有間しのぶ原作の同名漫画を映像化し、池脇千鶴が主演を務める「その女、ジルバ」が2021年1月9日よりフジテレビ系で放送開始となる。
夢も仕事も結婚も諦めていた40歳の負け組OLが“熟女バー”で働き始める姿を描く。大手百貨店の倉庫で働く新(池脇)は、リストラで左遷され夢も希望もない毎日を送る。しかし、伝説のママ・ジルバの店と出合ったことをきっかけに、人生が大きく変わっていく。
もくじ
第1話あらすじ&感想
第1話あらすじ
笛吹新(池脇千鶴)、40歳。
憧れだったアパレル会社の販売員として働いていたが、結婚直前で婚約者に裏切られ破談となった上、リストラで倉庫勤務に回されてしまい、お先真っ暗。
夢なし、貯金なし、恋人なし…私の人生、こんな感じで終わってくの?
その日は40歳の誕生日。とはいっても誰から祝われることもなく、届くのはネット通販からのメールだけという、いつも通りパッとしない朝。
社員寮から職場に向かう途中、道端でうずくまっていたヨレヨレの老婆(草笛光子)に気づく。都会の片隅で助ける者もなく…まるで40年後の自分を見た気がしてしまい、思わず手を貸してしまう新。
この出会いが、その後の人生を大きく変えることになるとも知らずに…。
その日は、職場でもありがたくない出来事が待っていた。
“出向仲間”である村木みか(真飛聖)と朝礼に出ていると、倉庫部門のチームリーダー・浜田スミレ(江口のりこ)から新任の課長が紹介された。
「ゲッ。ウソ…」新課長は、なんと婚約を破棄した男・前園真琴(山崎樹範)だったのだ。よりによって、なんでこの世で一番会いたくない男と…。
「俺たちやっぱり、赤い糸で結ばれているのかな。こうやって再び出会ってしまうなんて」と能天気にのたまう前園に絶句する新。最悪だ…。
ストレスまみれの帰り道、新は偶然、一軒のレトロなバー『OLD JACK&ROSE』の張り紙を見つける。
“ホステス求む!時給2000円 未経験者歓迎 年齢40歳以上”
40歳…以上?以上!?
「絶対ウソだ。ワナに決まってる。時給2000円?無理、ホステスなんて。でも家に帰ってゆっくり考えたら絶対あきらめる…今ここで新しい何かをしないと…私は、私の人生を、嫌いになってしまう!」
新は思い切って、店の扉を開ける…!!
がけっぷちアラフォー女性が飛び込んだ超高齢熟女バーの世界で繰り広げられる、笑いと涙の超絶エンターテインメント、開幕!!
第1話の感想
「今ここで何かをしないと、私は私の人生を嫌いになっちゃう」
「朝起きたらもう40になっちゃってて、もう何もかもうまくいかなくて、私の人生もうこれでおしまいかなって」
アラフォー女性の話だけど、もがいた経験がある人は年齢関係なく共感できるんじゃないだろうか。切羽詰まった主人公・新のセリフがしみるしみる。
でもこれは、つらい状況のまま終わる話ではないのだ。超高齢熟女バーで華やかな衣装や照明に包まれ、ママやホステス仲間、お客さんに優しい言葉をかけられて夢のようなひとときを過ごすシーンは別世界のよう。だがさらに印象的だったのは新が、冴えないはずの現実に戻った後も夢見る少女のような顔つきに変わっていたことだ。それこそ20年以上昔にテレビで観たあどけない池脇千鶴のようだった。
怖いのは、現実がうまくいかないことではなく、その結果夢も希望も持てなくなることなのかもしれない。希望を捨てなければ、もっといいところへいけるのかもしれない。そう思わせてくれる初回だった。
社会の状況も加わってより夢が見づらくなっている今の時代だからこそ、多くの人に観てほしい作品だ。
なんと言っても池脇千鶴がよかった。個人的な話だがいちばん好きなドラマは「リップスティック」(1999)映画は「ジョゼと虎と魚たち」(2003)な筆者、リップスティックで彼女が演じる井川真白が真っ白なシーツを持って廃墟に行って……というシーンは今見ても綺麗で悲しくて胸がいっぱいになってしまう。というわけで久しぶりの連ドラ出演を心待ちにしていた。
事前の番宣でバラエティー番組に出た彼女の姿を見て「劣化した」「いや役作りだろう」などという議論がSNSで挙がっていたが、そんなことはどっちだっていい。池脇千鶴が昔も今も変わらず、その役柄のリアルをとことん見せてくれる役者だとあらためて実感できた喜びに比べたら些末なことだ。
そして草笛光子がかっこいい。衣装もアクセサリーもグレイヘアも言葉も決まっていて、こんな80代だったらなりたい! マスターの幸吉(品川徹)と二人で会話するシーン、昔の白黒映画を観ているようだ。「今の四十って、昔でいう二十歳みたいなもんね」というセリフがやたらリアルだな~。
脇を固める役者陣も信頼できる人たちだし、職場のシーンもバーのシーンもテンポ良い会話が続いてあっという間に時間が過ぎてしまう。
次回はどんな風に勇気づけてくれるのか、今から楽しみで一週間待てない。
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第2話あらすじ&感想
第2話あらすじ
超高齢熟女バー『OLD JACK&ROSE』で見習いホステス“アララ”として働き出した新(池脇千鶴)。
熟女ホステスたちの明るくポジティブな姿に感化され、昼間の職場でも前向きで楽しそうな新の姿に、スミレ(江口のりこ) やみか(真飛聖)らは「まさか…ホスト⁉」と勘違い。元カレの前園(山崎樹範)も内心気が気ではない。
店では、くじらママ(草笛光子)やエリー(中田喜子)、ナマコ(久本雅美)、ひなぎく(草村礼子)ら熟女ホステスの先輩らとともに慣れないながらもまずまずの接客ぶりだったが、早くも試練が訪れる。
突然、フロアが暗転。流れ始めるムーディな音楽。
『OLD JACK&ROSE』恒例のダンスタイムが始まった!
次々とソシアルダンスを踊り始める常連客とホステスたちの中、ダンス経験のない新はひたすらオロオロ。常連客の花山(芋洗坂係長)に誘われ、おそるおそる踊り始めた新だったが、その姿はまるで相撲の取り組み。フロアの中で、あっちでゴツン、こっちでゴツン、あげくにはよろけてしまい…。
そんな姿を見かねたマスターの幸吉(品川徹)は、ダンスの特訓を言い渡す。
「女としての自信をつけるため…」
見習いホステス・アララは、見事試練を乗り越えて華麗なダンスを披露できるのか?
