2021年3月8日の初日、東京都内のシネコンでこの話題作をいちはやく鑑賞してきました。
本当は初回朝7時のアイマックス上映を見たかったのですが、チケット予約開始後すぐに完売してしまっていたので、そのシネコンでは第2回目となる7時30分開始の通常上映を鑑賞。こちらは左右端っこの席が幾分空いてる感じで、総じて8割弱の入り。
その後の回のチケットの売れ行き状況を見ても既に全回満席なのはアイマックスだけなので、特等席にこだわらなければ当日券でも割かし入れるのではないかと思いました。
(さすがに平日だし、あと上映回数も増やしすぎたかなという気もしないではない)
→『シン・エヴァンゲリオン劇場版』より深く楽しむための記事一覧
「ネタバレ」に過敏な今回の作品いかにそれを避けながら言及すべきか
さて、肝心の映画の中身ですが、既にTwitterでは「ネタバレ」がトレンド入りしているように、今回はかなり見る側がネタバレに対して過敏になっている感もあります。
(まあ、もともと昨年の6月に上映される予定が今年1月に延び、さらにそれも延びて今回ようやくですしね)
特に「エヴァ」の場合、あまりにも特殊な作品ゆえに、「面白かった」でも「つまらなかった」でも(実際の感想ではありません、念のため)、今やある種のネタバレになってしまう危惧があります。
とはいえ、映画サイトの宿命として作品レビューは必須であり、そこにある程度のネタバレが生じるもやむを得ないところではあるでしょう。
というわけで、次のページからレビューを始めたいと思いますが、マジにネタバレが嫌なかたはここで別コーナーへ移行していただくよう、切にお願いいたします。
ちなみに、SNSなどのネタバレは閲覧さえしなければOKではありますが、意外にヤバいのが映画館のロビーです。
映画を見終えた観客の何割かは、興奮しながらあれやこれやと映画の中身を熱く語ったりしていて、それが結構聞こえてきますので、くれぐれも鑑賞前の方々はご用心のほどを。
できれば映画館に入ったらイヤホンなどで外界の音をシャットダウンし、音楽なり何なりを場内が暗くなるまで聴いたりしてやり過ごすことをお勧めしておきます。
(おそらく既にリピーターも続出していることでしょうから)
※ここから先はネタバレありです!
→『シン・エヴァンゲリオン劇場版』より深く楽しむための記事一覧
–{※ここから先はネタバレ!}–
四半世紀の歴史を経ての感想……「ようやく腑に落ちた!」
今回の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を一言で表すとしたら「ようやく腑に落ちた!」でしょうか。
要するに1995年10月にTVシリーズが始まってからおよそ四半世紀、特にリアルタイムでTV版も旧劇場版(97・98)も接してきた世代のファンが真に見たかった結末はこういうものであったと。
いわば大河的RPGシミュレーション・ゲームでTVシリーズのルートを経て、旧劇場版ルートをクリアした後、ようやく2007年『序』をもって登場した本チャン=新劇場版ルートを14年の月日をかけてプレイし続け、ようやく達成できたといったカタルシス!
同時に、四半世紀というあまりにも長かった時の流れに、思わず溜息を漏らしてしまったのも事実です。
(TVシリーズ開始時に14歳だった人が、もう40歳前後になっているわけですから……)
一方で、今回の作品はそれまでの新劇場版3作はもちろんのこと、TVシリーズや旧劇場版にも大いに目配せが利いていて、その伝で申せば、可能ならばひととおり復習しておいたほうがより楽しめるかもしれません。
それは、かつてガンダム・シリーズの生みの親・富野由悠季監督が『∀ガンダム』(99~00)で、それまでの自分が関わってないものも含むガンダム・サーガをすべて「黒歴史」の名のもとに包括しながら認めたのと同じ感覚のような気もしています。
つまり庵野秀明総監督は、TV版も旧劇場版も許容した上で、今回の新劇場版のラストで全ての決着をつけた。そう言い切ってもよいのではないかと思われてならないのです。
四半世紀という長い時を経ての真の結末
既にSNSなどでお披露目されていた10分強の冒頭部ですが、実に迫力ある戦闘シーン足り得てはいます。
ただし、マニアックな分析を求める向き以外の観客にとっては「頭の掴み」以上のものには成り得てはおらず、やはり主人公・碇シンジのその後はどうなった? の方にこそ興味の矛先は向いているはず。
実際この後、期待に違わず、前作『Q』(2012年)のラストですっかり心を閉ざしてしまったシンジがいかにして復活するのか? しないのか?(旧劇場版を体験していると、どうしてもそう考えてしまう!?)が前半部の焦点となっていきます。
この前半部、あたかもセルジオ・レオーネ監督『ウエスタン』(68)に登場した西部開拓の新設町のように牧歌的に綴られているのが心地よくも印象的で、またここにはシリーズのファンにとっては懐かしい顔が多数出てきますので、そこもお楽しみではあることでしょう。
