『トムとジェリー』レビュー:アニメ×実写の融合!ネコとネズミの壮烈&痛快マジ喧嘩!

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■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

誕生してから80年を越える歴史を誇る人気アニメーション『トムとジェリー』が久しぶりに銀幕に登場します。

しかも今回は、何とアニメと実写の融合というスタイル!

リアル人間社会の中で、トムとジェリーの壮烈&痛快マジ喧嘩はいかなる騒動を引き起こす?

あ、ヒロインはクロエ・グレース・モレッツだよ!

NY豪華ホテルの中でな・か・よ・く・喧嘩しな!

1940年にウィリアム・ハンナ&ジョセフ・バーベラが創作した『トムとジェリー』は、これまで短編アニメ映画やTVシリーズ、OVAなどさまざまな形でお目見えしては世界中を沸かしてきました。

そんな中で今回の『トムとジェリー』は『トムとジェリーの大冒険』(93)以来の長編劇映画となりますが、実写世界の中にトム&ジェリーら動物キャラをアニメーションで融合させたユニークな試みとなっています。

こうした実写とアニメを融合した映画は『悪魔の発明』(58)や『メリー・ポピンズ』(64)『ロジャー・ラビット』(88)『クール・ワールド』(93)『ルーニー・テューンズ:バック・イン・アクション』(04)など数多く存在します。日本でも市川崑監督の『火の鳥』(78)がこのスタイルで製作されています。

また現在のCGを多用した作品群も、見方を変えれば実写とアニメの融合させたものと捉えられるかもしれません。

今回、そんなアニメの動物たちと生身の人間との関係性をどう描くのか、興味津々でしたが、動物は人間の言葉を解し、人間は動物の言葉は判らないもののどことなくコミュニケーションは成立しているようで、たとえばトムがピアノを弾いていても誰も特に驚くことはなく、むしろそのパフォーマンスを拍手喝采するといった塩梅です。

これもトム&ジェリーという特異かつ過激ながらも愛らしいキャラクターのなせる業なのかもしれません。

さて、毎度毎度なかよくケンカしてきた(?)トム&ジェリーですが、今回はニューヨークの豪華ホテルに引っ越したジェリーをトムが追いかけてきたことからホテル内は大騒動。

このホテルではまもなく「世界が注目するウェディングパーティー」を催すことになっていることから、ズルをしてホテルに就職した新人スタッフのケイラ(クロエ・グレース・モレッツ)がネズミ退治係に任命。

ケイラはトムを雇ってジェリーをホテルから追い出そうとするのですが、そんなことができるはずもないのは、“トムジェリ”ファンのみなさんなら先刻ご承知のこと!

かくしてクライマックスの結婚パーティが、ご想像以上のものすごいことになっていくわけですが、これだけで終わらないのがハリウッド映画のえらいところ!

最後にもたらされるのは、果たして愛か涙か感動か?(いや、さすがにそれはないか!?)

–{ネズミだってネコだって 人間だって生き物さ!}–

ネズミだってネコだって人間だって生き物さ!

今回ひそかに心配していたのは、良くも悪くもコンプライアンスが取沙汰される昨今において、『トムとジェリー』”ならではのナンセンス・ギャグの描写が控え目になってはいないか? ということでしたが……。

安心してください。履いてます! いや、やってくれてます!

トムもジェリーも「お前らゴムで出来てるのか?」と突っ込みたくなるほどの伸縮自在で、車に轢かれても、ビルから落ちても、電気ショックを浴びても、いつものように全くもって無問題!

そもそも『トムとジェリー』こそはアニメーションの特質をフルに活かしきった作品の代表格であり、そこをちゃんと臆することなくやってくれなくては『トムとジェリー』とはいえないので、今回それを大画面狭しとばかりに披露しまくってくれているのが嬉しい限りなのです。

また今回は人間側のキャラクターも漫画チックでユニークに描かれているのもお楽しみのひとつ。

特にヒロインのケイラを務めるクロエ・グレース・モレッツの可愛らしさは特筆もので、また本当に今回は彼女がトムとジェリーと共演している歓びが見る側に伝わってくるほどなのでした。

その意味ではこの映画、実はクロエ・グレース・モレッツのアイドル映画的存在としても今後は語られていくこと必至。

そもそも彼女は『キック・アス』(10)の頃からファンタジックなジャンル作品への出演に意欲的なこともあって、今回の実写とアニメを融合させた制作スタイルにしても、実に堂々と対峙しているのが頼もしい限り。

ケイラそのもののキャラクターも彼女の柄に見合っていたのも成功の秘訣でしょう。

ほんと、トム&ジェリーならずとも彼女と一緒の画面に収まりたくなるほどの好演です。

かかくしてこの作品、ネズミだってネコだって、そして人間だって生き物さ♪ などと歌いたくなってくるような、そんな快作スラップスティック・コメディなのでした!

 (文:増當竜也)

–{『トムとジェリー』作品情報}–

『トムとジェリー』作品情報

ストーリー
大嫌いだけど、好き ――
ケンカばかりのトムジェリが〈まさかの友情〉で奇跡を起こす!
とあるニューヨークの一流ホテルで、世界中が注目するセレブカップルの「世紀のウェディングパーティー」が行われることに。
ホテル中が準備に追われる中で、ある事件が起こる――あのいたずら好きネズミのジェリーがホテルに引っ越してきて大騒ぎ!
新人スタッフのケイラは急遽“ネズミ対策”で猫のトムをボーイとして雇うも、ふたりはでニューヨーク中を巻き込んだ壮絶なおい
かけっこを繰り広げ、さらにはある陰謀に巻き込まれウェディングパーティーを台無しにしてしまう。
そのせいでクビになったケイラを助けるため、そして新郎新婦のため、ふたりはタッグを組むことになるが――。
はたして、命がけでケンカしてきたトムとジェリーは、最高のウェディングパーティーを開くことができるのか!?
 
予告編

        

基本情報
出演:クロエ・グレース・モレッツ/マイケル・ペーニャ/ケン・チョン/コリン・ジョスト/ロブ・ディレイニー 

日本語吹替:水瀬いのり/木村昴/大塚芳忠/千葉繁/坂本真綾/日野聡/浪川大輔/新谷真弓
  
監督:ティム・ストーリー
 
製作国:アメリカ

公開日:2021年3月19日

上映時間:101分