綾瀬はるか、高橋一生出演のTBS日曜劇場「天国と地獄 〜サイコな2人〜」が、2021年1月17日より放送開始。
刑事とサイコパスの殺人鬼が入れ替わってしまうミステリーと思われていたが、どうもそう単純なものではない模様。
第2話辺りから、
「実際は別に殺人犯がいるのでは?」
「殺人鬼と思われた日高は誰かに操られている?」
「実行犯と掃除係、複数の犯人がいる?」
など放送後に考察が大盛り上がり。しかも第4話まで進んでも誰も確証が掴めておらずという綿密な構成にのめり込む視聴者が増えてきている。
本記事では、第1話から毎週考察を重ねていく。筆者自身の考えの変遷含めて楽しんで頂きたい。
もくじ
第1話終了時点での考察&あらすじ
第1話終了時点での考察
このドラマ、モチーフとして「丸形」のものが多く出てくる。オープニングの満月(月モチーフは三日月・満月ともに至るところに出現)、日高が社長を務める会社名「コ・アース」(アース=地球?)、デンデン社長の口内に詰め込まれたパチンコ玉、同じくデンデン社長の掌に描かれた血文字「Φ」(ギリシャ文字のファイ)、撲殺に使われたとみられている凶器の丸い石ーー。
偶然にしては「丸形」もとい地球や月を連想させるモチーフが頻出。1話の時点で確定的なことは言えないが、綾瀬はるか演じる望月の目線や着眼点を追うだけでも「散りばめられた伏線」が随所に仕込まれていることが察せられるだろう。
重要参考人で容疑者、ストーリー上は連続殺人犯として扱われている日高。しかし犯人候補はほかにも複数いるのではないだろうか。中尾明慶演じる九十九が、あの一瞬の出演だけで終わるとはどうも考えにくい。「天国と地獄」公式サイトのキャスト相関図にも名前がないのも、視聴者を翻弄するためにあえてそうしていると深読みできる。
九十九を紹介した八巻も怪しい。捜査に対してあまりやる気を見せてこなかった八巻が、なぜほかの署員たちの誰もキャッチアップできなかった日高のボストン時代の人脈を辿れたのだろう?九十九と八巻がグルとなり、日高に殺人の指示を出している可能性はないだろうか。
もうひとり、望月と同居している陸がいる。1話の時点で捜査線上にはまったく上がってきていないが、デンデン社長が殺害された推定時刻は自由に動ける状態だったはずだ。朝7時過ぎに帰宅し「この時間まで家にいないってどういうこと?」と望月に嫌味を言われている。実行犯ではなくとも、関与している可能性はある。
望月と日高が入れ替わってしまった夜は満月だった。中身が入れ替わり、日高にとっては好都合であることは事実だが、あまりにも落ち着きすぎている。「月と太陽の伝説」を知っている日高にとって、入れ替わることは織り込み済みだったのか?
第1話あらすじ
望月彩子(綾瀬はるか)は、努力家で正義感が強く、上昇志向も強いが慌てん坊な刑事。思い込んだら一直線で失敗も多いため、周囲の刑事たちからは煙たがられている。そんな彩子はある朝、出勤時間ギリギリに起床。朝からバタバタと急ぐあまり、電車内でうっかり自分だけマスクをしていないことに気付く。
すると、偶然乗り合わせた男性(高橋一生)から自社製品のサンプルだというマスクを譲り受ける。
そんな中、とある殺人事件が発生。管理官が刑事たちに現場へ急行するよう指示するが、なんとその時、
捜査第一課に居合わせたのは、過去の失敗で謹慎中の身であった彩子のみ。彩子は、刑事として挽回する願ってもないチャンスの到来に、「絶対に手柄を立ててやる!」と息を巻いて現場へ急ぐ。
向かった先には、遺体の口内にパチンコ玉が詰められた、猟奇的殺人現場が広がっていた。しかしその猟奇的惨状の反面、掃除されたばかりのような清涼感を感じる現場に違和感を覚える彩子──。
そんな彩子の違和感を解消したのは、彩子の能天気な同居人・渡辺陸(柄本佑)。清掃現場でアルバイトをしている陸によると、匂いのない業務用の特殊洗浄剤がこの世に存在することが分かる。
その洗浄剤の製造元は創薬ベンチャー企業のコ・アース社。あろうことか、そのコ・アース社、社長の日高陽斗は、なんと数日前彩子に電車内でマスクをくれたあの男だった──。