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第2話の感想
できないダンスをして失敗した新ことアララ(池脇千鶴)を見た幸吉(品川徹)が「相撲だな」と言った途端にBGMが相撲の太鼓になるの、面白すぎる。
ひなぎくが「ダンスを練習するのよ」ではなく「アララは女としての自信をつけなきゃ。そのためのダンスよ」と言ったのがが印象的。
私なんて無理……と言っていたアララが先輩のお姉さま方に励まされてダンスを踊れるようになり、前回踊れず迷惑をかけてしまったお客さんと踊りながら「デパートで働いていた時こうしてお客様の喜ぶ顔を見るのが好きだった、私はやっぱり接客が好きなんだ」と自分が好きだったことに気づいたエピソードがよかった。
「四十なんてまだまだ伸び盛り」「うらやましいわ」というお姉さま方の声に、画面の前の人たちもはげまされるはず。
みんな生きてきた今までしか知らないから、昔の自分より年を取ってしまったことにフォーカスしてしまいがちだけど、年上の人から見たら若いし、きっと数年後、数十年後の自分から見ても若い。これからの人生でいちばん若いのは今だから、もう遅いと思う前にやりたいことは挑戦したいなと思った。
今回もくじらママ(草笛光子)が素敵。割烹着姿でさえもおしゃれで品格がある。ジルバママやくじらママ、幸吉さんをはじめ、バーで働いている人たちの過去のエピソードが聞けたのもよかった。くじらママや幸吉さんが語りだすと、ぐっと雰囲気がでて違う作品を観ているような気持ちになる。
池脇千鶴と超熟女バーの面々を中心に紹介したけど、職場の人々を演じる役者陣も個性豊か。
新の同僚村木を演じる真飛聖はゴージャス美人な役が多いけど、オーラを封印しておかっぱメガネで地味な役を演じている。
倉庫のグループリーダー浜田さんを演じる江口のりこはこの作品でもいい味を出している。新や村木のことを「これだから出向組は」とバカにしているのに、様子がおかしい新を心配?している時は村木と若干意気投合しているのも面白い、あとランチがいつもバナナ1本。いや栄養はあるだろうけどバナナ……
そして新を捨てた元婚約者で倉庫に出向してきた前園を演じる山崎樹範は、うざい勘違い男の感じを出すのがうまい。聞き耳を立てながら白目をむくな。なんで男は元カノがいつまでも自分のこと好きだと思ってるんだ。あとほかの女とデキ婚したのに新の写真がスマホに入ってるのも、そのフォルダ名が「想ひ出」なのもキモすぎる。
次回はリストラ候補に挙げられてしまう新がどうなるのか気になりつつも、バーでどんなことが起こるかのほうが断然楽しみ!
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第3話あらすじ&感想
第3話あらすじ
超高齢熟女バー『OLD JACK&ROSE』でのバイトに少しずつなじんできた一方で、昼間の職場では予想外の試練が新(池脇千鶴)を待っていた。
突然、チームリーダーのスミレ(江口のりこ)に呼び出された新と前園(山崎樹範)。みか(真飛聖)も見守る中、ホストにハマっている(と皆がカン違いしている)新がリストラ対象になっていることをどう考えているのか、と2人を問い詰める。
ホ…ホスト?リストラ??
身に覚えのないことばかりで唖然とする新だったが、熱くなっているスミレの剣幕に、ホスト通いではなく熟女バーでホステスのバイトをしていることを白状せざるをえなくなる。
その日の終業後。『OLD JACK&ROSE』の前で、“ホステス募集40歳以上”の貼り紙をしげしげ眺めるみかとスミレの姿があった。2人とも口ではあれこれ言いながらも、新のバイト先が気になって仕方なかったのだ。
「いらっしゃいませ~~…あ!!」
ドレスにウィッグ、バッチリメイク。昼間とは別人の“アララ”の姿に衝撃を受ける2人。
居心地悪そうにしながらもビールを注文する2人だったが、そこにエリー(中田喜子)が姿を見せる。いつもは明るいキャラクターで店を盛り上げるエリーの様子がどうもおかしい。どうやら彼女が二十代の時、散々貢いだ挙句に捨てられた詐欺師のような男に約四十年ぶりに再会、しかも同じ団地に引っ越してきたという。
いつもパワフルな熟女ホステスが抱く深い傷に触れた新は…。
第3話感想
まさかの、チームリーダー・浜田スミレちゃん(江口のりこ)の魅力大爆発の回。
本社からの出向組につっかかる嫌味なやつかと思いきや、不器用だけど熱くて優しい人だった! そして元ヤン。
新(池脇千鶴)にリストラ疑惑が出ていることを伝えた際、この職場で正社員で働けるのはありがたいことなのに姥捨て山とか言うんじゃないと言い、新や自分の下で働いているメンバーのリストラを阻止する宣言。
特に対立していた村木(真飛聖)へのセリフで大好きになってしまう。
「村木みかさん、はいいんじゃないの。大学国立だし、百貨店ではエリートコース。やる気なくなるのも無理ない。私みたいにヤンキー上がりとは違うし。(中略)でも私は、自力でここの正社員になれて嬉しかった。だから、頑張らないと」
村木にスミレさんの言ってたことわかる、と言われて隠そうとしてるけど嬉しそうだし、気恥ずかしさからなかなか名前を呼べなくて「む、村木、村木、村木みかさん?」と声がうわずっちゃうところが愛おしい。今までの行動の理由もわかるし、自分の事情だけでなく村木の事情も慮っていて素晴らしい。
昨日の「俺の家の話」も素晴らしく、2日連続で江口のりこを絶賛している。今クールの週末は、江口のりこの演技を楽しみに待つことになりそう!
彼女は池脇千鶴主演の映画「ジョゼと虎と魚たち」にも出ていたので(妻夫木聡のセフレ役)、この作品はそういう意味でも個人的に熱い。
新の副業、アララとして働くジャックアンドローズにきたことをきっかけに、新・村木・チームリーダー浜田スミレの3人が仲良くなっちゃってるのが微笑ましい。2度目の来店の際はいつも地味な恰好だった二人がおしゃれしてきていてかわいい。新の「お店に来たらきっといいことが起こりますよ」本当だったな。
先に倉庫3人組の話を書いてしまったが、今回メインとなるのはお店の先輩ホステス・エリーさん(中田喜子)の物語。中田喜子のことは、子どもの頃母の横で観ていた「渡る世間は鬼ばかり」三女・文子役で認識していて他の作品を知らなった。まさかこのタイミングで「恋する女性」としての役を観ることになるとは思わなかった。
自分が結婚詐欺に遭ったせいで実家を破産させてしまったエリー。後悔していることをアララに伝えるシーンで、声は笑って顔は泣いてるのが印象的。
最後は自分の手で未練を断ち切れてよかった。
復帰したエリーに一見冷たくしたと見せかけて、復帰パーティーを開くジャックアンドローズのみんながあったかい。このお店がアララや働くみんなだけでなく、お客さん、そして村木や浜田にとってもホームのような場所になりつつあって、すごい場所だなと思う。もしかしたら、視聴者にとってもそうなのかもしれない。オープニングのジャックアンドローズのカーテンが開く瞬間、夢が広がるような気持ちになる。
エリー、動画で踊りながら復活をお知らせしてて最高!
