Amazon Prime Video独占配信ドラマ「ホットママ」より
乃木坂46を卒業後、女優やモデル、タレントとして目覚ましい活躍を見せている西野七瀬。もはや彼女の名前をメディアで見ない日はなく、乃木坂46卒業メンバーのなかでは最も成功を収めていると言える。
特に女優としての成長は著しく、初のママ役に挑戦した「ホットママ」では、喜怒哀楽豊かな表情を見せ、女優としての新境地を見せており、2021年には『孤狼の血 LEVEL2』、『鳩の撃退法』など話題作への出演も控えている状況だ。
女優を中心に様々な場所で印象を残している西野七瀬の魅力を改めて紹介していく。
乃木坂46のイメージを作り上げた西野七瀬のアイドル像
乃木坂46の1期生として2011年に加入した西野は、デビューシングル「ぐるぐるカーテン」からラストシングルとなった「帰り道は遠回りしたくなる」までの全シングルで選抜入りを果たし、初のセンター曲「気づいたら片想い」を始め、「命は美しい」「インフルエンサー」など全7作においてセンターポジションを務め上げ、乃木坂46の絶対的エースとして活躍してきた。
そのため、加入当初から順風満帆の道のりを歩んできたと思われるかもしれないが、乃木坂46の中心的メンバーの中でも挫折を経験してきたメンバーでもある。
4thシングル「制服のマネキン」で前作では2列目だった西野は復帰したばかりの秋元真夏にポジションを押しやられるという形になり、一時期はアイドルを辞めることも考えるほど落ち込んだというのは有名なエピソードとしてファンの間では知られている。しかし、このエピソード以降の西野は覚悟を決めたのか、センターにまで上り詰め、乃木坂46の顔として存在感を発揮していく。
そして、乃木坂46に通底している「儚さ」というイメージを付与したという意味で西野が乃木坂46に残してきた功績は大きなものがある。
これは西野の「守りたくなる」というような性格によるもので、初期センターの生駒は「なーちゃんが乃木坂を変えたと思ってます。いまの乃木坂の儚いイメージを作り上げたのはなーちゃんなんですよ」(引用:「EX大衆」2018年5月号)、白石も「乃木坂46の持つ“儚さ”のイメージを形作ってくれた存在」(引用:「白石麻衣乃木坂46卒業記念メモリアルマガジン」)と西野に対して語っていることからも、彼女の存在がグループに与えた影響の大きさを痛感させられる。
確かに西野がセンターを務めるようになってからは、西野イメージがそのまま乃木坂46のイメージへと転写されていったという感覚がファン目線からも感じられる。決して主張しないけれど、周囲が気にかけたくなるようなアイドルとして西野は存在していた。それだけに、西野が女優として見せる様々な表情はいっそうインパクトを与えている。
–{「あな番」でブレイク!西野七瀬の女優遍歴}–
「あな番」でブレイク!西野七瀬の女優遍歴
西野個人として初めて演技に挑戦した作品が佐藤勝利(Sexy Zone)主演の「49」(日本テレビ系)。乃木坂46の人気が上向いていた時期と重なる2013年に放送されたドラマということや関東ローカルでの放送だっため、端役を演じる西野に対する注目度はまだまだ低かった。しかし、本作で西野は学園のマドンナ的存在の水無月マナ役を演じ、大人しいというパブリックイメージとは正反対の挑戦的な役柄に挑戦したことは、後の女優としての飛躍に大きく繋がっていくことになる。
その後西野は「気づいたら片想い」「夏のFree&Easy」「命は美しい」と幾度もセンターに抜擢され、乃木坂46の顔として存在感を発揮していくことになるが、それと呼応するように、「連続ドラマW 天使のナイフ」、NHK大河ドラマ 「花燃ゆ」といったドラマや個人としてCMへの露出も増えていった。
そして、初の主演と言えるドラマが「初森ベマーズ」(テレビ東京系)だろう。実際のところは乃木坂46が主演ということで西野の主演作ではないが、ドラマ内での立ち位置や活躍はまさしく主演であり、西野の演技は大きく注目を集めることになった。ここで付け加えておきたいのは、あくまでも乃木坂46界隈での注目ということで、世間的に西野の女優としての注目度が上がったということは当時の体感としてはあまりなかったように思う。2015年の段階ではあくまでもアイドルドラマの中における主演に過ぎなかったということだ。
だが、2016年にネット配信された「宇宙の仕事」や初の主演となった映画『あさひなぐ』への出演以降、少しその様相に変化が現れ始める。 「初森ベマーズ」では乃木坂46のために制作されたドラマであった一方で、『あさひなぐ』では同じようにメンバーが多数出演しているものの、人気漫画を原作とし、乃木坂46のための映画ではないという点で決定的に異なっている。つまり、本作は世間に対して門戸が開かれた乃木坂46初の主演映画であるという意味で、そこで主演を務めた西野の女優としての立ち振舞いはより一層注目を集めることになるのは必然だった。