自分だけが知る重要参考人に、何か運命めいた物を感じた彩子は早速日高のもとへと会いに行く。
しかし、その時はまだ、表向きは若くしてベンチャーを立ち上げた敏腕経営者・日高が、裏の顔は類まれな頭脳と知識を駆使したサイコパスな殺人鬼であることは知る由もなかった──。
–{第2話終了時点での考察&あらすじ}–
第2話終了時点での考察&あらすじ
第2話終了時点での考察
奄美大島に伝わるとされている「月と太陽の伝説」。入れ替わりにまつわる伝説とも言われており、「望月」と「陽斗」ふたりの名前にも関連している。第2話では再度入れ替わりをしようとあらためて階段の上からふたりで転げ落ちるシーンがあり、これは失敗ーー。やはり、満月じゃない夜には効果があらわれないのだろうか。
1話に続き、今回も伏線らしき描写が詰め込まれていた。筆者が気になったのは冒頭、「お互いに見られたくないデータは消去しましょう」といってスマホを交換するシーン。
すでに望月のなかに入った日高は、ごく普通と思われる会社関連のデータや秘書・社員とのメールまで削除していた。今後、日高のなかに入った望月は社長として生きていくことになる。見られても何ら問題はなく、むしろ会社経営のためには必要なデータだと思うのだが……。わざわざ入念に消したということは、見られたくないデータだったということか。社員も間接的に犯罪に関与している可能性もある。そう考えると、秘書の存在も途端に怪しく見えてくる。
すでに1話の時点で怪しく見えていた陸と八巻。だが、2話を視聴した時点でふたりの黒幕説は弱くなったように思える。陸自身、これまでと様子の違う望月を怪しむ描写がない。望月となった日高でさえ「便利屋をやってるのか……」と陸にまつわる情報収集をしていた。ふたりにすでに接点があれば、それを匂わせる表現があってもおかしくない。
八巻に関しては判断が難しい。望月と日高が入れ替わったことを暴き、自ら日高のマンションへ乗り込んで接触を試みた。ふたりの入れ替わりに相当の確信がなければ、ここまで単独行動はできないだろう。八巻が黒幕であるなら、ここでわざわざ望月に近づく意図はなんだろうか?気付かないフリをしてやり過ごしたほうが、少なくとも八巻自身が助かる可能性は上がる。
ただ、一介の署員がここまで単独行動できるものなのか?なぜ八巻はすぐに入れ替わりに気づけたのだろう。望月の様子を見て違和感を覚えるところまでは自然だが、「考え事をするときに耳たぶに触れる癖」が日高の癖だと知っていなければ、入れ替わりの確信は得られないはずだ。八巻については謎が多く、グレーゾーンだと言わざるを得ない。
次回、伝説の詳細を調べるため奄美大島に行く展開になりそうだ。伝説がどこまでこのドラマのキーポイントとなるのか、楽しみに待ちたい。
第2話あらすじ
捜査一課の刑事・彩子(綾瀬はるか)と殺人事件の容疑者・日高(高橋一生)は、階段から転げ落ちた拍子に魂が入れ替わってしまった…。
彩子<日高>は日高<彩子>に「出頭して一生を塀の中で過ごすか、それとも自分と協力して容疑を晴らすか」と二者択一を迫る。仕方なく後者を選択した日高<彩子>は、彩子<日高>の指示通り、家宅捜索が入る前に日高のマンションからダンボール箱をこっそり持ち出す。
中に入っていたのは連続殺人の証拠となり得る品々だった。身体が入れ替わってさえいなければ大手柄なのだが…。
なんとか家宅捜索を乗り切った日高<彩子>は、そのまま河原(北村一輝)の事情聴取を受ける。そして、その様子を別室で見つめる彩子<日高>と八巻(溝端淳平)。八巻は彩子の雰囲気がいつもと違うことを変に思って尋ねるが、「路線変更です」と煙に巻かれてしまう。
警察は日高が犯人である確たる証拠を見つけられないまま、秘書・樹里(中村ゆり)の素早い根回しで日高<彩子>を釈放。マンションに戻った日高<彩子>は、居候の陸(柄本佑)のことを考えた。
一緒に暮らしている陸なら、きっと本物の彩子ではないことに気づいてくれるはずだ。
