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玉森裕太と聞いて、みなさんはどんな印象を思い浮かべるでしょうか。
ジャニーズ、Kis-My-Ft2のメンバー、かわいいもかっこいいもできる王道アイドル。彼についてそこまで詳しくなかった筆者は、少し前までそう思っていました。
しかし、それだけではありませんでした。玉森裕太は、さまざまな顔を使い分けられる演技派俳優でした。いくつか作品をピックアップしながら、彼の俳優としての魅力をお伝えします。
『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』…かわいい玉森くんはもちろん、いろんな表情が堪能できる
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『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』では、宝来潤之介という役で出演しています。
この人物、主人公・奈未(上白石萌音)のピンチを助けてくれた子犬系イケメン御曹司(そしてカメラマン)で、奈未の上司・宝来麗子(菜々緒)の弟でもあるという、情報量多めな人物。
かわいくて優しくてかっこいい、王子様のようなイケメン。玉森くんのファンではない一般の人たちの玉森裕太像に近いのではないでしょうか。
こんな社会人男性現実に存在しないだろうと思われるようなこの役は、彼だからこそ違和感なく演じられたと言っても過言ではないと思います。
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奈未の妄想で出てくる犬耳としっぽをつけた姿(白バージョンの黒ジュン、黒バージョンも黒ジュン、半々の白黒バージョンの白黒ジュンがいる)もほぼ毎回登場。
普通の30歳男性なら絶対イタいこの格好が似合い、完璧にかわいいのも彼ならでは。白ジュンはかわいいし黒ジュンの悪い感じもたまりません。
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玉森裕太演じる潤之介の魅力は、優しさやかわいさだけではないのです。恋のライバル・中沢(間宮祥太朗)に牽制されたとき、主人公の奈未(上白石萌音)といるときとは全然目つきが違う男の顔を見せます。
笑顔や優しい顔のシーンは多いですが、戸惑う顔、切ない顔、泣き顔、さまざまな表情が堪能できるのもこの作品の魅力。ファッションも彼に似合うものが多かったように思う。ロングコートが似合う人だということも、身長が180㎝あることもこの作品で知りました。
また、Kis-My-Ft2のメンバーカラーである黄色い服を着ることも多かったのは、制作側の計らいでしょうか。ファン目線で嬉しいポイントだったのではと思います。
また、個人的に意外な組み合わせだと思たのがバイク。プジョーのバイクに乗って奈未を海に連れ出したり長野まで迎えに行くなど、作中でかなり活躍しています。
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キスシーンや寝顔シーンでは、びっくりするほどの造形の美しさを痛感するシーンも多かったです。美形と言われる俳優は数多くいますが、驚くほど美しいと感じるのはあまりない経験で新鮮でした。
特に、初めて奈未とキスするシーンの横顔が美しすぎてCGみたい。何度か出てくる寝顔も本当に綺麗で感動ものです。
–{「リバース」…静かにさまざまな感情を表現する「目線の演技」}–
「リバース」…静かにさまざまな感情を表現する「目線の演技」に注目
個人的に推したいのが『リバース』の玉森くんの演技。
このドラマのメインビジュアルを見たとき、一瞬「え? 玉森くんどこ?」と思ってしまいました。そのくらい元の雰囲気を消して、役のイメージに入り切っているからです。かといって大幅にビジュアルが普段と違うわけではなく、髪型がちょっと違ってメガネをかけているだけ。それなのに何でこんなに違って見えるのか。それはおそらく、表情や顔つきが役によって違うから。