そこから、西野は「電影少女 -VIDEO GIRL AI 2018-」(テレビ東京系)で初のドラマ主演に抜擢。3ヶ月しか存在できないビデオガール天野アイを演じた西野は、演技については賛否両論あったものの、有限の人生を自覚的に生きなければならない難しさを抱えながらも、西野の儚いイメージはドラマの世界観を見事に演出していたように思う。本作は1年後の2019年に「電影少女 -VIDEO GIRL AI 2018- 特別編」が放送されるなど大ヒットを果たしたと言えるだろう。
そして2019年に2クールに渡り放送されたドラマ「あなたの番です」(日本テレビ、以下、「あな番」)が西野のその後の女優人生に大きく影響を与えることになる。本作は都内のマンションに引っ越してきた手塚菜奈(原田知世)と翔太(田中圭)による年の差新婚夫婦が、交換殺人ゲームに巻き込まれるというミステリードラマとなっている。西野は202号室の理系大学生の黒島沙和を演じ、最終話では黒幕として登場。サディスティックかつサイコパスな演技を通じて視聴者をどんでん返しへと導いた。視聴者をも巻き込み続けてきた脚本の素晴らしさも去ることながら、西野の普段のイメージとは異なるダークな演技はあまりにも衝撃的すぎた。だが、そのギャップがあるからこそ最終話での黒島の振る舞いは視聴者に予測できない形で降りかかってきたのだろう。
西野が持つ純朴さや儚さは、当然自己主張するものでもないし、分かりやすく役柄に影響を与えるものでもない。だがそれゆえに、時としてその役柄とのギャップが顕然と立ち現れてくるのだ。もちろんそれは、西野の演技力の裏付けがなければ成し得ないものでもある。「あな番」での西野の演技はこうした彼女の魅力が存分に現れていた作品だったのではないだろうか。
初のブレイク作となった「あな番」以降、2020年には映画『一度死んでみた』、「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」(フジテレビ系)と続々と話題作に出演し、特に「アンサング・シンデレラ」においては主演ではないものの、新人薬剤師の相原くるみという重要な役柄を演じ、女優としての地位を確立させたように思われる。
2021年はこれまでの実績の現れかのように映画やドラマの出演予定が相次いでいるが、3月19日にAmazonプライム・ビデオにて配信が始まった「ホットママ」での西野の体当たり的な演技に個人的に注目している。
本作は中国で社会現象を起こすほどの人気ドラマのリメイク版となっており、西野は仕事と子育てに奮闘する松浦夏希を演じている。エピソード3まで視聴したが、西野が見せている喜怒哀楽の表情の機敏が非常に新鮮だった。だからといって、そこに違和感があるわけでもなくフラットに演じていて、「あな番」とは違った魅力に満ちていた。これまでは学生を演じることが多かったこともあり、5月で27歳を迎える彼女が見せるママ役は今後の西野にとっても大きな挑戦であることは間違いない。民放のドラマと比べるとどうしても話題となりにくいが、西野の現在地を示している作品としてぜひ注目してほしい。
–{モデルにテレビ番組、女優にとどまらない西野七瀬の活躍}–
モデルにテレビ番組、女優にとどまらない西野七瀬の活躍
アイドルと女優としての活動を見てきたが、西野はモデルやテレビ番組のMCなど多岐にわたって活動してきた。モデルとしては、2015年より「non-no」(集英社)の専属モデルとして今もなお活躍し続けており、何度も表紙を飾ってきた。定期的に「GirlsAward」や「東京ガールズコレクション」へも出演するなど、女性が憧れるモデルとして高い支持を集めている。
ほかにも、「ライオンのグータッチ」(フジテレビ系)や「グータンヌーボ2」(関西テレビ)といったバラエティ番組へも出演。西野の親しみやすい雰囲気はお茶の間を和ませている。「グータンヌーボ2」で共演している長谷川京子や田中みな実、滝沢カレンとの女子トークでは、普段は覗かせない一面も見せていることで話題だ。
また、2019年以降はCM出演も増加しており、もはや西野を見ない日はない。「黒い砂漠 MOBILE」では俳優の浅野忠信と共演し、「瞬殺しちゃうぞ」と元アイドルの貫禄たっぷりのセリフを披露。「サクセス24」では同棲している彼女役として登場し、その彼女感満載のCMで話題となった。
今年は「SUUMO」の「スーモハウス」シリーズや「au 意識高すぎ!高杉くん」シリーズなど、これまで多くの著名な俳優陣が出演してきたCMに相次いで出演している。
さらに、「アサヒスーパードライ」の新テレビCM「春、待ってるよ篇」には乃木坂46卒業後初の白石麻衣との共演を果たすなど、乃木坂46ファンにとっては嬉しい元エース2人による共演が実現した。このように多くのCMへの出演は、西野の女優としての活動にも大きな影響を与えていくことになるだろう。
まとめ
様々な役柄を通じて演技にも深みと厚みが増してきた西野。2021年も現在上演中のYellow高電圧記号新感線「月影花之丞大逆転」を始め、『孤狼の血 LEVEL2』や『鳩の撃退法』など話題作への出演が決定している。
さらに12月には世間を賑わせた『あな番』の映画が公開される予定だ。映画版のキャストは現時点では未発表だが、今年は女優として大事な一年となっていくことだろう。
(文:川崎龍也)