俺の中で先輩の好感度下がってショックっすわ」と悪びれない様子だ。神崎は「体調悪いからいいや」と切るが、本当に体調が悪く、発熱してきた。そこへ澤田教授がやってきて「俺がお前の命預かる」と言われ希少生物研究センターに連れていかれる。

途中取材時にも世話になった、デング熱のワクチン開発をしている堀田教授(奥田洋平)に会って指と熱の話をしたが「風邪じゃない?」と言われる。だがその後、現地の蚊を調査した足立准教授と、遺伝子研究をする澤田の解析協力により、外来種との交配した新しい雑種だったと知らされる。アレルギーが起きたり、最悪ガンになる可能性もあると言われる。

一方大学側の運営側は、そのような事実があるかどうか明らかにするよりも、そのような事実はないことにしたかった。「そのような事実があっては困るからそんな事実はない」と全く理に適っていない主張をする理事、それに同意する理事たち。「これはきちんと事実を明らかにすべきことだ」と苦言を呈する水田理事(古舘寛治)に「虫の居所が悪いのでは?」と言い出す理事や逆切れする須田理事(國村隼)。本当にこの人たちには呆れるばかりだ。

だが、前回で事なかれ主義をやめた総長(松重豊)、たびたび疑問を投げかける水田理事など、まともな考えの持ち主の割合が徐々に増えているのがせめてもの救いだ。神崎も以前に比べて問題意識を持つようになってきた。取材の件で恣意的な撮影・編集に怒っていたのもその証拠だ。

そしてもう一人、いつもより大人しかったのは鬼頭理事( 岩松了)だ。彼もまた、カフスがとめられないほど手首が腫れていた。
今気づいたけど「大豆田とわ子と三人の元夫」のとわ子のお父さんと役者さんが一緒だ。

二人は斎藤理事(斉木しげる)が手配した病院で検査を受け、陰性と出た。安心した二人は女子高生のようにキャッキャしていてかわいい。が、鬼頭は衝撃の事実を神崎に告げる。堀田研究室の水道が壊れていて、デング熱のワクチン開発のために飼育していたサハライエカを誤って流してしまったという。その蚊が外来種と交配した可能性はあると。まだ総長や布川理事には告げておらず、鬼頭のほかにも布川理事と斎藤理事しか知らないらしいが、その二人全く信用できないじゃん……。たぶん、病院を手配した理事が嘘の検査結果を出すように手をまわしたのでは、と思った視聴者も少なくないと思う。

帰りのバスから学生新聞のメンバーが蚊に刺されてみようとおびき寄せてこようとしてるのを見つけ、神崎はすごい剣幕ですぐこの場から離れるように言う。はじめは相手に指定いなかった3人も、彼の様子にただごとではないと気づき走ってその場を立ち去る。また熱が出ていたらしい。

総長と安藤秘書のもとで目覚めた神崎。総長は安藤秘書に席を外してもらい「総長として非常に言いづらいことだが、この組織を信用しない方がいい。都合の悪い真実は必ず隠される」「残念ながら、その持病のような体質によってこの大学の健康は侵されてきた、今はその末期だと思ってる」「もう一度検査を受けろ」と伝える。

「真実を知りたければ、自分で調べるしかないんだよ」「すまん、本当にすまん」
さらに続ける総長。

調べてわかった真実が恐ろしいものだったとしたら。怖くて検査を躊躇する神崎。
恋人の職場の愚痴を聞いている間に、晴れも引き熱も下がっていた。
この程度のことなのか、大騒ぎすることもなかったと思った矢先、新聞部のコウスケ(望月耕介)がやってきた。ユウナ(吉川愛)が虫刺されにより入院し、症状がひどいと聞く。彼女はもともと身体が弱く、大学も奨学金で通っているからそう長くはいられないと思うということ、自分が言い出したから自分の責任なことを聞き、今回は絶対記事にしないからわかることだけでも教えてほしいと懇願される

「確認しなければならないことがあるので、今は待ってほしい」とその場から立ち去り、すぐに総長に電話し検査を受けることにした。

「見て見ぬふりをしていたい、そして、最後まで逃げ通せるならどんなにいいだろう。」
伊武雅刀のナレーションが響く。

以前の神崎なら、この段階でも逃げてしまっていたかもしれないが、彼は確実に変わったとわかる。自分以外の人が苦しんでいると聞き、もう見て見ぬふりはできなかった。芳しくない状況だが、この変化だけはよろこばしい。そして検査結果は陽性だった。先日問題ないと言われた検査は、蚊アレルギーとは何の関係もないものだったとわかった。

