みなさまは「岸辺露伴は動かない」という作品をご存知でしょうか。
本作は漫画「ジョジョの奇妙な冒険」(荒木飛呂彦著)のスピンオフですが、筆者は原作に詳しくありません。しかし、昨年末放送の実写ドラマをはじめとして、コミックス、アニメと渡り歩き、その奇妙な怖さと魅力に引きずりこまれました。
そこで今回は、ジョジョに詳しくない方でも楽しめる、アニメ「岸辺露伴は動かない」をご紹介します。
そもそもスピンオフのきっかけは「スピンオフ・外伝絶対禁止」から
1997年、作者の荒木氏はジャンプ編集部から「スピンオフ・外伝絶対禁止」という条件で、短編執筆依頼を受けます。それにもかかわらず、どじゃーんと「ジョジョの奇妙な冒険」のスピンオフを執筆されたのがきっかけです。攻めてます。
”そして今となっては、この「禁止令」がなければ、露伴スピンオフ作品は以後描かなかったとも思います。何よりそういうことに感謝したい。”(原作コミックス1巻解説より抜粋)
2013年に「岸辺露伴は動かない」1巻が、そして2018年には2巻が発売されました。
コミックス収録作品はアニメ化、2020年末には高橋一生さん主演で実写ドラマが放送。今年2月18日からはNetflixでアニメ化作品が全世界同時配信スタートしています。
岸辺露伴とは?
岸辺露伴は、荒木飛呂彦氏の漫画「ジョジョの奇妙な冒険 第4部 ダイヤモンドは砕けない」(JCコミックス34巻)に登場する売れっ子漫画家です。他者の人生や思いを読んだり、書き込んで操ることができる特殊能力「ヘブンズ・ドア(天国への扉)」を持ちます。
露伴はなにせ作家です。「体験は作品にリアリティを与える」をポリシーに富豪の村にもイタリアにもスポーツジムにも行くし、果ては取材のために山を6つ買って自己破産までします。やりすぎです、先生。そして餅は餅屋というか、待ってましたとばかりに取材先では恐怖体験が待つのです。
–{どうしてそうなった? 誰もが抱きそうな思いがあらぬ方向へ狂い出していく}–
どうしてそうなった?誰もが抱きそうな思いがあらぬ方向へ狂い出していく
「富豪村の言い伝え手にあやかって自分も富豪になりたい」、「婚約者は親に決められているが、ばれないように自由に恋愛したい」、「自分の身代わりを作って災厄を避けたい」、「プロモデルになったから、自分の肉体美にもっと磨きをかけたい」 。
登場するゲストたちの抱く欲は、どれも人が抱きそうなものばかり。運命の輪は歪み、結果として殺人を犯したり。罪の上に罪を重ねてしまう。
身近でありふれた欲だからこそ、自分たちと関係ないとも思えないリアリティーがあるのです。
作品のもっともこわいところは、物語のあとに
しかし、この作品でもっとも奇妙で恐ろしいところは、実は物語が終わった後です。リアリティーがありすぎて、どこかに本当に存在していそうな気持ちになるんです。
たとえば、エピソード9「ザ・ラン」には筋肉の神に取り憑かれた男性が出てくるのですが、体を鍛える人は世の中に大勢いるし、まったくなさそうな話ではないよなと。いや、本当にいたら怖いんですけどね。ありえそうで怖い。
「岸辺露伴は動かない」は優れた原作漫画があってこそですが、アニメ、実写ドラマと表現方法を変えて展開中。
奇妙で怖くてリアリティー溢れた、岸辺露伴は動かない。
(文:ささのは)