『罪の声』で大注目の宇野祥平!多すぎる出演作から必見の2作を紹介!

俳優・映画人コラム

(C)2020 映画「罪の声」製作委員会

実際にあった誘拐・企業恐喝事件をモチーフにした塩田武士のベストセラー小説を小栗旬・星野源の(実質)W主演で映画化した『罪の声』。
本作で、終盤に登場したもう一人の“罪の声の子供”を演じ、物語の影の主役、裏の主人公として強烈な印象を残したのが長年映画ファンの間では名バイプレイヤーとして愛されてきた宇野祥平です。

この名バイプレイヤーは本作の演技で大ブレイク。日本アカデミー賞他多くの映画賞に輝く高い評価をうけ、一躍、映画ファン以外からも「何だこの人は!?」「こんな人いたのか!?」という声が上がるようになりました。

そこで、この知る人ぞ知る存在から、一躍みんなが気になるバイプレイヤーとなった宇野祥平をピックアップ、多すぎる出演作品から絶対に見た方がいい2本の映画を中心に、これからの公開予定作品なども含め追っています。

多すぎる出演作

宇野祥平の出演映画はざっと数えても150本近くあります。その多くは主人公を取り囲む大勢の一人が多く、中にはワンシーンだけの登場なんてこともあります。しかし、それも積みあがればクセになってくるもので、宇野祥平の存在は映画ファンの中では「また出てる!?」といった感情を思い起こさせる忘れ難い存在になっていました。

そんな宇野祥平はインディペンデントな作品から『舟を編む』『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』などのヒューマンドラマ、『罪の声』『64-ロクヨン-』前後編のような群像超大作、果ては『ウルトラマン』や『仮面ライダー』にまで出演しています。

2020年だけでも出演した映画が『37セカンズ』や『事故物件 恐い間取り』、インパクトを残した『本気のしるし』などなど大小12本(月1本!?)もの映画が公開されている宇野祥平。正直言ってこの作品をというモノを挙げるのは至難の業です。

刺激的なホラー・サスペンスを手掛け続ける白石晃士監督と組んだ『殺人ワークショップ』や『超・暴力人間』『オカルト』などでは珍しく(と言っては失礼ですが)宇野祥平が主演してます。ただ、これらは少しエッジがとがり過ぎている作品でもあって、ちょっと気軽にお薦めしきれない部分もあります。

そこで、大変乱暴ですが、宇野祥平の映画で必見の映画を2つに絞りました。150本から2本だけというのも無理があるようですが、彼が無名のバイプレイヤーであると同時に確かな演技力の持ち主であることが分かる2本です。

–{必見の2作品とは?}–

必見その1『俳優・亀岡拓次』

映画の主人公でタイトルにもなっている亀岡拓次は脇役専門の俳優であり、撮影現場とその土地・土地の居酒屋を行き来する中年男。
映画では人気演劇ユニットTEAM-NACSのメンバーとしても知られる安田顕が亀岡拓次を演じていて、ホームレスから、泥棒、チンピラ、切られ役まで様々な役を(主に長い撮影期間の中の一日だけ)現場に現れてはこなしていきます。世間的にはあまり知られていませんが、業界的には皆が知っているお馴染みの顔で“現場に奇跡を呼ぶ男”などとも呼ばれています。この亀岡拓次には複数のモデルとなる“脇役を中心に演じてきている実在の俳優”がいるとされていますが、そのうちの一人して明言されているのが宇野祥平です。

実際に過去に宇野祥平が演じてきたような役を安田顕=亀岡拓次が演じているだけでなく、宇野祥平自身が宇野泰平という名前の亀岡拓次のバイプレイヤー仲間として登場。メタフィクション的な遊び心に溢れた作品になっています。

 必見作その2『罪の声』

(C)2020 映画「罪の声」製作委員会

もう1本はやはり『罪の声』を挙げないわけにはいきません。実際に起きた未解決の誘拐事件・企業恐喝事件をモチーフにした塩田武士同題小説を『逃げるは恥だが役に立つ』『アンナチュラル』『MIU404』の野木亜紀子脚本で映画化。

小栗旬演じる新聞記者が平成も終わるという中で、昭和の未解決事件について改めて、追いかけ始めます。一方、テイラーの店主である星野源は古いものを整理していた中で奇妙なカセットテープを見つけます。再生してみるとそこに流れて来たのは社会を揺るがせた“あの事件”の恐喝電話同じ音声。読み上げる文章の内容、そして何より自分の声あることに驚きを隠せません。やがて全く別の方向から過去を探っていた男たちが運命の出会いをします。
そして、事件の真相、そして“あと二人いる”はずの“罪の声の子供”の行方を追います。

宇野祥平が演じるのはこのもう一人の“罪の声の子供”。星野源とは違い、事件の影におびえ、社会の裏側に身を潜めて生きてきた男。この男を宇野祥平が文字通り入魂の演技で演じきります。物語のもう一人の主人公とも言うべきこの役で宇野祥平は数々の映画賞に輝き、その認知度のすそ野を一気に広げました。この演技で以前から彼を知っていた映画ファンは彼の本領がメジャー大作も発揮され、評価されたことに素直に喜び、今まで彼の存在に気がつかないでいた人たちには思わぬ発見をもたらしました。

今見れる、これから見れる宇野祥平

とにかく出演作品が多い宇野祥平ですので今見れる映画、これから見れる映画もすでにたくさん待機中です。
現在公開中、観客動員200万人突破、興行収入27億円を超す、サプライズヒット作となった菅田将暉&有村架純主演の『花束みたいな恋をした』でも彼の姿を見ることができます。

この『花束みたいな恋をした』以降も2021年も宇野祥平の映画は待機作品多数。ドラマから出演してきた『映画バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~』が4月9日に公開。ここでは他の俳優同様フィクションの上での宇野祥平役で登場してます。

同じ4月9日は写真界の巨匠・上田義彦が初めて長編映画の監督に挑んだ『椿の庭』も公開されます。一つの古い家屋を舞台にそこに住む祖母と孫の姿を丁寧に描いた“静謐”という言葉をそのまま映画にしたような作品で、写真家ならでは美麗な映像は一見の価値ありです。

その後も5月25日公開の『64-ロクヨン-』『糸』の瀬々敬久監督の『明日の食卓』、6月25日公開の横浜聡子監督の『いとみち』がすでに公開決定。それに加えて入江悠監督の『シュシュシュの娘』、東京国際映画祭にも出品された『君は永遠にそいつらより若い』がそれぞれ待機中です。

宇野祥平は瀬々監督、横浜監督、入江監督の過去作にも出演しています。この辺りまさに“リアル亀岡拓次”の面目躍如と言ったところではないでしょうか。

(文:村松健太郎)