『奥様は、取り扱い注意』レビュー:綾瀬はるかが銀幕で魅せる可愛い奥様&壮絶アクション!

デフォルト

■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

2017年に日本テレビ系列で放送されたTVドラマの「衝撃のラスト!」、その後を描いた劇場版。

TV版に比べて当然ながらアクション色が強まり、また社会問題ネタなども巧みに盛り込んであって、かなり映画に振り切った作りが成されています。

日本映画におけるスパイものということでは『太陽は動かない』も現在公開中ですが、こちらはさらに荒唐無稽な設定であるにも拘らず、冒頭からいきなり主演・綾瀬はるかの激しいアクションを大いに魅せこむことで、前者以上に映画ならではの魅惑と躍動の世界へ観る側を一気に引き込んでくれました。

(それにしても、彼女がアクションを演じる際の身体能力の冴えから発せられる肉体的躍動美には、毎回感服させられますね)

この後、ストーリーは記憶を失くしたヒロインが、陰謀劇の中でいつ己を取り戻していくかがキーポイントになっていきますが、そこに至るまでの“夫”西島秀俊らの立ち回りの上手さなども功を奏して、最後の最後まで飽きさせるところは微塵もありません。

そしていよいよクライマックスでの一大アクション!

と、実にオーソドックスなくらい映画的な構成がスリリングに成されており、その意味ではTV版を見ていなくてもかなりのところで無問題。

一方でTV版のファンには、ヒロインのキャラクターが銀幕の大画面でより際立つといった点やら、ワケアリ「夫婦」の関係性などを再認識できる点など、プラスの印象をもたらしてくれること必至。

主婦としての可愛らしい日常、スパイとしてのクール&ハードな非日常を巧みに演じ分ける綾瀬はるかと、それをフォロー(監視?)する西島秀俊のコンビネーションも堂に入ったもので、両者がもたらす虚構とも絆ともいえる夫婦の交流こそをメインに捉えつつ、その魅力を最大限に引き出した佐藤東弥監督の“映画”的力量に唸らされました。

『カイジ』シリーズ(09~20)で知られる佐藤監督によるTVドラマの劇場用映画化作品は『ごくせんTHE MOVIE』(09)『映画 ST 赤と白の捜査ファイル』(15)そして本作と、今のところ外れなしの高確率が頼もしい限りです。

(文:増當竜也)

–{『奥様は、取り扱い注意』作品情報}–

『奥様は、取り扱い注意』作品情報

ストーリー
特殊工作員だった過去を持つ専業主婦・伊佐山菜美(綾瀬はるか)と、菜美の優しい夫だが、実は現役の公安警察であり菜美を監視する伊佐山勇輝(西島秀俊)。半年前、ある出来事がきっかけで菜美は記憶喪失になり、二人は桜井久実と裕司に名前を変えて、小さな地方都市・珠海市で新しい生活を始めていた。新エネルギー源・メタンハイドレードの発掘に活気づく珠海市は、美しい海を守ろうとする開発反対派と、市長をはじめとする推進派の争いが日に日に激化していた。公安は、新エネルギー源開発の裏に、ロシアと結託した国家レベルの陰謀が潜んでいることを突き止める。「公安の協力者にならなければ、あの女を殺せ」と告げられた勇輝は葛藤する。菜美の記憶が回復すれば、死が二人を分かつことに。そんななか、菜美は過去の因縁と国家に追われ、大きな事件に巻き込まれていく……。 

予告編

   

基本情報
出演:綾瀬はるか/西島秀俊/鈴木浩介/岡田健史/前田敦子/鶴見辰吾/六平直政/佐野史郎/檀れい/小日向文世 ほか
 
監督:佐藤東弥
 
製作国:日本

公開日:2021年3月19日

上映時間:119分