2011年の第1作『るろうに剣心』撮影の時から、「いつか、語らなくてはいけないだろう」とスタッフ・キャストが揃って思っていた“人斬り抜刀斎の過去”。
日本映画界のアクションのあり方、コミックの実写映画化のあり方というモノに大きな革命をもたらした『るろうに剣心』シリーズ。その総決算となる『るろうに剣心 最終章 The Final』と『るろうに剣心 最終章 The Beginning』の2部作が、新型コロナウィルスの感染拡大を乗り越えて20201年4月と6月に連続公開されます。
シリーズ開始から10年が経った中で、主演の佐藤健と大友啓史監督が“作らなくてはいけない”と語る映画がついに完成しました。
そこで映画『るろうに剣心』のこれまでと『最終章』までを追っていきたいと思います。
なお、現時点で『るろうに剣心 最終章 The Beginning』はまだ鑑賞しておりません。『The Beginning』を含めた『るろうに剣心 最終章』2部作については、またの機会にしっかりとまとめたいと思います。
映画『るろうに剣心』のはじまり
原作の和月伸宏によるコミック「るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-」は幕末に“人斬り抜刀斎”と恐れられ、明治の世になってからは“不殺(ころさず)の誓い(ちかい)”の立て、逆刃(さかば)刀(とう)を手に闘い続ける緋村剣心を主人公にした異色の時代劇。剣心とのその仲間、そして個性的な敵役の登場により作品は大ヒットとなり、1994年から1999年にかけて連載され、アニメ化、舞台化などもされました。
そして、2011年、当時若手俳優の有望株といった立ち位置だった佐藤健主演で映画化が発表されました。
「仮面ライダー電王」の主演でブレイクし、その後も話題作に立て続けに出演していた佐藤健は持ち前の演技力と身体能力の高さを披露し、誰もが認める生身の肉体を持った“緋村剣心”を演じ上げました。
監督はその後、シリーズ全てを手掛けることになる大友啓史。
NHKのディレクターとして映画化もされた「ハゲタカ」や『るろうに剣心』シリーズのキャストも多数出演していた大河ドラマ「龍馬伝」手掛けた後にフリーに転身、その最初の映画の1本目が映画『るろうに剣心』でした。
この主演・監督のコンビに加えて“るろうに剣心を実写化するため”に招聘されたのがアクション監督の谷垣健治。
ジャッキー・チェンやドニー・イェンといった国際的なアクションスターのスタントチームでアクションコーディネートを手掛けるアクション界の世界的な重要人物の一人です。谷垣は映画『るろうに剣心』において「早回し撮影をしているのでは?」と言われるような高速アクションシーンの数々を創造していきます。
主演の佐藤健、監督の大友啓史、そしてアクション監督の谷垣健治という三本の矢が揃い、映画『るろうに剣心』はスタートしました。結果、第1作の興行収入30億円を超える大ヒット。
これを受けて、続編が決定、2014年に公開されることになります。ここでは原作の人気エピソードでもある剣心と“人斬り抜刀斎の後継者”志々(しし)雄(お)真実(まこと)との対決を描いた“志々雄編”をメインスタッフ・キャスト続投したうえで、『るろうに剣心 京都大火編』『るろうに剣心 伝説の最期編』2部作として映画化。こちらも『京都編』52億円超、『伝説の最後編』43億円超の大ヒットを記録。観客動員もシリーズ累計1000万人に迫る数字を叩き出しました。
そして、すべてを語り切るために、剣心の過去と未来を描く“最終章”が『るろうに剣心 最終章 The Final』『るろうに剣心 最終章 The Beginning』の2部作としてシリーズ10周年イヤーの今年、ついに公開されます。
–{これまでの『るろうに剣心』}–
これまでの『るろうに剣心』
1作目は原作の“武田観柳編”と“黒笠編”をベースに映画化。
武井咲演じるヒロインの神谷薫役、青木崇高演じる剣心の盟友の喧嘩屋・相楽左之助、蒼井優演じる過去を抱える医者・高荷恵、江口洋介演じる剣心と因縁深い元新撰組の斎藤一などが揃って登場。そして敵役として香川照之、吉川晃司、さらに綾野剛や永野芽郁、実はシリーズ通して重要な人物役となるキャラクターで窪田正孝なども出演していました。本作は原作の人気もあり、日本だけでなく、アジア圏でも大きな話題を呼ぶことになりました。
