『怒り』『悪人』などのベストセラーで知られる人気作家・吉田修一の同題小説『太陽は動かない』を、『海猿』『MOZU』の羽住英一郎監督が映画化。主演は藤原竜也、共演に竹内涼真、佐藤浩市など。ブルガリアでの大掛かりなロケーションなど、日本映画になかったスケールを感じさせるスパイアクション大作映画に仕上がっています。映画と同じスタッフ・キャストによって同時進行で、WOWOWオリジナルドラマ『太陽は動かない―THE ECLIPSE―』が製作されたことも話題になっています。
ストーリー
謎の組織・AN通信のエージェント・鷹野(藤原竜也)と相棒の田岡(竹内涼真)の心臓には爆弾が埋め込まれており、24時間ごとの定期連絡を怠ると爆死するようになっている。24時間ごとに死の危険が迫る極限状態の中、二人は全人類の未来を決める次世代エネルギーの極秘情報をめぐり、各国のエージェントたちと命がけの頭脳戦を繰り広げる。
世界を股にかける壮大なスケール
『海猿』『MOZU』のスタッフがさらなるスケール感を目指して制作したのがこの『太陽は動かない』。
『エクスペンダブルズ』シリーズなどのハリウッド大作も手掛けたブルガリアのB2YProductionsが製作チームとして全面参加。首都ソフィアの市街地を封鎖したカーチェイス、爆破アクションは日本では実全不可能なリアリティ与えています。
さらに同国内の撮影スタジオでは大掛かりなオープンセットを創り上げ、インドとキューバ、鷹野とデイビッド・キムが格闘シーンを展開する中国の高層ビルの天窓シーンなどが撮影されました。また鉄道を終日借り切って実際に走らせながら撮影するということも実現、日本ではまず不可能な撮影によって作られたシーンが連続します。
–{藤原竜也×竹内涼真 初共演にして最高のバディに!}–
藤原竜也×竹内涼真 初共演にして最高のバディに!
主役の鷹野の演じるのは『バトルロワイアル』『デスノート』から始まり、『22年目の告白-私が殺人犯です-』『カイジ』など突飛な設定の世界観の作品に圧倒的な説得力を与え続けてきた藤原竜也。本作でも抜群の存在感で、物語を引っ張ります。
そのバディを演じるのが竹内涼真。ドラマ「テセウスの船」「君と世界が終わる日に」などで硬軟自在な演技を見せていますが、本作でも軽さと心臓の爆弾に怯える弱さを交互に見せて、キャラクターに深みを与えています。また、流石は仮面ライダー出身と思わせるアクションシーンは藤原竜也と並んでも見劣りがしないものになっています。
二転三転するストーリーと24時間ごとに迫るタイムリミットの緊迫感
鷹野と田岡に課せられた任務は、過去最大にして最悪の任務。これまで完璧に仕事をこなしてきた鷹野にとっても命がけの任務となります。さらに、まだ経験が浅い田岡にとっては自分の任務、生き方に疑問を投げかかるほどの任務です。多くの情報を集め、状況の把握し続けてきた司令塔の風間をもってしても不明な出来事が続発、結果、手足となって動くエージェントを混乱と命の危機に陥れます。
この二転三転する展開に加えて、さらに24時間ごとの心臓に埋め込まれた爆弾のタイムリミットがエージェントの危機感、さらに言えば物語と、それを見る我々の心理をも追い込んでいきます。
エージェントへの無言の圧力をかけ続ける風間演じる佐藤浩市も相変わらずの頼もしさともいえる存在感で、厳しい任務と運命に有無を言わさない絶対的な指導者感・支配者感があります。そういう風間ですら、大きな組織のコマでしかないと分かる後半は物語の世界感の広さを見ることができます。
–{ハリウッド娯楽アクション大作に飢えている今こその映画!}–
ハリウッド娯楽アクション大作に飢えている今こその映画!
突飛な設定に文句なしの説得力を与える主演・藤原竜也の変わらぬ存在感に加えて竹内涼真、佐藤浩市、市原隼人、ハン・ヒョジュ、ビョン・ヨンハンらが揃った共演陣は、物語内で有機的に機能し、物語に推進力を与えました。
ブルガリア筆頭に各地で撮影されたことで普通の日本映画では得られた今までにないスケール感を感じることができます。物語を支えるアクションの数々は、メイン俳優が数か月のトレーニングを経てノンスタントで挑んでいて物語にリアリティを与えています。
ハリウッド娯楽アクションが新型コロナウィルスの感染拡大の影響で公開が延期され続けている中で、その渇望を満たしてくれるスパイアクション大作です。映画のヒット次第でしょうが、藤原&竹内のバディ感はなかなか魅力的ですし、佐藤浩市の風間の懐の深さも映画に重みを与えています。これ一作で終わるには少しもったいない感じがしますね。
–{『太陽は動かない』詳細あらすじ}–
『太陽は動かない』詳細あらすじ
謎に包まれた日本のエージェントが世界を股にかけて暗躍していた。表向きは小さなニュース配信会社を装った、その組織の名は“AN通信”。そのエージェントは24時間ごとに本部への定期連絡をしなければ情報を漏洩させた、裏切ったとされて、心臓に埋め込まれたチップの起爆装置が発動し、解除の申請ができなかった場合5分で爆死する…。
東欧・ブルガリアのとあるアパート。AN通信のエージェント山下が監禁され、絶体絶命のピンチに陥っていました。その山下を助けるべく、AN通信は敏腕エージェントを送り込みます。一気にアパート侵入すると屈強な敵たちを次々と倒していきます。
その男こそ鷹野一彦。そして、救出用の車を調達してきたのが若き相棒田岡亮一。二人は山下をアパートから脱出させますが、本部への連絡が間に合わず、二人の目の前で爆死します。鷹野と田岡は改めて任務の厳しさ、冷酷さを知るのでした。
山下救出に続く任務が鷹野と田岡のもとに届きます。司令塔はエージェント鷹野の育ての親とも言うべき風間。新たな任務はこれまでにない難解モノでした。ことのはじまりは中国で活動していたはずの山下がブルガリアいたこと。山下の痕跡を追ううちに、中国の巨大エネルギー企業CNOXの会長アンディ・ウォンの存在にたどり着きます。
エネルギー分野の寵児も言うべき彼はしかし、裏社会で陰然たる力を持ったフィクサーの一人でさらなる勢力の拡大を目指していました。鷹野と田岡はアンディ・ウォンの狙いを探るために、彼が参加するチャリティパーティーが開かれるウィーンに飛びます。
そこで見たアンディ・ウォンの隣には国籍不明の謎の美女AYAKOの姿がありました。さらに鷹野と因縁深い韓国人エージェントデイビッド・キムの姿もありました。調査を進める中で浮かび上がってきたのは、全人類の未来を決める次世代型太陽光エネルギーの実用化に関する巨大利権。
CONX=アンディ・ウォンは日本の大手電機メーカーMETと組んで次世代型太陽光エネルギーの開発に乗り出していました。しかし、この動きにはアンディ・ウォンの陰謀が隠されていました。CNOX=アンディ・ウォンはMETから特殊な蓄電技術だけを盗み取りエネルギー技術の実用化を独占しようとしていたのでした。
やがて、その利権と極秘情報、特殊技術を巡って世界各国のエージェントや裏組織が動き出し争奪戦に発展します。鷹野と田岡は命がけの肉弾戦と頭脳戦に挑むことに。もちろんその任務の最中でも心臓の起爆装置は常に動き続け、24時間ごとのタイムリミットが彼らに迫ります…。
(文:村松健太郎)