2021年2月14日より放送開始となったNHKの大河ドラマ「青天を衝け」。第1話から視聴率は20%と絶好調。
吉沢亮が主演を務め、新しい1万円札の顔にも採用された渋沢栄一の幕末から明治の激動の時代を描いていく。
この記事では、そんな「青天を衝け」の放送後に毎回徹底解説コラムを追記し一つの壮大な「青天を衝け事典」へ昇華していければと考えております。長い記事になっていくと思いますが、目次を利用して読みたい箇所だけお読み頂ければ幸いです。
もくじ
渋沢栄一の人生を簡潔解説
まずは渋沢栄一という人物の人生を簡潔に追ってみましょう。
渋沢栄一は、1840年3月16日に今の埼玉県深谷市、昔の武蔵国血洗島村に生まれます。「青天を衝け」第1話でも描かれたように非常にやんちゃ坊主でありながら、鋭い質問を大人に返すなど天才の片鱗が垣間見られました。
17歳の時には役人から無茶な金銭要求を受け社会制度に不満を持つように。その後尊王攘夷運動をする思想へと傾いていきます。
□尊王攘夷運動
=1858年、孝明天皇の許可を得ず日米修好通商条約を結んだ幕府への批判が高まり、天皇を尊ぶ「尊王」論と、外国勢力を追い払う「攘夷」論が結び付き、活発な尊王攘夷運動へと展開。開国に反対し、井伊直弼と対立していた水戸藩主徳川斉昭らは謹慎処分となった
23歳の時、高崎城を乗っ取る&横浜を焼き討ちを計画するも直前で断念。しかし、政府へそのテロ計画が漏れてしまい追われるように京都へ向かいます。そこで、「青天を衝け」では堤真一さんが演じる平岡円四郎の仲介の元、一橋慶喜へ仕えることに。彼は徳川最後の将軍、徳川慶喜になる人物です。
26歳に時、徳川慶喜が15代将軍になったため、渋沢栄一は幕臣となります。反幕府として横浜焼き討ちを計画していた人物が、幕府の中枢に入るとは人生わからないものです。
27歳の時、徳川昭武に従ってパリ万博の使節団に。パリで水道、電気、ガスなど機械化された社会に衝撃を受けます。合わせて、資本主義、株式会社なども学ぶ、実際儲けも出して帰路へ。この経験が後の近代日本を作り上げる根幹であるため、「青天を衝け」でどう描かれていくのか非常に楽しみです。
28歳の時、渋沢栄一は日本に帰国するもその前に大政奉還の後で徳川慶喜は退位。明治時代へと突入していました。渋沢栄一は帰国後、静岡藩の徳川慶喜の元へ行き、その恩から仕え続けることに。パリで学んだ会社制度を応用し、静岡藩に商法会所を設立。これは今で言う銀行×商社のような仕組みで、資金を募ってビジネスをするという今の商いでは当たり前のことを始めたのです。
その功績はたちまち話題となり、明治政府から声を掛けられ仕官。大隈重信の元で民部省から大蔵省へと渡り歩き、廃藩置県や通貨発行に携わります。しかし、大久保利通との抗争などもあり33歳の時、大蔵省を辞めます。
しかし、渋沢栄一の凄いところ。日本初の銀行「第一国立銀行」を開業させます。これは今のみずほ銀行です。ここから怒涛の起業家人生。彼が設立した会社その他は以下の通り。
・現・東京証券取引所
・現・東京電力
・現・東京ガス
・帝国ホテル
・現・東京海上日動
・現・東急電鉄
・現・東急不動産
・現・王子製紙
・現・日本郵船
・現・サッポロビール
・現・一橋大学
・現・東京経済大学
・現・日本赤十字社
・東京慈恵会
・理化学研究所
多くの方が一度は聞いたことのある企業ばかりでしょう。
そんなザ・ビジネスマン人生を送った後、社会福祉活動にも尽力。
「社会福祉施設東京養育院」を創設したり、「日本国際児童親善会」を設立しアメリカと親交したりと活躍の場をまだまだ広げていきます。
83歳の時には関東大震災が起きますが、ネットワークを駆使して政府より早く臨時病院・避難所・仮設住宅・炊き出しなど開始した功績も。
91歳で亡くなるまで多方面で活躍をし続けました。
ここまで記してきたものを、10に分けると以下のように整理できます。
少年時代
=頭が良いからこそ、反抗的とも取られていた
尊王攘夷運動
=高崎城乗っ取り→横浜焼き討ちを断念
一橋家へ仕官
=平岡円四郎の仲介から一橋慶喜へ仕える
パリ万博へ
=パリ万博への動向により「今の日本の礎」を得る
静岡藩へ
=銀行×商社のような商法会所を設立し軌道に乗る
新政府へ
=近代日本の国づくりに尽力(富岡製糸場も)
実業家に
=前述の通り、500以上の会社等を設立
社会事業へ
=一橋大学等の設立、貧困・社会福祉等への尽力
論語と算盤
=「道徳心と経済活動」、民間主導型の社会を解く
引退から晩年
=日米親善の促進、飛鳥山邸での外交活動
画像も置いておきますので、「青天を衝け」の理解に是非ご活用ください。
–{第1話のあらすじ&解説}–
第1話のあらすじ&解説
NHKの大河ドラマ「青天を衝け」、ここからは1話ずつ物語のあらすじと解説をしていければと思います。
第1話のあらすじ
武蔵国血洗島村(現在の埼玉県深谷市)で養蚕と藍玉作りを営む農家の長男として生まれた栄一(子役・小林優仁)。
人一倍おしゃべりの剛情っぱりで、いつも大人を困らせていた。
ある日、罪人が藩の陣屋に送られてきたことを知った栄一は、近くに住むいとこの喜作(子役・石澤柊斗)らと忍び込もうとたくらむが…。
一方、江戸では、次期将軍候補とすべく、水戸藩主・徳川斉昭(竹中直人)の息子、七郎麻呂(子役・笠松基生)を御三卿の一橋家に迎え入れる話が進んでいた。
第1話の解説
ほぼ同じ内容を動画でも展開しております。図解を用いているので合わせてお楽しみください。
■第1話の冒頭は、次何話で描かれるか?
