【第15回声優アワード】主演賞は津田健次郎&石川由依!2020年度の代表作と2021年期待アニメをご紹介

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その年度に「最も印象に残る」活躍をした声優や作品の業績を称えるために創設された、「声優アワード」。15回目となる2021年3月6日の授賞式では、2019年10月1日から2020年9月30日までの期間にテレビ放送や劇場上映、ネット配信などで新作として視聴者に届けられた作品に出演した声優が顕彰されました。

全15部門と今年特別に作られた特別栄誉賞の中でもその年の顔となるのはやはり、主演賞。第15回の主演賞を受賞したのは、津田健次郎さんと石川由依さんでした。今回はおふたりの2020年度声優アワード受賞に繋がったと思われる作品と、2021年に出演が決まっているアニメを紹介します。

朝の声からドス声へ? 津田健次郎の2020年代表作と2021年期待アニメ

テレビアニメ「H2」(1995年)の野田敦役で声優デビューをした津田健次郎さん。アニメだけでなく、コリン・ファレルやジェイミー・ドーナン、リチャード・アーミティッジの洋画吹き替え担当声優でもあります。

また声優としてだけでなく、『ドキュメンターテイメント AD-LIVE』で映画監督を担当したり、舞台『叫べども叫べども、この夜の涯て』で脚本演出を担当したりと、多方面で活躍しています。

(C)2020 KADOKAWA/P.A.WORKS/天晴製作委員会

声優アワード主演賞を受賞した2020年度は、後ほど紹介する「ID:INVADED イド:インヴェイデッド」「天晴爛漫!」などさまざまな作品に出演。1年間声を聞かなかったクールはないのではないかと思うくらい、とにかくひっぱりだこだった印象です。

ちょっぴり鼻にかかった低音ボイスが特徴で、脇役であってもその存在感は抜群。また2020年のNHK朝の連続テレビ小説「エール」では語り(ナレーション)を担当していました。低く優しく響く津田さんの声を、朝の慌ただしい時間のオアシスにしていた人もいるのではないでしょうか。私がそうです。

『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』名探偵 酒井戸(さかいど)・鳴瓢秋人(なりひさご あきひと) 役

(C)IDDU/ID:INVADED Society

津田さんの第15回声優アワード主演賞受賞に影響したのはおそらく、「ID:INVADED イド:インヴェイデッド」で見せた主人公で名探偵の酒井戸の演技でしょう。この作品は、津田さん演じる酒井戸が殺人犯の殺人衝動の世界「イド」に潜り込み、事件解決に協力するSFミステリーアニメです。

酒井戸は、ただの名探偵ではありません。殺人犯の殺意を映像化した異常な世界においても冷静沈着な、ある意味“狂気じみた人物”として描かれています。また酒井戸はあくまでイドの中での顔。現実世界での彼は、鳴瓢秋人という元刑事で殺人犯です。

酒井戸と成瓢は比較的感情が表に出ないキャラクターなので、基本的には声の温度に大きな変化がありません。しかし殺人犯となる前の成瓢はもともと、家族との日々をなによりも大切にしてきた人物です。津田さんはそんな成瓢の優しい本質的な部分を、淡々とした声色の中に声の温度感の微妙な変化を加えることで、見事に演じ切っています。

世界観の複雑さから見るに、役の理解も大変だったと思われます。にもかかわらず鳴瓢の抱える闇と本来の人間性に説得力があったのはきっと、これまでも二面性のあるキャラクターを数多く演じてきた津田さんの表現力があったからでしょう。

『極主夫道』龍(たつ) 役

(C)おおのこうすけ/新潮社

2021年4月からNETFLIXで配信が始まる、アットホーム任侠コメディ「極主夫道」。津田さんは数々の伝説を残した元最凶ヤクザで、今は専業主夫の主人公不死身の龍を演じます。

玉木宏で実写ドラマ化もされている作品ですが、実は津田さんも原作漫画の実写版PVで龍を演じています。これがまあ、“ほんまもん”で、漫画の世界に入り込んでしまったのかと錯覚しかねない、「これぞ、生ける不死身の龍」だと思わずにはいられない仕上がりなんです。

また本作には「アットホーム任侠コメディ」という“支離滅裂”なコピーがついています。それなのになぜか成り立っているなと思ってしまう不思議な力を感じるのは、原作そのもののギャグパワーに加え、最凶と恐れられた元ヤクザらしいドスの効いた声の中に、今の暮らしを大切に思う優しさを内包した津田さんの声も少なからず影響していると思うのです。

なるべくしてなった、と言っても過言ではないでしょう!威圧感があるのになぜか笑える津田健次郎、ではなく龍の日常を覗いてみませんか?

–{先輩声優を唸らせる演技力に注目!石川由依の2020年代表作と2021年期待アニメ}–

先輩声優を唸らせる演技力に注目!石川由依の2020年代表作と2021年期待アニメ

「ヒロイック・エイジ」(2007年)ディアネイラ役でテレビアニメ声優デビューをした石川由依さん。2013年に始まった「進撃の巨人」シリーズのミカサ・アッカーマン役など代名詞的な作品への出演も増え、第8回声優アワードでは助演女優賞を受賞しています。

今の事務所であるmitt managementに移籍後には、ソロでの歌語りプロジェクト「UTA-KATA」を始動。活動の幅を広げています。

スッとなじむ透き通ったかわいいらしさの中に凛とした人物像を感じさせる声の持ち主で、演技力にも定評があります。後ほど触れる『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』のパンプレットのインタビュー内で先輩声優の浪川大輔さんは、その演技力を「石川由依ここにあり」「さすが石川由依」と評していました。

