「呪術廻戦」だけじゃない!設立10周年のアニメ制作会社「MAPPA」が世に放ってきたおすすめアニメ10選

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最近Twitterで、「#MAPPA」というトレンドを見たことはありませんか? MAPPAはこれまた最近毎週のようにトレンドを賑わせている『呪術廻戦』のアニメ制作を担うアニメーションスタジオです。『チェンソーマン』のアニメを作ると発表されたときも、話題になっていました。

そもそもアニメを観る人であっても、制作会社まで注目する人はそう多くはないと思います。ただアニメを作る会社に目を向けて作品を観てみると、自分と波長の合う「神アニメ」「名作」との思いがけない出会いがあることも……。

そこで今回は「MAPPA」が世に放ってきた数々のアニメの中から、筆者がおすすめしたい10作品をピックアップしました。

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もくじ

はじめに:強みが読めないアニメ制作会社「MAPPA」

1:ジャズ×青春『坂道のアポロン』

2:問いを残す『残響のテロル』

3:スケートシーンにうっとり『ユーリ!!! on ICE』

4:日常を通して戦争をリアルに描く『この世界の片隅に』

5:原作者が唸るアニメ化『BANANA FISH』

6:MAPPAの冒険に脱帽『ゾンビランドサガ』

7:手塚治虫の名作をリブート『どろろ』

8:なんじゃこりゃぁぁぁあああ!!『さらざんまい』

9:最後まで見逃せぬ『体操ザムライ』

10:ビッグタイトルを継承『進撃の巨人 The Final Season』

最後に:アニメの可能性をあらゆる角度で届けるMAPPA

–{強みが読めないアニメ制作会社「MAPPA」}–

強みが読めないアニメ制作会社「MAPPA」

MAPPAは、手塚治虫氏が創設したアニメーションプロダクション「虫プロダクション」の出身でマッドハウスの元取締役社長だった丸山正雄氏が、片渕須直監督の『この世界の片隅に』を制作するために立ち上げたアニメーション制作会社です。会社名の「MAPPA」は“Maruyama Animation Produce Project Association”の頭文字をとったものだそう。現在は『鉄コン筋クリート』や『デトロイト・メタル・シティ』を制作した「STUDIO4℃」出身の大塚学氏が社長を引継ぎ、2021年で設立10周年を迎えています。

アニメーション制作会社には、「日常系が得意」「バトルものはここ」みたいに「この会社といえば」といった得意分野や特色があります。ただMAPPAは、そのスタジオならではの強みみたいなものが読めない会社です。

アクションシーンが激しいバトルもの、シリアスなサスペンスもの、華やかでかわいいアイドルもの、実写を見ているかと思うくらい動きまくるスポーツものなど、制作してきた作品のジャンルは多岐に渡ります。中には「この企画どうやって通したんだろう」と思わず制作の裏側を勘ぐってしまうくらい、エッジの効いた作品も。

また手描き作画とCGとの融合は、アニメーション制作会社の中でもトップクラスに君臨していると、個人的には感じています。

さらに会社の規模を大きくしていく姿勢にも、前向きな印象を受けます。

2018年からMAPPAは、年間60台ペースで新マシンを導入しているそう。2Dと3Dのハイブリッド作画を実現できているのには、この機材への投資も大きく影響しているでしょう。仙台にも新スタジオを作り、業界では珍しいアニメーターの正社員雇用を実現。また『彼氏彼女の事情』でキャラクターデザインを担当したベテランアニメーター平松禎史さんを社員として迎え入れ、後進教育にも力を入れているそうです。

このような取り組みもあってかMAPPAは、今や1年間のどのクールでも名前を見ないことがないのではと思ってしまうくらいたくさんの作品を手掛ける制作会社となっています。

ちなみに筆者はMAPPA作品が好きで、広報の採用が出た時にわりと本気で応募を検討したものの、杉並区近辺の猫可物件の家賃の高さに生きていける自信がなく断念したことがあります。