「青天を衝け」第1話では、冒頭で吉沢亮さん演じる渋沢栄一が、草なぎ剛さん演じる徳川慶喜(一橋慶喜)に会うシーンから始まりました。その後厳かなオープニングタイトルが出た後、場面は変わって1844年、渋沢栄一4歳のシーンへと戻りました。
ここで疑問なのが、冒頭シーンを入れた理由です。
これはおそらくドラマの演出的な意味合いが強いです。「吉沢亮主演」の「青天を衝け」である以上、いきなり幼少期から描くとインパクトに欠ける側面があります。
そこで「青天を衝け」の前半のターニングポイントとなる渋沢栄一×徳川慶喜の初対面シーンを冒頭に置いたと推測されます。
ちなみのこのシーンは、1864年で渋沢栄一24歳の時です。テロ未遂で幕府に追われ、京へと向かった先での出来事です。
なお、NHK出版等から既に出ている「青天を衝け」の第16話までのシナリオを確認するとこの二人の初対面シーンが改めて出てくるのは第14話です。
つまり、そこまでは「渋沢栄一中心の話」と「徳川慶喜中心の話」とが別々に交互に描かれていくことでしょう。第1話からそれぞれの話が楽しかったわけですが、大きく交わることなく進んだ先で交わった時の化学反応が今からとても楽しみです。
■第1話から数話で大切な人物は?
「青天を衝け」に限らずNHK大河ドラマには数多くの人物が登場します。今回も人物相関図を見ると頭がクラクラしてしまう方がいらっしゃることでしょう。
そういう方は下記の画像をまずご覧頂ければと思います。
要するに「渋沢栄一側」は渋沢栄一と親、従兄弟が中心。そこに高島秋帆が関わるというのが第1話でした。今後もこれを軸に数名増えるという形となるでしょう。
一方「徳川慶喜側」は江戸幕府の人数が多いので複雑ですが、今後は基本的に徳川慶喜、平岡円四郎、徳川斉昭を中心に広げていけば混乱することは減るはずです。
■子役たちを整理する
「青天を衝け」第1話では、子役中心の物語となりました。今後吉沢亮さんを始めとして大人の俳優たちにバトンタッチされていきますが、公式Twitterでその深くが公開されておりましたので復習に見ておくと混乱する機会が減ることでしょう。
放送開始前に、子ども時代を演じる皆さんをあらためてご紹介します!#吉沢亮 さんが演じる #渋沢栄一 の少年時代を演じるのは、 #小林優仁 くんです。#青天を衝け #第1回#栄一目覚める pic.twitter.com/5qdIDpL9pb
— 【公式】大河ドラマ「青天を衝け」2/14スタート! (@nhk_seiten) February 14, 2021
#小田菜乃葉 さんが演じるのは、栄一の姉 #渋沢なか。なかはやがて、成長して #村川絵梨 さんへ。#青天を衝け #第1回#栄一目覚める pic.twitter.com/FE6a7bvRUa
— 【公式】大河ドラマ「青天を衝け」2/14スタート! (@nhk_seiten) February 14, 2021
栄一のいとこ #渋沢喜作。少年時代を演じるのは #石澤柊斗 くん。大人の喜作は #高良健吾 さんです。#青天を衝け #第1回#栄一目覚める pic.twitter.com/VyxB8Jrlvr
— 【公式】大河ドラマ「青天を衝け」2/14スタート! (@nhk_seiten) February 14, 2021
尾高惇忠の妹 #尾高千代 の少女時代を演じているのは #岩﨑愛子 さん。#橋本愛 さんが演じる大人の千代 になったら、栄一と…。 #青天を衝け #第1回#栄一目覚める pic.twitter.com/2jOpQ3AXwl
— 【公式】大河ドラマ「青天を衝け」2/14スタート! (@nhk_seiten) February 14, 2021
尾高惇忠の弟、#尾高長七郎 少年を演じるのは #須東煌世 くん。大人長七郎は #満島真之介 さんです。#青天を衝け #第1回#栄一目覚める pic.twitter.com/QUgKVD9vZW
— 【公式】大河ドラマ「青天を衝け」2/14スタート! (@nhk_seiten) February 14, 2021
#笠松基生 くんが演じるのは七郎麻呂。やがて #草彅剛 さん演じる #徳川慶喜 へ。#青天を衝け #第1回#栄一目覚める pic.twitter.com/loUVWl0SvV
— 【公式】大河ドラマ「青天を衝け」2/14スタート! (@nhk_seiten) February 14, 2021
■高島秋帆とは?