橋の上で川を眺める神崎にかかってきた電話。何とみのりからだった。
相変わらず、神崎の着信音とても好きだな(笑)。

次回最終話、神崎はどのような決着をつけるのか。

総長の言葉「都合の悪い真実は必ず隠される」。情報というものは、伝える人の都合のいいように操作される。「真実を知りたければ、自分で調べるしかないんだよ」

この話の中だけの話じゃなく、現実でもおそらくそうなのかもしれない。
わかってはいつつも、報道される情報をそのまま受け取っている自分もいたことに気づく。自分で調べたり確認したこと以外は本当のことかはわからない。
改めて、情報に対して自分で考え、疑問点や問題点はないか、意識するようにしたいなと思った。

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–{第5話あらすじ&感想}–

第5話あらすじ&感想

第5話あらすじ

謎の虫刺されが命にも関わると知らされた真(松坂桃李)の元に、みのり(鈴木杏)が励ましの電話をかけてくる。勇気を得た真は、被害の原因が帝都大の施設から流出した蚊だということを三芳総長(松重豊)に報告し、理事たちによる隠ぺいの事実を暴こうとする。だが須田理事(國村隼)を始めとする次世代博覧会の関係者たちは、予定地周辺で謎の蚊による健康被害が起きている事実を認めようとしない。そこで真はある奇策に出る。

第5話の感想

山あり谷あり、最後に希望を感じさせてくれた素晴らしい最終回だった。

みのり(鈴木杏)からの電話に力を得て、虫刺され被害の原因が帝都大からの流出だと公表するための策を講じる神崎(松坂桃李)。彼の熱意に感心するものの「好感度なんてねぇ、そんなものどうでもいいんです」と言う神崎に「一体あいつは何を知ったというのだ?」と驚く三芳総長(松重豊)と安藤秘書(安藤玉恵)。

建物を開け放ち明るい外に出る神崎のシルエットと「LOVE。それは愛であった」というナレーションが重なるところ、ちょっとしたクライマックスである。

神崎と三芳総長の機転でサハライエカ流出を公表する流れに持っていった。
「それは、はじめて真実が明るみに出ようとした、素晴らしい瞬間だった」
「だが、そこまでだった」
須田理事(國村準)は市長と繋がっていて手を回され、堀田教授は問題の課を処分してしまったという。

すっかり諦め、元に戻ってしまった神崎。これでよかったと思い込もうとする。よくないですよとコウスケ(望月耕介)に図星をつかれ、逆切れした上に「愛なんて何の役にも立ちやしないんだから」と相手には意味不明のことを言う。みのりからの連絡も無視、連絡先も消し、愛については忘れることにした。うーんすぐ折れちゃう駄目感、残念だがやはり神崎という感じ。

だが、まだ諦めていない人物がいた。澤田教授(池田成志)である。
人のいないところに連れて行こうとする神崎に言った「まだどら焼き食べてるでしょうが!」は北の国からの「子供がまだ食べてるでしょうが!」のパロディだろうか。

変異種治療の方法があるかもしれないと突き止めた澤田教授と足立准教授(嶋田久作)。おそらく堀田教授の研究室には、実はまだサハライエカがあるだろうと研究者の観点から言う足立准教授。学生新聞メンバーの協力を得て、堀田教授の研究室に忍び込む。

手前にあったかごがそうかもという足立に「こんな目立つところに危険なもの置かないんじゃ?」と言う神崎に「それは無生物の発想だ。生物は違う。やばいものこそ一番管理しやすいところに置くんだ」という足立。研究者ならではのプロの視点がかっこいい。澤田も足立も変わってるけど、運営理事のメンバーなんかよりよっぽど教授がやるべきことをしているな、かっこいいな(澤田はやるべきでないこともやってる感は否めないけど)。

集めた証拠を三芳総長に託し、マスコミとの会合で発表されることに。事前に理事たちに共有した総長に、須田理事は「現実を見てください、どうか」と猛然と反対するが、それを上回る勢いで拒否する総長。