ところがその頃、陸は彩子<日高>と仲良く食卓を囲んでいて…。
–{第3話終了時点での考察&あらすじ}–
第3話終了時点での考察&あらすじ
第3話終了時点での考察
このドラマの重要なキーワードである「月と太陽の伝説」。入れ替わりに関係する重要なシヤカナローの花は実在せず、作中では「サガリバナのことなんじゃないか?」と言及されている。奄美大島に咲くサガリバナは夜の間にだけ花を開き、朝になると地面に落ちてしまうのだそう。
夜にしか咲かない花ーー日高が連続殺人を行ったのも夜、ふたりが入れ替わったのも満月の夜だった。嫌でも関連を疑ってしまう。
「どうしたもんですかねえ、これから」ーーやはり日高は自分の意思で殺人を行っているわけではなさそうだ。入れ替わり自体が故意であるか偶然であるかは判断しかねるが、今後の見通しが立っていないことにいささか立ち回りを迷っている風である。
陸橋の上に高々と掲げられた「4」という数字を見るや否や、「そうですか。……終わりじゃなかったんですか」と一言嘆く日高。連続殺人は終わっていない。指示を出しているのは誰なのか?黒幕は単独か、複数か?何をもって連続殺人は終わるのだろうか……。
「4」と描かれたペンキ文字を消している陸に怪しさが倍増するが、あからさまに怪しそうに見せていることから、視聴者向けへのフェイクだと思われる。便利屋のバイトとして、間接的に後処理を手伝わされているだけの可能性が高い。ペンキ文字を消す依頼そのものを日高がした線もあるが、「俺はラッキーだな」と呟いていたことからそれも考えにくい。そうなると、ますます九十九の存在が怪しく見えてくる。
なんともショッキングな終わりを迎える第3話。まだ終わらない連続殺人を遂行すべく、日高は望月の身体のまま動いた。なにがなんでも殺人は行われなければならない。少なくとも、日高にとっては譲れない理由がある。それを紐解いていくのが、このドラマの鍵になりそうだ。
第3話あらすじ
彩子(綾瀬はるか)と日高(高橋一生)の魂が入れ替わったことに八巻(溝端淳平)が気づいた。味方ができた日高<彩子>は、藁にもすがる思いで今後どうするかを八巻に相談する。
まず急がなければいけないのは、日高が捨てた革の手袋を河原(北村一輝)ら警察よりも先に手に入れることだ。もしも手袋から日高の指紋と被害者のDNAが検出されれば、自分が捕まってしまう。
そこで、警察が手袋を見つけた段階で、八巻がこっそり別の手袋とすり替える作戦を立てる。入れ替わってもなお日高を捕まえることを諦めない彩子。しかし、彩子<日高>はそんな日高<彩子>の考えなど見抜いていたようで…。
警察では、河原が拾得物の中から革手袋を集めていた。そして、集まった大量の手袋を鑑識部屋に持ち込むと、そこにはなぜか彩子<日高>の姿が。鑑識の新田(林泰文)を手伝いに来たというが、はたして真の狙いは…。
そんな中、「太陽と月の入れ替わり伝説」に出てくるシヤカナローという花を見つければ、自分も元に戻れるかもしれないと考えた日高<彩子>は、その伝説が言い伝えられている奄美大島へと渡る。そして、その奄美で日高に纏わる意外な足跡をつかむ。
–{第4話終了時点での考察&あらすじ}–
第4話終了時点での考察&あらすじ
第4話終了時点での考察
第4話の時点で、筆者のなかで九十九黒幕説がだいぶ濃厚になりつつある。少なくとも日高の単独犯ではなく(実行犯である可能性は残されているが)、裏で殺人の指示を出している人間がいる。それが九十九、または九十九&八巻(+陸)のグルか。そうなると、陸は事情を知らず間接的に手伝わされている可能性もありそうだ。
九十九黒幕説が強まったのは、日高と望月が対峙し「お互いに地獄へ行こう」と睨み合っているシーン。凄まれた日高はしみじみと「だからあなただったんですね」「だから私は、あなたと入れ替わったんですよ」と告げるーー。入れ替わること自体も、入れ替わる人間も、第三者に指定されているのではないか?殺す人間も自分で選んでいないのではないか?