第1話の解説、最後に高島秋帆についてです。
先ほど、五代さまを発表しましたので、こちらのオフショットもどうぞ! 連続テレビ小説『あさが来た』でヒロインの夫・新次郎を演じた玉木宏さん。今回も大森美香さんの脚本で、栄一に影響を与える砲術家・高島秋帆を演じます。#青天を衝け #玉木宏#2月14日スタート#青天オフショット pic.twitter.com/ESIi9Yz1L9
— 【公式】大河ドラマ「青天を衝け」2/14スタート! (@nhk_seiten) February 9, 2021
牢獄に入れられており、オランダ語を話す謎の人物でしたがどうも悪い人ではなさそう。実は彼は長崎の出島で洋式砲術家をしていた人物。外国との関わりを煙たがられ、保守派の陰謀で冤罪で投獄の身となり岡部藩の牢へとやってきたのです。しかし、ペリー来航により、幕府に求められるようになり今後は無罪となり活躍の場を広げていきます。
以上が第1話の解説となります。
適宜修正や追記をすることで、よりわかりやすいものをお届けできればと思います。
–{第2話のあらすじ&解説}–
第2話のあらすじ&解説
第2話のあらすじ
父・市郎右衛門(小林 薫)から藍の商いを、いとこ・新五郎(田辺誠一)から読書を習い始めた栄一(子役・小林優仁)。でも一番の楽しみは、村祭りで獅子舞を舞うことだ。しかし、大人の事情で祭りは中止に。がっかりした栄一だが、ある計画を思いつく。一方、一橋家の養子に入った七郎麻呂(子役・笠松基生)は、慶喜と名を改め、将軍・家慶(吉 幾三)から実子のようにかわいがられていた。隠居の身の斉昭(竹中直人)は、息子を頼みの綱に政界に返り咲こうとする。そんな中、ペリー(モーリー・ロバートソン)が日本にやってくることになり…。
第2話の解説
ほぼ同じ内容を動画でも展開しております。図解を用いているので合わせてお楽しみください。
■今回描かれたのは1848年〜
今回の「青天を衝け」で描かれたのは1848年。時は第12代将軍 徳川家慶の時代。対外的には鎖国して200年以上が経過していました。鎖国の最中も、オランダや清などとの交流はし、琉球、アイヌ、朝鮮とも限定的ではあるものの交易をしていました。
当初は世界最強クラスだったオランダは衰退し、オランダ経由で入ってくる海外情報には難がありました。それ故に台頭してきた、イギリスやロシア、そしてアメリカなどの列強諸国の情報を正しく把握できていなかったと言われています。
また、200年も鎖国をしているので、「鎖国=当たり前」という国民も多い時代でした。
■徳川慶喜は当時11歳
第1話でも登場したもう一人の主人公と言っても過言ではない徳川慶喜。一橋家へ養子として入り、将軍を始めとして良くしてもらっています。しかし、退屈な日々と思っている節があります。将軍の勧めもあって、能を始めるも元の住まいである水戸藩が懐かしいと思ってもいます。
■渋沢栄一は当時9歳
一方で主人公である渋沢栄一は9歳に。少しずつ父親の仕事(藍に関する諸々)を学ぶようになっていました。何でも口に出してしまう子供っぽさがありますが、一方で論語を覚えるなど天才の片鱗も垣間見られます。「みんなが嬉しいのが一番」を心がけています。代官の無茶振りに憤るも、この「みんなが嬉しい」をサプライズの獅子舞で体現したのがこの第2話のダイジェストと言えるでしょう。
■渋沢栄一と徳川慶喜の対比を「踊り」で表現
今回演出で光ったのが渋沢栄一と徳川慶喜の対比を踊りで示したことです。
渋沢栄一は獅子舞を自発的に踊りました。そこにはみんなを喜ばせたい」という気持ちが強く感じられます。獅子(仮面)の下で笑顔を見せ、自らを解放するような表現です。
一方の徳川慶喜は大人になってから能を踊りました。時の将軍 徳川家慶のすすめで始めた能で、踊りも「みんなが見ているから」という受動的であります。能面を取った素顔には笑顔はなく、自らを抑制しているかのような表現です。
この対比が非常に明快でわかりやすく、第3話以降も「渋沢栄一と徳川慶喜」という対比が複数回描かれることでしょう。その積み重ねにより第14話と予想される二人の出会いは非常にドラマティックに映るでしょう。
–{第3話のあらすじ&解説}–
第3話のあらすじ&解説
第3話のあらすじ
市郎右衛門(小林 薫)と初めて江戸へ行った栄一(吉沢 亮)は、江戸の華やかさに驚くとともに、父の姿に商売の難しさを知る。その年の藍葉の不作により窮地に陥った父を助けるため、自ら藍葉の買い付けに行きたいと考える栄一だが…。一方、黒船が襲来した江戸は、大騒ぎ。家慶(吉 幾三)が亡くなり、次期将軍候補に慶喜(草彅 剛)の名が挙がるも、慶喜は反発する。そんな慶喜の腹心の部下にと、ある男に白羽の矢が立つ。
第3話の解説
ほぼ同じ内容を動画でも展開しております。図解を用いているので合わせてお楽しみください。
■歴史的背景「ペリーが来た」
時は1853年の江戸時代、徳川家慶の時代です。噂こそ聞こえていたものの、アメリカ合衆国からペリーが(香港経由で)黒船4隻を率いて浦賀に来航します。
ペリーはフィルモア大統領の国書を渡したいと申し出て、その書には「日本と親しく国交を結び、食料や燃料を調達するための港を開いてほしい」と記されておりました。
とは言うものの、日本は当時鎖国を始めて200年以上。そう簡単には応じられません。しかも将軍家慶が病床で対応できないという事態。それは事実でありつつも口実としても使い、ペリーは翌年の再来日を告げて去りました。
その10日後には徳川家慶が逝去。幕府内には鎖国派と開国派で意見の対立が起こり始めます。そんな中徳川慶喜の実の父で、一時謹慎の身にあった徳川斉昭が海防参与に抜擢されます。彼は愛国心から鎖国継続を強く表明します。
これが第3話における歴史的背景です。
■その頃徳川慶喜は?