次回は中尾ミエ登場、キャラが濃そうでまた一週間待ちきれない!
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第4話あらすじ&感想
第4話あらすじ
秘密にしていた「OLD JACK&ROSE」でのバイトが職場にバレてしまった新(池脇千鶴)だったが、その後、店に誘ったことがきっかけとなりスミレ(江口のりこ)、みか(真飛聖)と同い年の友情が芽生える。しかし職場のリストラ計画は人知れず進行していて…。
店では毎年ジルバママの命日に行われるパーティの準備が進んでいた。そんな中、新の携帯に弟・光(金井浩人)から連絡が。地元・会津の町おこしイベントで東京に来ていると聞き、新はあわてる。実家には、倉庫に出向になったこともバーでバイトしていることも一切知らせていなかったのだ。とりあえず会って食事する約束をしたものの、その前に新は光と思わぬ形であっさり再会してしまい…。
『ジルバをしのぶ会 VOL9』の宴が盛大に始まった。新もこの日は客の1人として会を楽しむことに。常連客の他に、テレビでよく見かける直木賞作家・大田原真知(中尾ミエ)も姿を見せる。なんと彼女、かつて“チーママ”の源氏名で店でホステスとして働いていたというのだ。
その夜、新は初代ママ・ジルバの長く苦難に満ちた壮絶な人生について知ることになる…。
第4話感想
毎回登場人物のいろんな面が見えて、はじめは気に留めていなかった人もどんどん好きになっていく展開が見事。
まず、みかちゃん(真飛聖)が仕事のときも髪の毛を巻くようになっている! 新ことアララ(池脇千鶴)、みかちゃん、スミレちゃん(江口のりこ)の3人がジャックアンドローズの出会いを経てすっかり仲良くなり、ランチのおかずも分け合うようになっていて微笑ましい。スミレちゃんは毎回バナナ1本だったところを房で持ってきて1本ずつおすそ分けしている(笑)。
故郷の福島は会津若松から突然東京にやってきた新の弟・光(金井浩人)。穏やかで優しくてちょっと抜けていて、新の弟っぽい。だが、震災で職場も家も失った弟に、姉ちゃんに自分たちの気持ちがわかるわけないと怒鳴られたことを回想する。こんなに穏やかな人が怒鳴るほどのはかり知れない苦労があったこと、新たがそのことに罪悪感を感じていることがうかがえる。
ジルバの命日にパーティーが行われるジャックアンドローズでは、元ホステスの直木賞作家・真知(中尾ミエ)がジルバの人生を語る。日本に向かう船の上で最愛の夫と子どもを感染症を亡くし、日本では太平洋戦争の戦渦に巻き込まれたジルバは、そこから9年で店を開いた。成り行きでパーティーに参加した光も、その話を聞いて勇気をもらう。
パーティーの女性陣の装いがみんな素敵。くじらママ(草笛光子)のグレージュのドレスは、しのぶ会だからか色は落ち着いてるけど片方の肩にファー。アララ(新)のワンピースの首元が黒のレースになってるところもかわいい。真知の白と黒の大胆なカラーリングの着物で、そのままダンスもしちゃうからかっこいい。ジャックアンドローズに集まる女性たちの色とりどりな衣装は、宝箱を覗くみたいで毎回の楽しみだ。何歳になっても好きな色を着て笑顔でいたい。
大事な倉庫のメンバーを一人もリストラにさせないと息巻いていたスミレちゃんだったが、早期退職を打診されてしまう。理由は「言動がパワハラではないか」という声が出ているからだという。確かに序盤の「これだから出向組は」などの言葉はそう取れなくもないが、前回で不器用だけど部下思いで仕事を大事に思っている熱い人とわかった。さらに今回で家族もいないことがわかり、いかにこの職場と職場の人間関係が彼女のすべてだったかがわかる。ここでこの勧告は、見ている側としてもあまりにつらい。
弟にいつ地元に帰ってきても言われて「何言ってんだか」という新も、母親が病気から5年経って問題なかったことを喜ぶみかの顔も美しく見えた。「いいねぇ家族って」というスミレちゃんがせつない。
ラスト、暗い倉庫にうずくまり一人泣くスミレちゃん、スミレちゃーん……! 次回予告では笑ってるシーンもあったのがせめてもの救いだけど、幸せになってほしいなぁ。
弟が出てきて思い出したけど、このドラマのいちばんはじめは新たが地元駅に帰るところからだった。ジャックアンドローズで過ごす暮らしに終わりがくるということなんだけど、新は笑顔だった。それまでに起こるこれからの話を大切に観ていきたい。
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第5話あらすじ&感想
第5話あらすじ
退職願を出したとスミレ(江口のりこ)に突然告げられ、仰天する新(池脇千鶴)。みか(真飛聖)は前園(山崎樹範)の仕業に違いないと食ってかかる。しかしスミレは「もう決めたことだから」と多くを語らずその場を収める。
その夜「OLD JACK&ROSE」では、一同がスミレの話を聞いていた。会社は、スミレにパワハラ疑惑があることを問題視しているのだという。そんなことあるはずが…と言いたいところだが、少し前まではスミレから小言やイヤミを言われていた身としては、コメントしづらい新とみかだった…
その時、店に新を訪ねて1人の客がやってくる。なんと前園であった。新に本音をこぼす前園。彼なりにスミレの退職に関しては思うところがあるらしい。普段はひょうひょうとしている前園も、中間管理職という立場に苦しんでいた。 40になり、それぞれの前に訪れる厳しい現実。シジュー三人娘の胸に去来するものとは?そして事態は思わぬ方向へと向かい…
第5話感想
前回パワハラしてると退職推奨され夜の倉庫でむせび泣いていたスミレちゃん、退職届を出してしまった。そんなのダメだよと思いつつも決意は固い模様。前園課長(山崎樹範)のせいだと思ってキレたみかちゃん(真飛聖)、前園課長がいる部屋の透明の窓にバンッと張り付き「見ぃつけた」と目をかっぴらいて笑うみかちゃん、ゾンビ映画みたいでホラー。みかちゃんの美しい顔に協賛の文字が被ってしまっていたのが残念だ。配信で観直そう。