これまで殺してきた人間には数字を連想させる字が入っている。その点から考えると、「望月」には「月」の字が……。月と太陽の伝説になぞらえているのか?望月と入れ替わることは最初から仕組まれていたことだったのではないか。
もう一点気になることがある。日高が15歳の頃、近所に変わり者のおじいさんが住んでいた。周囲から嫌われていたそのおじいさんを、日高は「案外悪い人じゃないよ」と言って助けてあげていたという。毎日通っていたにも関わらず、ある日風邪を引いてしまった日高はおじいさんの家へ行けなかった。その日に限っておじいさんは階段の上から足を滑らせ転落してしまったらしい。
この時、最初の入れ替わりが起こったのではないか?
元々サイコパスでシリアルキラーなのは、この変わり者のおじいさんだった。日高少年はこのタイミングでおじいさんの身体に入ってしまい、そのまま頭の打ち所悪く亡くなってしまった。おじいさんは日高少年の身体へ入り、そのまま新しい人生を生きた。こう考えると、厳密に言えば元の日高はすでに亡くなっていることになる。
次回、黒幕のヒントが明かされそうだ。1話にしか登場しなかった九十九が、ここにきて再登場となるのだろうか?
第4話あらすじ
日高(高橋一生)がまた猟奇殺人を犯した。人の命が無残に奪われ、その行為に自分の体を使われたことに彩子(綾瀬はるか)は言葉を失う。
翌朝、日高<彩子>は河原(北村一輝)の事情聴取を受けるが、その様子を冷静に見つめる彩子<日高>。聴取後、彩子<日高>と日高<彩子>がやり取りする様子を目撃した河原は、その光景に違和感を覚え、疑惑の目を向ける。
後日、彩子<日高>が捜査本部専用の情報のデータベース化を買って出てきた。一体その目的は?
一方、陸(柄本佑)もまた、彩子の家で発見した“血の付いた防護服”のことで頭を悩ませていた。
証拠不十分で解放された日高<彩子>だったが、コ・アース社では、会社の信頼が失墜しかかっていることを案じた秘書の樹里(中村ゆり)に詰め寄られ、おまけに、頼みの綱だった八巻(溝端淳平)は殺人鬼の彩子<日高>を恐れ、これ以上協力できないと言い出す。
今のままでは自分が殺人犯になってしまうことに絶望的な気分になる彩子。
そんな中、2人に疑いを向けた河原が、事件の目撃者情報をつかんだ様子で…。
–{第5話終了時点での考察&あらすじ}–
第5話終了時点での考察&あらすじ
第5話終了時点での考察
「Curiosity killed the cat」ーー好奇心は猫をも殺す。だんだんと真犯人≠日高説が有力となってくる中、日高が幼少期の頃に受け取ったであろう手紙の存在感が増す。「明日3時、学校のそばの歩道橋で待ってます」と書かれたその内容の意味とは?気になるからといって首を突っ込んでいたら、殺されることになりかねない。
八巻に続き、陸も入れ替わりに気づいた。日高と望月の中身が入れ替わっていることに気づく人間が増えると、利となるのだろうか。望月の立場から考えると、内部事情がわかる見方が増えれば増えるほど有利になりそうだが……何やらきな臭く感じられるのも確かである。
望月と陸があらためて繋がったことにより、陸真犯人説は薄まったように思えるが……「彩子ちゃんはやっぱり刑事なんだね」と言ったあとの意味ありげな沈黙、そして日高の「逃げられましたね。ここは壊したくなかったんですが」という一言。まだまだ潔白を証明するには早い気がしてならない。
陸と日高は未だ裏で繋がっており、望月を陥れようとしている可能性がある。いくら普段の望月と様子が違うからといって、あそこまで素直に入れ替わりを信じるだろうか?それを考えると、八巻もまだまだ怪しい。
そして九十九の再登場だ。どうやら日高に並々ならぬ思いを持っている様子。日高に殺人の容疑がかけられており、逮捕も間近と知るや否や会社ごと陥れようと画策する。常習賭博罪で逮捕されてしまうが、九十九=真犯人説は揺るがない。
最後の最後で”歩道橋の彼女”であるところの戸田一希が登場する。3年前に日高が起こしたとされている殺人事件において、虚偽の証言をしたと疑いをかけられるが……。日高は彼女のために殺人を犯しているのか、それともいったん舞台から去ったと思われる九十九が絡んでいるのか?