見た目はそんなに変わらないけど言葉や仕草、セリフを言うと人柄の違いがわかるタイプの俳優さんもいますが、パッと見でまとう空気すら変えられる玉森裕太、末恐ろしいです。
本作で玉森裕太が演じる浅見は、真面目な性格の高校教師。飲酒した生徒に本当のことを言うように毎日家を訪れたり、権力者であるその父親に脅しまがいのことを言われても、ひるまず正しいと思う行動をし続けたりと、信念を持って生徒の指導にあたっています。
その裏には、同じく教育者だった亡き父への尊敬と、死んだ広沢に対して嫉妬する出来事があったために免許取りたての彼に車に乗るよう強く言い、結果彼が事故で亡くなってしまったことへの強い後悔がありました。さまざまな感情を抱えた人物を静かに演じています。
セリフや身体表現が派手じゃない分、目線や表情の演技により注目して観てほしいです。
藤原竜也や市原隼人、戸田恵梨香とはじめとした共演者の演技や、ストーリー自体も素晴らしい作品なので、作品としてもかなりおすすめです。
–{「グランメゾン東京」…複雑な思いを秘めた「泣きの演技」}–
「グランメゾン東京」…複雑な思いを秘めた「泣きの演技」が秀逸
木村拓哉主演で話題となった「グランメゾン東京」では、過去に木村拓哉演じる尾花の元部下で、ドラマ開始時はホテルのブッフェで働く平古祥平を演じています。
クールで人と打ち解けないが仕事に対しては真面目な努力家である一方、昔尊敬していた尾花に対しては反抗的な態度を見せるという役どころ。また、恋人と同僚の間で揺れ動いたりと、さまざまな感情を見事に演じています。ストーリーに関わるので詳しくは言えませんが、大きなカギを握っている人物でもあります。
また泣くシーンが複数出てきますが、この「泣きの演技」が秀逸だと評価されていました。
ひとつだけ紹介すると、尾花が作った料理を口にした瞬間、圧倒的な力量差を思い知らされ涙するシーンがあります。字面だけで表現するのが難しそうですが、複雑な感情が伝わってくる涙でした。
この作品で複数の助演男優賞を受賞しているので、俳優・玉森裕太に興味を持った人はぜひ観ていただきたいです。
–{『パラレルワールド・ラブストーリー』…生々しく「人の嫌な部分」}–
『パラレルワールド・ラブストーリー』…生々しく「人の嫌な部分」を演じる
『パラレルワールド・ラブストーリー』はこんな話。
崇史(玉森裕太)の親友・智彦(染谷翔太)が恋人と紹介した女性・麻由子(吉岡里帆)は、崇史がずっと想いを寄せていた女性だった。だがる朝目を覚ますと、麻由子は崇史の恋人になっていた。その日を境に、崇史は「麻由子が智彦の恋人な世界」と「麻由子が自分の恋人な世界」を行き来し、どちらが本物なのかわからず混乱する、というストーリー。
崇史は言ってしまえば、嫌なやつです。
無意識のうちに下に見ていた親友が、自分が恋していた相手と付き合っていると知り、また研究でも先を越されて激しい嫉妬を覚える。親友よりも好きな女性を優先するし、女性の家に押し掛けて関係を迫るなど、相手の取り方次第では犯罪に近いのではというような行為をしています。
登場人物が嫉妬や卑屈な気持ちを持つというのはよくあることですが、この主人公は親友と彼女の間で葛藤したりせず、自分の願いを叶えることだけを優先しているように見え、より嫌なやつに見えます。その嫌な感じを臆せず出しているという意味でも、彼にとって挑戦の多い作品だったのではないでしょうか。
また映像全体もざらっとした質感で、他の作品では肌が美しい印象がある彼の肌は少し荒れていて、触れたらカサカサしていそう。
また吉岡里帆とのラブシーンも結構激し目で、『ナラタージュ』の松本潤と同じくらい「ジャニーズなのにここまでやるんだ」感がありました。個人的に作品自体はあまりおすすめではないけれど、「いろんな意味で生々しい玉森裕太」を観るという意味では価値があると思います。
まとめ
さまざまな演技の引き出しで、合う役をやるのではなく、どんな役でもハマり役にしてしまう俳優・玉森裕太。30代となり、人間としても深みを増していくであろうこれから、今度はどんな役で私たちを驚かせてくれるのか、とても楽しみです!
(文:ぐみ)