前園がジャックアンドローズで「アンパンがかつらかぶったみたいなの」と形容されており、意外と的確で笑ってしまう。即本人が来るのもうける。アララ(池脇千鶴)と二人で話している際、スミレちゃんは優秀な人で、彼女を失うのは損失だと思うと言葉にする。無責任で調子のいい血も涙もない奴と思っていたけど、スミレちゃんの退職には思うところあった前園、人の子だったということがわかった。
みかちゃんのお母さんからの手紙、達筆で知的な内容、真っ赤に紅葉したもみじの葉が1枚挟まれていて、このシーンだけでお母さんが教養のある人だとわかる。前話までの話も含めて、みかちゃんはそんなお母さんの期待にこたえようと頑張ってきたのだろう。
数日後、みかちゃんも退職届を出してしまう。自分の希望だと言うが……。大切な人が続々といなくなってしまうショックから、前園に詰め寄りまくし立てるアララ。そこへ倉庫の従業員たちがきて、チームリーダー(スミレちゃん)にパワハラされたことなんてない、彼女を辞めさせないように上に言ってくれと頼みに来る。前回、大事に思っていた倉庫に受け入れられなかったのかと絶望したが、そうじゃなかったのだ。報いがあってよかった。そして前園は、スミレちゃんの退職届を上に出していなかった。彼が上層部にかけあったおかげか、スミレちゃんは退職せずに済んだ。
しかしみかちゃんの退職はそのまま決まった。せっかく生まれた三人娘の和気あいあいが、こんなにも早く終わりを迎えるとは、観ているこちらも本当にさみしい。前回退職勧告されたスミレちゃん、ドラマ開始時に地元へ帰ってきたシーンがあったアララではなく、一番早くこの場を去るのがみかちゃんだとは思わなかった。
「祝!みかちゃんSTARTING OVER!!!」
みかちゃんのお疲れ様パーティーでナマコ(久本雅美)が作ったケーキに書いてあった言葉。個人的にSPEEDの曲名を思い出してしまうが、意味は「再出発」。「お疲れ様」や「ありがとう」ではなくこの言葉を選ぶセンスが素敵だなと思った。
毎回名言続出だが、今回は特に名言が多かった。
「『つらい』と言い訳するのはずるいなとも思った。本当につらいのは、切り捨てられるほうなのに」
前園と二人で話した後、アララが家で一人のシーンのモノローグ。確かにそうだ、切り捨てられる側になったことのある人には響く言葉だと思う。池脇千鶴の声、20年前も今も聴く人の心を優しくくすぐる感じでいいな。
「欲とか見栄とか不安とか、全部取っ払って自分に聞いてみたの。『みか、本心では何がしたいの』って。そしたら答えは『田舎に帰ってお母さんと一緒に暮らしたい』だった」
パーティー後、アララの家で3人こたつに入りながら「どうして決断できたの?」と聞かれて出た言葉。自分も今すぐ欲とか見栄とか不安とか取っ払って自分に聞きたいな。
「勝ちとか負けとか、そんな風にくくらなくてもいいんじゃないかな?最初っからそんなものないって思えばいいんだと思う」
「でも負けたと思いたくない」というみかちゃんにアララが言った言葉。人のほうが自分より成功してるとかいい思いしてるとか、そういうことにとらわれてしまう瞬間が人生のどこかにはある。特に今は人との差が見えやすい時代だ。アララのこの言葉は、視聴者のことも勇気づけてくれた。
「恥ずかしいこと言っていい? あたしさ、四十になってこんな友達ができると思わなかった。だからすごくうれしい」
スミレちゃんの言葉。照れ屋なスミレちゃんがみかちゃんと過ごせる最後の日に言ったの、じーんとする。この3人が集まるのが最後なんて、本当にさみしい。
「噂なんて、風だよ。噂なんて、風」
これから帰る連絡を母にしたみかちゃん。「もう噂になってるだろうね。東京から逃げかえってきた四十の娘って」と言ったら帰ってきた言葉。母は強いな。人の陰口や噂が気になってしまうこともあるが、風だと思って生きていこう。
今回もたくさん勇気づけられた! 次回予告、スミレちゃんに恋の予感っぽくて気になるな。
–{第6話感想&あらすじへ}–
第6話あらすじ&感想
第6話あらすじ
年末の繁忙期になり、新(池脇千鶴)が働く倉庫は大忙し。みか(真飛聖)が辞めて、シジュー3人娘の1人が欠けてしまった感傷に浸る間もなく、新とスミレ(江口のりこ)は慌ただしい毎日を送っていた。遅めの昼休みを取りながら、今は島根の実家でのんびり暮らすみかに思いをはせる2人。その手には、みかが送ってくれた出雲大社のお守りがあった。 出雲大社といえば、そう、縁結びの神様…。
一方、BAR「OLD JACK&ROSE」では、毎年恒例のクリスマスパーティーの準備が進んでいた。くじらママ(草笛光子)や、ナマコ(久本雅美)、ひなぎく(草村礼子)らがツリーを飾っている中で、エリー(中田喜子)は大切な常連客へのプレゼントの準備に悪戦苦闘。不器用なエリーを先輩ホステスたちが手助けしている、そんな姿も年末の風物詩だ。
客の中では、石動(水澤紳吾)がなぜかソワソワ。どうやら意中の相手に告白の準備…?
「え。私に?マジ。ウソだ…」
新からクリスマスパーティー招待のチラシをもらい、独り身に慣れ切ったスミレは思わず感動。ウキウキのスミレの様子を我がことのようにうれしく思いながら、少し前まで落ち込んでいた自分が驚くほど軽やかに生きていることを実感する新だった。
そして迎えたクリスマスパーティ当日。テーブルにはクリスマス料理やケーキが並び、ホステスたちや幸吉(品川徹)がクリスマス仕様のコスプレで客を迎える。そこにはちょっとオシャレしたスミレや、石動ら常連客の姿も。そして突然店を訪れた、ナゾの男…。 「OLD JACK&ROSE」のクリスマスは奇跡が起きる…聖夜は恋が始まる予感!
