『JUNK HEAD』レビュー:独り&独学で作り上げたSFストップ・モーション・アニメ映画!

映画コラム

■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

新海誠監督のように独りでアニメーション制作を始め、やがて世に認められていくケースが21世紀に入って俄然増えてきています。

ただし今回ご紹介する『JUNK HEAD』は堀貴秀監督が7年の歳月をかけて総コマ数14万、フィギュアはすべて手作りという驚異とも狂気ともとれるストップモーションアニメーションを、何と独学で完成させたという(本職は内装業とのこと)実に情熱的なSF作品でもあるのでした!

遺伝子操作によって長寿を得るも生殖能力を失い、同時に環境汚染やウイルス感染によって人口が激減した未来社会というディストピア世界を舞台に、地底に生息する人工生命体マリガンの遺伝子情報を調査すべく地下迷宮に降り立った主人公の壮絶かつ過酷な冒険を描いたもの。

ダークで濃密なサイバーパンク・テイストの世界観の中、グロテスクなクリーチャーたちが圧倒的なインパクトをもたらしてくれます。

一方で人間の“長寿”とは『銀河鉄道999』の機械人間のようなものと思しく、またキャラクターが発する言葉はどこの国でもない独自の言語形態を採っており、字幕スーパーでその意味を伝えるなど、発想も手法も極めてユニークかつ意欲的。

何よりもストップモーション・アニメーション独自の温もりある動きは、3DCGとは一味も二味も違って、ダーク・テイストの作品でもあるにも拘らず、生理的にも不思議と心地よいキモカワ感覚を呼び起こしてくれています。

既にファンタジア国際映画祭最優秀長編アニメーション賞やファンタステイック映画祭新人監督賞を受賞するなど、海外の映画祭で多大な評価を得ている作品で、あのギレルモ・デル・トロも「素晴らしい‼ 狂った輝きを放ち、不滅の意思と想像力が宿っている」と大絶賛しているのも大いに納得の内容です。

ここまでのハイ・クオリティを誇り得る作品を、才能もさながら独りで作り上げることが可能となった時代が到来していることを、そして気合と粘りがあれば誰もが飛躍できる可能性を秘めた時代でもあることまで改めて痛感させられる、必見のオススメ作品であります!

–{『JUNK HEAD』作品情報}–

『JUNK HEAD』作品情報

ストーリー
環境破壊が止まらず、もはや地上は住めないほど汚染された。人類は地下開発を目指し、その労働力として人工生命体マリガンを創造する。ところが、自我に目覚めたマリガンが人類に反乱、地下を乗っ取ってしまう。それから1600年──遺伝子操作により永遠と言える命を得た人類は、その代償として生殖能力を失った。そんな人類に新種のウイルスが襲いかかり、人口の30%が失われる。絶滅の危機に瀕した人類は、独自に進化していたマリガンの調査を開始。政府が募集した地下調査員に、生徒が激減したダンス講師の“主人公”が名乗りを上げる。地下へと潜入し、〈死〉と隣り合わせになることで命を実感した主人公は、マリガンたちと協力して人類再生の道を探る。今、広大な地下世界の迷宮で、クセ者ぞろいのマリガンとの奇想天外な冒険が始まる! 

予告編

     

基本情報
監督・原案・キャラクターデザイン・編集・撮影・照明・音楽:堀貴秀
  
製作国:日本

公開日:2021年3月26日

上映時間:99分