その頃徳川慶喜は、寵愛されていた徳川家慶の逝去と権力復帰した実父徳川斉昭の存在とで心に葛藤を抱えていました。
実の父を憎んでこそいないものの、自分を利用して権力の階段を駆け上がろうとしているのではと思い、後の将軍候補にありながらもその実現を望まないでおりました。
■その頃渋沢栄一は?
一方、幕府とはまだ全く関係ない主人公の渋沢栄一は変わらず血洗島村におりました。従兄弟の尾高惇忠から「論語」等を習い、読書や学問に喜びを感じていました。
そんな中、父に連れられ、初めての江戸へ出向き商いでできている街に感銘を受けます。悪気なく「この街では武士の存在感もない」的なことを言ったところを、たまたま通りかかった平岡円四郎に文句を言われてしまいます。後に渋沢栄一と平岡円四郎は未来を共にするのですが、出会いはこのように最悪だったのです。
その後、血洗島村に戻った栄一は、初めて一人で藍の葉の買い付けに向かいます。最初こそ「何だ今日は息子か」と農民に舐められましたが、父親から学んだ藍の目利きは本物。質の高い藍を買い叩き、来期の豊作も願って現代でいう先行投資的な定価よりも高い金銭を払いもしました。栄一の持つ商いの才能が既に開花しているのが見受けられたわけです。
■渋沢栄一と徳川慶喜の対比
第2話でも描かれた渋沢栄一と徳川慶喜の対比は今回も見られました。
渋沢栄一は、一人前の商人になりたく、早く父に認めてもらいたい。実際今回認められて嬉しそうでした。
一方の徳川慶喜は、将軍になって利用されるのは御免。父に認められたり、頼られたくないと思っています。そのもやもやは、第4話で平岡円四郎との出会いにより和らぐことになりそうです。
第3話まで見てきてわかったことは、「歴史的背景を知る」→その上で「渋沢栄一と徳川慶喜の物語を堪能する」という形で見るのがベストということです。ドラマ内では北大路欣也さんが演じる徳川家康がナビゲーターとして歴史を解説してくれるのでそのシーンを聞き漏らさず、そこから先は「ドラマ」を楽しめば良いのです。
幕末-明治維新と歴史的には複雑な事象が絡み合う時代ですが、「青天を衝け」は視聴者が混乱しないように丁寧に演出されているなと改めて感じました。
–{第4話のあらすじ&解説}–
第4話のあらすじ&解説
第4話のあらすじ
栄一(吉沢 亮)は仕事にますます励み、もっとよい藍を作るにはどうしたらよいかと思い巡らせていたが、ある妙案を思いつく。
一方、幕府はペリー(モーリー・ロバートソン)の再来航が迫り混乱していた。
斉昭(竹中直人)は、次期将軍候補である息子・慶喜(草彅 剛)に優秀な家臣を付けようと、変わり者の平岡円四郎(堤 真一)を小姓に据える。
そしてついに、日米和親条約が締結。
開港のうわさは血洗島にも届き、栄一たちはがく然とする。
そんな中、父・市郎右衛門(小林 薫)の名代として、多額の御用金を申し渡された栄一は、その理不尽さに、この世は何かがおかしいと感じ始める。
第4話の解説
ほぼ同じ内容を動画でも展開しております。図解を用いているので合わせてお楽しみください。
■歴史的背景「ペリー再来日に備え、揺れる幕府」
時は1853年の。ペリーが再来日を宣言し、一度去った後のお話です。将軍は徳川家慶の死後、頼りなき徳川家定が就任。口うるさくないのが良いのか悪いのか、阿部正弘をはじめとした老中たちが幕府を実質的に動かしていました。
幕府関係者の大半が鎖国継続を支持する中、言い分はわかるもののその方針で本当に日本の国を守りきれるのか不安に思うものも多くいました。
そして翌年1854年にペリーが再来日。品川沖に台場(砲台を置く埋立地)の確認をしたペリーは強硬な態度に。結果的に横浜において1ヶ月の交渉の後で日米和親条約が締結されました。
開国は、「桜田門外の変」で殺される井伊直弼や、堀田正睦らが中心となって推進されました。一方で最後の最後まで鎖国継続、通商反対を貫き通していたのが徳川斉昭でした。徳川斉昭は第5話においても強硬な態度に出ますが、これらはあくまでも国を思い、天皇を敬っているからこそ。時に暴走こそしますが、彼には悪意はなく、ドラマにおいても決して悪役という立場ではないという点は覚えておきましょう。
なお、徳川斉昭の「通商反対」については、実は「日米和親条約」において受け入れられています。「日米和親条約」は、下田と箱館の開港をする条約で通商に関しては盛り込まれていなかったのです。もちろんアメリカは不服に思う部分があったため、これに関しては1858年の「日米通商航海条約」におい取り決めされることとなります。
■その頃徳川慶喜は?
徳川慶喜に関しては、平岡円四郎との出会いが描かれました。世間知らず、作法知らずの平岡円四郎ですが、丁寧に作法を教える徳川慶喜に対して非常に好感を覚える回でした。
なお、徳川慶喜は平岡円四郎に対して「諍臣」になってほしいと打診します。これは「自分が間違ってると思ったら、遠慮なく進言する」ということ。
人の意見を聞く謙虚な徳川慶喜という図を決定づけるエピソードでした。
■その頃渋沢栄一は?