5話を視聴した時点で有力だと思われるのは、九十九と八巻が裏で繋がっている説だ。わざとじゃないにせよ情報漏えいに繋がったのは意図を感じざるを得ない。連続殺人の黒幕が八巻だったとしたらーー最も熱い展開になりそうである。
第5話あらすじ
彩子(綾瀬はるか)は周囲から話を聞くうちに、日高(高橋一生)という人間がわからなくなっていた。彼の評判はサイコ・キラーとは程遠いものばかりなのだ。もしかして彼は誰かを守るために殺人を犯しているのか? それとも、そもそも犯人ではないのか──。
そんな日高<彩子>を訪ねて、陸(柄本佑)が突然やって来た。陸は同居人である彩子<日高>の最近の行動を不審に思い、偶然見てしまった彼女が利用しているコインロッカーが気になり、中を勝手に調べたところ、日高宛の手紙を見つけたため会いに来たという。
同じ頃、コ・アース社は大騒ぎになっていた。日高社長が連続殺人の容疑者であることや事件に関する詳細など、警察が公表していない情報がSNS上に拡散され、ネガティブキャンペーンが巻き起こっていたのだ。捜査情報を漏洩したのは一体誰なのか?
一方、強引かつ不当な捜査が上司にバレて第一線からはずされていた河原(北村一輝)は、相変わらず彩子と日高のつながりを疑っていた。そのつながりを調べる過程で、ある漫画のキャラクターに行きつき…。
–{第6話終了時点での考察&あらすじ}–
第6話終了時点での考察&あらすじ
第6話終了時点での考察
やはり日高の入れ替わりは、これが初めてではない気がする。望月と入れ替わる前にも何度か入れ替わりを経験しているのではないか。4話考察で触れた「近所に住んでいたおじいさん」のエピソードがまたも思い出される。このときに日高人生初の入れ替わりを体験したのではないか。そして、望月と入れ替わる前に、「東朔也」なる人物と入れ替わっていた……。黒幕が彼=東だとしたら、殺人を実行しているのも彼ということになり、日高の容疑は晴れるが。
歩道橋に描かれる数字による指示、あらかじめリストで定められた人物を指示のとおりに殺しているとしても、その一連の流れはすでに終わっているはずなのだ。少なくとも、日高の中では。かつて「まだ終わりじゃなかったんですね」と呟いていた彼の言葉から、それは察せられる。終わったはずなのに、まだ続くのはいったいなぜなのか?日高自身も不思議に思いながら、しかし従うのをやめられない何らかの理由があるに違いないのだ。
日高が「東朔也」と名乗ったという、奄美大島にいた男のことも気になるところだ。少なくとも、奄美大島に行ったのは「日高」としてではなく「東朔也」として、ということになる。日高のなかに入っていたのが本物の東朔也だと仮定し、もともと日高のなかに入っていた人物が東朔也として生きているのだとすると……本物の東朔也は、仮・東朔也に死んでもらいたがっている?死亡届データベースを調べていたときの表情は、死んでいてほしいと願う人間の表情に見えた。
怪しいと思っていた九十九は逮捕され、八巻は半ば外野に押しやられ、そして陸が存在感を増してきている。いったんは真犯人候補から外した陸だが、ここにきて再び怪しく見えてきた。最も親しい人間が真犯人だったという結末は、サスペンスやミステリーにはよくあることだ。
第6話のあらすじ
彩子<日高>(綾瀬はるか)が持ち続けているラブレターのような手紙。
その手紙の差出人が今回の事件の手がかりになると読んだ日高<彩子>(高橋一生)は、秘書の樹里(中村ゆり)や妹の優菜(岸井ゆきの)に日高の過去に何か心当たりがないか探りを入れる。
その頃河原(北村一輝)は、連続殺人事件の発端となった3年前の事件で証言をした目撃者を問い詰めた結果、一人の怪しい人物に行きつく。