と、筆者の余談はさておき……、肝心のMAPPAおすすめ作品を紹介していきます。

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–{1:ジャズ×青春『坂道のアポロン』}–

1:ジャズ×青春『坂道のアポロン』

2012年4月にフジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」放送された『坂道のアポロン』。MAPPAにとってこの作品は、初の元請け作品(手塚プロダクションと共同制作)です。

舞台は、米軍基地がある長崎県佐世保市。そこへ越してきた主人公の西見薫は、転校先で不良・川渕千太郎とその幼なじみの迎律子、そしてジャズと出会います。ジャズを鳴らすことで生まれ深まっていく高校生の友情と恋愛を描いた青春物語です。

高校生の頃といえば、背伸びをしたい年頃。この作品ではそんな“大人と子どもの狭間にいる”年代の、ちょっとずるい部分も垣間見えるリアルな友情や恋愛が、大人びたジャズの音色とともに伝わってきます。

アニメ 坂道のアポロン オリジナル・サウンドトラック

また毎話演奏されるジャズの名曲の数々は、きっと耳なじみのあるものばかり。まるでジャズバーにいるかのような臨場感を生み出す、緻密でめちゃくちゃ動く演奏シーンの作画も必見です。

加えて1960年代の昭和レトロな街並みや鮮やかで大胆なファッション、ロックミュージックの流行、さらには学生運動の興隆など、活気あふれる若者たちの描写が、非日常を感じさせてくれます。

『坂道のアポロン』は、普遍的でありながらも今の時代では味わえない青春体験が味わえる作品です。

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–{2:問いを残す『残響のテロル』}–

2:問いを残す『残響のテロル』

MAPPA初のオリジナルテレビアニメとして、2014年7月に放送された『残響のテロル』。ある冬の日、青森にある核燃料再処理施設から“何か”が盗まれたところから物語は始まります。そして物語は半年後の夏の東京へ。スピンクスを名乗る2人組の男による大規模な都庁爆破テロをきっかけに巻き起こるさまざまな事件を描いた、クライムサスペンス作品です。

見どころは、スピンクスと警察の頭脳戦。推理にギリシャ神話が絡んでくるため非常に難解な部分もあるのですが、頭がキレる人同士が脳みそをフル稼働して戦っている様子は非常にスリリングです。

単なる“犯罪者vs警察組織”の構図で終わらないストーリーも魅力的。さまざまな思惑や過去が絡まり合い、それが事件の根本を紐解いていくトリガーとなっていく過程にもまたハラハラさせられます。

また核や戦争、その裏にある政治都合の人権軽視など、扱うテーマが非常に重い作品でもあります。穏やかな今の社会や自分の日常とはほど遠いと感じてしまうようなテーマですが、どうしてか無視できない、どこか今の社会や自分にも通ずるものがあるような気がする、そんなリアリティを感じさせる一面も持っている作品でしょう。

今生きているこの社会が本当に穏やかなのか、平和なのか、このままでいいのか――。『残響のテロル』は、自分に問い続けるきっかけをくれるアニメです。

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–{3:スケートシーンにうっとり『ユーリ!!! on ICE』}–

3:スケートシーンにうっとり『ユーリ!!! on ICE』

『ユーリ!!! on ICE』は、2016年10月期に放送されたフィギュアスケートを題材としたMAPPAのオリジナルアニメです。

物語は、グランプリファイナルで惨敗し現役引退も視野に地元へ帰っていた日本のフィギュアスケーターの勝生勇利が、突然目の前にやってきた世界選手権5連覇という偉業を成したロシアのリビングレジェンドフィギュアスケーター ヴィクトル・ニキフォロフの一言をきっかけに、コーチとなった彼と一緒に再びグランプリファイナルでの優勝を目指すというもの。