その頃渋沢栄一は血洗島村において読書に商いにと忙しい日々を送っていました。
今回特に印象的だったのは藍農家の番付表を作って公開したこと。その年で最も良い藍を作った農家を「大関」としてもてなしたのです。また、そこで「どうやったらこんな良い藍ができるのか」をヒアリングすることで、他の農家も翌年参考にできます。
競争原理と協力姿勢、文字通りの「切磋琢磨」が実現することで、村全体の藍の質向上に繋がりました。後に500社以上を起業する渋沢栄一の商売人の片鱗がここにも見えたというわけです。
一方で渋沢栄一を怒らせるエピソードも。岡部の陣屋の代官、利根良春が莫大な御用金を要求してきたのです。これには一同不満を持つものの、代官の言うことは絶対の世の中なので承服します。
しかし、渋沢栄一は食って掛かりました。それは無礼に値しますが、視聴者からすれば栄一の言い分は至って常識的なもの。
それでも承服せねばならず、渋沢栄一は憤りました。この怒りから、渋沢栄一は社会に対して疑念を抱き始めます。それは後に「尊王攘夷運動」へと繋がっていくのです。
■渋沢栄一と徳川慶喜の対比
第2話、第3話で描かれた渋沢栄一と徳川慶喜の対比は今回も見られました。
が、今回は少し特殊でした。
今回は、「徳川慶喜=人の意見を聞く者」「利根良春=人の意見を聞かない者」という対比でした。
平岡円四郎は、そんな徳川慶喜に惚れ込みます。そして渋沢栄一は、人の意見を聞かない利根良春に憤りました。
こういった対比はおそらく第14話付近まで続くと推測されるので、鑑賞する際に頭に入れておくとより楽しむことができるでしょう。
–{第5話のあらすじ&解説}–
第5話のあらすじ&解説
第5話のあらすじ
惇忠(田辺誠一)に薦められた本で、清がアヘン戦争でいかに英国に敗れたかを知った栄一(吉沢 亮)は、開国した日本の未来を危惧する。
そんな中、栄一の姉・なか(村川絵梨)は、自身の縁談を、“相手の家に憑き物(つきもの)がいる”という迷信的な理由で伯父・宗助(平泉 成)たちから反対され、ふさぎ込んでしまう。
一方、幕府の方針をなおも受け入れられない斉昭(竹中直人)は暴走。老中・阿部正弘(大谷亮平)と斉昭の側近・藤田東湖(渡辺いっけい)は斉昭を必死にいさめる。そんなとき、大地震が江戸を襲う。
第5話の解説
ほぼ同じ内容を動画でも展開しております。図解を用いているので合わせてお楽しみください。
■歴史的背景「東海安政地震」を巡る幕府の対応
第6話では1854年の幕府が描かれました。
この前年、1853年にはペリー来航し、翌年の再来航で開国をより強く要請。日米和親条約が締結され、下田港と箱館港が開港されました。
その後、同年に安政東海地震が発生し、その際の津波でロシア船が津波の被害を受けてしまいました。(史実では一連の流れがありますが、今回は一場面に集約されてました。大河「ドラマ」ですので問題はありません)
津波の被害を受けたロシア人を沿岸の村人たちは救助し介抱。災害を前にしては敵も味方も関係なし。今ではごく当たり前の倫理観ですが、幕府内では異論を唱えるものがおりました。徳川斉昭です。
徳川斉昭は、これらロシア人を皆殺しにせよと息巻きますが、側近の藤田東湖や老中の阿部正弘らに「それは違う」とたしなめられます。徳川斉昭は決してロシア人憎しでこのような発言をしたわけではなく、愛国心ゆえの発言ではありますが、愛国心ゆえ時折暴走してしまいます。それをうまく止めていたのが側近の藤田東湖だったわけです。
■その頃(その後)慶喜は?
その後、藤田東湖は徳川斉昭に対して「掛けがえなきものを天災で失うは耐え難きこと」と説きます。
また、徳川斉昭(父)の元を訪れた徳川慶喜は、藤田東湖を信頼しており異国について学びたいと懇願します。誰にでも「違うものは違う」と説ける藤田東湖を見て、徳川慶喜の小姓である平岡円四郎は、「諍臣(そうしん)ていうのはよ、 おめえのおとっさんみたいなのを言うんだろうな」と藤田東湖の息子に感銘を受けた旨を伝えるのでした。
しかし、第5話の最後に江戸安政地震が発生。藤田東湖は亡くなってしまうのでした。
「掛けがえなきものを天災で失うは耐え難きこと」
そう徳川斉昭に説いた後で、その「掛けがえなき」藤田東湖を徳川斉昭は失ってしまうのでした。
■今回は栄一の論破が最大の見もの
一方、血洗島村では渋沢栄一の姉であるなかの縁談を巡って大騒動に。
何でも、なかの嫁ぎ先に「狐のつきもの」の噂があるというのです。要するに祟り、呪いにかかるので縁談を断った方が良いというのです。これを叔母が騒ぎ立てたため縁談を実際に断ることに。なかは失意のどん底に落ちてしまい、その状況すら「呪われてしまった」と言われる始末。
そして話はエスカレートし、「このままでは渋沢家が呪われてしまう」となり、修験者を呼ばれてしまうのです。
栄一の家でお祓いが始まるのですが、栄一は修験者を信じていません。そもそも家も姉も呪われてなんていないと思っています。
その結果、修験者たちへ「この家が呪われたのは何年前か」と質問。60年前と答えた後で、「その年の元号は」と質問し、天保3年と答えたところを「それは23年前だ」と矛盾を指摘。そこから一気にまくし立てて修験者たちを論破。「二度と来るなこの偽者が!」と言い放ち、遠くで見ていた姉と父には笑顔が見られました。
結果的になかは元気を取り戻しました。