第6話感想
恋模様が浮かび上がった回だった。
個人的にいちばん印象深かったのはひなぎくさん。
いつも穏やかで優しい彼女にこんなストーリーがあったとは。ずっと好きだった血が繋がらない兄のお葬式。ここ数年は桜の季節に会っていたという。幻想的で美しい夜の枝垂れ桜、そこに彼がいるように感じているのが伝わってきて泣きそうになった。
「兄さん、さようなら。いえ、また会いましょう」
ひなぎくさんの強さを感じた言葉だった。
ジルバと幸吉マスターについては、うすうすそんな気はしていたけどやはりだったか。ジルバは何であのブレスレットを夫と子供の遺髪と一緒にしていたのだろう。回想(アララの夢?)のジルバ、同じ池脇千鶴なのに全然違う人みたいに見えるのがすごいな。
そして今回のメイン、スミレちゃんと石動さん。序盤石動さんがアララに惹かれている描写はあったけど、その後スミレちゃんと絡むシーンも多くどっちなんだろう? と思っていた。結局好きなのはアララなのなぁと思いきや、運命の悪戯で石動さんの花はスミレちゃんへ。いや他の女に渡すのかよと一瞬思ったが、そこからの心の動きを追うと、歩道橋までの間に石動さんも本気でスミレちゃんを好きになったんだなと思う。こんな運命もあるんだ。
石動さんと抱き合うために花を置いて靴を脱ぐスミレちゃん、とても可愛かった。それでも石動さんのほうが小さいんだけど、素敵なシーンだった。スミレちゃんおめでとう、幸せになってくれ…!
ついにスミレちゃんにも帰る場所ができるのか。こんなにうれしいことはない。
花束男が気になるところで終わったが、幸吉とバチバチな理由含めて気になるぅ!
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第7話あらすじ&感想
第7話あらすじ
大晦日、BAR「OLD JACK&ROSE」で大掃除をしていた新(池脇千鶴)の前に現れた白浜(竹財輝之助)。クリスマスの夜、閉店間際に店を訪れ、新に花束を渡して立ち去ったあのイケメンであった。
「ジルバは死んだよ…」幸吉(品川徹)が告げる。
ジルバの写真に手を合わせた後、白浜は語り始めた。ブラジル育ちの白浜は、現地で出会ったある男に「日本に戻ったらジルバに会いに行け」と言われ、かつてジルバを訪ねた。しかしジルバは突然取り乱し、白浜を追い返したのだという。
「どうしてあの時…あんなに」白浜が話したその時、店にふらりと真知(中尾ミエ)が現れる。仕事が終わったので幸吉と一杯やろうと立ち寄ったのだという。
白浜に尋ねられるがままに真知が語り始めたジルバの過去。それは、かつて地球の裏側で起きた悲劇の物語だった…。
年が変わり1月、新は故郷・福島へ帰ってきた。弟・光(金井浩人)のカフェのオープンを応援するためだ。大盛況の店内で、早速手伝い始める新。
そして新が実家に帰ってきたのには、もう一つ目的があった。
職場の異動、バーでのバイト…ずっと両親に言えずに逃げてきたことに、いよいよ決着をつける時が来たのだ。
第7話感想
アララこと新(池脇千鶴)が福島の実家に帰り、震災後のやり取りをお互い引きずっていた弟の光(金井浩人)とのわだかまりが消え、お互い思い合っていることがあらためてわかってよかった。またひと悶着あったものの、アララの家族全体の温かさが伝わってくる回だった。特にお父さん(大和田獏)の言葉がよかった。
前回現れた謎の男(白浜というらしい)ただのブラジル育ちのいい青年だった。この人アララと恋に落ちたりするのかな? とちょっと思ったけどブラジルに行っちゃうなら違うのか。写真集を見せてくれたシーン、すてきだった。
チーママ(中尾ミエ)の着物の着こなしがかっこいい。ラメの入ったストールを腰に斜めに巻き、その上からベルト(帯?)を締めている。ヒールブーツと合わせててかっこいい。正統派の着こなしではないけど、かなり好き。とても似合ってる。終戦後ブラジルに住む日本人の間で起きた「勝ち組」「負け組」の話は初めて聞いた。
弟に「あの時はごめん」と謝られたとき、忘れたふりをした新。光に思い切って店を始められた理由を聞いて、「あんたにはかなわねえ」と言った。
新がずっと気にしていたように光も気にしていたし、何だかんだいい姉弟だ。
新はついに、倉庫送りになったことと夜のお店一本にしたいと言ったことを告白。激怒する母、馬鹿正直に全部話さなくていいのに、あの人(母)ただでさえ理論立てて考えるの苦手なんだからと言う弟、真面目な新の考えたことなんだからと宥める父。温かくていいなと思った。
おばあちゃんが夢枕(?)に立つところ、観ていた自分もおじいちゃんに会いたくなってしまった。しかしおばあちゃんの一つだけ言っておきたいこと、それでいいんか。
夜に二人で話したとき、新との婚約を破談にした前園のことを刺してやろうかと思った、会ったらはっ倒したいと言い、お前が元気になるならいい、困ったらいつでも帰っておいでという言葉、泣けた。大和田獏さん、お元気そうでよかった。
以前も流れた弟が新に怒鳴るシーン、前後が足された。弟・光の心境を理解したいが、自分も首都圏にいた人間なので、し切れていない。
ギャル(アララ)にお菓子の福袋買ってきてくれるお客さん、かわいい。
今年もよろしく、チュウ〜とネズミのキャラ弁を立ててみせる前園に対する新の「こぼすよ」が冷静。
スミレちゃんが幸せになったのは大変よろこばしいが、ただの恋する乙女になってしまった。でも幸せのあまり、今まで同じ境遇のナマコにしか言ってなかった、自分が施設育ちなことを軽く新に言えてしまうくらいになっている。ならば良かった。恋ってすごい。お弁当がバナナじゃない。
次回、スミレちゃんに何が? 妊娠? 結婚? でも一悶着あるんだな。今回あんなにお花畑だったのにナーバスモードになっている。スミレちゃんには幸せになってほしいよ。予告で出てきたアララの大きなイヤリングがかわいくてきになる!
–{第8話感想&あらすじへ}–
第8話あらすじ&感想
第8話あらすじ
ついに会社を辞めて「OLD JACK&ROSE」での仕事一本に絞る決意をした新(池脇千鶴)。退職届を提出し、バーでの仕事にひときわ気合が入る新だったが、前園(山崎樹範)は心配顔。
「社宅、どうしますか?」 前園の言葉で初めて、会社を辞めたら社宅にはいられないということに気づく始末。 もう後には戻れない…改めてその選択の重さに思い至る新だった。
新の住居問題は、幸吉 (品川徹)のある提案により、急転直下思わぬ形で解決するこ とになるのだが…。
一方、スミレ(江口のりこ)もまた、大きな人生の転機を迎えていた。
浮かれモードのスミレを微笑ましく見ていた新だったが、夜になると一転、スミレは どんよりした表情でバーに現れる。石動(水澤紳吾)と連絡が取れないというのだ。 まあそれくらいは…とつい思ってしまう新をよそに、生まれて初めての恋に燃えるス ミレは気が気ではない。
その後、事態は予想外の展開を迎えることに…。
第8話感想
自分のために泣くほど一生懸命になってくれる人がいることのありがたさ、そしてそうしてもらった人は他の人に同じように接していく、いい意味での人のつながりを感じてもらい泣きしてしまう、良い回でした~!!!