本作の見どころはなんといっても、スケートシーンでしょう。氷が削れる音とその軌跡。エッジに反射する光。スポーツとしてのスピード感と芸術競技としての豊かな表現力。勇利のライバルであり本作の“もう1人のユーリ”である若き天才スケーター ユーリ・プリセツキーをはじめとする、世界各国のスケーターたちの個性が輝きまくるプログラム。美しさと気迫がみなぎるスケートシーンは、一瞬たりとも見逃せません。

さらにスケート音楽も必聴です。ふたりの“ユーリ”が滑る対称的な「愛」のテーマや、勇利のフリープログラムの「Yuri on ICE」など、そのスケーターらしさが光る名曲の数々がスケートシーンをより華麗に彩ってくれます。

また公開延期にはなっていますが、『ユーリ!!! on ICE 劇場版 : ICE ADOLESCENCE(アイス アドレセンス)』の公開も控えています。

劇場版の発表後しばらく何の情報もなかったせいか、公開延期の報を見たファンからは「よかった、集団幻覚じゃなかった」という言葉が飛び出しTwitterのトレンドにもあがりました。それくらいファンが待ちわびている作品とも言えるでしょう。ちなみに筆者も大スクリーンで『ユーリ!!! on ICE』のスケートシーンを拝めると考えるだけで、生きる気力がわいてくるタイプのファンです。

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–{4:『この世界の片隅に』}–

4:日常を通して戦争をリアルに描く『この世界の片隅に』

MAPPA立ち上げのきっかけとなった『この世界の片隅に』は、2011年の設立から約5年の月日をかけ、2016年11月に世に送り出されました。

物語の舞台は太平洋戦時下の広島・呉。突然持ち込まれた縁談がとんとん拍子に進み、この地の北条家へ嫁ぐこととなった主人公すずの、“日々の暮らし”を描いています。

戦争へ「NO」を貫く作品はこれまでにもたくさんありました。ただ戦争を「当たり前を奪われることが日常だった人」の視点で描く作品は、非常に珍しいと思います。

また本作は2019年12月に『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』という、新たに約2500カット、40分間の映像を追加した別バージョンも作られました。

『この世界の片隅に』では、すずと嫁ぎ先の義理の姉・径子との関係性が主軸として描かれていましたが、『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』では原作漫画で描かれていたすずと夫の周作、そして遊女のリンの三角関係がストーリーにしっかりと組み込まれました。この描写が加わっただけで、ぼんやりしているように見えていたすずが、実はやりきれない想いと折り合いをつけながら生きる大人であるということが鮮明に見えてくるのです。

日本は今のところ、戦争とは距離を置いているように見えます。ただこの作品を観たら、戦争という形ではないものの、自分たちの暮らしを守ってきたものが社会の流れの中で奪われていく共通点のようなものも見えた気がしました。

見えていないだけできっと、戦争は私たちの日常といつでも隣り合わせにある。だからこそ今ある幸せをどうすれば守っていけるのか――。

すずさんはやりきれない想いを抱えながら生きた日々を通して、私たちに優しく問いかけてくれるのです。

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–{5:原作者が唸るアニメ化『BANANA FISH』}–

5:原作者が唸るアニメ化『BANANA FISH』

少女漫画の不朽の名作『BANANA FISH』。連載終了から20年以上の月日を経て、2018年7月にテレビアニメが放送されました。

頭脳明晰、高い身体能力、誰もが惹きつけられる美しい容姿。そのカリスマ性から若干17歳にしてストリートギャングを束ねるボスとしてニューヨークで名を馳せていた主人公アッシュ・リンクス。アッシュは、手下が「人殺しをしない」という組織の禁忌を犯し銃撃した男から、ロケットペンダントと“ある言葉”を託されます。その言葉はイラク戦争から帰ってきてまともに言葉も交わせないアッシュの兄が繰り返しうわごとのように漏らしていた、「BANANA FISH」。アッシュはこの言葉の正体を追っていくこととなります。