一方、八巻(溝端淳平)は賭博罪で逮捕した九十九(中尾明慶)から司法取引を持ち掛けられていた。九十九によると、日高が人を殺す日には共通点があるという。
次のターゲットは誰なのか?手掛かりになりそうなことを思いついた日高<彩子>は、陸(柄本佑)に協力を依頼するが…。
–{第7話終了時点での考察&あらすじ}–
第7話終了時点での考察&あらすじ
第7話終了時点での考察
前回から今回にかけて、一気に物語が動いた。ジム会員の個人情報を売買していた戸田一希、個人情報の買い手だと思われる「クウシュウゴウ(∅)」=十和田元、十和田元と繋がっている東朔也。
幼い頃の日高に手紙を送った、いわゆる「歩道橋の彼女」と思われていた戸田一希は、おそらく個人情報を売っていただけでキーパーソンではないだろう。十和田元に関しても、現在は亡くなっている。件の漫画を保持していたことからまったくの無関係ではないが、その漫画を持ちだしたのは東朔也で間違いなさそうだ。
陸が師匠として慕い、かつて避難場所を提供してくれたり、コインロッカーを探す手伝いをしてくれたりなど、至るところで手を貸してくれた人物。その彼こそが東朔也なのではないかと、集まる情報が物語り始めている。東朔也の右掌にはほくろがあるという情報から、陸自身がそれを確かめようとするが……右掌を隠す包帯を確認しようとしたところで、7話が終わってしまった。
師匠=東朔也であり、日高の双子の兄であることは、ほぼ間違いなさそうだ。しかし、おそらく物語はそこでは終わらない。ここであらためて注目したいのは九十九の存在である。いったんは違法ギャンブルをしていた罪で警察に捕まってしまった彼だが、果たしてそこで終わるだろうか……?
「日高は新月の晩に人を殺す」とリークしたのは彼である。なぜ彼がこの情報を知っていたのか?犯罪の詳細、そして漫画の存在を知らなければ、ああも自信たっぷりには言えないはずだ。少なくとも「新月の晩に人が死ぬ」事実こそ、事件の鍵に繋がっているのかもしれない。
もしかしたら、日高双子の中身はあるタイミングで入れ替わっているのではないか。東朔也は日高陽斗として生き、日高陽斗は東朔也として生きた。生活環境が天と地ほども変わったことで、東朔也<日高陽斗>が逆恨みし、双子の片割れに犯罪の片棒を担がせたのでは……?
こういった予想もまた、次回には大きく裏切られるのだと思うと、悔しくも楽しみでならない。
第7話あらすじ
彩子<日高>(綾瀬はるか)は身元不明の遺体の中から「東朔也」という人物を探していた。日高<彩子>(高橋一生)と河原(北村一輝)もその名前にたどり着くが、事件とのつながりは見えてこない。一体何者なのか──。
陸(柄本佑)からの情報を手掛かりに、殺人の共犯かもしれない「クウシュウゴウ」が現れるのを待って、歩道橋で張り込む日高<彩子>。しかし、やって来たのは彩子<日高>で…。
ある日、日高<彩子>のもとに、息子が記憶喪失になったと聞いて心配した父・満(木場勝己)から連絡が入る。妹の優菜(岸井ゆきの)と実家へ行った日高<彩子>は、満から日高に関する意外な過去を聞かされるのだった。
そしてその頃、誰にも発見されていない新たな犠牲者が──。
–{第8話終了時点での考察&あらすじ}–
第8話終了時点での考察&あらすじ
第8話終了時点での考察
師匠=東朔也であることは、ほぼ確定となった。病室で、陸がこっそり包帯を外して確認した右掌のホクロ。かつて清掃業者をしており、十和田の家で漫画を持ち去った人物であること。膵臓がんを患い余命3ヶ月であること。新たな殺人事件の被害者宅に残されていた日高の乳歯も、おそらく東朔也が置いていったものであることは間違いなさそうである。次々と出てくる情報が、師匠=東朔也であることを物語っている。
前回の考察でも書いたが、幼少期の時点で双子の中身が入れ替わっていた……ということは考えられないだろうか?