大ヒットという形で成功を収めた映画『るろうに剣心』のスタッフ・キャストは“そのすべてを超える”ことを合言葉に、原作の長編エピソード“志々雄編”をもとにした、『るろうに剣心 京都大火編』と『るろうに剣心 伝説の最後編』2部作に挑みました。
宿敵・志々雄真実には極端な設定のキャラクターに有無を言わせぬ説得力を与える藤原竜也がキャスティングされ、その配下の十本刀には神木隆之介、滝藤賢一、高橋メアリージュン、三浦涼介などが揃いました。また剣心の味方にも敵になる御庭番衆として伊勢谷友介、土屋太鳳、田中泯らが出演。さらに『京都大火編』のラストで剣心の剣術(=飛天御剣流)の師である比古清十郎役として福山雅治がサプライズ出演。
続く『伝説の最後編』では奥義の伝授に加えて人間的な成長を剣心に即する重要なキャラクターとして短い出番でありながら圧倒的な存在感を感じさせました。
クライマックスでは志々雄(藤原竜也)VS剣心(佐藤健)、斎藤(江口洋介)、左之助(青木崇高)、蒼紫(伊勢谷友介)との1対4の対決シーンが凄まじい熱量で展開されました。
この決闘シーンはまさに最終決戦という言葉がぴたりとはまるモノであると同時に、これ以上のものが撮れるのか?と感じさせる程のモノでもありました。(※ここまでの3作品は期間限定で劇場で再上映されるとのことです。)
–{自ら築いてしまった高すぎる壁}–
自ら築いてしまった高すぎる壁
『るろうに剣心』の映画化の際、特にシリーズ化となった『るろうに剣心 京都大火編』『るろうに剣心 伝説の最後編』を制作した時、主演の佐藤健、そして監督の大友啓史の心には緋村剣心(=人斬り抜刀斎)の”人斬りとして最初と最後”を描く、原作の“人誅編”“追憶編”にあたる部分を語り切らなくてはいけないという使命感が芽生えました。
とは言え、大友監督が自分の限界を超える現場と表現する『るろうに剣心』の撮影、しかも2部作という困難な大型プロジェクトを完走した後で、もう一度『るろうに剣心』に手を付けるには心身共に苦労と疲労を忘れる時間が必要でした。
その一方で、主演の佐藤健は「このエピソードを撮らずに人生を終えることはできない」と語る程の思い入れと使命感を表してもいました。と言いつつ「“やりたい”と“やりたくない”という気持ちが常に同じくらい心の中に存在していた」とも語っています。
大友監督は「挑戦を重ね、未知の領域に挑み続けてきた中で、観客の映画『るろうに剣心』に対する目も肥え、スタッフ・キャスト自らが目指すハードルが自然と高まっていった。その中で“それ以上”を創り上げる環境が用意できるのかという不安はあった」と腰が重かったことも正直に語っています。
しかし、その一方で、30代に入り名実ともに日本映画界を支える存在となった主演の佐藤健を筆頭にしたキャスト陣、作品を支え続けたスタッフ陣の成長した姿を見た大友監督は「一蓮托生でもう一度ネクストステップを目指したい。新しい景色を見たい」という気持ちが次第に強くなります。そして、『るろうに剣心』は自らが築き上げた高すぎる”自分自身”という壁にを乗り越えるために三度、映画への道を歩み始めることになります。
–{『るろうに剣心最終章The Final』のあらすじ(ネタバレなし)}–
『るろうに剣心最終章The Final』のあらすじ(ネタバレなし)
激動の幕末を駆け抜け“人斬り抜刀斎”として恐れられてきた男・緋村剣心。新時代=明治になり、二度と人を殺さないという“不殺(ころさず)の誓い(ちかい)”の立て、逆刃(さかば)刀(とう)を手に日本転覆を企てた志々(しし)雄(お)真実(まこと)との死闘など多くの闘いを乗り越えてきました。
明治12年。志々雄との闘いを経て再び神谷道場での暮らしに戻ってきた剣心は、師範代の神谷薫や門下生の明神弥彦、盟友の相楽左之助、医者の高荷恵らと平穏な日々を送っていました。
しかし、何者かが東京を砲撃、町は燃え上がり、大混乱に陥ります。剣心が現場に向かとそこには“人誅(じんちゅう)”と書かれた手紙が落ちていました。“人誅”とは「天が裁かなくても、己が裁きを下す」という意味の言葉です。
そこへ、今は警視局の警官となっている元新撰組の斎藤一が現れ、ある男の存在を語り始めます。その男は志々雄に鋼鉄艦・煉獄を売りつけた武器商人で、中国の裏社会を牛耳っている男でした。