壮大な大河ドラマの中では小さなエピソードですが、この後近代日本の父と言われる実業家へと駆け上がっていく栄一の才能の片鱗が垣間見られたエピソードでした。
■二人の対比について
この第5話においても、渋沢栄一と徳川慶喜の対比が見られました。
□渋沢栄一
・親や兄弟に心配される栄一(&なか)
・見えぬ外国へ対抗心を持つ栄一
・身内に助言してくれる人がいる(否)
□徳川慶喜
・親を心配する慶喜
・見えぬ外国を学ぼうとする慶喜
・身内でなくても助言してくれる人がいる(正)
このような対比が「青天を衝け」では毎回描かれます。今後おそらく第14話において、渋沢栄一と徳川慶喜ががっつり出会い一つの物語へと集約されますが、そこまではこのような対比が続くと推測されます。
第6話もこの対比を意識するとより深く楽しむことができるでしょう。
–{6話のあらすじ&解説}–
第6話のあらすじ&解説
第6話のあらすじ
長七郎(満島真之介)や喜作(高良健吾)と共に剣術の稽古に励む栄一(吉沢 亮)は「百姓にだって何かできるはずだ」と意気込む。
そんなとき、千代(橋本 愛)から突然思いを告げられ、胸がぐるぐるしてしまう栄一。さらに、道場破りの真田範之助(板橋駿谷)が栄一らの道場に現れて……。
一方、東湖(渡辺いっけい)を失った斉昭(竹中直人)はさらに過激な言動が増え、慶喜(草彅 剛)らに引退を勧められるが、「慶喜が将軍になるなら引退する」と突っぱねる。
ほかにも慶喜は、正室に迎えた美賀君(川栄李奈)の気性に頭を悩ませていた。
第6話の解説
ほぼ同じ内容を動画でも展開しております。図解を用いているので合わせてお楽しみください。
■歴史的背景
第7話では1855年の安政江戸地震後の幕府が描かれました。江戸を中心に大きな被害となった大地震で、アメリカをはじめとした外国との付き合い方の議論にも影響を与えることに。
前年に日米和親条約を締結した幕府でしたが、これはあくまでも下田港と箱館港を開いただけ。まだアメリカとの通商は始まっていませんでした。
被災した日本の復興を後押しするかもしれないアメリカとの通商。そんな期待もあり、通商の検討が幕府内で本格的に始まっていました。
しかし、徳川斉昭は頑なにそれへ反対。尊王=天皇を敬うことを第一と考え、一歩も譲りません。
幕府において調整を取り仕切っていた阿部正弘は、この第6話の最後に急死。今後の動乱を予想させる幕府の内幕が描かれた回でした。
■その頃(その後)慶喜は?
今回の徳川慶喜は正室(本妻)の美賀君が嫁いできた回。しかし、そこにザ・新婚感は(当時の感覚からしても)全く無く慶喜はそっけない態度を取ります。その不満が積もりに積もった美賀君は精神が不安定になり、刃物を持って暴れる始末。
後に「妻一人持て余している」という慶喜の台詞から悪気が合ってそっけなくしたわけではないと捉えられましたが、なかなか強烈なインパクトを残す回でした。
終盤では、馬を走らせた先でたまたま渋沢栄一と遭遇。何が起きたわけではありませんでしたが、突然の二人の出会いにドラマが動き出す期待感を持たせていました。
■今回は栄一の恋が最大の見所
主人公の渋沢栄一の物語は千代の思わぬ「栄一を慕っている」という台詞から恋模様が描かれることに。両思いでありつつも、お互い恋の仕方などわからず、逆に距離が生まれてしまう二人。
栄一に至っては、「胸がぐるぐるする」と周りから酒にでも酔ったかと心配される始末。別のシーンではたまたま千代の手が触れたと思えば、「触るな」と言ってしまう栄一が、まるで小学生の男の子が好きな子にそっけない態度を取るそれそのもので微笑ましくもありました。
6話の最後では、喜作が千代を嫁に迎えたいと言い出し、三角関係が顕在化。第7話以降の恋の動乱を予期させる終わり方をしました。
■「尊皇攘夷」を知る栄一
第6話においては、道場破りに来た真田範之助が「尊皇攘夷」という言葉を栄一や惇忠らに伝えることに。
天皇を敬い、外国人を排斥し、日本は日本独自の未来を築いていくというこの尊皇攘夷思想。
今後栄一たちは、この尊皇攘夷の活動へ傾いていくため、栄一たちが血洗島から出て次の物語へ進む第一歩を示した格好となりました。
既に商才が垣間見える栄一ではありますが、尊皇攘夷の活動においては危ない橋を渡ることに。ここで一歩間違っていれば投獄や死すら待ち受けていたはず。
そうならず後に近代日本の礎を築いた父と謳われる渋沢栄一が何とか生き延びたのは今の日本、そして世界においては良い運命だったのかもしれません。
■二人の対比について
今回の渋沢栄一と徳川慶喜の対比は、わかりやすく「恋」について。恋に揺れ動く栄一と、正室を迎えても何も変わらない慶喜。どっちが良いのか悪いのか判断しにくいとことですがわかりやすい対比となっていました。
初めて二人が出会った際の、動揺する栄一と動じない慶喜も印象的な対比となっていました。
–{7話のあらすじ&解説}–
第7話のあらすじ&解説
第7話のあらすじ
老中・阿部(大谷亮平)が亡くなり、幕府は大混乱。そんな中、慶喜(草彅 剛)を次期将軍に推す声が日ごとに高まり……。
一方、血洗島では、長七郎(満島真之介)が真田(板橋駿谷)に勧められ、武者修行のため江戸へ行くことに。
栄一(吉沢 亮)は、依然、千代(橋本 愛)とぎくしゃくした関係のままであったが、喜作(高良健吾)が千代を嫁にもらいたいと言い出し動揺する。
惇忠(田辺誠一)と藍売りに出かけた栄一は、漢詩を詠みながら山道を歩く中で自分の真の思いに気づき、そびえたつ山頂で……青天を衝く!