この作品の魅力は、アッシュと彼が唯一心を許した奥村英二との“言葉にできない関係性”と、生死と隣り合わせのハードな世界観とのコントラスト。英二はカリスマボスであるアッシュを取材するためにカメラマンの助手としてニューヨークへやってきたのですが、その取材中に事件に巻き込まれてしまい、そのまま彼とともに行動していくこととなります。

生死と隣り合わせの世界を生きるアッシュと銃のない平和な日本で暮らしてきた英二。本来なら交わることがなかったであろう2人の少年が魂でつながる関係性は、視聴者が「守りたい」と思ってもおかしくないくらいあまりにも美しく柔らかなものでした。だからこそその関係を壊しにかかってくる、銃撃あり、暴力あり、ドラッグありの世界にハラハラさせられるのです。

なにより公式サイトに掲載されている原作者・吉田秋生氏がアニメに寄せた一撃必殺級のコメントを見ればきっと、視聴したくなると思います。

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–{6:MAPPAの冒険に脱帽『ゾンビランドサガ』}–

6:MAPPAの冒険に脱帽『ゾンビランドサガ』

2018年のアニメ界の話題をかっさらったといっても過言ではない『ゾンビランドサガ』。
ここまでの作品紹介では一応あらすじっぽいものに触れてきましたが、この作品については何も言えません。なぜなら1話冒頭で“終わる”からです。

事前にPVや予告編が公式サイトにあがり、ニュースサイトで取り上げられるのが常となっている近年のアニメ。もちろんゾンビランドサガの公式サイトでもPVは公開されていました。「とりあえずゾンビは出るな」とだけ分かるPVが。

キックオフムービーとかワケが分からな過ぎて、もはや恐怖。

オリジナルアニメとはいえ、あまりにも情報量が少なかったこの作品。初見の感想は「MAPPA、冒険したなあ」でした。

この感想は的を得ていたようで、共同制作のCygames社内では企画の稟議がなかなか通らず、社長の出身地を(無理矢理)くっつけることでなんとか通過させたという逸話もあるほど。

ただそんなMAPPAの冒険は、多くの心を鷲掴みにしたようです。『ゾンビランドサガ』は2018年度に上映・放映された全作品の中で最も優れた作品に贈られる「東京アニメアワードフェスティバル2019(以下、TAAF2019)」やniconico動画の「ネットユーザーが本気で選ぶ!アニメ総選挙2018年間大賞」を受賞しています。

ちなみに2期の放送も決定。MAPPAの10周年記念作品として、2021年4月から『ゾンビランドサガリベンジ』がスタートします。

2期が始まる前にとりあえず、この得体の知れない作品の向こう側へ行ってみませんか?

■若干のネタバレならいっか、という人はこちらの記事ものぞいてみてください
https://cinema.ne.jp/article/detail/45837

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–{7:手塚治虫の名作をリブート『どろろ』}–

7:手塚治虫の名作をリブート『どろろ』

手塚治虫氏の名作漫画『どろろ』。過去にもアニメ化されたこの作品の再アニメ化を担ったのも、MAPPA(手塚プロダクションと共同制作)でした。

室町時代の醍醐国。領主の醍醐景光は、領土が飢饉と流行り病に苦しんでおり天下に名をとどろかす望みが叶いそうにない現状をなんとかしようと、「願いを叶えてくれるなら、なんでもやる」と良心を捨て鬼神と取引をします。その結果鬼神に奪われたのは、生まれたばかりの我が子の身体。命はあるものの身体のあちこちが欠けた我が子を、景光は川に流して捨てさせます。

時が経ち醍醐の国に平和が訪れた頃、ある町で盗みをはたらいていた子ども盗賊どろろは、全身がほぼ作り物の少年 百鬼丸と出会います。百鬼丸の強さに興味を持ったどろろは、彼の“妖怪を倒して自分の身体を取り戻す”旅についていくことに。本作はそんなふたりの、過酷で残酷な旅路を描いた作品です。