襲撃はその後も続き、ほんの僅かでも剣心と関りを持った者たちが次々と襲われ、瀕死の重傷を負っていきます。剣心が相手の姿も見えず、肉体的以上に精神的に追い詰められていく中で、ついに事件の首謀者が目の前に現れます。
「お前が作った新時代の総てを滅ぼす」「俺が与えたいのは痛みではなく、苦しみだ」と言い切るその男の正体を知り剣心は驚愕します。
一夜明け、仲間たちの前で剣心は首謀者の名前とその関係を語っていきます。
男の名前は雪代(ゆきしろ)縁(えにし)、剣心の頬の十字傷の秘密を知ると男であり、幕末に剣心の手で惨殺した妻・雪代巴の弟(=剣心の義弟)でした。剣心の衝撃の告白に言葉を失う神谷道場の面々。しかし、縁の襲撃は目の前に迫っていました。
そんな時、かつて戦った御庭番衆の御頭・四乃森蒼紫が巻町操を伴って京都からやってきます、何者かによる東京襲撃計画があることを知った二人は、偵察にやって来たのでした。
そして、縁とその異形の同志たちによる東京総攻撃の幕が切って落とされます。一瞬で火の海・修羅場となった町で必死に戦う剣心。蒼紫や左之助、操らも奮戦する中、縁は神谷道場に姿を現します。緋村剣心と怨讐の義弟・雪代縁との決戦の時が迫っていました。
–{コインの裏と表となる最終章2部作}–
コインの裏と表となる最終章2部作
前回の2部作『京都大火編』と『伝説の最後編』が連続したドラマであったのに対して『るろうに剣心最終章The Final』と『るろうに剣心 最終章 Beginning』の2部作は時代背景も異なる独立した作品であると同時にコインの裏と表のような関係になっています。
コインの表にあたる『The Final』では新田真剣佑演じる怨讐の義弟・雪代縁とその同志により剣心への復讐と、それに立ち向かい人斬り抜刀斎として過去を乗り越え未来に向かって闘う剣心たちの姿が描かれています。
雪代縁役には新田真剣佑。名前が出た時にほぼ即決だったという満場一致のキャスティングです。これに新旧レギュラーキャストが総登場し、大友監督がシリーズの“グランドフィナーレ”と位置付ける作品に相応しい華やかさを纏いました。
また『The Final』からの新キャストで音尾琢真、柳俊太郎、丞威、成田瑛基、阿部進之介が出演、三浦涼介が演じる全2部作では敵対した十本刀の一人“刀狩り”の張も再登場しています。
一方の『The Beginning』では原作では“追憶編”と呼ばれる、緋村剣心が人斬り抜刀斎だったころの幕末の物語をメインに据え、頬の十字傷の謎、そして心から愛したにもかかわらず自らの手で惨殺した妻・雪代巴の存在、出会いと別離れが描かれます。
新時代=明治の世で“不殺(ころさず)の誓い(ちかい)”の立て、逆刃(さかば)刀(とう)を手に闘い続けることを決めた剣心のその根幹、常に心に抱え続けてきたものが描かれます。
『The Beginning』の詳細・構成が発表された時に、誰が“剣心の運命の女”・雪代巴を演じるのかと話題になりましたが、結果、有村架純が演じることになりました。原作ファン、映画ファンからの期待値も高く、凄まじいプレッシャーがあったであろうことは容易に想像できます。『The Final』でも少し登場しますが、本領を発揮する『The Beginning』ではどのような姿を見せてくれるのかが楽しみです。
またこの『Beginning』では幕末の動乱期を描くと言うこともあって、幕末の志士・剣士が多数登場。維新三傑の一人・桂小五郎役に高橋一生、奇兵隊の隊長の高杉晋作役に安藤政信、新撰組の天才剣士・沖田総司役に村上虹郎がキャスティングされました。また幕府直属の隠密組織”闇乃武”の頭目・辰巳役に北村一輝が出演しています。幕末の物語と言うことでこれまでのシリーズのレギュラー組は不参加のようですが、斎藤一役の江口洋介は登場します。江口洋介=斎藤一は佐藤健=緋村剣心以外では唯一シリーズ全作に登場するキャラクターになりますね。
–{シリーズ最大級の熱量『The Final』}–
シリーズ最大級の熱量『The Final』
映画『るろうに剣心 最終章 The Final』は原作のおいて”人誅編”とされるエピソードをもとにこれ以上ないほどストーリーを濃密に凝縮、シリーズ最大級の熱量を込めた作品となりました。
実は私は『京都大火編』と『伝説の最後編』を連続上映(『伝説の最後編』は当時本邦初上映)するイベントで2部作通して見ています。サプライズで佐藤健、武井咲らが登壇するなど一種異様な熱気をはらんだ当日のことを今でもよく覚えています。