歩道橋の上で初めて顔を合わせた双子。「お前が15分早く生まれていれば、俺の人生はお前が生きるはずだったんだ!」と言いながらもみ合い、階段の上から転げ落ち、入れ替わってしまったと仮定すればーーこれまで恵まれた環境で生きてきた日高陽人は一転、東朔也として苦しい生活を強いられることとなった。恨みと腹いせで連続殺人を計画。双子の片割れにも、罪滅ぼしという名目で犯罪の片棒を担がせていたのではないだろうか。
師匠と陸がともに奄美大島へ行く流れになっているのも、なんだか嫌な予感しかしない。入れ替わりの伝説がある奄美大島。師匠は陸と入れ替わることを画策しているのではないか……上手いこと陸と入れ替わることができれば、たとえ警察に捕まることになったとしても自分はその手を免れることになる。
日高と望月もあらためて入れ替わりを試みるが、おそらく失敗しているのではないかというのが筆者の予想だ。たとえ成功していたとしても、八巻・陸・五木には入れ替わっていることがバレている。「もとに戻った」と説明する以前にややこしい手を回されたら、それはそれで面倒なことになりそうだ。
次回で9話を迎える。10話前後で最終回を迎えるとして、物語は佳境に入った。真犯人は本当に東朔也なのか、他に黒幕はいないのか……?最後まで九十九=黒幕説を推したい個人的な気持ちもある。
第8話のあらすじ
新たな猟奇殺人が発生─。現場検証が行われる中、彩子<日高>(綾瀬はるか)は東朔也が担ぎ込まれた病院へと再び向かう。
事件に日高の生き別れの兄が関わっているのではと考える日高<彩子>(高橋一生)。同じく、現場への返り咲きを狙う河原(北村一輝)も、日高と東朔也の関係、また彩子に対し推理の的を絞り始めていた。
一方、陸(柄本佑)は、病気で倒れた師匠・湯浅(迫田孝也)を放っておくことができないでいた。そんな陸に、湯浅はある頼みごとを持ち掛ける…。 その後、八巻(溝端淳平)とコ・アース社に訪れた彩子<日高>は、日高<彩子>から思わぬことを告げられる。
–{第9話終了時点での考察&あらすじ}–
第9話終了時点での考察&あらすじ
第9話終了時点での考察
どうやら東朔也=黒幕、真犯人、実行犯であることは間違いなさそうだ。9話終盤ギリギリまで新たな黒幕の可能性を探りながら見ていたが、久米の息子を殺害したのも東であることは確実のようである(日高の乳歯を誤って落としてしまったことから、それが知れる)。たまたま清掃に入った家で漫画をみつけ、自分のやりたいこと(復讐)と合致し、膵臓がんのせいで余命短いからこそ自暴自棄になってしまったのか。すべてのタイミングが合致してしまったからこその、連続殺人であったのか。
こうなると日高は実行犯ではなく、兄をかばって後処理を担当していただけにすぎない。兄が捕まらないよう配慮しながら、あわよくばどこかのタイミングで止めようとしていた。これまでの伏線はしっかり回収され、物語は綺麗にまとまろうとしているようにも思えるが……。
すっかり影の薄くなってしまった九十九。最後の最後で黒幕として登場する展開を予想していたけれど、どうやらその線はなさそうだ。八巻も違うだろう。そうなると、俄然怪しくなってくるのは陸である。遡ってみると、望月と知り合ったのも本当に”偶然”だったのだろうか?たまたま警察官と知り合い、家まで送り届け、ハウスキーパーとして家に常駐するようになる。仮に陸がすべての黒幕だったとしたら、情報収集するのにこれほど適した環境はないだろう。
そして何よりも、陸は早い段階から師匠である東朔也と繋がっていた。すべてを把握しながら上手く立ち回っていた、ということは考えられないだろうか?