その生い立ちゆえ、感情を持ち合わせておらず人間らしさも微塵も感じさせない百鬼丸。彼は身体を取り戻しどろろとの交流を深めていく中で少しずつ人間らしさを得ていくのですが、目を伏せたくなるような世の中の汚い部分や自分に降りかかった悲劇とも向き合わざるを得なくなります。

またそのストーリーをさらに過酷なものに感じさせる絵の雰囲気にも注目を。和紙のテクスチャがかかったような薄暗い映像づくりは、百鬼丸とどろろに降りかかる困難を強調していたように思います。

誰かの犠牲や不幸の上に成り立つ繁栄や幸福が、どういう結末を迎えるのか。またどこか今の時代にも通ずるものを感じる作品でもある『どろろ』。全24話、じっくり時間が取れる時に一気見をおすすめします。

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–{8:なんじゃこりゃぁぁぁあああ!!『さらざんまい』}–

8:なんじゃこりゃぁぁぁあああ!!『さらざんまい』

なんというかMAPPAは、得体の知れない作品を世に放つ宿命でも背負っているのだろうか……。そう思ってしまった作品が2019年4月に放送された『さらざんまい』です。

物語は「尻子玉を抜かれてカッパになってしまった3人の男の子が人間に戻るためにつながってゾンビの尻子玉を奪うミッションに挑む」というもの。これを聞いて「このライターは何を言っているのだろう」と思われた方もいるでしょう。安心してください。筆者も最初はそう思いました。

物語が進んでいく中で、伏線は回収され話の筋を理解できるようになると期待すると思います。ただこの作品の場合、ありとあらゆるものが抽象的に表現されているため、なにもかもが謎であり伏線に見えてくるのです。そうなると頭は大混乱を起こします。筆者は考察をするのをやめ、ワケがわからない世界に飛び込む選択を取りました。

理解できていないのになぜハマるのかと思われた方もいるでしょう。その理由はやはり、不思議な画づくりとかわいらしいカッパやキャラクターたちに惹かれたからです。

舞台は東京浅草。現地に行ったことがない人でもテレビや雑誌で見たことがある風景からちょっとマニアックな場所までかなり細かく再現されており、聖地巡礼も盛り上がりました。そこにカッパやなんだかゾンビという非科学的な存在もいるわけです。歴史ある街並みとカッパたちが生みだすミスマッチ具合が、この作品の「読めない」面白さをさらに引き上げていたと思います。

さて、お聴きいただけましたか? もう聴いてしまったあなたはきっと『さらざんまい』が気になって仕方がないのでは? 

これらの“一度耳にすると離れない”楽曲もこの作品に惹きこまれる大きな理由だと思います。

「なんじゃこりゃぁぁぁあああ」というワケの分からなさに病みつきになってしまうため、用法要領に気をつけつつぜひご覧ください。

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–{9:最後まで見逃せぬ『体操ザムライ』}–

9:最後まで見逃せぬ『体操ザムライ』

2020年10月に放送されたMAPPAのオリジナルテレビアニメ『体操ザムライ』は、肩の不調により思うように演技ができず引退の瀬戸際に立たされている、かつて「サムライ」と呼ばれ日本体操界のスターだった荒垣城太郎が、娘や家族、コーチやクラブのメンバー、そして突然目の前に現れた謎の忍者と一緒に、再起を目指す物語です。

この作品の見どころ、と書かなくてもときっと惹きこまれるのは、体操シーンでしょう。しなやかで力強い演技は、まるで実際の競技を見ているかのようです。鉄棒やあん馬の手の持ち替えの滑らかな動きや跳馬の回転のスピード感は、アニメーションでここまで描けるんだという衝撃すら受けます。

競技者アングルで鉄棒を描いているのも特徴的。競技をしていなければ見ることのない景色描写は、アニメだからこそできる表現だと思います。

さらに『体操ザムライ』は、人間ドラマとしても楽しめる作品です。劇中では城太郎と家族をはじめとする個性豊かな周囲のキャラクターとの絆が、日常に溶けこむ形で丁寧に丁寧に描かれています。“人との繋がり”を通して城太郎の困難な再起の道のりが現実味を帯びていく過程に、心が揺さぶられるのです。