今回は機会に恵まれマスコミ関係者試写で『The Final』を見たのですが、試写室という限定された空間、当時の一ファンとは違う、作品の品定めをしなくてはいけないライターとしての目線で見たにも関わらず、映画の持つ異常な熱量を見事なまでにやられてしまいました。
この熱量は『京都大火編』『伝説の最後編』連続上映の時に映画館で感じた熱量と比べても、勝るとも劣らないモノで、このことは、『The Final』が1本の映画で前2部作に匹敵する凄まじい熱量をはらんでいることを意味しています。
その核となるのはやはりアクション。1対1、1対多数、多数対多数、そして東京を火の海にする市街戦。ありとあらゆるバリエーションのアクションが劇中で展開されていきます。『京都大火編』でも少し描かれましたが『The Final』での市街戦の迫力は凄まじく、控えめに言って阿鼻叫喚といっていいほど町が火の海に飲み込まれます。
大友監督はアクション監督の谷垣健治に”感情が見えるアクション”をオーダーしたとのことですが、それは見事なまでに焼き付けられたと言えるでしょう。冒頭に展開される雪代縁とその同志よる“人誅”の時間は、剣戟だけでなく砲撃や爆破シーン、壮絶な肉弾戦と多種多様な形のアクションが繰り広げられます。一方のクライマックスでは縁のアジトでの最終決戦が描かれます。ここでは1対多数、多数対多数の高速バトルが展開されます。
前作まででも日本映画史上屈指のスケール感が話題になりましたが、今回は総製作費50億円、撮影に7カ月を費やし、12都道府県・43か所での大規模ロケーションを敢行しています。また、大掛かりのセットも複数建て込み、その一部はアクションシーンの中で見事なまでに崩壊していきます。
『るろうに剣心 最終章』2部作はIMAX、4DX、MX4D シアターでの上映も決定しているので、より一層、作品の熱量を感じたい方、スケール感を感じたい方は劇場のフォーマットについてもあれこれ考えてみるのも楽しみ方の一つなのではないでしょうか?
–{脅威のクライマックスバトル、新田真剣佑参戦!!}–
脅威のクライマックスバトル、新田真剣佑参戦!!
そういったアクションシーンを受けたうえで、最終決戦の相手として剣心の前に立ちはだかるのが『The Final』からシリーズに参戦する怨讐の義弟・雪代縁を演じる新田真剣佑です。
雪代巴を演じた有村架純のプレッシャーも相当なものであったと想像できますが、新田真剣佑が雪代縁を演じることになったプレッシャーもかなりのものであったと思われます。何せ、あの志々雄真実に匹敵する強さの持ち主であることを見せつけなくてはいけません。映画に関して言えば藤原竜也の存在感を凌駕することも求められるのです。
志々雄真実はその存在が”人斬り抜刀斎の後継者”だということである意味、多くを語らずとも圧倒的に強いことが伝わるのですが、それに対し実は裏で志々雄一派に力を貸していたという、雪代縁は劇中の戦いの中で圧倒的な存在であることを証明しなくてはいけません。
これを新田真剣佑はシリーズ初参加にていきなり求められました。(真剣佑のキャスティングについては彼の持つスター性を感じた大友監督がほぼ即決したとのことです。)
新田真剣佑は、このまっすぐ過ぎる眼差しの持ち主でありと若く純粋であるが故に一途な狂気の持ち主でもあるという雪代縁という複雑な役どころを見事に演じきり、さらに持ち前の身体能力の高さを活かすことで圧倒的な強さを見せつけます。
正直言って映画の縁は原作の縁より強いのではないかと感じさせる程です。詳細はネタバレになりますが、劇中での新田真剣佑=雪代縁は圧倒的な強さを発揮し、メインクラスのキャラクターを複数人、戦闘不能状態に追い込みます。
今回の『The Final』『The Beginning』で主人公の剣心は今までにないほど“受け身”に回ります。そのために物語を動かす者として新田真剣佑演じる雪代縁の存在は非常に重要でした。大友啓史監督の中には縁をしっかりと動かせば自然と剣心も動くという確信があり、多くの期待を新田真剣佑に託すことになりましが、新田真剣佑は見事なまでにこれに応えたと言えるでしょう。
–{人生を懸ける作品と語る佐藤健の覚悟}–
人生を懸ける作品と語る佐藤健の覚悟