第7話の解説
ほぼ同じ内容を動画でも展開しております。図解を用いているので合わせてお楽しみください。
■歴史的背景
1854年に「日米和親条約」が締結されたものの、まだ日本とアメリカは通商を行っていませんでした。そんな中で1855年に安政江戸地震が発生し、復興に際してアメリカとの通商も有効に働くのではないかという論が出始めました。
結果的には第8話で描かれる日米通商航海条約で通商が開始されるのですが、それまでの幕府内の内幕を第7話では示していました。
何よりも1857年10月に、幕府内の政の全てを束ねていたと言っても過言ではない阿部正弘が突然死。この後に開国・通商推進派の堀田正睦が実験を握ったためそちら側に一気に舵が切られ始めました。
それに最も強く抵抗したのは徳川斉昭。一貫して尊王=天皇を敬い、日本は日本のみで独自の未来を築いていくと説く斉昭ですがその力は弱体化。影響力を与えることはできなくなっています。
このように幕府内はアメリカとの通商を巡って対立が続いていますが、もう一つの対立事がありました。将軍・徳川家定の後継問題です。
以下のように対立をしていました。
-徳川慶福 後継派(南紀派)
→堀田正睦、井伊直虎ら
-徳川慶喜 後継派(一橋派)
→徳川斉昭、松平慶永、橋本左内、平岡円四郎、(阿部正弘)
堀田正睦が現在実権を握っており、第8話では井伊直虎が実権を握ります。阿部正弘は亡くなっているため完全に南紀派有利の方向へと物事は突き進み、第8話においては安政の大獄が描かれることになります。
■その頃(その後)慶喜は?
今回の徳川慶喜も相変わらず次期将軍には乗り気ではありません。しかしそれは建前上。慶喜は周囲を冷静に見ることができるため、自らが意欲を示さないことが得策と考えているのです。
第7話においてはその内なる野心を正室(本妻)の美賀君が見破っていました。第6話においてこそヒステリックさもあった美賀君ですが、落ち着きを取り戻り今後慶喜の良き相談相手となっていきます。
慶喜の小姓(付き人)である平岡円四郎は、徳川慶喜を将軍に推すために「慶喜公御言行私記」(よしのぶこう ごげんこう しき)を執筆。それをより良い形へと今でいう編集を橋本左内が行い、「橋公御行状略記」(きょうこう ごぎょうじょう りゃっき)に進化。それを幕府内で配り、次期将軍に慶喜をという風を吹かせようとします。
これは決して無駄な行いではありませんでしたが、第8話では南紀派有利で安政の大獄が起きるため、簡単に成し遂げられはしない一件だったわけです。
■今回は栄一は「青天を衝け」のタイトルを描く
今回の栄一は、第6話に引き続き千代を巡る喜作とのあれこれが描かれました。喜作が千代を娶りたいという話はじわじわと進んできており、栄一は焦り始めます。
終いには、千代の兄である長七郎から「千代は栄一と結婚すると思っていた」と手紙をもらう始末。しかし、その手紙によって栄一は改めて葛藤し、藍の商売で山を登っている最中に詩を書き記します。
それによって思考が整理され、山の頂きで「私は青天を衝く勢いで、白雲を突き抜けるほどの勢いで進む」と拳を天に突き上げます。一大決心をした栄一は、血洗島に戻るやすぐに千代の元へ走りより、今で言うプロポーズをするのでした。
とは言ってもまだ決着はついていません。栄一VS喜作による、千代を巡る戦いは第8話にて描かれます。
そんな栄一の物語が進む中、江戸に出た長七郎は尊皇攘夷思想を持つものが集う「思誠塾」へ。そこで「思誠塾」を開いた大橋訥庵と出会います。この大橋訥庵と長七郎との出会いは、栄一の尊皇攘夷を巡る動きに大いに影響を及ぼしていくのでした。
■二人の対比について
今回の渋沢栄一と徳川慶喜の対比は、「進む」がキーワードでした。
青天を衝き、ひたすらに突き進み始めた栄一。一方で、野心を内に秘めなかなか突き進むことができない徳川慶喜。
いずれ交わり、物語は一つへ集約されていくはずですが、そこへ至るまでのこの対比演出の積み重ねはやはり「青天を衝け」の大いなる見どころの一つと言えるでしょう。
–{8話のあらすじ&解説}–
第8話のあらすじ&解説
第8話のあらすじ
ついに、栄一(吉沢 亮)は自分の思いを語り、千代(橋本 愛)に結婚を申し込む。と、そこに待ったをかけたのは喜作(高良健吾)。栄一と喜作は剣術で勝負をすることに。
一方、幕府では、大老になった井伊直弼(岸谷五朗)が「日米修好通商条約」を結ぶが、調印は違勅だと大問題に発展。
井伊に意見した慶喜(草彅 剛)や斉昭(竹中直人)には処分が下され、安政の大獄と呼ばれる苛烈な弾圧が始まる。
第8話の解説
ほぼ同じ内容を動画でも展開しております。図解を用いているので合わせてお楽しみください。
■歴史的背景