スミレちゃん、幸せになってね
何といってもスミレちゃん(江口のりこ)。妊娠して喜んだのもつかの間、石動となかなか連絡がつかず情緒不安定に、さらに彼がはじめはアララ(池脇千鶴)を好きだったと知り店を飛び出していってしまう。
石動のプロポーズ、場所は微妙ではあったものの跪くところも良かったし「結婚してくれますか?結婚しましょう」という言葉も良かった。突っぱねて一人で生むと言い出し、諫めたアララにも怒鳴って微妙な感じに。
アララに相談され、スミレに両親がいないことを知ったくじらママ(草笛光子)はスミレを抱きしめささやく。
「あなた、幸せになるのが怖いのね」
「誰でも幸せになる権利があるんだから、勇気を持って幸せに飛び込みなさい。人を信じるのよ。それでうんとうんと幸せになってちょうだい」
泣きながら「何で私にここまで……」とつぶやくスミレちゃん。くじらママはかつて14歳で戦争によって母と妹を亡くし、家も焼けて一人バラック小屋で父の帰りを待った(結局父も戻らなかった)に同じように接してくれたジルバを思い出していた。人にもらった優しさ、親身になってもらった経験は残って、その人がいなくなっても生きる。そんなことを改めて考えさせてくれた。
くじらママの過去
くじらママが話してくれた過去の話、先ほども出た14歳で独りぼっちになってしまった話と、昔幸吉マスターのことを好きだった話。でも幸吉はジルバにぞっこんで振り向いてくれなかったと。焼け出されてバラック小屋に住んだ話で、そんな家たくさんあったのよ。という言葉で同じような大変な思いをした人がいかに多かったかあらためて感じ、そんな時代を生き抜いてきた人々への敬意と彼らが作った平和な時代に生まれ育ったことへのありがたみを感じた。
アララにも謝り「わたしなんでこんなに変な性格なんだろう」というスミレちゃん、そういう後悔で自分を嫌いになりそうになるときってあるよな。
アララ退職、前園とのやり取り
ジャックアンドローズ一本に絞ることにしたアララ。
前園(山崎樹範)は本気で心配し、店までやってくる。
社宅を出ねばならないことをすっかり忘れていたアララに退職金がびっくりするくらい少ないことや、倉庫で何日かバイトとして働けるようにもできると提案してくれた。このドラマが始まった当初は他の女を妊娠させてアララを捨てた憎い奴だったが、スミレちゃんがリストラされそうになったときに悩んだ末上に進言したり、その後もリストラを阻止すべく奮闘してくれていたらしい。根っからの悪者ではないんだなとわかり、退職時の二人のやり取りも良かった。
スミレちゃんの妊娠の話になっときに勘が鈍い前園にお腹が大きいジェスチャーをしながら「バカ、気づけ」とつっこむアララ、うっかり「(石動)が逃げたんじゃ」と言ってしまう前園を鬼の形相でにらむアララ、思わず妊娠してることを大声で言ってしまった前園に「バカ!」と怒るアララ……前は避けていたのに、こういう関係になれていてとてもいい。アララがいろいろ乗り越えたことがわかる。
しかし社宅のことを忘れちゃうのはうっかりすぎてちょっと心配になるな。
気合がはいってアイシャドウが青すぎるアララに
「反抗期」「おませ」と赤ちゃん扱いのお姉さまたち、
「お客様は一人でも多く。一本立ちするならそれぐらいの覚悟でね」と教えてくれるエリーさん、素敵。
スミレちゃんの結婚パーティー
エリーさんはアクセサリーを出し、ひなぎくさんはベールを作り、ナマコさんはウェディングケーキ。
幸吉マスターとくじらママが両親役。司会を担当し、みかちゃんを呼んだアララ。みんながそれぞれできることをしてスミレちゃんを祝うのが最高だった。
ウェディングドレス着る時も首からお守り下げるんかいとは思ったけど(笑)。みかちゃんがいなくなってさみしさを感じてたからうれしいな。
みかちゃんと前園、同期二人の
「顔色いいな」「あんたやつれたね、ザマミロ」のやりとりも良かった。
貧しいながらも充実した生活を送っているというみかちゃん。シジュ―三人娘、それぞれ道は分かれたけどそれぞれの幸せを見つけている。四十からいろんな道が開けていることに、自分と重ね合わせて勇気をもらう人も多いのではないだろうか。
ブーケほしそうなみかちゃんとエリーさんアララからの言葉とともに出てくる回想が泣ける。誰も辞めさせないと豪語したとき、犬猿の仲だったみかちゃんに自分はみかちゃんと違ってヤンキー上がりだから頑張らなきゃねと打ち明けたとき、みかちゃんが地元に戻ってしまう前、この年で友達ができると思わなかったと嬉しそうにいったとき。不器用だけど真っ直ぐで優しいスミレちゃんが幸せをつかんだこと、視聴者の一人だけど友達のことのように喜ばしい。
バナナエピソードの回収もほほえましく、「あたしたち内気なんで歌います」にはなんでやとつっこみたくなる。このドラマに出てくる人たち、みんな愛おしい。
倒れてしまったくじらママ。予告では一命はとりとめたようで少し安心したけど、どんな話をするのか気になる。
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第9話あらすじ&感想
第9話あらすじ
スミレ(江口のりこ)の結婚パーティの夜、突然きら子(草笛光子)が倒れ、「OLD JACK&ROSE」は騒然。検査の結果、ただの飲みすぎだとわかり胸をなでおろす新(池脇千鶴)たちだったが、腰を強く打っていたため、念のため店の2階にあるジルバの部屋で養生、新がしばらく看病することになる。
そんな中、翌日からなぜかエリー(中田喜子)、ナマコ(久本雅美)、ひなぎく(草村礼子)が相次いで体の不調を訴え、店を休むことに。このままでは、新と幸吉(品川徹)の2人だけで店を開けざるをえない…そんなピンチの中、颯爽と現れたのは、あの人物だった! 一方、新以外誰も見舞いにやってこない状況に少しすね気味のきら子だったが、部屋に顔を出した幸吉にポツリと告げる。
「思い出すわね…ジルバの最期」
きら子の過去、ジルバとの絆…「OLD JACK&ROSE」の語られざる物語が明らかになる、万感迫る第9話!