このまま”美しき兄弟愛”をテーマとして閉じるには惜しい気がしてならない。最後の最後まで視聴者を驚かせる仕掛けがある……とどうしても勘ぐってしまう。陸が黒幕説を提唱しつつ、次回の放送を待ちたい。
第9話のあらすじ
歩道橋から転がり落ちた彩子<日高>(綾瀬はるか)と日高<彩子>(高橋一生)。
警察は、連続殺人事件への関与が濃厚な日高陽斗と東朔也に緊急配備をかける。その東朔也=師匠は日高の双子の兄で、陸(柄本佑)ととある場所に向かっていた。
一方、河原(北村一輝)は捜査一課とは別に単独行動に出て…。
–{第10話終了時点での考察&あらすじ}–
第10話終了時点での考察&あらすじ
第10話終了時点での考察
完全に、これまでの予想全ハズレ!……だったけれど、最初から最後まで楽しませてくれたドラマだった。これまでも日曜ドラマは「半沢直樹」や「あなたの番です」など傑作を放送してきており、今回の「天国と地獄」もご多分に漏れずその仲間入りで文句なしだろう。
それにしても……最後の最後まで期待してしまった。陸が黒幕で、あっと驚くドンデン返しがあることを……!ちょいちょい怪しげな表情をするのは、やはりフェイクだったのか。望月のために健気に働き、必要なときに必要なヒントをすくい上げ、最後には華麗に去る……。もしかして、一番良い男だったのでは?疑って本当に申し訳ない!と平身低頭、平謝りしたい。
八巻や九十九も一枚噛んでるのではないかと想像していたけれど、九十九はさておき八巻も最後まで良い奴だった。振り回され、巻き込まれ、踏んだり蹴ったりだったろうが……いの一番に彼が日高/望月の入れ替わりに気付かなければ、早々に望月は危ない目に遭っていただろう。陸と同様、八巻も影の功労者として拍手したい。
日高はサイコパスではなかった。どこまでも家族思いで、会社の仲間思いで、兄思いだったのだ。最後には自ら罪をかぶろうと躍起になっていたけれど、入れ替わったことにより人柄が知れたからこそ、望月も最後まで彼を信じ行動した。これは愛をテーマにしたドラマだったのだ……「世界の中心で、愛をさけぶ」や「白夜行」を手がけてきた森下佳子が描きたかったテーマは、全編とおして”愛”だったのかもしれない。
それにしても、ああ、楽しかった!日曜の放送を楽しみに待つ生活ともお別れか……と思いかけたが、次クールも心躍るドラマが待っている。まだしばらくは楽しめそうだ。
第10話あらすじ
日高(高橋一生)が逮捕された。「絶対に助ける」と日高に告げた彩子(綾瀬はるか)だったが、何もできないまま河原(北村一輝)によって彼の取調べが始まる。東(迫田孝也)と行動を共にしていた陸(柄本佑)も事情を聞かれるが、彩子のことを心配しながらも複雑な心境でいた。
連続殺人事件の主犯は誰なのか、真相にたどりつけない警察。彩子は真実を明らかにするため、行動に出るが…。
–{「天国と地獄 ~サイコな2人~」作品情報}–
「天国と地獄 ~サイコな2人~」作品情報
ドン詰まりな女性刑事・綾瀬はるかとサイコパスな殺人鬼・高橋一生の魂が入れ替わる。
望月彩子(綾瀬はるか)は警視庁捜査一課の刑事。自分を馬鹿にする周囲に一矢報いるために、大手柄をあげ、目にものを見せるしかないと意気込む日々。
ある日、独自の捜査でかき集めた証拠を手に、ある殺人事件の容疑者となる男・日高陽斗(高橋一生)を、自らの手で逮捕する大チャンスが到来!
しかし、そんな矢先。彩子は不運にも陽斗と魂が入れ替わり──。
「善と悪」「女と男」。まったく正反対の2人の入れ替わりを皮切りに…複雑に交錯する物語はエキサイティングな展開へ──。
そして互いの価値観を根底から揺るがす、予想もしない真実と究極の愛が待ち受けていた──。
出演
綾瀬はるか、高橋一生、柄本佑、溝端淳平、中村ゆり、迫田孝也、林泰文、野間口徹、吉見一豊、馬場徹、谷恭輔、岸井ゆきの、木場勝己、北村一輝
脚本
森下佳子
演出
平川雄一朗、青山貴洋、松木彩
音楽
高見優
主題歌
手嶌葵「ただいま」
編成・プロデュース
渡瀬暁彦
プロデュース
中島啓介