今回の第8話は、大きく2つの事象が描かれました。
・日米修好通商条約の締結についての幕府内抗争
・徳川家定の後継者を巡る幕府内抗争
この2つの抗争において、「青天を衝け」においては主役級である面々、徳川慶喜、徳川斉昭、松平慶永らが劣勢に陥っていく様が描かれました。
その主となる人物は井伊直弼。元々は主導権など握れぬ位の人物であったものの、将軍・徳川家定の信頼を勝ち取ったこともあり大老へ就任。
最初こそ舵取りに悩む様も描かれましたが、将軍・徳川家定の遺言にも相当する「青天を衝け」主役級の面々の弾圧に腹を括り、歴史的には「安政の大獄」と呼ばれる一件を進めて行くことになります。
この「安政の大獄」は第9話でより色濃く描かれます。しかしその先の未来には「桜田門外の変」が待ち受けており、井伊直弼はここで命を落とすことになります。
■その頃栄一は
今回は、幕府側の話が色濃く描かれたため、栄一は結婚に関するお話のみ。
しかし、喜作との真っ向勝負で敗れるも千代との結婚が叶うというとてもドラマティックな展開が描かれドラマとしては見応え充分の回でした。
第9話では一気に尊皇攘夷運動へと足を踏み入れていく栄一。嵐の前の静けさ、嵐の前の幸せを描いた束の間の休息回とでも表現するのが妥当でしょう。
■二人の対比について
今回の渋沢栄一と徳川慶喜の対比は非常にわかりやすく「幸せの絶頂である栄一」「失意のどん底である慶喜」が描かれました。
二人の独立したエピソードもあと数話で終わり、話は一つに集約されていきます。その後はどう対比演出がなされるか、要注目と言えるでしょう。
–{イントロダクション〜渋沢栄一の生涯〜}–
イントロダクション〜渋沢栄一の生涯〜
官尊民卑の世は、承服できん! 百姓からの脱却を決意。
天保11年(1840)、武蔵国・血洗島村。藍玉づくりと養蚕を営む百姓の家に、栄一は生まれた。おしゃべりで物おじしないやんちゃ坊主は、父・市郎右衛門の背中に学び、商売のおもしろさに目覚めていく。
ある日、事件が起きた。御用金を取り立てる代官に刃向かったことで、理不尽に罵倒されたのだ。栄一は官尊民卑がはびこる身分制度に怒りを覚え、決意する。「虐げられる百姓のままでは終われない。武士になる!」。
目指せ、攘夷の志士! ところが計画中止、追われる身へ……。
千代と結婚した栄一は、従兄の惇忠や喜作と共に、尊王攘夷に傾倒していく。江戸で仲間を集め、横浜の外国人居留地を焼き討ちする攘夷計画を企てた。しかし、京の情勢に通じた従兄の長七郎の猛反対にあい、あえなく断念。逆に幕府に追われる立場となり、喜作と共に京へ逃げる。
彼らに助け船を出したのは、一橋慶喜の側近・平岡円四郎だ。幕府に捕らわれて死ぬか、一橋の家臣となるか。「生き延びればいつか志を貫ける」。この選択が、栄一の運命を変えていく。
心ならずも幕臣に。パリ行きが人生を開く!
栄一は一橋家の財政改革に手腕を発揮し、慶喜の信頼を得る。ところが、慶喜が将軍となり、倒幕を目指すどころか幕臣になってしまった。
失意の栄一に、転機が訪れる。パリ万国博覧会の随員に選ばれたのだ。慶喜の弟・昭武とパリに渡った栄一は、株式会社とバンクの仕組みを知り、官と民が平等なだけでなく、民間が力を発揮する社会に衝撃を受けた。そんな折、日本から大政奉還の知らせが届き、無念の帰国へ……。
まさかの新政府入りで、続々改革。33歳でいよいよ民間へ。
帰国後、様変わりした日本に衝撃を受けた。静岡で隠棲する慶喜と再会した栄一は、身をやつした姿に涙し、慶喜を支えることを決意する。
しかし突然、明治新政府から大蔵省への仕官を命じられて上京。「改正掛」を立ち上げ、租税・鉄道・貨幣制度など次々と改革を推し進めること3年半。栄一はある決意を胸に辞表を提出した。
この時、33歳。いよいよ、栄一の目指す民間改革が始まるのだった……!
–{「青天を衝け」作品情報}–
「青天を衝け」作品情報
放映時間
NHK総合=日曜 20:00 – 20:45
BSプレミアム・BS4K=日曜 18:00 – 18:45
NHK総合 再放送=土曜 13:05 – 13:50
スタッフ
脚本:大森美香
音楽:佐藤直紀
題字:杉本博司
語り:守本奈実
制作統括:菓子浩、福岡利武
プロデューサー:板垣麻衣子
広報プロデューサー:藤原敬久
演出:黒崎博、村橋直樹、渡辺哲也、田中健二、川野秀昭
キャスト
吉沢亮
草なぎ剛
堤真一
竹中直人
玉木宏
橋本愛
木村佳乃
岡田健史
村川絵梨
藤野涼子
朝加真由美
小林薫
和久井映見
高良健吾
成海璃子
田辺誠一
満島真之介
平泉成
渡辺いっけい
津田寛治
平田満
北大路欣也
ドラマ公式URL
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