第9話感想
スミレちゃんの結婚パーティーで倒れてしまったくじらママ。ただの飲み過ぎだったとわかりひと安心だが、しばらくは安静に。
さらにナマコが肋間神経痛、エリーはギックリ腰(またか)、ひなぎくは膝が痛くて歩けないという状況に見舞われピンチに。即座に一人暮らしのエリーとひなぎくのところに誰かやらないとと考える幸吉マスター、お見事です。
くじらママの過去激白
何といっても、くじらママがアララに、70年誰にも言ってこなかった過去を打ち明けたシーンが印象的でした。薔薇の花が敷き詰められたステージの上で告白するシーンは、さっきまでのドラマとは違う舞台が始まったかのよう。
戦争で母と妹を亡くし、父の帰りを一人待っていたくじらママ。ある日ヤクザものに押し入られ、身体を売らされていた。このままだと一生抜け出せないと、ヤクザものたちの家に火をつけて逃げた。
やっと父親が戻ってきたと思った14〜15歳当時のくじらママを襲った出来事があまりにひどい。家族を奪われたうえにそんなつらい思いをしていたなんて。でも、明るみに出ていないだけで当時同じような目に遭った若い女の子たちは多かったのかもしれない。
くじらママは被害者なのに、70年ずっと自分を責めてきた。悪いのはママをそんな目に遭わせたヤクザものだし、そんな状況を作った戦争や時代なのに。アララの「傷が深いほど、人は自分を責める」というモノローグが印象的だった。
しかし70年、誰にも言わずに苦しんできたのはどんなにつらかったろう。想像を絶する。この告白を聞いて、前回のスミレちゃんへの「幸せになる権利があるのよ」という言葉や、ジルバに「つらい過去は忘れるのよ」と言われた回想を思い出すと、胸がギュッとなる。
くじらママを演じる草笛光子さんの演技が圧巻だった。今まではいつでも強い毅然としたくじらママだったのが、倒れて弱ったり、子どものように拗ねたり、助っ人できたチーママに店を乗っ取られるんじゃないかとあせったり、幸吉マスターにわがままをいって甘えたり。
ずっと言わなかったことをアララにだけは打ち明けようと思ったのは、話したくなっちゃう特別な雰囲気なのか、ジルバに似てるからなのか、アララならほしい言葉をくれると思ったからなのか。ひたすらかっこいいくじらママも素敵だったけど、弱いところも見せられて、もしくじらママの心が少し楽になったならよかった。
全部わかってるチーママ
勘なのか嗅覚なのか、ジャックアンドローズのピンチに呼ばれずとも駆けつけたチーママ。彼女の言葉と行動が心に残る回でした。何と軽やかで自分を持ってて、人のことも考えられてかっこいい人なんだろう。
「自分で身につけるものは自分で選ばなきゃ。ファッションも自己表現の一つでしょ」
ジャックアンドローズのお姉様方の装いはいつも素敵だけれど、特に他の人がしないような斬新ななものの着こなしが素敵で、かつ自身に似合っているチーママ。全部自分で決めてきた彼女だから言える、説得力のある言葉です。
「あたしにはロマンティックなバングルをくれるような男はいないからさ」
ナマコさんが自分とアララ以外知らないと思っていた幸吉からジルバに送られたバングルのこともチーママは知っていました。というより、引き出しに入れたのはチーママだったのです。
「アララ、暴いていいのよ。死者の残した形ある物は暴かれる。生きてる者は手を汚すの。そうでないと、死者の心残りを遂げてあげられないでしょ」
これまた斬新だけど説得力のある言葉。生きてる者は手を汚す、今までなかった発想だし、単体だと悪い意味でしか取られなさそうなこの言葉が、文脈によってはいい意味になるのは新鮮でした。
くじらママに対する「天岩戸(あまのいわと)作戦」も、最終的には大成功。2階で寝てるママには挨拶に行かず、ひたすら下の楽しそうな声を届けるにとどめたのですが「あの人負けず嫌いだからさ、下で楽しそうにしてれば絶対出てくると思ったのよ」というアララへの耳打ち、さすが。
「白状者は退散しますかね」と出て行くチーママとくじらママのやり取りが、なんだかんだある二人の信頼関係を伝えていました。
くじらママ「あんたの勝ちよ」
チーママ「サンキュー」
アララ以外にはいいというまで来ないでと言い、完全復活のタイミングを見計らって呼んだというサラッとした気遣いも素晴らしい。こんなふうにさりげなく人を気遣える人になりたい。
次回、何ともう最終回だなんて。
終わらないでほしいけど、すごく楽しみです。
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第10話あらすじ&感想
第10話あらすじ
2020年10月。世の中の状況が一変、あらゆる飲食店が窮地に陥る中、「OLD JACK&ROSE」もまた、客の足が途絶え静まり返っていた。
そんな中、新(池脇千鶴)は41歳の誕生日を迎えた。店では、きら子(草笛光子) やエリー(中田喜子)らおなじみのメンバーがささやかに誕生パーティーを開いてい た。
新がこの店で働き始めて1年。「こんな時なのに…」と恐縮する新に、ナマコ(久本 雅美)やひなぎく(草村礼子)らはこんな時だからこそ盛り上がりたいと本音をこ ぼす。皆が、出口の見えない閉塞感に限界を感じていたのだ。
その時、幸吉(品川徹)がゆっくり口を開いた。
「みんなに話したいことがある」
「OLD JACK&ROSE」はどうなってしまうのか? ?
新、スミレ (江口のりこ)、バーの面々に待ち受ける未来は?
人生はいくつになっても輝ける!すべての頑張る人々へエールを贈る最強エンターテ インメント、涙と笑いの最終話!
第10話感想
ああ、ついに大好きなこのドラマが終わってしまう~! さみしいなあ!
コロナで客足が途絶えたジャックアンドローズでバースデイソングを歌う店の面々。
新ことアララ(池脇千鶴)41歳の誕生日だった。
同時に幸吉から告げられたのは、店の経営が立ち行かなくなり、閉じることにしたという方告だった。
夢が叶ったスミレちゃん
予定日ギリギリまで倉庫で働いていたスミレちゃん(江口のりこ)は職場で産気づき病院へ。
コロナで立ち会い出産できないため、ジャックアンドローズの面々と知らせにきた前園(山崎樹範)、やってきた石動と動画越しに分娩室から中継する。なんで前園まで立ち会うのという気がしなくもないけどまあいいか。
陣痛に苦しむスミレに「あなたは今オペラ歌手よ」と言って声を出して見せるくじらママ(草笛光子)。ジャックアンドローズにいる面々も一緒に高音を出す。石動がしっかり握りしめた手は前園のものだった。二人で手を取り合って高音を出す。私は何を見せられているんだ……?