「私は現実を見ています。帝都大学は過ちをおかした。ゆえに、しかるべき責任を取らなければならない。これが本当の現実です」

「確かに競争は熾烈です。しかしだからこそ、このまま我々が生き残っていけるとは私にはどうしても思えないのです」

「なぜなら我々は…腐っているからです」

「お互いに経緯も信頼も枯れ果てたような組織に、熾烈な争いを生き残っていく力などありません」

「もし本当にそれを望むなら、我々は生まれ変わるしかない。どんなに深い傷を負うとしても、真の現実に立ち向かう力。そしてをれを乗り越える力。それを一から培っていかなければならない、たった今から。おそらく、長く厳しい戦いになる。これはその第一歩です」

もう名言のオンパレードすぎて厳選できないが、「なぜなら我々は…腐っているからです」に特にしびれた。神崎に孔子の言葉「必ずや名を正す」の解釈、いつか聞かせてもらったみのりの録音が一番しっくりきたという話を出して語った「問題には正しい名をつけなければそれを克服することができない。蚊の流出が真実なら、どんなにつらくてもそれを証拠不十分と言い換えてはならないんだよ」ということ。その言葉通り、まずはっきりと現状の問題を言葉にしたことが素晴らしい。

三芳総長は、この作品の裏主人公と言っていいかもしれない。作中で一番変わったのは彼かもしれない。ただ180度変わったというよりは、本来自分がすべきこと・大事にしたかったことに気づき、自分を取り戻したと言えるかもしれない。目が覚めてからの彼は本当に素晴らしかった。特に考古学や今回の孔子など、自分の原点とも言える学びに立ち返って考えているところが本人ならではでいい。自分も損得ではなく、大事にしたいものを大事にして生きたいとあらためて思った。

主人公である神崎もまた、大きく変わった。今回のようにちょっとうまくいかないとすぐに諦めて逃げてしまうが、それでも事なかれ主義で自分だけが可愛かった以前とは確実に変わった。
自分以外のこと、全体のことを考えて怒り、喜び、行動できるようになった。あれだけ大事にしてた好感度を捨て、もっと大事なもの(愛?)があるとわかるようになった。かなり大きな一歩だなぁ。黄色だったタイトルが最終話だけピンクになっていたところもいい。

神崎がダメダメすぎて上から目線で見てしまいがちだが、神崎のように見ないふりをしちゃったり、本当はこのままじゃ良くないと思いつつスルーしてしまうことって誰しもあると思う。小さな一歩でもこのドラマをきっかけに、それぞれ何か行動につなげられたらいい。

今のこの国や社会へのメッセージもあるのだろうなと想像できる作品だった。観る前は小難しい感じのお話かなと思っていたけど、すごく観やすい社会や自分の問題について考えさせられる物語だったように思う。素晴らしい作品に出会えたことに感謝したい。

そうそう、最後の最後にナレーションを担当した伊武雅刀さんが出てきたのもよかった!

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–{「今ここにある危機とぼくの好感度について」作品情報}–

「今ここにある危機とぼくの好感度について」作品情報

主人公は大学の広報マン。次々に巻き起こる不祥事に振り回され、その場しのぎで逃げ切ろうとして追い込まれていく。その姿をブラックな笑いとともに描きながら、現代社会が抱える矛盾と、そこに生きる人々の悲哀に迫る。 

放送
NHK総合 毎週土曜 夜9時 ※5月15日は休止
 NHK  BS4K  毎週金曜 午後6時 ※5月21日は休止

再放送
  NHK総合総合 毎週水曜 夜11時40分 ※5月19日は休止


渡辺あや ※オリジナル脚本

音楽
清水靖晃

語り
伊武雅刀

出演
松坂桃李 
鈴木杏 
渡辺いっけい 
高橋和也 
池田成志
温水洋一 
斉木しげる 
安藤玉恵 
岩井勇気 
坂東龍汰 
吉川愛 
若林拓也 
坂西良太
國村隼
古舘寛治 
岩松了 
松重豊ほか

※古舘寛治「舘」の字は、正しくは、外字の「舘(※舎官)」。

ゲスト出演
国広富之 
辰巳琢郎 
嶋田久作ほか

制作統括
勝田夏子 
訓覇圭

演出
柴田岳志
堀切園健太郎

公式HP
今ここにある危機とぼくの好感度について – NHK 

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