(一方でこの前半部の音楽、エンニオ・モリコーネではなくニーノ・ロータ的というか、特に『太陽がいっぱい』(60)を彷彿させる旋律が聞こえたように感じられたのは気のせいでしょうか)
何よりもここで新生・綾波レイの人としての目覚めがぽかぽかと描かれるのも好ましいところで、中にはこうした一連の描写だけでエンドマークを迎えても良いのでは? と思ってしまう方がいてもおかしくないほど。
もっとも、ここでシンジが復活するや否やの結論は意外にあっさりしたもので、そこに至るまでの心地よい雰囲気に流されつつ、どこかごまかされたようでもあり、描写不足の感は否めないのは残念。
この後、中盤からクライマックスにかけてはヴィレVSネルフの激戦を主体とする人類存亡の戦いが、大画面であればあるほど迫力が増すであろう一大スペクタクルとして描かれていきます。
正直なところ、最近ここまでスケールの大きな日本映画は見たことがありません。
またこれまで『破』(09)で『太陽を盗んだ男』(79)の楽曲を劇中に流し、『Q』で『ブルークリスマス』(78)の英語タイトルをあからさまに画面に出すなどのオマージュ的お遊びを仕掛けてきた新劇場版ですが、今回も日本の特撮映画および映画音楽ファンがあっと驚く仕掛けが用意されています。
(あまりその手のものに詳しくない方は、エンドクレジットでタイトル名をご確認ください)
あと、映画の後半部からエヴァ・シリーズ独自の難解な用語が淡々と台詞で繰り出されていきますが、例によって何が何だかさっぱりわかりませんので(もっともインテリジェンスに自信がある方は、どんどん解読チャレンジしてみてください)、理解しようとするのではなく、その声色であったり声音そのものを魅力に転化させながら、事の成り行きを見守るのが得策でしょう。
(私もかつて旧劇場版を見た後、さまざまな用語の意味を知りたくて、いろいろ関連書籍など買いあさったものでしたが、結局全てを解読するのは不可能とあきらめて、新劇場版シリーズに至っては何も考えず感覚的に接するようにしています)
上映時間2時間35分とは、『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』(78)を越える長尺ではありますが、前半の牧歌的な前半を経ての後半のバトル・モードまでのテンポは実に良好。
ただしクライマックス以降は、エヴァならではの精神世界モードも始まるので、このあたりで若干トイレに行きたくなる方も出てくるかもしれません。
(上映前にトイレは済ましておきましょう。あと、コーヒーなど利尿作用がある飲み物も控えたほうが賢明)
そして今回いかなるフィナーレを迎えるかは、それこそネタバレの極致になるので避けますが、大方納得&好印象&感動をもたらしてくれることでしょう。
それにしても、本当にこの結末を見るまでの四半世紀は長かった!
「さよならエヴァンゲリオン!」
そう叫びたい気持ちと同時に、これから先の指針みたいなものを見失ってしまったような、そんな軽い空虚感にも見舞われてしまっているのも事実なのでした。
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(文:増當竜也)
–{『シン・エヴァンゲリオン劇場版』作品情報}–
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』作品情報
基本情報
総監督:庵野秀明
監督:鶴巻和哉/中山勝一/前田真宏
製作国:日本
公開日:2021年3月8日
上映時間:155分
配給:東宝=東映=カラー
予告編
スタッフリスト
企画・原作・脚本:庵野秀明
総作画監督:錦織敦史
作画監督:井関修一/金世俊/浅野直之/田中将賀/新井浩一
副監督:谷田部透湖/小松田大全
デザインワークス:山下いくと/渭原敏明/コヤマシゲト/安野モヨコ/高倉武史/渡部隆
CGIアートディレクター:小林浩康
2DCGIディレクター:座間香代子
CGI監督:鬼塚大輔
CGIアニメーションディレクター:松井祐亮
CGIモデリングディレクター:小林学
CGIテクニカルディレクター:鈴木貴志
CGIルックデヴディレクター:岩里昌則
動画検査:村田康人
色彩設計:菊地和子(Wish)
美術監督:串田達也(でほぎゃらりー)
撮影監督:福士享(T2 studio)
特技監督:山田豊徳
編集:辻田恵美
テーマソング:「One Last Kiss」宇多田ヒカル(ソニー・ミュージックレーベルズ)
音楽:鷺巣詩郎
音響効果:野口透
録音:住谷真
台詞演出:山田陽(サウンドチーム・ドンファン)
総監督助手:轟木一騎
制作統括プロデューサー:岡島隆敏
アニメーションプロデューサー:杉谷勇樹
設定制作:田中隼人
プリヴィズ制作:川島正規
制作:スタジオカラー
配給:東宝、東映、カラー
宣伝:カラー、東映
製作:カラー
エグゼクティブ・プロデューサー:庵野秀明/緒方智幸
コンセプトアートディレクター:前田真宏
監督:鶴巻和哉/中山勝一/前田真宏
総監督:庵野秀明