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』ヴァイオレット・エヴァーガーデン 役

(C)暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会
石川由依さんの2020年度声優アワード主演賞受賞に大きな影響を与えた作品は、おそらく『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』です。石川さんは劇場版を含む「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」シリーズで、主人公のヴァイオレット・エヴァーガーデンを演じています。

役者・声優は、喜怒哀楽を豊かに表現するのに長けた職人です。そんな職人 石川由依にこの作品で求められたのは、「感情を出さない」ことでした。

彼女が演じたヴァイオレットは元孤児の兵士で、感情を理解できない少女です。だから心から慕うギルベルト少佐が戦地で言い残した「愛してる」を理解できませんでした。「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は、そんな彼女が「愛してる」の意味を知るために手紙の代筆業をはじめ、成長する姿を描いています。

ヴァイオレットは感情を知らないだけで、決して会話ができないキャラクターではありません。そもそも石川さんは、声優である以前に1人の人間です。生きてきた中で感情を得てきた以上、「感情を知らない」キャラクターを演じることは難しかったでしょう。

しかし石川さんは、まるでロボットかと思ってしまうくらい機械的に会話をするヴァイオレットを演じることで、彼女がいかに感情を知らないのかを表現していました。またヴァイオレットは数々の愛してるに触れる中で、少しずつ感情を知り成長していきます。そんな彼女の成長の横に石川さんを感じるくらい、ヴァイオレットそのものであり保護者でもある、そんなキャラクターと歩幅が揃った演技が印象的でした。

ヴァイオレットの成長を心から望み、彼女を愛したことがヒシヒシと伝わってくる名演技に、きっと優しい涙が止まらなくなるでしょう。

『さよなら私のクラマー』井藤春名 役

(C)新川直司・講談社/2021「映画 さよなら私のクラマー」製作委員会 (C)新川直司・講談社/さよなら私のクラマー製作委員会

石川さんは2021年も「トロピカル〜ジュ!プリキュア」をはじめ、さまざまなアニメに出演が決まっています。その中の1つで筆者が期待しているのが、漫画家 新川直司氏原作の女子サッカー作品『さよなら私のクラマー』です。

石川さんはこの作品で、神奈川県の強豪校“久乃木学園高校”でエースナンバー10番を背負う天才 井藤春名を演じます。

井藤はパスプレイやボールキープ力で周囲を圧倒する絵に描いたような天才プレーヤーでありながら、すこし天然なところもあるキャラクター。ギャップが大きいキャラクターな上、かわいらしさの中にも強い芯を感じさせる声を持つ石川さんが演じるとなれば、競技中のかっこよさがより際立つと予想されます。

声優からアニメや吹き替えを楽しむススメ

ここ数年、授賞式のある3月にはTwitterのトレンドで盛り上がりを見せている声優アワード。それくらい声優の存在は、アニメをはじめとする映像作品を構成する重要な要素の1つだと捉えられているのだと思います。

アニメや映画の鑑賞中に惹かれる声やどこかで耳にした声があったら、ぜひエンドロールの声優のクレジットにも注目してみてください。

声優つながりで、新たな名作との出会いが待っているかもしれませんよ。

(文・クリス)

–{第15回声優アワード受賞者}–

第15回声優アワード受賞者

■主演男優賞

津田 健次郎
所属:アミュレート

■主演女優賞

石川 由依
所属:mitt management

■助演男優賞

子安 武人
所属:ティーズファクトリー

島﨑 信長
所属:青二プロダクション

■助演女優賞

上田 麗奈
所属:81プロデュース

鬼頭 明里
所属:プロ・フィット

■新人男優賞

伊藤 昌弘
所属:ブシロードムーブ 響‐HiBiKi-

小林 千晃
所属:大沢事務所    

土屋 神葉
所属:劇団ひまわり

■新人女優賞

逢来 りん
所属:ホリプロインターナショナル

市ノ瀬 加那
所属:シグマ・セブン

杉山 里穂
所属:マウスプロモーション

藤原 夏海
所属:アーツビジョン

和氣 あず未
所属:俳協

■歌唱賞        

トロフィーワルキューレ
(JUNNA・鈴木みのり・安野希世乃・東山奈央・西田望見)
所属:フライングドッグ

■パーソナリティ賞

安元 洋貴
所属:シグマ・セブン

■外国映画・ドラマ賞    

山路 和弘
所属:劇団青年座演技部

小宮 和枝
所属:テアトル・エコー

■シナジー賞

プレミア音楽朗読劇「VOICARION IX 帝国声歌舞伎~信長の犬~」

■富山敬賞

関 俊彦
所属:81プロデュース

■高橋和枝賞

榊原 良子
フリーランス

■キッズファミリー賞

中川 里江
所属:ピアレスガーベラ

■インフルエンサー賞

小岩井 ことり
所属:ピアレスガーベラ

■MVS

下野 紘
所属:アイムエンタープライズ

■功労賞

津嘉山 正種
所属:劇団青年座 

増山 江威子
所属:青二プロダクション

■特別功労賞

佐野康之/坂口芳貞/岸野一彦/後藤淳一/瀬畑奈津子/仲西環/伊井篤史/莊司美代子/藤原啓治/久米明/和田周/木藤聡子/渡辺典子/立石涼子/よのひかり/佐久田脩/小松政夫/並木伸一/勝田久/増岡弘/富田耕生
(故人の中で長年に渡り外画も含め多くのジャンルに貢献した声優。2020年度に逝去された方々に送られる)

■特別栄誉賞※期間外の作品だが業界への功績等を称えての受賞

鬼滅の刃