今回の『The Final』と『The Beginning』の2部作がこれまでのシリーズ3作と違うところが、物語に分かりやすい(見えやすい)大きな方向性がないところでしょう。1作目では吉川晃司演じる鵜堂刃衛、2&3では藤原竜也演じる志々雄真実を倒すという大きな方向性がありました。
今回も敵役・最凶(最恐)の敵として新田真剣佑演じる雪代縁は登場し、悪いことも沢山してくるのですが、しかしのその根源を探ると剣心の過去の罪に行きついてしまいます。
『The Final』『The Beginning』の2部作で描かれるのは緋村剣心の贖罪の物語です。そこには分かりやすいカタルシスはありません。そういう意味でこの『The Final』『The Beginning』のエピソードを映画というエンターテイメントに落とし込むことは難しい作業であったと言えます。
しかし、主演の佐藤健は「“剣心の生き様”をしっかりと描けば、観客にはしっかりと届く」という思いがあったと語っています。「“追憶編”が作りたくて今までやってきた」「ここまで人生を懸ける作品は、他にはない」と『るろうに剣心』シリーズのことを語る佐藤健のこの覚悟が10年に及ぶ大ヒットシリーズを見事な決着にまで導いたことになります。
ただの映画ファンになってしまった5分間の話
最後にちょっとした(個人的にはとっておきの)エピソードで締めたいと思います。マスコミ関係者試写はライターや評論家、興行関係者、その他多くのメディア関係者が出席します。それらの人々に加えて映画に関わったスタッフ・キャストの方々もやってきます。時には主演俳優と同席するようなことがあります。そんな時は暗黙の了解で、居ることに気が付いてそっとしておくことがマナーと言えます。
さて、私が『るろうに剣心最終章 The Final』のマスコミ試写に参加した時、なんと大友啓史監督が同席していました。私は「ああ、大友監督だ!?」と思いつつ、静かにやり過ごすつもりでいましたが、『るろうに剣心 最終章 The final』のあまりの熱量に我を忘れて、上映終了後に思わず大友監督に感想をぶつけてしまいました。「凄いものを見せてもらった」ことのお礼に近いものを一言言いたいという気持ちが、いつものマナーを守る自分を忘れさせててしまったのです。
実は大友監督とは某SNSで薄く繋がっていました。名前を名乗ったところ、なんと監督がそのことを覚えていてくださり、そのまま5分ほど立ち話をしてしまいました。
「凄まじい映画で、心地よい疲労感があったこと」「2&3(『京都大火編』『伝説の最後編』)をまとめた以上の熱量を感じた」ことを少し興奮気味に大友監督に伝えると、「作った本人がものすごく疲れています」と嬉しそうに気持ちを語ってくれました。
試写室では作品をしっかりと見てどれほどのものかと丁寧に品定めする、作品関係者と同席してもそこはミーハーな気持ちを持たずにマナーを守る。そんな当たり前のことを『るろうに剣心最終章 The Final』はあっさりと忘れさせ、SNSで繋がりがあったとはいえ、初対面の大友監督に思わず感想をぶつけてしまうという暴挙を起こさせました。
反省しなくてはいけない行為でもあるのですが、作品への思い入れをさらに強めてくれる5分間でもありました。
ちなみに「『The Beginning』は一体どんな映画になるんですか?」という質問に対しては「全く違う映画になっていますよ」という期待をただただ高めさせる言葉が大友監督から返ってきました。
(文:村松健太郎)
–{『るろうに剣心 最終章 The Final』作品情報}–
『るろうに剣心 最終章 The Final』作品情報
ストーリー
かつて人斬り抜刀斎と呼ばれ恐れられた緋村剣心(佐藤健)は、新時代の幕開けとともに、斬れない刀・逆刃刀を持つようになった。剣心たちは志々雄真実が企てた日本転覆計画を阻止しようと死闘を繰り広げた後、神谷道場で平和に暮らしていたが、突如何者かが東京中心部を相次いで攻撃。剣心とその仲間の命に危険が及ぶ。このことは明かされることのなかった剣心の過去に大きく関係しており、決して消えることのない十字傷の謎へとつながっていく。
予告編
基本情報
出演:佐藤健/武井咲/新田真剣佑/青木崇高/蒼井優/伊勢谷友介/土屋太鳳/三浦涼介/音尾琢真/鶴見辰吾/中原丈雄/北村一輝/有村架純/江口洋介
監督:大友啓史
製作国:日本