また2002年を舞台にした作品なので、懐かしいトレンドやアイテム、楽曲もたくさん登場します。ここに心がくすぐられる人もいるでしょう。

体操アニメだと思って観始めたら、いろんな角度で楽しめるエンターテイメント作品だった、という驚きがもらえるアニメです。

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–{10:ビッグタイトルを継承『進撃の巨人 The Final Season』}–

10:ビッグタイトルを継承『進撃の巨人 The Final Season』

原作漫画が発行部数世界累計1億部を突破した『進撃の巨人』。そのアニメはすでに1期から3期までWIT STUDIOという制作会社にて作られ、ファンから大きな支持を受けていました。まさかそんなビッグタイトルの、しかも物語を締めくくる最終章が、別の会社であるMAPPAに継承されるなんて誰が予想したでしょうか。

ずっと謎に包まれていた巨人と壁の外の真実が明らかになったseason3。そして続く物語「マーレ編」は、これまでとは全く異なる視点で始まりました。

物語の区切りのタイミングでもあったことからWIT STUDIOは、「今回でラストに」とプロデューサー陣に相談したそうです。ビッグタイトルの重責を考えると、簡単には引き受けるとは言えないでしょう。ただMAPPAだけが「考えてみます」という返答をして、最終的に制作を担うこととなったそうです。

巨人の作画にCGを効果的に活用する、原作寄りのキャラクターデザインを採用するといった、3期までの雰囲気から思い切って変えたなと感じる部分も多々あるFinal Season。賛否両論はありますが、この変更こそがMAPPAの挑戦であり、このスタジオらしさなのではないかと個人的には感じています。

『進撃の巨人』シリーズは非常に物語が複雑なため、MAPPAが手掛けるFinal Seasonからだとおそらく話の内容を理解するのは難しいでしょう。“毎日数話ずつ”と“休日まとめ見”を組み合わせて、WIT STUDIOとMAPPAの進撃の巨人を網羅してみてはいかがでしょうか。

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–{最後に:アニメの可能性をあらゆる角度で届けるMAPPA}–

最後に:アニメの可能性をあらゆる角度で届けるMAPPA

当初5作品に絞る予定だった、この企画。でも絞りに絞って10作が限界でした。それくらいMAPPAの作品は、あらゆる角度から感情を揺さぶり、アニメーションの可能性を視聴者に感じさせてくれるのです。

多種多様な作品との出会いを届けてくれるMAPPA。きっとこの制作会社つながりで作品を探せば、お気に入りのアニメと巡りあえると思います。

また他にもアニメーション制作会社はあります。「この作品面白いな」と思うアニメを観た時はぜひ、その制作会社にも注目してみてください。

【参照・参考】
・ドロヘドロ、ゾンビランドサガ…アニメスタジオ・MAPPA、ヒット作の裏にある“手のかかること”をやる精神【インタビュー】/アニメ!アニメ!
・<せんだい進行形>コロナ下、地方拠点に存在感 アニメ制作MAPPA仙台、スタジオ設立2年半/河北新報
・社内PCの構成比率9割超え!MAPPAが頼るマウスコンピューター製品DAIVの安定感とは?/CGWORLD.jp 
・劇場版「SHIROBAKO」特集 P.A.WORKS 堀川憲司×MAPPA 大塚学/コミックナタリー
・【連載】TVアニメ『ゾンビランドサガ』スタッフ陣が明かすプロジェクトの全貌【SAGA:02】/アニメイトタイムズ
・「進撃の巨人 The Final Season」プロデューサー陣が語る“これまで”と“これから”とは⁉/WEB Newtype
・特集MAPPAの現在形/SWITCH VOL39. NO.3

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(文・クリス)

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