ちなみに幸吉だけは店の隅で耳をふさいでいた。
8時間後、待ちつかれて大半の人が寝てしまった明け方の店に産声が響く。
新と石動は最後まで中継を見守っていた。元気な女の子ですよと言われたときのスミレちゃんの顔がすてき。
「スミレ、夢が叶いました。うれしい〜、本当にうれしい」
本当に優しい笑顔でこんな風に話すスミレちゃんを、第1話のときに誰が予想できただろうか。
スミレちゃんに家族ができたんだ。本当によかったね、おめでとう!!! という気持ちでいっぱいだった。
ジャックアンドローズ、最後の日
自分がこの世とオサラバしたらブレスレットをブラジルのジルバの家の墓に持って行ってくれないかという幸吉。そんなこと言わずにこの状況が収まったら一緒にブラジルに行こうといつ新だったが、高所恐怖症だから飛行機が怖いから無理という幸吉だった。結構怖がりなんだろうか。
そうこうするうちに最後の日が来てしまった。
「私たちの正装よ」とおめかしして集まるホステスたち一人一人に、幸吉が言葉を贈る。
ひなぎくは一番長く店に勤めた。「このお店は私の人生そのもの」という。お兄さんとのエピソードを思い出し、一生抱えるつもりの想いを胸に仕事に打ち込んだひなぎくさんを思うと胸がぎゅっとなる。
最後まで明るいナマコ。
エリーに「愛してる」と軽口をたたかれて「俺もだよ」と言い返す幸吉。
そう言ってくれたの初めてじゃないと喜ぶエリー。
ひなぎくもナマコもエリーも、最後まで変わらないのがうれしいし切ない。
泣きそうなアララに
「泣くわよ見て見て」というエリー、
「ほらもうそういうこと……」とたしなめようとするナマコ、
「アララ、大丈夫?」と優しく声をかけるひなぎく。
最後まで関係性もみんならしくて、このお店がなくなってしまうことが見ているほうもほんとうに悲しい。(結局アララは泣き、それを見たエリーも泣く)
レコードをかけて、暗くなった店で二人踊るくじらママと幸吉マスターが素敵。
「この店を初めてからブラジルに帰らなかった。この店がジルバを縛り付けてしまったのではないか」と言う幸吉に「だからジルバに似てるアララにブラジルに行ってほしかったんでほ」と言うくじらママ。くじらママは、ブレスレットのこともたぶん全部知っていたんだろうな。
いつの間にかレコードではなく生演奏に変わり、また違う舞台を観ているような気持ちになる。
くじらママと幸吉マスター、二人だけの独特な関係が好きだった。
新、福島に帰る
駅まで迎えに来て、気遣う弟の光に「さすけね」という新。
「さすけねは、大丈夫、心配するな、なんとかするという意味の方言らしい。
それでも毎日ぼーっとすごしてしまう新。
父(大和田獏)と二人になったときに、自分はもう41になってしまった、東京にいたときはすっかり忘れてたのに、帰ってきたら急に感じると言う新。
父は、自分の名前を考えてみろ。新と光、新しい光だと言う。
この名前だけは譲らなかったのだと。
何て素晴らしい贈り物なんだろう。
大和田獏さんが、この実際の状況とリンクしたドラマに出演しようと思ったのにはどんな気持ちがあったのだろう、ご本人はとてもつらい経験をされたけど、新しい光が差し込んでほしいと勝手にすごく思った。
転送されてきた白浜さんからの手紙を読んで
「お願い、駅まで車出して。お願い、何も言わないで姉ちゃんのいうこと聞いて」
というアララ。
書いてあったジルバの義兄や実の兄夫婦の話を呼び寄せたみんなの前で読み上げ、このお店を続けると宣言する新。
正直ジルバを突き落とした義兄には思い入れがないけど、ジャックアンドローズがなくならないのは単純にうれしかった。ジャックアンドローズやそこに集まる人たちは、作中の人物だけでなく、観ている私たちのことも励ましてくれた。
X年後
家族3人おそろいの服を着て幸せそうなスミレちゃん。
家のベランダ? で愛犬をいとおしそうに見つめるみかちゃん。
二人ともいろんな悩みや葛藤があったけど、二人の人生は確実に前より良くなっている。うれしい。
ジャックアンドローズでは、くじらママのうん十回目のお誕生日(つまり九十)パーティーが行われていた。
チーママを含めたホステスが大集合、やってくる新の家族。
新の父に「お前は」と言われてカタコトの日本語を話して外人のフリをする前園。
女は四十から、六十から、七十から、八十から、と言い合うホステスたちに
九十、いえ百、いや三百まで頑張るわ~! というくじらママ。
第1話と同じやり取りなのに、新の心持ちが全然違う。うれしい。
みんな変わらず最高におしゃれして笑ってる。うれしい!
店にやってきたのは白浜さん。新と見つめ合う。
「二人今日も貸し切り?」
「いえ、ようこそ、オールドジャックアンドローズへ」
笑顔でウインクする新。
ここから何か始まるのかな? 始まるといいなぁ。
全体の感想
特に女性は若いことが良いという風潮がまだまだある日本。
20代後半くらいから、生きづらさを覚える女性は多いと思う。
特にシングル女性への生き地獄感は強いのではなかろうか。
既婚未婚関係なく「今のままでいいのかな?」「もう●歳なのに」と悩む人も多いと思う。
そんな苦しさを軽やかに吹き飛ばしてくれたのがこの作品だった。
考え方が変わった人、苦しさが減った人、多いんじゃないかな。
年を取るのは嫌なことだと思っていたけど、くじらママをはじめとしたジャックアンドローズのお姉さまたちみたいな年の取り方ならしたい。
まだまだ人生はこれから、いつまでも自分に似合うおしゃれをして、ときには恋もして、人生を楽しみたいし、自分の人生をよくする決断を今さらと躊躇せずにできる人でいたいな。
今よりすてきなX年後にできるように頑張りたいな。
ドラマはここで終わってしまうけど、この物語にもらった勇気や希望は私の中で生きていく、そう思える素晴らしいドラマでした。
ありがとう「その女、ジルバ」ありがとうジャックアンドローズ!
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–{「その女、ジルバ」作品情報}–
「その女、ジルバ」作品情報
有間しのぶ原作の人気コミックがドラマ化。40歳の笛吹新(池脇千鶴)は大手百貨店で働くも男なし、夢なし、プライドもない負け組OL。そんな彼女が超高齢熟女BARで、さまざまなホステスたちと出会い再び輝きを取り戻していく人間賛歌。
放送日
2021年1月9日(土)スタート
毎週土曜23:40~放送
フジテレビ系にて
出演
池脇千鶴、草笛光子、江口のりこ、品川徹、中田喜子、中尾ミエ、久本雅美、草村礼子、真飛聖、山崎樹範 ほか
原作
有間しのぶ
脚本
吉田紀子